半蔵門かきもの倶楽部コミュの第四十一回　コヤンイ作　『スターウォーズ　帝国の逆襲の続き』

帝国最大の兵器にして、その象徴でもあった要塞デススターを破壊された帝国軍は、全精力を傾けて反乱軍殲滅に動き出した。その結果、デススター攻略の英雄ハン・ソロは捕われ、タトゥイーンのジャバザハットの元へ送られ。ルーク・スカイウォーカーは、ダース・ヴェイダーとの一騎打ちに敗れ、片手を切り落とされながらからくも逃げ延びた。反乱軍は散りぢりになり帝国軍の執拗な追撃によって各個撃破されていき、ついに軍としての行動は絶望的なまでに追い詰められ、生き残った者たちの最後の手段は、皇帝暗殺を計画することしか残されていなかった。

自然と瞼があがり、目の前の情景が様々な音とともに蘇った。
「ルーク、最早おまえは立派なジェダイじゃ」
草の上に結跏趺坐するルークの目の前には、地面についた杖の上端を両手で支えたヨーダが岩の上に座っていた。
「マスター・ヨーダ、ぼくは強くなったのでしょうか、まるで実感がわかないのですが」
ヨーダは目を細めながらこう言った。
「わしが教えることはもう、なにもない」
そのとき、ルークの背後鬱蒼と茂る木々の中に、一人の若い女が現れた。黒い髪を長く垂らし、緑の瞳をしたその女は、ゆっくりと二人のジェダイに近づいてくる。
「お前の知り合いかな。」とヨーダ
「あなたの後にも」
ヨーダの背後にもまったく同じ容姿をした女が現れて、二人の方に近づいてくる。
ルークはスルリと立ち上がり、前と後ろ、どちらの女に向けるでもなく問いかけた。
「誰だ？」
二人ともなにもこたえない。ただ微かな笑みを浮かべるだけで、少し距離をおいて二人同時に立ち止まった。
「グランドマスター、お目にかかれて光栄です。」
ヨーダの後ろの女がそう言った。
「お二人には私どもとともに来ていただきたいのです」
ルークの後ろの女がそう言った。
「御嬢さん方、どうやら理力を使えるようだが、どこの誰ともわからないお人の言うことを、ホイホイ聞くほどジェダイはお人よしではないぞ」
女の一人が言った。
「わたしどもはモン・モスマの使いの者です」
「モン・モスマじゃと？」
ヨーダは目を瞠った。モン・モスマは反乱軍の最高指揮官であり、ヨーダとは旧知の間柄であった。
「すると、そなたらはジェダイオーダーに属さぬ、モン・モスマ手飼いのフォース使いというわけか、だとしても理力を授けてくれた者がいるはずじゃ、師匠は誰かな？」
二人の女はいたずらっぽく顔を見合わせながら
「ヴェイダー卿、と言ったらどうなさいます？」
ルークが表情を変えた、
「シスということか」
ヨーダは片手を上げてルークを制すと
「モン・モスマの使いであるという証拠は？」
ヨーダの背後の女が言った。
「長耳のおちびちゃん、ご機嫌如何？」
ヨーダの耳がピンと伸びて目がまん丸く見開いた。
「ほほう、その呼び方は彼女しか知らないはずじゃ」
「マスター！」
再びルークにたいして手を上げると
「で、師匠がダース・ヴェイダーだというのは？」
ルークの背後の女が話し始めた。
「わたしたちは幼いころ、かれに拾われ育てられ、理力の手ほどきを受けました。皇帝には内緒で。マスター・ヨーダもご存じの通り、シスは誰も信用しません。自分のマスターすらも、父もそうでした。あっ私たち二人はヴェイダー卿のことをファーザーと呼んでいます」
ちらっとルークを意味ありげに見ながら
「実際わたしたちは、かれのことをそう思っています」
「その父のために反乱軍にスパイとして潜り込んだというわけか」
「いいえ、父にはなにも言われていません。父はわたしたちが理力を使えるようになったら自由に生きよ、と言ってくれました。モン・モスマの元に居るのはわたしたちが面白そうだと思ったから」
悪戯をする子供のように、二人は笑った。
「そして、いずれ皇帝にとって代わるための道具に使われるのじゃな」
「そうかも知れません、でも、だとしてもわたしたちが父を父として慕う気持ちは変わりません」
ヨーダの背後の女が言う
「ねえ、マスター・ヨーダ、わたしたちはシスでしょうか、それともジェダイでしょうか」
ヨーダはそれにはこたえず。
「御嬢さん方、お名前を教えてもらえるかな？」
「わたしはパドメ、もう一人はアミダラよ」
ヨーダは静かに目を瞑り、小さなため息をついた。

がらんとした何もない空間のはるか向こうに玉座はあった。
「よく来たな、若きジェダイよ、遠慮なく近う寄るがいい」
しわがれた声が広い空間にこだました。
ルークはゆっくりと歩き出す。白い服、白いマントで右の腕はマントに覆われて見えない。
カツン、カツンと足音が広い空間に響き渡り、ルークはやがて玉座の足元に着いた。
玉座は十段ほどの階段の上にあり、黒ずくめの男は満足そうにルークのことを見下ろし、笑みを浮かべた。その顔は黒くしなびていたが、目だけは赤く爛ランと光っていた。
この広い玉座の間には皇帝とルークの二人しかいない。
「ルーク・スカイウォーカー、お前のライトセイバーを見せてみよ」
ルークは隠れていた右手を挙げて皇帝に見せるとこう言った。
「そんなものは持っていない」
皇帝は首を傾げた。
「お前はジェダイの騎士ではないのか？それとも降伏の証に持ってこなかったのか？」
ルークは笑った。
「ぼくにはもうあんなものは必要がない、だから持っていないのさ」
皇帝は形相を変えた。
「舐めた口をききおって、わしごときは素手でじゅうぶんだと言うのか」
ルークは確りと皇帝の目を見てこたえた。
「あなたはもう、自分の運命をご存じのはずだ」
皇帝は、ライトセイバーから赤い光刃を迸らせると宙を飛んだ。
真っ直ぐにルークに向かって降りてくると同時にその刃を振り下ろした。
ルークは真っ二つになって、その場に崩れ落ちた。筈だった。
「・・・・」
何事もなかったかのように、ルークは皇帝の目の前に立っていた。
皇帝は自分の手のライトセイバーを見てみると、光刃は消えていた。何度もスイッチを押してみたが、なんの反応もなかった。それでも皇帝は慌ててライトセイバーを弄繰り回し、振り回したり、叩いたりして見るのだが、やはりなんの反応もないのだった。
シュバッ、と音がしていきなり赤い光の刃が煌めいたと思うと、ライトセイバーは皇帝の手から落ちて床に転がった。
少しして、同じように皇帝の首が床に落ちた。
それを見て、ルークは踵を返し、出口に向かって歩き出した。
玉座の間を出ると、そこにはダース・ヴェイダーが待っていた。ルークを見るとその前に片膝をついて恭しくうずくまり、自分のライトセイバーを床に置くと、頭を垂れた。
「マイ・マスター」