ツバキ文具店～鎌倉代書屋物語～コミュの第七話 ◆亡くなった祖母・カシ子から静子さんへの最後の手紙◆

静子さん

これが、最後の手紙になってしまうかも知れません

今私は、無理を言って、病院から、外出許可をもらい、ウチに戻ってこの手紙を書いています

私の命が尽き、鳩子が戻って来たとき、
必要なものがすぐに目に入るように、置いておくためです

もう、鳩子には会えないでしょう

でも、それでも、もしかすると、
と…、期待してしまいます

私は鳩子に、ずっと嘘をついてきました

あの子から母親を奪ったのは、私です

自分が独りになりたくないばっかりに、
娘の手から、鳩子を引き離したのです

本当は、娘は、赤ん坊だった鳩子を連れていこうとしたのです

でも私が、それをさせませんでした

そもそもお店のことだって、大嘘なんです

先祖代々続いてきた代書屋だなんて、私の勝手な作り話で、
実際は、私が始めた文具店なんです

なのに鳩子は、それを素直な心で信じてくれました

今は、心から鳩子に謝りたい

でも、何処に居るのかすら、教えてもらえません

体が丈夫だったら、日本中探し回って、謝りたいのに…

静子さん、人生って、本当にままならないものです

私は、何ひとつなし得なかった…

人生なんて、あっという間

本当に一瞬なんです

おそらく、私はもう長くは生きられません

次の手紙が、１ヶ月たっても届かなかったら、

その時はもう、
私がこの世には居ないものと思ってくださいね

書きたいことは、もーッとあるの…

でも、もう手に力が入りません

病院に戻らないと…

ありがとう、静子さん

グラッツェ！

あなたと、あなたのご家族のお幸せを、遠くの空よりお祈り申し上げます

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[鳩子]
どーして分からなかったんだろたう、先代の愛情を

自分の人生のすべてを捧げて、こんなにも私を愛してくれていたのに

私はそんな先代を、独りで死なせてしまったんだ…

(鳩子、号泣)