ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

半蔵門かきもの倶楽部コミュの第31回/まめや作/つきのみみ

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
むかしのむかし、月はミミの星でした。

大きなまるい宇宙の中に、月は浮いていました。
にじいろの海とにじいろの森がありました。
月は、にじいろに光っていました。

月には、たくさんのミミがいました。

まるい透明のからだは、海と森の色に染まっていました。
きらきら、にじいろのからだです。
まる粒の耳と目と鼻と口が、まるいからだについていました。
手と足は、ちょっと大きなまる粒でした。

ミミは、「生きる」をしていました。

地球は、大きなどうぶつと小さなどうぶつの星でした。

ミミは地球から届く声をまる粒の耳で食べます。
そして「ミミミ」とまる粒の口を動かします。
これが「生きる」です。

「ぼくは駆け足をすると、長い鼻につまずいちゃうんだ」ゾウの声です。
「ミミミ」
「ともだちとからだを近づけるとくっついてひとつになっちゃうんだ」ナマコの声です。
「ミミミ」
「わたし右足を使いすぎて左足を持っていることを忘れちゃうの」フラミンゴの声です。
「ミミミ」
たくさんのミミが月の上で「生きる」をしていました。

ある朝、地球ににんげんが生まれました。

地球の声は、とてもとてもにぎやかになりました。
ミミたちはいっしょうけんめいに「生きる」をしました。
「どうか雨よ降っておくれ」
「お腹がぺこぺこだあ」
「それは、なりません」
たくさんの声が地球からやってきました。
いつの間にか、にんげんの声だけが届くようになりました。
月の上はにんげんの声でにぎわって、ミミたちはどの声を食べたらいいのかわからなくなりました。
月の端っこに座って、やってくる声をひとつひとつ食べることにしました。
ある朝、ひとつのミミが月の端っこから落ちてしまいました。
つぎの朝、またひとつのミミが落ちていきました。
どんどん、たくさんのミミが落ちていきました。

あるミミが落ちた地球は、とても暑いところでした。
ミミのからだは、黒くなりました。
あるミミが落ちた地球は、とても寒いところでした。
ミミのからだは、白くなりました。

ミミは地球の上でも、たくさん「生きる」をしました。
けれど、にんげんの声は少なくなっていました。

にんげんの声は、にんげんの元へ届いていたのです。

ミミは、にんげんの元へいかない声を探しました。
まる粒の耳をうんと伸ばしているうちに、耳は細長いかたちになりました。
まる粒の目をうんと使っているうちに、目は赤くなりました。
ちょっと大きなまる粒だった手と足は大きくなって、ミミはたくさん動けるようになりました。

にんげんの声がしました。
「本当は違うんだけど」
「もうすぐ明日になっちゃうよ」
「もう、いいかなあ」
ミミに届く声はちょっとだけしょっぱい味がしました。
「ミミミ」
ミミは地球の上で「生きる」をしています。

ミミのいなくなった月は、海と森が消えていました。
月はただのまるい星になりました。
白く輝くまるい星です。

地球の空の遠くの遠くの空に浮かんでいます。

白い月には、地球のミミの姿がうつっています。

ミミはいっしょうけんめい「生きる」をしています。

コメント(9)

動物のこえはなんで聞こえなくなってしまったのでしょうか。
そのあたりもの悲しい感じがします。ミミがなにか、具体的に言わないところがいいですね。
「生きる」をする。まめやさんらしい表現が興味深くステキです。
上質な童話という感じで、まめやさんワールドの奥行きを堪能しました。
とても可愛い作品だと思いました。
ぜひこれを童話にされたら良いんじゃないかとも思いました。毒が入ったり、実は裏があったり、という事がなく、純粋なタッチで人間の明るさも暗さも描けているのがいいと思います。
ちょっともの悲しい感じがしました。
ゲームアプリで、ひとりぼっち惑星というのが
あるんですけど、そんなイメージです。
ミミはウサギで再生しました。

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

半蔵門かきもの倶楽部 更新情報

半蔵門かきもの倶楽部のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。