君は、美というものはいつまで残ると思う？
生まれたての赤ちゃんが可愛いという感情に関しては僕は理解することができないけれども、多くの人が共有しているものだということは何の疑いようもない。男性と女性の差はあるにしろ、若い頃というのは誰だって美を持っている。もちろん顔に美醜もあるし、立ち振る舞いや育ちの良さというものもあるのは重々承知だけど、でもそんな醜いとされるものが好きって風変わりな人も世の中にはたくさんいるからね。
若さを失いつつあるといっても、壮年の魅力というのも結構あるものでね、最近知り合ったまだ二十歳の女の子なんて円楽が好きなんて言ってたからね。円楽だよ？ 笑点に出ている60を超えたお爺ちゃん。まあ、若々しいから60代には見えないけど。
女の子？ ……ふふふ、うん、まあね、家に連れてきちゃった。その後は言わないでもわかるでしょう？
話を戻すけれどね、男性ばかりじゃないよ。AVコーナーに入れば60代のおばあちゃんのAVもこの間見つけたからね。需要があるものだなぁ、と感心はしたけれども、僕が欲しいビデオはなかったからまあ、どうでもいいや。
じゃあ、問題はその後だ。
80代、100歳になってもその人間には美は宿るのか？
まあ、この場合の美の定義付けが難しいけれど、まあいいや。そこは今語りたいことではないんだよ。
僕はね、やはりその寝たきりのご老体であろうとも、そこに美があると思うんだよね。若い頃のエロスの溢れるような美ではないかもしれなけれども、そのシワクチャの手や虚ろな目の奥に、深遠なる何かが垣間見えるような気がしているんだ……
あ、食事が出来上がったよ。
ほら、今日は牛肉のステーキだよ。さすがにA5ランクなんて高級肉ではないけれど、霜が乗っていて美味しいそうでしょう？ 一応ブランド物の和牛でね、畜産業をやってる実家から送ってくれたんだ。たまには良いものを食べなさいってね。
僕はこういう肉を見るとヨダレが止まらなくてね。このサーロインの赤い肉の間に白い脂が細かく入っているんだけどね、このドリップが一切流れていないのは切り方が細胞を潰さずに正しく『切る』という動作によって分けられたものだからね。これを熱した鉄板の上に乗せるとやがてじりじりと音を立てて、少しだけキュッと縮みながら、赤い焼かれていない面からじわりじわり赤い肉汁が少しずつ溢れ出してくる。そしてさっと一度ひっくり返すと、焦げ目がつきながらこちらに『こんにちは、美味しく食べてね』と挨拶してくれるんだ。
ここで下手な人は何度も余計に肉に触って脂を落としたりだとか、肉の焼き加減にムラを生み出してしまうから、僕は他人と肉を食べに行くときでも素人には一切触らせないよういしている。髪や服を一生懸命セットしているにも関わらず、不用意に触られたら誰だってイラッとするだろう、それと同じさ。
そしてここから大事なのは中に火を入れすぎないことだ。肉を焼くという行為は、科学的に言うならば外側のタンパク質を熱により凝固させて、中の肉汁を閉じ込めることにある。水分がなくなってしまったカラッカラのパサパサした肉なんて誰も美味しくないってわかっているのに、下手な連中は食中毒を怖がって相当長い時間、強い火力で焼いてしまうから困ったものだよ。
もちろん僕は霜降り肉しか認めないわけじゃないし、特に牛なんてものは捨てる部位がないものだから、実家で専門の業者が解体した牛を一頭丸々買い取った時があるんだけど、その時は成肉はもちろんのこと、内臓も骨もスジも全て平らげた上に、皮を剥ぎ取って部屋に飾っていたものので、こんな脂身が一切ない赤身の肉も美しいから君に見せたいくらいでさ、焼き上がった時後の写真を見れば分かるけれど、外側が強めの火力を使って短い時間で焼かれていくから表面は黒くなっているけれども、切ると中身が真っ赤でそのコントラストも綺麗なものでね、もちろんホルモンなんて一見グロテスクな見た目をしているし、ハチノスと呼ばれる牛の第二の胃なんていうのはその名の通り鉢の巣に見えるんだけど、ここがコリコリとしていてまた美味しいし、しかも生でも食べられると来た日には嬉しいものでね、他にもスープ用の真っ白の中に少しだけ肉の赤が染み付いた骨なんて見ているだけで僕は興奮してくるね。
……あ、ごめんごめん、語りすぎたね。ご飯、食べようか。
続きはこちら
<閲覧注意！！>
許可者以外は見れませんので、読みたい方はゆう宛にメッセージ等を送ってください。
http://
生まれたての赤ちゃんが可愛いという感情に関しては僕は理解することができないけれども、多くの人が共有しているものだということは何の疑いようもない。男性と女性の差はあるにしろ、若い頃というのは誰だって美を持っている。もちろん顔に美醜もあるし、立ち振る舞いや育ちの良さというものもあるのは重々承知だけど、でもそんな醜いとされるものが好きって風変わりな人も世の中にはたくさんいるからね。
若さを失いつつあるといっても、壮年の魅力というのも結構あるものでね、最近知り合ったまだ二十歳の女の子なんて円楽が好きなんて言ってたからね。円楽だよ？ 笑点に出ている60を超えたお爺ちゃん。まあ、若々しいから60代には見えないけど。
女の子？ ……ふふふ、うん、まあね、家に連れてきちゃった。その後は言わないでもわかるでしょう？
話を戻すけれどね、男性ばかりじゃないよ。AVコーナーに入れば60代のおばあちゃんのAVもこの間見つけたからね。需要があるものだなぁ、と感心はしたけれども、僕が欲しいビデオはなかったからまあ、どうでもいいや。
じゃあ、問題はその後だ。
80代、100歳になってもその人間には美は宿るのか？
まあ、この場合の美の定義付けが難しいけれど、まあいいや。そこは今語りたいことではないんだよ。
僕はね、やはりその寝たきりのご老体であろうとも、そこに美があると思うんだよね。若い頃のエロスの溢れるような美ではないかもしれなけれども、そのシワクチャの手や虚ろな目の奥に、深遠なる何かが垣間見えるような気がしているんだ……
あ、食事が出来上がったよ。
ほら、今日は牛肉のステーキだよ。さすがにA5ランクなんて高級肉ではないけれど、霜が乗っていて美味しいそうでしょう？ 一応ブランド物の和牛でね、畜産業をやってる実家から送ってくれたんだ。たまには良いものを食べなさいってね。
僕はこういう肉を見るとヨダレが止まらなくてね。このサーロインの赤い肉の間に白い脂が細かく入っているんだけどね、このドリップが一切流れていないのは切り方が細胞を潰さずに正しく『切る』という動作によって分けられたものだからね。これを熱した鉄板の上に乗せるとやがてじりじりと音を立てて、少しだけキュッと縮みながら、赤い焼かれていない面からじわりじわり赤い肉汁が少しずつ溢れ出してくる。そしてさっと一度ひっくり返すと、焦げ目がつきながらこちらに『こんにちは、美味しく食べてね』と挨拶してくれるんだ。
ここで下手な人は何度も余計に肉に触って脂を落としたりだとか、肉の焼き加減にムラを生み出してしまうから、僕は他人と肉を食べに行くときでも素人には一切触らせないよういしている。髪や服を一生懸命セットしているにも関わらず、不用意に触られたら誰だってイラッとするだろう、それと同じさ。
そしてここから大事なのは中に火を入れすぎないことだ。肉を焼くという行為は、科学的に言うならば外側のタンパク質を熱により凝固させて、中の肉汁を閉じ込めることにある。水分がなくなってしまったカラッカラのパサパサした肉なんて誰も美味しくないってわかっているのに、下手な連中は食中毒を怖がって相当長い時間、強い火力で焼いてしまうから困ったものだよ。
もちろん僕は霜降り肉しか認めないわけじゃないし、特に牛なんてものは捨てる部位がないものだから、実家で専門の業者が解体した牛を一頭丸々買い取った時があるんだけど、その時は成肉はもちろんのこと、内臓も骨もスジも全て平らげた上に、皮を剥ぎ取って部屋に飾っていたものので、こんな脂身が一切ない赤身の肉も美しいから君に見せたいくらいでさ、焼き上がった時後の写真を見れば分かるけれど、外側が強めの火力を使って短い時間で焼かれていくから表面は黒くなっているけれども、切ると中身が真っ赤でそのコントラストも綺麗なものでね、もちろんホルモンなんて一見グロテスクな見た目をしているし、ハチノスと呼ばれる牛の第二の胃なんていうのはその名の通り鉢の巣に見えるんだけど、ここがコリコリとしていてまた美味しいし、しかも生でも食べられると来た日には嬉しいものでね、他にもスープ用の真っ白の中に少しだけ肉の赤が染み付いた骨なんて見ているだけで僕は興奮してくるね。
……あ、ごめんごめん、語りすぎたね。ご飯、食べようか。
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