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MAYDAY メーデー!ナショジオコミュのDEADLY DEPARTURE Air Transport International 782便 離陸失敗事故

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1995年2月16日の晩、ATI 782便(DC-8型機)は故障した左翼1番エンジンを修理するため、故障したエンジンを付けたまま、カンザス州Kansas City空港からマサチューセッツ州Chicopel空港まで、空荷で回航されることとなった。Walter Miga機長とCarry Hardy航空機関士は同型機で4,000時間以上飛んだベテランで、Mark Ulmer副操縦士は同型機搭乗は200時間ほどであったが、熱心なエアマンであった。
Chicopel空港は午後11時が着陸の門限時刻であり、クルーは対気速度280ktで直行するルートを計画した。3発エンジンでの離陸のため、Kansas City空港で最長のRwy01Lを選んだが、地上の風は240°から4ktと追い風であり、同機の最大追い風5ktに近い状況であった。
4発機で3基のエンジンで離陸する時、V1(決心速度)の代わりにVMCG (Verocity Minimum Control Ground)を重視する。1番エンジンが不動の場合は、内側の2番と3番エンジンを最大出力で発進し、VMGCに達した時点で右翼外側の4番エンジンを徐々に出力を上げることで、機体が左側へ偏向しないように離陸させる。航空機関士の計算によれば、外気温1℃でVMGCは107ktであった。同便はこの条件で離陸を試みたところ、80ktを超えた頃から機体が左へ偏向し、機長はrudderで中央線を維持しようとするも、困難と判断して、離陸を中止した。乗員間で何が問題だったか会話し、4番エンジンの出力増大が早過ぎたと考えた。航空機関士が「それなら自分がthrottle操作を担当します」と申し出て、2回目の離陸は機長の操舵と分担して当たることとした。
管制塔から”After airborne, right heading 030”の指示があり、同便は2回目の離陸許可を受けた。機長は機体を滑走路の右側へ寄せて、離陸滑走中に左へ偏向しても余裕があるようにline-upさせた。滑走を開始すると、案の定機体は左へ偏向したが、機長はrudderを入れながら”Keep going!”と離陸操作を続け、機体を浮揚させた。ところが、3つのエンジンをフルパワーにしても機体は上昇せず、左側へ傾きながら滑走路の先で墜落。3名全員が死亡した。
NTSBはBob Benzen調査官とChuck Leonard調査官らを現地に派遣。まず管制官から離陸滑走中に機体が左へ偏向したこと、機首が上がっていて、2回目にはそれが更に悪化して2番エンジンから火を噴いたことを聴き取った。
回収されたエンジンを調べてみると、2-4番エンジンは全て異常を認めなかった。機体が偏向した原因として事故機のタイヤ、ブレーキ、方向舵も精査したが、異常はなかった。離陸時の機体重量は22万ポンドで過重でなかった。
ただVMCGの数値を調べてみると、外気温1℃では116ktが正確な数値であり、107ktは華氏1度(1°F)の数値であって、航空機関士が単位を誤っていた。
CVRを解析すると、2回目の離陸前にVMGCを超えたらエンジン推力とrudderのどちらの力が上回るかとの会話があり、操縦士らはエンジン推力と考えたが、航空機関士がrudderであると訂正し、それで操舵と推力レバーを分担することとなったと分かった。またFDRで離陸時のエンジン推力操作を調べてみると、4番エンジンの出力は一旦大きく上げられたものの、機長が偏向の修正に難渋しているのを見て、航空機関士が推力を落としていたことが判明した。調査官らは、これらの操作は一人で行わないと、操作の加減が分からなかった筈だとして、事故原因の一因と考えた。
乗員らの3発エンジンでの離陸操作について、訓練履歴を照合したところ、機長は3回の実績があり、2回はsimulatorで残りの1回は副操縦士時代に1回実機で経験していた。他の二人は経験がなかった。調査官らがフロリダ州のsimulator施設で訓練を再現してみたところ、離陸操作はさほど困難ではなく、経験不足がこのように稚拙な運航となったと推測した。ATI社の運航管理者へ、なぜ最も経験がある操縦士に3発離陸をさせなかったのかと質問したところ、経験豊富な操縦士は法令に則った休養時間を取らせて有償のフライトに乗務させており、空荷で無償のフライトは休養時間の制限がないので、別のクルーに任せたとのこと。実際、事故を起こしたクルーは、その直前にデラウエア州〜ドイツ〜カナダのNew Foundland〜デラウエア州と連続勤務しており、事故直前に乗組員の睡眠時間は5時間に満たなかったと推定された。
NTSBは4発機の3発エンジンでの離陸操作の訓練を強化すること、無償のフライトであっても乗務員に充分な休息時間を与えること、3発エンジンでの離陸は経験豊富な操縦士が行う事を推奨した。

コメント(3)

4発機を3発のエンジンで飛ばしたり、B-747型機では2番エンジンの内側にある5発目のhard pointにぶら下げて飛んだりする事が出来るのが、凄いところであります。ですが実際には安全のマージンは狭まる訳で、特に前者の場合はエンジン出力のかけ方に細心の注意が必要となります。更に、どのエンジンが不動かによって操作方法が変わるので、相当な習熟が必要な筈です。故障したエンジンを遠くの修理工場まで陸路や海路で運ぶのは、時間もかかって大変なのは分かりますが、操作を誤って機体を失う方がずっと大きな代償を払うことになるという実例です。
航空貨物会社は特に米国では労働条件が劣悪で、労働時間が規則内でも過大な時差や昼夜逆転から来る疲労を軽視した労働環境で運航されていることが多々あります。これは航空機事故をなくしていく上で、大変重大なポイントです。
Walter Miga機長(Robert B. Kennedy)、Mark Ulmer副操縦士(Cameron Skura)、Carry Hardy航空機関士(Michael Koras)は、てきぱきと離陸操作を行っており、見た目あまり疲れた様子で演じていなかった。Bob Benzen調査官(Thom Marriott)はいつも通り自信に満ちた貫録ある演技であった。

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