ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

意味不明小説(ショートショート)コミュの緊/鈍

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 父はたずねた。
「息子たちよ、我らは何のために生きるのか。答えよ」

 長兄がすっくと立ち上がった。栗色の髪と、緑色の瞳の美しい青年だった。
「私は死ぬために生きます。なんびとたりとも避けられぬ死を意味のあるものにするために、私は生きます。やがて来る終わりのために」
 父は重々しくうなずく。長兄は出ていった。
 長兄は異国の地で銃弾に倒れた。おだやかな微笑みをうかべた死に顔は、土ぼこりと血しぶきの絶えぬ戦地にあっても、気高く美しかった。

 次男がのろのろと立ち上がった。伸び放題の黒髪の間からのぞく黒い瞳は、不敵に笑っていた。
「俺は生きるために生きる。明日でも昨日でもなく、今のために。<今>はこれからも続いていく。いつか俺がふりむいたとき、そこに何かが見えるだろう」
 父はだまってうなずく。次男は出ていった。
 次男は街角の路地で死んだ。背中にはジャックナイフが深々と突き刺さっていたけれど、ポケットの中の両手はそんなことなど気にも止めていないようだった。高らかに笑いながら、次男は崩れ落ちた。

 末っ子がおずおずと立ち上がった。唇をゆがめてみせたが、それが精一杯の笑顔のつもりだった。とび色の瞳は父親を正視できず、長いまつげの下に隠れた。
「僕は何のために生きるのか分かりません。僕には未来も、今も感じられない。ただ怯えながら生きているだけです」
 父は微動だにしない。末っ子は震える声でつづける。
「ぼくはこわい。外に出るのがこわい。でも」
 父は静かに首をふりながら立ち上がる。末っ子はあとずさりしながら叫んだ。
「でも、ここにいるのはもっとこわいんだ」
 父は両腕を広げる。末っ子は声にならない悲鳴をあげながら逃げまどった。

 やがて父は台座に戻る。深々と腰かけ、大きく息をついた。
「さて、妻よ。お前ならどうしていただろう」
 妻は答えない。ただ首をかしげて、右へ左へゆっくりと振り子のように揺れつづけるだけだった。 

コメント(5)

いったい誰が良い子なのか・・・
いつもながら、実験意図が明瞭に認識されていて、作品をつくることによって何がしかの批評的収穫がありますね〜電球
いきぐるしさを感じていた中なので

やたらと感情移入してしまいました

いまのわたしは、誰々だーって
 父はかたわらの箱に手を伸ばし、一枚の紙をとりあげた。
「つづいては、ペンネーム『フンバルト・ミガデール』さんからのお便り」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AC%BD%E3%83%89%E3%83%B3!#.E6.AC.BD.E3.83.89.E3.83.B3.21.E8.89.AF.E3.81.84.E5.AD.90.E6.82.AA.E3.81.84.E5.AD.90.E6.99.AE.E9.80.9A.E3.81.AE.E5.AD.90

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

意味不明小説(ショートショート) 更新情報

意味不明小説(ショートショート)のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング