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意味不明小説(ショートショート)コミュの私のような、神に近い者

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「先生!助けてください!娘を助けられるのは先生しかいません!」

まだこの村には来たばかりだが、既に村人は私が来たという噂を聞き付けて私に助けを求めている。
最近はどこの村を訪れてもそうだ。ヨーロッパが、否、世界が終末に近づくにつれ民衆は病み始めた。
しかしこの世紀末において人間性を失わずにいられるのは、我々のような神に近い者ぐらいだろう。
神の言葉に護られた私のような者達が神の光りで導かなければ人間は人間でいられなくなるだろう。

長旅に疲れた体を休める暇も無いが、それは神が私に与えた使命である。迷える民を救わなければ。


「落ち着きなさい、一体どうしたというのだ?話してみなさい。」

それにしても酷い村だ。村中が不潔な臭いで包まれ、ほとんどの家屋は崩れかかっている。

「うちの娘の様子がどうもおかしいんです。どうか診てやってください。」


頭の禿げあがった男は、私の僧衣の袖にすがりつき、同情を買うような情けない表情で懇願した。


私はとっさに男に対して嫌悪感を抱いた。なんて醜いのだ!情けない!こいつは日頃から誰にでも頭を下げ、蔑まれる事に抵抗を感じていないのだろう。




「診てやろう。お前の家に案内しろ。」



男の娘は高熱にうなされているようだった。意識も朦朧としていて喋る事も困難な状態だった。

歳は16ぐらいだろうか?まだ幼なさも残っている。

「かなり危険な状態だ。直ぐに調べよう。服を脱がせろ。」

男は慌てて娘の服を脱がせた。

細く色白な体、小さい胸に少し大きめの乳首、熱に浮かされた瞳が幼いながらにも色気を感じさせた。髪は二つのオサゲで結ばれていた。この髪型をみるとどうしても後ろから思い切り引っ張りたくなるから不思議だ。

私は娘に近づいて体の隅々を調べた。

娘はこんな卑しい村には似つかわしくないほどに綺麗な体をしていた。肌は滑らかで、くっきりと浮かんだ鎖骨に特に魅力を感じた。
左の乳房に黒いほくろがあった。
「これは何だ?」

「何って、娘のほくろがどうかしましたか?」

「これはほくろなんかでは無い!これは悪魔に憑かれた証拠だ。この村には魔女がいるのではないか?」

男は私の言葉に怯え、完全に落ち着きを失っていた。
「魔女なんていませんよ!信じてください!」

私はまたこの男に強い嫌悪を感じた。落ち着きを失った様はまるで小動物のように惨めだ。

「いや、いるはずだ。魔術をつかう老婆に心辺りはあるだろう。」

「もしかしたらダビッドのババアが魔女かも知れないです。先生に診て貰う前にダビッドのババアから薬草を分けて貰いました。」

「そいつで間違いない。その魔女の薬のせいで娘は悪魔に取り憑かれたのだ。今からお前はその魔女を連れて来い!俺はこれから娘の悪魔払いを行う!」


男は家から飛び出していった。


これで男が帰ってくる迄、たっぷりと娘の悪魔払いが出来る。しかし悪魔払いは私でも危険だ、油断は出来ない。

私は娘を見つめた。
淫らだ。

私は娘を裸のまま仰向けに寝かせ、上に跨がった。オサゲを引っ張り、強引に顔を上げさせ私の顔の近くに引き寄せた。


「娘の中の悪魔よ!抵抗は無駄だ!神の名の下に平伏し、その名を明かせ!」



私は娘に平手打ちを喰らわせた。なかなか手強い悪魔だ。

「……い…………止めて………止めて…止めて下さい!悪魔なんていませんから、お願いです!」



私は娘の胸を揉みしだいた。やはり悪魔だ、この私に色仕掛けをしている。

私は娘を犯した、しかしこれは悪魔のせいだ。






男が帰って来た。醜い老婆も一緒だ。杖を衝いて歩く姿はまさに魔女そのものだ。

「先生!魔女を連れてきました!」

「宜しい!そいつは外に縛って置け!他の村人に頼んで見張りを付けろ。相手は魔女だ。気をつけるんだ。お前は私を手伝え。今から瀉血を行う。ナイフと布を持ってこい!」

もはや娘に取り付いた悪魔を追い出すのは困難だ、危険だが瀉血を行うしかない。

「娘を押さえ付けろ、これより瀉血を行う。悪魔に汚された血をだすことで身体から悪魔を追い払うしか無い。大丈夫だ。安心しなさい、こちらには神がついている。」

私はナイフで娘の脇の下を切り裂いた。鈍いナイフだ、力を入れ深く突き立てる。

やはり娘は人間離れした恐ろしい叫び声をあげている。悪魔の叫びだ。


私は両脇をなんとか切り裂いた、後は汚い血が流れるのを待つだけだ。



この神聖な術を行うことが出来るのは私のような神に近いものだけだ。魔女の作った薬草なんかでは比べものにならないぐらいに、この瀉血は効果があるのだ。
私は自分を誇らしく思った。これで娘を助ける事が出来た。
これからも私は世界中の迷える魂を救い、我々の神の下に連れて行くのだ。



両脇から流れる血はとめどなく流れ、娘は抵抗を止めた。




娘は死んだ。




なんて事だ。処置が遅すぎたのだ。



「残念だが、娘は死んだ。しかし悪魔は追い出したから、お前の娘が地獄で苦しむ事もないだろう。」


娘の血は木に縛られた老婆の足元まで流れ、魔女と呼ばれた彼女の涙が娘の血だまりに落ちた。







これは世界の終末に恐怖し、人間である事を忘れた人間の話。



彼らが恐れていたラッパが吹かれることは無かった。

コメント(5)

世界で1番ポピュラーな宗教をベースにした創作ですが、これに近しい事はあったのではないでしょうか?
魔女狩りなんかは、近代位まであったという話は聞いたことがありますが…。(うろ覚えあせあせ(飛び散る汗))

なんとなく、今の世の中を皮肉った様にも読みとれますね〜。

誰かの所為にして、自己保身やら自己正当化…。

「時代は繰り返される」みたいな…(苦笑)
>明衣さん
すいません。コメント気づきませんでした。
魔女狩りの被害にあったのは、もちろん本当の魔女ではありません。
薬草などの民間療法を人々に施していた女性などが対象になったようです。
民間療法を潰して、人々を協会に依存させる事も目的の一部だったようです。あと、富豪の財産没収とかもあったとか。

その際に、「ほくろ」とか「見た目が魔女っぽい」とか適当な言いがかりを都合良く並べたらしいです。

まぁ、本当の事は分からないですけどね。

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