葦原風太郎想像空間天寿国の末裔コミュの「９．５」　文武天皇記　「古事記・日本書紀」編纂

「９．５」　文武天皇記

　「文武天皇の事績」「古事記・日本書紀」編纂

　文武天皇は短命であったため、また天智天皇・天武天皇・持統天皇の印象が強いため影の薄い存在である。

　しかし聖武天皇の父であり幼い天皇は母に会えぬため父親の男としての印象が強い。およそ幼い天皇の近くにいるのは文武帝と藤原不比等、女性は乳母と元明・元正の二女性天皇であろう。

　また外に出てはその係累であるだろう。

　また律令制度とは朝廷権力確立の法制度と意志の貫徹であり権力である。それは国家の自由と富と範図の拡大に向かうだろう。

　およそ諸豪族、王権国家を押さえ朝廷の確立に努めた時代でもある。

　それらは文武帝の時代に確立されたと言ってもいいもののはず。

　また聖武天皇の成果を見るのに父である文武帝の事績は見逃せない。

　では彼の事績として、行動としてはどうだったのだろうか。年次順に注意すべきものを見てみたい。

『　続日本記　巻第一　文武天皇（６９７）　文武天皇元年八月―――四年十二月　』
（この頃の京は藤原京である）

　文武天皇（６９７）

「大命」(宣命体・初出)

『八月十七日　天皇は詔して、次のように述べられた。現御神(あきつかみ)として大八嶋国をお治めになる天皇が、大命(おおみこと)として仰せになることを、ここに集まっている皇子たち、王たち、百官の人たち、および天下の公民は、皆うけたまわるようにと仰せられる。

高天原にはじまり、遠い先祖の代々から、中頃及び現在に至るまで、天皇の皇子が次々にお生まれになり、大八嶋国をお治めになる順序として、天つ神の御子のまま、天においでになる神がお授けになったとおりに、取りおこなってきた天つ日嗣の高御座の業であると現御神として大八嶋国をお治めなされる倭根子天皇(持統天皇)が、お授けになり仰せになる、

尊く高く広く厚い大命を、受けたまわり恐れかしこんで、このお治めになる天下を調え平らげ、天下の公民を恵み撫でいつくしもうと仰せられる。

これを以て天皇の朝廷(みかど)が設けられた百官の人たち、四方の国々を治めるようにと任命された宰(みこともち・国司)に至るまで、国法を誤り犯すことなく、明るくき浄(きよ)くまっすぐな誠の心をもって、心をゆるめ怠ることなく務め引き締めて、仕え奉れと仰せになる大命を、皆よく承れと仰せられる。』

と「大命」として述べられている。ここに「古事記・日本書紀」の影響のあることが見て取れる。

コメント(7)

最初
全て
最新の40件

[2] mixiユーザー 06月28日 18:13

「アジア情勢・中国と朝鮮」

　この頃の世界情勢というより、（交通手段の未発達による）アジア情勢としての、日本と近隣諸国との状態を簡単に見ておこう。

　中国の国の成り立ちは、黄河流域の「殷王朝」といわれる。次いで「周」・「秦」＝秦の始皇帝は紀元前２２１年に中国を統一する。

（以前に孔子の生誕は紀元前５５０年頃、仏陀の生誕は紀元前５６０年頃である。）

　後に・「漢」・「三国時代」・「南北朝時代」とあり、「隋」による中国統一は５８９年。唐による中国統一は６２８年となる。

　その後も中国は領土を広げ、６３０年に東突厥（トルコ遊牧民）を滅ぼし、６４０年に高昌国の吐魯（トルファン）を滅ぼし西域に勢力を拡大する。

　中華思想の文化はおよそ大陸の優位性として、紀元前より、稲作・漢字・儒教・仏教・律令制度は、多大な部族・王族をまとめ統一してゆく。

　日本と朝鮮半島は日本海をして隔つといえども隣国である。およそ母子・兄弟関係にある隣国といっても良い。

　しかし同時に近親憎悪を孕む関係でもあるだろう。それは隣同士であることから大きく中国・中華帝国の影響を受けることにもよる。
　
　朝鮮は大陸の半島であり地続きであるから、望む望まずに関わらず中国より大きな影響を受けながら建国の歩みを進めてゆく。

　一方日本は海を渡る島国であることより、航海術の未熟な時代に日本は独立性を確保することがたやすい。

　その日本が朝鮮半島を伝って中国に接したであろうことは想像できるし、また中国が北方朝鮮の脅威であるなら、日本は南方朝鮮の脅威であることも可能である。

　事実日本朝廷はそのような外交姿勢を示したし、また朝鮮より難民を多く受け入れて建国の原動力ともしていた。

　古朝鮮（檀君朝鮮・箕子朝鮮・衛氏朝鮮の総称）はさておいて、この頃には高句麗・百済・新羅が覇権を争っていた。日本では古墳時代後期、継体天皇の頃。

　日本は百済と４世紀後半に国交を結び、これをを支援していた。

　その以前に任那（みまな・にんな・金海加羅国ともいう）５３２年（・５６２年の説もあり）が新羅の攻撃を受けて滅亡している。

　任那は日本朝廷と関係の深い国であったらしい。５２７年に日本朝廷は六万人の兵団を組織して任那救援に向かうが、国内の反乱に合いこの計画は頓挫してしまう。

　朝鮮で国を失った難民が母国に別れを告げ、日本の地に新天地を求めただろうことは想像に難くない。

　その後、６６０年に唐・新羅軍は百済を滅ぼそうとする。

　この情勢の中、日本は朝鮮半島の有事に、天智二年（６６３）日本より２万７千人の兵を抱く船団百余船に分乗して百済に送り連合軍とした。

　これが新羅と唐の連合軍と戦うものの、日本と百済の連合軍は「白村江の戦い」に大敗北してしまう。

　尚も６７４年に唐は新羅討伐を行う。このことに６７５年に新羅は唐に朝貢して謝罪した。

　よって６７６年に新羅は朝鮮半島の領有権を唐により認められる。そのことにより新羅は唐の後ろ盾を獲て、６７６年に百済領土を併合する。

　尚、６６８年、唐は高句麗を滅ぼす。新羅は朝鮮での大国となった。

(平凡社大百科事典（９）『朝鮮・日朝交渉史』ｐ．９９４～９９５　矢沢康祐　　同(１４)『任那』　ｐ．４７２　井上秀雄　)

　後遺症としての政治的混乱が、法治国家としての日本の国家建設を更に急がせることになる。唐よりの返礼・仕返しを日本は大いに恐れたのだ。

　安穏としていては逆に強大国により、侵略される危機があるのだ。戦争の絶え間の無い時、強者による敗者の支配は「憎しみと悲しみの連鎖」の中で新たな戦争へと、よりサディスティックなものとなるだろうか。

　文武帝は諸臣との会話「人の話を聞く」ことによることしか情報を得られない。他は遣隋使、後の遣唐使の伝える文物だけしかない。

「テレビもラジオも新聞も無い」時代に国家の進路を決めねばならなかった。

　ただ幸いなのは日本が海を隔てた島国であったことだろうか。このことが大陸よりの防波堤となった。

[3] mixiユーザー 06月28日 19:01

「古事記」

　宮子が蟄居する経庫には天皇が必要とする書物が整然と並べて管理されているだろう。経とは当時は巻物であり、今の「本」の事である。　よって仏典は仏教の本のことであり、論語や古事記も同じく「巻物」であっただろう。

　では日常の書類などはどうだろうか。

　これは「木簡・竹簡」であるだろう。それ以前には「笹の葉」であったこともあるだろう。よって七夕の夜には笹と短冊が飾られる。それは古を伝えてある。

　宮子が経庫を一室に選んだのには意味がある。宮子夫人にも持統女帝と同じく「文人・政治家」としてあったのだろう。

　言葉とは、事の端・言の葉であり、言霊となり、真理は大きな力をも得る。

　宮子はその中に自我を求めようとしたのではないだろうか。

　そこには朝鮮・中国の渡来の書物もあれば、日本の古事記などの古記録もあるだろう。彼女は内助の功として文物に向かい文武帝に相対していたのだろう。

　ただ宮子がそれらの書物をどこまで読み解いていたのかは判らない。文武帝はその功を認めたのだろう。

「１．古事記」

　日本の国の成り立ちと、この国の法制度やここに暮らす人々の営みや歴史を記述する書を「国書」と言うのだろうか。「古事記」はそれではないらしい。秘匿された書物であったという。しかし、宮子の立場であればそれは見ることも可能だろう。

　まず、推古天皇の時代（二十八年十二月一日６２０）に仮に「第一・始源古事記」編纂の試みが聖徳太子と蘇我馬子らによりなされた。

『この年、皇太子と馬子大臣が相議(あいはか)って、天皇記および国記、臣・連・伴造・国造など、その外多くの部民・公民らの本記を記録した。』

　（日本書紀　(下)　宇治谷孟　講談社学術文庫　ｐ．１１０)

　このことは「諸王家が伝えている帝記・旧辞」の、家系誌の記録の政治的意図に気づかせただろう。自らの出生・出自を脚色・捏造する者を輩出することになる。

　では、後の皇極天皇・舒明天皇・皇極天皇・斉明天皇・天智天皇の頃に、この作業は中止していたのだろうか。いや、いよいよ煩雑さを極めてきたのかもしれない。

　これを仮に「第二・古事記」としよう。大津の宮にても天智天皇の後を継いだ実子・大友皇子は何かの形でこの作業を継承していただろう。

　しかし定説では壬申の乱にて大津の宮も「第二・古事記」もまた灰塵に帰してしまった。←本当にそうだろうか。「近江宮は燃えていない」らしい。

　しかしそれは「新しい時代を創造するための意図的な破壊工作」であったかもしれない。

　

　壬申の乱の後に、仮に「第三・古事記」の編纂には天武天皇が、天武天皇記十年三月十七日、川島皇子など六皇子、上毛野君三千など六人の臣下に、

『……(略)詔して、帝記および上古の諸事を記し校訂させられた。大嶋・子首が自ら筆をとって記した。』

　とある。諸王家が伝えている帝記・旧辞を編纂し誤りを正し、後の世に正しく伝えようとの政治的な発案であった。そうだろうか。

　壬申の乱に勝利した後には政界は大きく貴族・氏(豪)族の交代劇が起きている。　　

　信賞必罰があればこのことは書き換える必要がある。

　しかし作業途中に天武天皇は亡くなられ、これは一旦は中断することとなる。　　

　

　しかし、ならば後の持統天皇・文武天皇の時代にこの作業は中断していて良いだろうか。いや継承されていたとみるべきだろう。

　およそ大津の宮で灰塵に帰した古事記編纂の資料は当てに出来ず、新たに収集していただろう。

　貴族・氏(豪)族にては新たな地位の獲得の機会でもある。皆が家系を良く書き、捏造する機会でもあるし、それが新人・新王であれば進んで提出もしただろうと考えられる。

　国書を「自分たちに都合よく書き換える」願ってもない機会なのだ。

　よって第一・第二・第三の始源古事記は、これはそのまま私たちの時代には伝わらないだろう。しかし私たちは他に知る方法がある。「土から出て来た物は、嘘をつかないだろう」ということだ。

　私たちが目にすることのできる「古事記」（フルコトブミ）は、後に元明天皇が和銅四年（７１１）九月に太安万侶に古事記の完成を命じられ、稗田阿礼が活躍（誦習）して、明けて和銅五年正月に完成したものである。

　元明天皇には天武天皇の遣り残した仕事を完成させる必要があったのだろう。

太安万侶・稗田阿礼は歴代天皇に良く遣えていた。これを「天武本・古事記」とするのに筆者も同意する。

（　『国民の歴史４・大仏開眼』　文永堂　　上田正昭　　　　　　　ｐ．７６　）　　　　　

[4] mixiユーザー 06月28日 19:03

　この「天武本・古事記」は三巻から成る。上巻には神代のことが書かれ「創世神話」の趣を持ちつつ、神々の暮らす世界と秩序がそこに描かれる。

　中巻には神武天皇から応神天皇まで、下巻には仁徳天皇から推古天皇までの活躍と事績が記されているが、神々の秩序が人間世界にも演繹されてゆく。

　そしてここに仁賢天皇以降十代は帝記の記述のみとなり、皇統の系譜を辿ることに「天武本・古事記」の意図が明確に示されている。

　このことが元明天皇には日本書紀の完成より先に必要だったのだろう。

　しかしそれは日本の国家建設の礎ともなり、未来にどのような光彩を放つのだろうか。
　　　　　　　　　　　　　　　　　
　よって古事記は「勅撰史書」とはならなかった。たぶん朝廷内よりも反論が出たのだろう。

　おそらく広範な諸氏族・豪族の承認できるものでもなかったのだろう。

　まだまだ政治的な問題を孕んでいたのだろうと筆者は推測する。

　古事記に記載される氏族総数は二百一であり、壬申の乱に活躍した「勝組み」氏族が多く登場するという。
　
　この古事記にては世界の始源は天より始まり、天の神が地上におりて人間世界を開始してゆく。

　神々の始まりは伊奘那岐命・伊奘那美命であり神々の系譜を紡ぐ。

　そして日本を代表するのは天照大神であり皇祖神の系譜を展開する。

　

　その地上での神の子の第一子が神武天皇であり、皇統系譜はここよりして日本歴史と社会に展開されてゆく。このことは神の世界と人間世界を貫き継ぎ、人の世の歴史を連綿と紡いでゆくことが一貫されている。

　そうするならば、この頃の豪族社会ではこの皇統系譜のどこに自己が位置を得るのかが重大事となる。
　　
　古事記には「造化の参神」として天の三柱の神＝天の御中主の神・高御産巣日の神・神産巣日の神が主要位置となるが、日本書紀にてはその位置は「国の常立ちの神」に採って替えられている。

　このことは「高天原の神々」が「出雲の神々」を顧慮していることでもあるだろう。

「諸王家が伝えている帝記・旧辞」は豪族の自己主張と根拠であり、これが「古事記」との整合性と位置との上で問題となり、このことにより勅撰史書とはならなかったのだろう。後の「新撰姓氏録」にても豪族の氏姓の整理同定が国家の権威をもってしても至難なことが記されていると筆者は見る。

　このことは「壬申の乱」の余韻もあり、没落氏族が復権を視野に含むなら古事記は勅撰史書として同意できるものではないのだろう。

　そしてこの古事記は皇統神話の現世的展開の一貫性のために、世に出ることを本居宣長の時代まで、待つほかはなかった。

　しかしこれは以降の皇国史観に大きな影響を与えることになる。

　神話である。古代王権の産物である。およそ歴史事実の、権力者による改竄である、との謗りがある。その通りであるのかもしれない。

　しかし歴史資料としては一級品であり、大事なことはここからどう未来を読み取り、新たな世界を建設するのかが大事なことである。

　後年、これを聖武天皇はどう読み解いたのだろうか。

[5] mixiユーザー 06月28日 19:03

「２．日本書紀」

　古事記に対して、日本書記は「勅撰史書」、日本の官選の歴史書である。

　翌年には宮中で講筵され、後年に渡り注釈が繰り返されている。

　このことは日本書記が諸氏族・諸豪族の共有財産であることが伺える。

　しかしこれを認めることは、これにより責務を負うことも暗黙裡に朝廷と契約することになる。

　日本書記の神代巻は、成立の当時に既に伝承されている複数の神話があれば、主要なものを主文として他を併記する。

　古事記の「造化の参神」も併記される一文の中にある。

　日本書紀にてはその位置は「国の常立ちの神」に採って替えられていることを先に述べた。

　このことは「高天原の神々」も「出雲の神々」と同格と見なすことを示していることになる。

　一神論より多神論として、各氏族・豪族の社会的立場を安定させて、まず「国書」を書き上げていく、そのことが追及されたのだろう。

　古事記はその底本（土台となる本）となったのか、或いは日本書紀の編纂途中に先に完成されたのかもしれない。

　日本書記は「この国は由緒あり、正しき国である」ことを世界各国に宣言し、宣伝もする。　また一つの独自文化・民族として、国家、国民の存在証明でもある。

　世界の中の日本国として独自存在を主張したいものである。

　国威宣揚をする必要がある、そのための国書と言って良いだろう。

　

　日本書記は天武天皇が天武十年（６８１）に編纂を命じられる。

　中国の漢書等を手本とし帝記・旧辞を基本とし、諸氏の記録や歴代政府の記録と百済関係史料や個人の手記までも含め、養老四年（７２０）に舎人親王から元正天皇に献上されている。日本建国の成り立ちを伝える国史である。

　世界性・時代性から見れば、『日本国史』の登場は、他国の否定できないものであり、国家としての固有文化の証明である。

　外交官が各国外交を展開する時、「私の国はこれこれの国です」と語るしか方法のない時、誰もがこれに基づき自身の国家を語ることができる。

　律令が編纂された時、遣唐使が律令をたずさえたのもこの意味がある。

　国名も「日本」である。聖徳太子の世界戦略の継承でもあるだろう。

　天智天皇八年（６６９）日本国使は「倭」の字を嫌い、『日本』を称する。

　古事記・日本書記は聖武天皇の少し前の時代に完成していることも面白い。

　聖武天皇は聖徳太子をすこぶる尊敬している。

　例えば十七条憲法と聖武天皇が残された詔を合わせ読み解く時、そこに何が書かれているのか。

　ともに「聖」の文字を頭に戴かれているのは、このことからなのだ。

[6] mixiユーザー 06月28日 19:06

「３．続日本記」

　「続日本記」は「日本書紀」に続く第二の日本記であり、先に述べた勅撰史書である。

　文武天皇の時代から桓武天皇の時代までを、９５年間の歴史を編年体にまとめ四十巻とした。

　律令制の施行と、仏教による鎮護国家の建設と、不幸にして重なる天変地異と疫病の猛威と、天皇と政変とが記述されている。

　ただし古事記・日本書紀のように編集者が「単一」ではない。編纂過程に内乱・政変があり書記者・編集者が変更を余儀なくされている。

①まず、淳仁天皇の時代に藤原仲麻呂等により、文武天皇元年より天平宝宇二年までが三十巻にまとめられた。

②そして光仁天皇の時代に、先の三十巻を、石川名足・淡海三船・当麻永嗣等が修正・増補した。

③なお桓武天皇の時代には、その三十巻を菅野真道・秋篠安人・中科巨都雄等が再訂して二十巻にまとめ、別に天平宝宇二年以降を延暦十年までを二十巻として継ぎ足し合計四十巻として延暦十六年に完成した。

　この後に「日本後記」・「続日本後記」・「日本文徳天皇実録」・「日本三代実録」と書き継がれ六国史と呼ばれる。

「古事記・日本書紀・続日本記」は神代の時代を含め神武天皇の時代から、桓武天皇の時代までを記録している。

　日本の、人間の歴史的書物であれば物語性もあり『暗示・暗喩』も含まれ、尚且つ政治的な事柄も、また、哲学的な事柄もそこには内包されている。

「古事記・日本書紀・続日本記」をして、「六国史」をして、「真偽・加筆・削除」なり、「全体と一部」が、また新たな資料の出現などが歴史を見る目を煩雑にする。

　しかし「目を通して、対象を観る」しかないのだ。それは学問に学問を重ねることに他ならない。

　逆に言うならそこに「書かれずに済まされてしまう神々と､人々たち」を、私はここに読み取りたいくらいなのだ。

　しかし「国書＝自画自賛」を言えども、或いは政治的な観点から言えば、諸外国に対して「真正直」である必要もない。

　世界なり国家といった所で、神々人々の系譜とはいえ人間社会の反映・縮図に他ならない。

　世界の各国をして対等に外交を繰り広げるのなら、「他者に迷惑をかけた」正直な告白や反省は自国にとって不利益になるのみならず、「付け入る隙」を他者・他国に与えるだけだ。
　
　よって「国史は奇麗事に尽きる」のではある。

　よって、意図的な作為もそこにはある。写していない、書かれざる歴史も、「書かれて困る事実」も、そこにはあるだろう。

　その意図的な作為による書かれざる歴史は、「正史」に対し「稗史」と言われる。

「稗史は正史の邪魔になる」、歪んだナショナリズムの国家観よりすればそうなる。

　およそこれにより焚書などが起きる。（明治の神仏分離令・廃仏毀釈、大東亜戦争当時の言論統制など）

　しかし国家の歴史が、国民の歴史であるのか、また「民衆・民族」の歴史となるのか、写してあるのかと言えば、それは別問題だろう。

　およそ「記述」は現実・実社会におよばない。過去に有った事の全てを記述して残すことも不可能だろう。

　そしてもし「古事記・日本書紀・続日本記」がそれだけのものなら、現代感覚では、立場を変えて言えば、馬鹿馬鹿しくて読めない。

　なお「如何ほどのものか」という疑問も呈される。妥当だろう。

　何故なら国民自身は「汝自身を知る」、「真実を知りたい」、のがあるだろう。

　国民は自国の正誤・善悪をもっと正しく知りたいだろう。

　それが「稗史」として、正史の「裏面史」として、民衆に語り継がれて命脈を保つのは、そのことも健全な国家社会には必要なことだと私は考える。

　「稗史」の有るのは、国家社会を豊かして正しくしてゆくだろう。

[7] mixiユーザー 06月28日 19:31

　文武天皇は短命であったため、また天智天皇・天武天皇・持統天皇の印象が強いため影の薄い存在である。しかし聖武天皇の父であり幼い天皇は母に会えぬため父親の男としての印象が強い。およそ幼い天皇の近くにいる皇女と官女たちであるだろう。
　
　来客を別として、内裏の内で男は文武帝と藤原不比等くらいのものだろうか。また外に出てはその係累であるだろう。

　聖武天皇は幼いながらも父・文武帝を仰ぎみているのだ。およそ律令制度は文武帝の時代に確立されたと言っても良いのではないか。また聖武天皇の成果を見るのに、父である文武帝の事績は見逃せない。

　では彼の事績として、行動としてはどうだったのだろうか。年次順に注意すべきものを見てみたい。

（★注！「資料」を物語の中に大量に持ち込むことは暴挙なのだが、「後に書き改める」ということで今は先に進みたい）

『　続日本記　巻第一　文武天皇（６９７）天之眞宗豊祖父天皇」（あめのまむねとよおほぢのすめらみこと）　文武天皇元年八月―――四年十二月　』（この頃の京は藤原京である）

『八月十七日　天皇は詔して、次のように述べられた。(宣命体)

　現御神(あきつかみ)として大八嶋国をお治めになる天皇が、大命(おおみこと)として仰せになることを、ここに集まっている皇子たち、王たち、百官の人たち、および天下の公民は、皆うけたまわるようにと仰せられる。

　高天原にはじまり、遠い先祖の代々から、中頃及び現在に至るまで、天皇の皇子が次々にお生まれになり、大八嶋国をお治めになる順序として、天つ神の御子のまま、天においでになる神がお授けになったとおりに、取りおこなってきた天つ日嗣の高御座の業であると現御神として大八嶋国をお治めなされる倭根子天皇(持統天皇)が、お授けになり仰せになる、尊く高く広く厚い大命を、受けたまわり恐れかしこんで、このお治めになる天下を調え平らげ、天下の公民を恵み撫でいつくしもうと仰せられる。

　これを以て天皇の朝廷(みかど)が設けられた百官の人たち、四方の国々を治めるようにと任命された宰(みこともち・国司)に至るまで、国法を誤り犯すことなく、明るくき浄(きよ)くまっすぐな誠の心をもって、心をゆるめ怠ることなく務め引き締めて、仕え奉れと仰せになる大命を、皆よく承れと仰せられる。』

　この即位の時に文武帝はわずか１５才である。母は阿陪皇女（元明天皇）であり、父は草壁皇子である。しかし草壁皇子は皇太子位のまま亡くなり即位していない。ここに祖母である持統天皇の後押しも見える。

　　　　　　　　　　　　　　　

『(同日)　今年の田祖・雑徭・庸の半分を免除し、また今年より向こう三年間は大税の利息を取らないこととし高齢の者をいたわり物をめぐんだ。(略)』

(　続日本紀　（上）　宇治谷孟　講談社学術文庫　ｐ．１４～ｐ．１５　)

『八月二十日　藤原朝臣宮子娘を、文武天皇の夫人として、紀朝臣竈門の娘・石川朝臣刀子娘を妃とした。』

(　続日本紀　（上）　宇治谷孟　講談社学術文庫　ｐ．１５　)

『冬十月十九日　陸奥の蝦夷が、その地の産物を献上した』

『十二月十八日　越後の蝦狄(北陸道方面では蝦狄、東山道方面では蝦夷と使い分け)に地位に応じて物を与えた。』

『閏十二月七日　播磨・備前・備中・周防・淡路・阿波・讃岐・伊予などの国に飢饉が起きたので、食料などを与えた。また負税（出挙などで借りた稲の返済すべき分）の取立てをやめさせた。

(　続日本紀　（上）　宇治谷孟　講談社学術文庫　ｐ１６　)

この年の記述では、彼が即位したとしても実権そのものは「太上天皇＝持統」に頼ったのだろう。続日本記の記述に新たな変化は見られない。次の年の朝賀の儀式にも「その儀式は常の通りであった」とある。

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ