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意味不明小説(ショートショート)コミュの外嫌い

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拾った石ころを投げた。考えもしない方向に跳ねて街路樹の根に行く手を阻まれ止った。たったそれだけのことにみえたし、なんだか少し深い示唆を含んでいるようにも見えた。

ただ、どうでもいいと感じた私の心はそのことに取り合うことを辞めてまたトコトコと歩く。

石君。根っこで止まった君をを追い抜いてその先を見に行ける自由が私にはあるのだよ。

何処を目指してるわけではなく、ただのふらふらとしたお散歩。こころに嫌なものが積もってきた時はそういう行動に出る。切り札と言うにはなんとも頼りない習慣なのだけれど、そう呼んでいいほどの実績を上げてくれているこのカードは実力で私の信頼を勝ち取った。

天は曇っていて風がぬるい。こういう時は私の心とのギャップがあったほうが嬉しいのに。なんて意地悪な日だろう。

晴れた日の晴れやかな気分は清々しいけれど、なにか最高潮であるが故の不安を一緒に押し付けてくる。小さい頃、遠足の日が晴れたらなんだか寂しい気分になったあの感じがそのまま今だって続いている。

楽しいときを思いっきり楽しめない私の心はとても損をしているように思うけれど、でも、たぶん、表に出さないだけで他の人も大小あれど持っている感覚じゃないかななんて考えたりもする。

だから、私のだけにだけある天ならば、天は晴天を用意すべきだった。「そんなこといわれても、お前のためだけに俺はやってんじゃない。」そう、それは正論。私だってわかってるのよ。その上で言ってるんだから放っておいていいよ。

1人で歩くこと自体は全然寂しいことではない。日常だって駅に行くにも、家に帰るにも1人で歩く。では、何故こんな気持ちでいるのか。それは、目的が無く歩くからだ。目的が無く歩くとこんな気持ちになるのに、なんで歩くことに決めたのか。それは・・・わからない。

こんな時はシャキシャキ歩いても仕方ない。トボトボと周りを見ながら自分の気持ちを確かめるように歩く。取るに足らない発見に少し笑えればそれはとても良い事に思える。

猫がいる。見ているけど見ていない。私は「照れてるのかな」って親しみやすい顔を見せたが余計そっけなく何も無いところを興味深そうに観察し始めた。

「眼中にありませんよー」って言われているのが悔しいけれど、所詮それらは私がこの猫との間に作ったストーリーで、彼の中では何一つ出来事が起こっていないかもしれない。お話できないのはそういうことなのね。うん、うん。わかるよわかるよ。私は懲りずに都合よくストーリーを展開する。

先には公園があって人間がたくさんいる。1人でいることを望んで歩いているのに、人がいると何故だか安心する。不思議だ。

いてもいいけど私には無関心でいてくださいね〜って所で、男の子がタイミング良くサッカーボールを大きく蹴り過ぎた。またかよ〜って取りに来るのは弟だろうか、それとも同級生でいいのか。一回り体格の小さい子がボールを追ってくる。あなたのお仕事大変ですね。と思っているうちに丸いボールは予想通りに私の足元に懐いてきた。

蹴るか?蹴って返してみるか?そんな小さな冒険心は私の上手くいかなくてかっこ悪いかもしれないという不安に殺される。しゃがんで手に取り、投げ返してあげた。

男の子は私の思っていた3倍くらいの声で「ありがとうございます!!」ってはっきり言った。怯んだ私は一瞬強張ったけれど、突き破るような嬉しい気持ちがすぐに笑顔を作った。役に立つって本当に大切な事だ。

すると、体格の大きい男の子も向こうから大きな声でお礼を言ってくれる。恥ずかしくなった私は公園での無関心を突き破られていながら、よかったぁ〜なんて思う。

体格の小さな男の子は走って大きな体格の男の子との元の距離に戻って、早速大きくボールを蹴り飛ばした。

やれやれ!!

楽しい気持ちが伝染してくる。迷惑じゃないよ。あなた達は知らないところで人を助けてるんだよ。もっと気持ちよく遊んじゃいなさい。

公園を抜ける。曇天は私を封じ込めようとまだ頑張っているようだが、そうはいかない。街に向かってトコトコ歩く。街は目的でいっぱいだ。あの人もこの人も目的を持ってあっちやらこっちやらに存在している。私はといえば何することも無い。ただ、似つかわしくないスピードで商店街をボーっとみてるのが強いて言うところの目的かもしれないが。

押し付けられるティッシュ配りに目で「いらないぞ」と合図を送るけれど、グイグイティッシュを押し付けてくる。目を合わせるのがいけないのか。学習もする。

お店からでる香りで何のお店かを当てながら、窓ガラスから覗く幸せそうな顔に「いいねぇ〜」って笑う。赤ちゃんもベビーカーに乗って「押しなさいよ」ってもぞもぞしている。とっても可愛い。ムチムチの太もも、二の腕、きっとたくさんの人から触られて大変でしょうね。

「触るか?」男の子がそんな目で見てくるけれど、私は窓ガラスを割ってまであなたを触る勇気が無いの、気持ちだけにしとくわ。

なんだか、そんな事達に満足して家に帰ることにする。帰るという目的が出来るのでふらつくのが好きなのかもしれない。誰も待っちゃいないけど、好きな空間に落ち着けるって言うのは結構特別なことなんではないかと思う。

あ、

さっき家を出た時に送り出してくれた蟷螂はまだ同じ場所にいるだろうか。動いたろうか。どれほど動いたのだろうか。飛んだのか?何かを見たのか?お腹一杯になったのか?

私と同じ様に彼にもウキウキすることがあればいいな。同じ時間を生きていることはそういう想像ができていい。

さて、今日、あなたは何をみましたか?

知らない誰かと同じ時間を想像してみるのも楽しいものですよ?

懐かしい人なんて存在なら特にそうかもしれませんね。

誰に話しかけるわけでもないけど、私はそんな気持ちになって玄関に鍵を差し込む。私のいないこの空間はその間、とても静かに何も起こらず、ちゃんと在ったのだなって感心したりもする。

じゃね、それではドアを閉めます

また今度。

バタンッ


カチャ

カチャ

カチャ

カチャ

カチャ

カチャ

カチャ

カチャ

カチャ

カチャ

(10個の鍵)

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