「この木ってなんて言うんだっけ」
目の前にスマホの画面が差し出された。私は勉強の手を止めて、ノートの余白にペンを走らせた。
「へえ、ほにゃららの木ね。で、なんて読むの？」
（さらさら）もみのき。
「ああ、もみのきね。知ってる知ってる」
（さら）そう。
「ツリーとかに使われる木でしょ？」
（さら）そう。
「こういうのがあると気分が盛り上がるよね」
（……さら）そう？
「そうでもない？」
（こくん）
「じゃあ、どんなときに盛り上がる？」
（さらさらさらさら）（チキンとケーキの絵）。
「まあそんなとこだろうと思ったよ」
「ほう？」
「パンくわえたまましゃべらない！」
（……さらさらさらさら）はーい。でもこれ面倒。
「ならさっさと食べるなりすればいいでしょう」
（さらさらさらさらさらさら）これが私の勉強スタイルなので。
「せめて、ガムを噛むとか飴玉でも舐めるとかさあ……」
私は眉を顰めて露骨に嫌な顔をした。（さらさらさら）せめてココアシガレット。
「……あんた、成績いいし髪型も優等生風なのに、あとはそういうとこだよね……」
（さらさらさらさらさらさら）さとーも意外と常識人。ギャップ萌え♡
「……はいはい。まあほどほどにね」
佐藤が立ち去った後の机の上の余白には、冬季限定トッポの箱が残されていた。中身はまだ見ていない。
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