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意味不明小説(ショートショート)コミュのクロスカウンター

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控え室からリングに向かって歩く廊下の中、
世界で一番孤独なんじゃあないかって思えてくる。

でも、トンネルを抜けると、そこには大歓声が俺を待っていた。

世界王者への挑戦。
相手はアメリカのボクサーだ。
身長が2メートルを超えるバケモノ。
上からパンチを浴びせられてリングに沈められた挑戦者は腐るほどいるのだ。

レフリーの説明を聞いている間、
俺は奴とにらみ合った。
身長差のせいで、見上げるカタチとなったが
俺だって背が低い方ではない。
180cmはあるが、奴と比べると子供だ。

ゴングが鳴った。
と、同時に、やつは俺の足を踏んできた。
ダーティーなやり方だ。
足を踏んで動けなくした所に、上からパンチを浴びせられた。
レフリーは、奴の大きな体が邪魔で、足下までよく見えない。

なんとか踏みとどまり、距離をとった。

奴を倒すには、一瞬の隙をついて、体重を最大限にのせたパンチを見舞うしかない。
すなわち、クロスカウンターだ。
相手のパンチをぎりぎりでかわしながら大きく踏み込み、
全体重をのせたフックをぶつける。

俺は隙を狙い、ガードを固めた。
その上から、重いパンチが飛んでくる。
このままではダメージの蓄積でやられてしまう。

俺はガードの奥から、奴を観察した。
左ストレートを撃つ前に、舌を出す癖があるようだ。

奴が舌を出した!
今だ!
俺は奴の左ストレートをぎりぎりでかわし、
全体重をかけて踏み込んだ。
そして渾身の右フックをアゴ先にくらわせてやった。


一瞬、宙に舞った2メートルの体。


俺は勝利を確信し、振り返って拳を突き上げる。
新しいチャンピオンは俺だ。


-------------------------------------------


と、いうカタチでですね、えー、いきたいと、思っていますが、いかがでしょうか?

TV局の放送作家がそう言った。
悪くない展開だ。

俺と、アメリカ人チャンピオン、それぞれのトレーナー、ジムの会長、TV局関係者による会合は
都内某所で秘密裏に行われていた。

莫大なファイトマネーはあらかじめ決まっている。
アメリカ人チャンピオンはこの八百長試合を最期に、ボクサー人生を終わらせるつもりだった。
あとは、視聴率を稼げるストーリーが必要だ。
それに、この先、俺が自分の名前を売り込むために必要な演出は何か。

それを決めるのが、この会合だ。

アメリカ人が何やら話している。
クロスカウンターが届くのか、だと。
確かに、身長差がありすぎる。
左ストレートを撃つ際に頭を下げる癖も付け足すことにした。

では、そういうことで。

皆が悪い顔をしている。
これが大人の顔なのか。

俺は真面目に練習してきた日々を想い、
禁欲的な毎日を想い、
この試合後に手に入る金と名声とを秤にかけた。

答は既に出ていた。

俺はチャンピオンと握手をし、こう言った。

「Tomorrow never knows.」

コメント(1)

えと、ツッコミ所の多さで困惑させるのが狙いなのでしょうか?

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