ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

半蔵門かきもの倶楽部コミュの第16回 たかーき作「кукла кокэси」(未完です・・・)

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
Соняお姉ちゃんの真っ赤な唇が白いカップに、接触する。
やわらかい唇は、ふにゃってなって、硬いティーカップにその唾液が、ふわってくっつくのを、僕は見てる。
白い手を傾けて、Соняお姉ちゃんの口の中にその赤い水は流れ込んで、姉さんの金髪がはらりと揺れる。
それで唇が、その硬くて美しいティーカップを離れる。

僕は、テーブルに置かれたそのティーカップの、お姉ちゃんが口をつけていたところを見る。
でも、あそこに付いた水は、お姉ちゃんの彼氏さんの唾液が混じっているんだ。
ごくり。
最後の1口の紅茶が、お姉ちゃんの喉元を通って過ぎていった音が聞こえる。
真っ赤なイチゴのジャムが入っている、紅茶。
お姉ちゃんの体温より、ほんの少しあったかい、紅茶。
僕は音で、それがわかる。
まぶしいお姉ちゃんの顔が僕を見る。
「Таро、ずっと見てるわね」
Соняお姉ちゃんは、ロシア語でそう尋ねた。

男の人の手より、女の人の手は小さい。
僕の手はお姉ちゃんの手より小さい。

お姉ちゃんの顔が笑うと、その周り全体に花が咲く。

空になったティーカップ。お姉ちゃんは右手の人差し指一本を、その白くて細い指一本をティーカップの取っ手に引っ掛けて、遊ばせてる。
「面白い形ね」
お姉ちゃんが見てるのは、僕が手に持っている木の人形。
日本旅行で買ったそれは、кокэсиという名前の人形。
「Таро、それはどうして、そんな形なの?」
お姉ちゃんは言う。

Соняお姉ちゃん。

「Матрёшкаって、кокэсиが元になってるんだってね」
僕は、答えになっていないことを答えた。
お姉ちゃんはテーブルから、椅子を引き、立ち上がった。
僕の身長よりも高い、お姉ちゃんの体全体が、僕の座っているソファーに向かって歩いてくる。
「へえ、そうなんだね?こんな形なのに」
そして、そのお姉ちゃんの、僕にとっては大きな体が、僕の隣に。
「日本のお人形って素敵ね。この、細い線で描かれた、目がかわいいの」
お姉ちゃんはそう言った。
「ねえ、この凛としてる表情。それに、鼻が小さくて可愛い。体だって、まっすぐに見えるけど、実は曲がってて、ほら、それに胴体に書かれたイチゴジャムのように赤いお花がね。とても繊細なの。」
確かにкокэсиの胴体には、赤い花の模様が描かれていた。

でも僕には、そのお姉ちゃんの目の方が、何百倍もかわいい。
その笑った時に目を細めるしぐさが、すごくかわいい。
кокэсиの胴の花より、お姉ちゃんの唇の方が、ずっと綺麗だ。

кокэсиのなにが美しいんだろう。
こんなもの。貧乏くさい。
色が、木の色だ。お姉ちゃんの肌のように、透き通る真っ白じゃない。
どっちか言うと、僕の肌みたいな色。
白くない。黄色っぽい色。
どうせ、白い肌の方が綺麗なんだ。黄色い肌は、綺麗じゃないんだ。だから僕は、お姉ちゃんにとって、可愛くない。
кокэсиが、いいなんて、思ったことない。
お姉ちゃんは、本当にкокэсиがいいと思うのかな。
「ねえ。Таро。東洋の人って、とても面白い感性を持っているね」

Соняお姉ちゃん。


その夜もお姉ちゃんは、どこかへ行った。
だれかの、家に泊まるんだ。
お姉ちゃんの美しい白い肌は、白い肌を持っている男の人のもの。
でも僕は、кокэсиと同じような色の肌。

お姉ちゃんは、кокэсиを可愛いと言った。
僕は、お姉ちゃんを可愛いと思う。
お姉ちゃんの男の人は、お姉ちゃんを可愛いと思っている。
お姉ちゃんも、その男の人を可愛いと思っている。
お姉ちゃんは、僕を可愛いと思うのかな。

僕は、кокэсиと同じ肌の色。

そんなкокэсиが腹立たしくなって、僕はいたずらしてやることにした。
そいつの目に、ペンで落書きをした。
蛇の目のように、大きなまん丸の中に一つの点を描く。それも、左右で違う大きさ。
鼻には、接着剤をつけて、三角形の木片を、べちゃってくっつけてやった。

ワッハッハ!
кокэсиはなんだか間抜けな顔になった。
なんだこれ、僕より、ずっと醜いじゃないか。
僕はкокэсиをみてずっと大笑いしてしまった。これでкокэсиは、全然、可愛くない。

僕はこれで、気分がよくなったので、なんだか眠くなって寝てしまっていた。
枕元に、そのばかげたкокэсиを放り投げた。

そして、暗闇の中で、どこからか日本語が聞こえた。

ダレガ コンナコト シタン

その声はそんなことを言ってる。
ノーマルな日本語の、アクセントじゃない。

ダレヤ コンナンシタン ダレヤ

声は僕のすぐ近くで聞こえたが、やがて、遠ざかっていった。
何だったんだろう?あの声は?
すると、台所の方から、ガチャガチャと音がした。

ハナ ワ ドコヤ メー ワ ドコヤ

声が鳴り止まない。
僕は電気をつける。すると、枕元のкокэсиがいなくなっている。
кокэсиが何か喋っているんだ。

台所に行くと、シンクにкокэсиがいて、そいつは、びしょびしょに濡れながら食器をガシャガシャやっている。

コンナカニ ハナ ワ アルカー

僕はなんか怖くなってきて遠目で見ていた。

アレー ダレカ オルン?

その不思議な日本語を喋るкокэсиの、その変な顔が僕を見た。

ハナ シラン?

知らんか、つまり知っているかと言うことだと思った。
花?なんの花を探しているんだろう。

ホンマニ? ハナ ヤデ?

「花なら、君の胴体に付いている」
僕は日本語で、そう答えた。
кокэсиは、自分の胴体に描かれている、紅茶に入れるイチゴジャムより鮮やかな、花の模様を気に入らないのだろうか。

モー イマ ソンナン イランワ ソンナ オモロナイ コト イウテル バアイチャウ

кокэсиは、その蛇の目のような左右の目を赤くした。
オモロナイ、とはどういう意味なんだろう。わからないが、それは深刻な意味なんだろうか?

コンナ ハナ ツケタン ダレヤ イウテンノ ナンデ コンナン ナットン?

кокэсиは、目を真っ赤にして怒った。
わかった。僕はハナとは、цветокのことであると思っていたが、носのことを言っているのだ。日本語で、その二つは同じ言葉だ。僕があの、おかしな木片を顔につけたことを怒っているのだ。
オモロナイという日本語は、ふたつの違うものが、同じ言葉であるという意味なのだろうと思う。

кокэсиは、いつの間にか、鼻につけた木片まで真っ赤にしている。
なぜ勝手に色が変わるんだろう。不思議な人形だ。

モウ エエワ!

кокэсиはそのまま玄関の方に飛び跳ねて行った。
僕は慌ててкокэсиを追いかける。
しかし、ドアのところに行くと、そこには何もなくなっていた。
ドアを出て、外に飛び出したのだろうか。
しかしドアの、取っ手を見ると、そこにはおかしな三角形の、白いものがついていた。

かすかに赤みがかっているが、それは白い色だった。
なんだろうか、これは。
やわらかそうで、その右と左に、穴が開いているのだ。

鼻?

なぜ、ドアに、取っ手のところに、鼻が付いているのだろうか。
僕はその、二つの穴をのぞこうとした。
すると、何が起こったのか、僕はその二つの穴から急激な、強い力が、僕を吸い込んだ。
あれ?僕は体が小さくなっていく。
その小さな、鼻のようなものの、左側の穴に、僕の体が、すーっと、自然に、入っていった。
僕はその力に、強く引き込まれていった。



なんだろう、ここは。
真っ暗だ。
さっき、左の鼻の穴の中に入っていった。
でも、僕が一歩を踏み出そうとすると、そこには確かに地面があった。
僕は歩ける。

僕は、前を見た。
真っ暗な中に誰かが、向こうに向かって走っている。
Соняお姉ちゃんだ。

お姉ちゃん!
僕は叫ぶとお姉ちゃんは足を止めた。お姉ちゃんは僕を見た。
「таро?」
暗闇でもよく分かった。綺麗な、まぶしいお姉ちゃんの白い顔。
でも、
よく見るとお姉ちゃんの鼻は、とても大きい。
お姉ちゃんの鼻には、кокэсиにくっつけたのと同じ、あの木の木片がくっついていた。
黄色の、木片が。
僕の肌の色と、同じ。
「お姉ちゃん、何?その鼻」
「таро、鼻がどうか、したの」
あんなにきれいなお姉ちゃんが、ふざけているのかって思うくらい、ばかばかしい大きな木片を、鼻につけているんだ。
お姉ちゃんは、右手の指に、空っぽのティーカップをぶら下げて、遊ばせている。

「お姉ちゃん、そのティーカップ、何してるの?」
僕は、そのティーカップについて質問した。
「日本語では、『コウ チャ』、赤い茶というらしいわね?」
お姉ちゃんは唐突に、そういった。
「『коу ча』?」
僕は聞き返す。
「そうよ。коуは、赤よ。чаは、茶ね。」

「紅茶には、真っ赤なイチゴジャムを入れるの。
紅茶はいい匂いなの。
だから紅茶に、鼻を入れるの。」
「ええ?」
僕は、お姉ちゃんの言っている意味が分からなかった。
お姉ちゃんは、紅茶のティーカップを、自分の鼻を覆うように当てて、顔ごと、上に向く。
自分の顔の上に、ただ、ティーカップを載せているだけで、取っ手で押さえているだけだ。
スーッ。
お姉ちゃんは上を向いたまま、音を立ててティーカップの中で、鼻で息を吸った。
その音が、ティーカップの中で共鳴して、響いて聞こえてくる。
スーッ。

「お姉ちゃん、何してるの?」
「таро、紅茶は、赤い茶なのよ。だから、私のイチゴジャムを、紅茶に入れるのよ」

お姉ちゃんは、鼻の上にティーカップを載せながら、喋った。
その喋り声が、ティーカップの中で共鳴して、響いて聞こえてくる。

お姉ちゃんは、紅茶のカップの中に鼻をつっこんでいるだけだ。
スーッ。
紅茶なんて入ってない。音がするだけだ。

僕はお姉ちゃんがおかしくなってしまったのだと思って、とても、怖くて、泣きそうになった。
僕が、кокэсиに変なことをしたから、お姉ちゃんが、狂ってしまったんだ。
そんな僕の隣を、ピョン、ピョンとはねていくのは、さっきのкокэсиだった。

ドコヤ ハナ サン ドコ イッタン オラヘンナラ オラヘンテ ヘンジ シー

あれ?と、僕は思った。
кокэсиがここにいたなんて。

「Мистер кокэси!」

僕はкокэсиに呼び掛けた。
しかし、кокэсиは、返事をしてくれなかった。

ドコヤ ドコヤデ ハナ ドコヤ ワタシ ワ コンナ ハナ イヤヤ

кокэсиはそのまま向こうの方にピョンピョンと走っていく。
と、思っていたら、そのまま回転して、今度は、僕の方にピョンピョンと飛び跳ねながら戻ってきた。

フラワア チャウデ ノオヅ ヤデ フンフンフフン

不思議な日本語を、歌を歌うように喋りながら、僕の横をまた通り過ぎていった。

「кокэси?」

кокэсиに呼び掛けても、どういうわけか、全然振り向いてくれない。
そしてそのまま、僕の後ろをずっと過ぎていく。
と、思いきや、кокэсиの進む速さがどんどん遅くなっていって、кокэсиの体は、斜めに傾いていった。
どうやら、そこに坂があるようだ。

ココ ワ ナンテ サカ デスカ? アカサカ ノギザカ オーサカ マサカ!

やがて、кокэсиは反転して、また僕の方向に向かってピョンピョン進んできた。
кокэсиは、「サカ」とか「ザカ」と付く言葉を何度も言っている。
きっと、日本語で同じ「サカ」が付くけど意味が違う言葉を、たくさん言っているんだ。
さっき言っていた、日本語の、オモロナイってやつだ。日本語の冗談なんだ。オモロナイを使って、日本語の冗談を言ってるんだ。

「оморонаи!」

僕は思い切って、кокэсиに言ってみると、

アー?

кокэсиは、やっと、僕を振り向いた。

「кокэси оморонаи!」

すると、кокэсиは急に怒りだして、

オモロナイ?
ナンヤテ! アンタニ オモロナイ イワレタナイワ!

そういったかと思うと、кокэсиはものすごく怒ってしまって、全身が、紅茶に入れるイチゴジャムのように真っ赤に光った。
赤い光で、地面が照らされて、はっきり見える。
赤い地面だ。
いや、赤い光に当たっているから、赤い地面なのかもしれない。
赤い地面は、本当は、白い地面だ!
つるつるで、それに、よく見ると、おや、曲がっている。
床がくにゃって、曲がってるんだ。それは端の方に行くとどんどん丸くなって、高い壁になっている。
僕は壁の上の方を、見た。
赤い光に照らされて、そこには、巨大な、白い人の顔が、僕たちをのぞき込んでいるのがわかった。
Соняお姉ちゃんだ!

「таро?」
巨大なお姉ちゃんが、僕の名前を呼ぶ声がする。僕のことが見えているんだね?
「Соняお姉ちゃん!」
「日本語では、『コウ チャ』と言うのよ」
「え?」
巨大なお姉ちゃんは、僕の目を見ながら、脈絡のないことを言った。
「коуは、鼻を、という意味よ。чаは、入れる、ね。『коу ча』は、日本語で、ティーカップに鼻を突っ込むという意味なのよ」
「お姉ちゃん!僕が見えないの?」
「だから私は、ティーカップに、鼻を突っ込むのよ」
そのとたん、ティーカップ全体が宙に浮いた。
そして、ティーカップが大きく傾く。僕の下に、お姉ちゃんの大きな顔が見えた。
そのまま僕はお姉ちゃんの、鼻をめがけて落ちていった。

「うわあ!」
僕は体をグルグルグルグル、回しながら、落ちていった。
お姉ちゃんの顔が、僕を見上げていた。
そのお姉ちゃんの、大きな木片でできた、今度は右の鼻の穴に僕は落ちていった。
「うわあー!」
そのまま僕はずっと止まらずに、同じ速さで真っ暗な鼻の穴の中に入っていく。
どこまで進むんだろう。
「怖いよう、お姉ちゃん、助けてよ」
僕は落ちながら、泣き出してしまった。

コメント(9)

大変申し訳ございません。
今回は忙しくて時間もなかったため、非常に中途半端ですが途中で終わります。推敲もできていないし作品の仕上がりとしては微妙です。
不思議の国のアリスみたいな話に挑戦しようと思っていたのですが、どうやら10000字以内ではとても終わらないです。
お目汚し失礼しました。

次回は、前回の続きを書く予定なので、残念ながら今作の完結編は書けないと思います。
こけしが関西弁しゃべるロボットみたいで、いいです。
ロシア語が出てくるので、読みにくいと思ったのですが、そうでもなかったです。
不思議ワールドを牽引している感じ。

ジョニーさんもたかーきさんもロシア語に堪能なら、これは偶然なんでしょうか・・・
>>[2] ありがとうございます。
私はロシア語は全く堪能ではなく辞書を引きながら書いています。肉さんの作品にソ連が出てきたので奇遇だなと思っていましたよ。
今、部屋を真っ暗にしてパソコン画面の光が浮かぶ中で読んでいたのですが、たかーきさんを恨みますよ。
私にはこけしがチャッキーみたいな存在に思えて仕方ないです。寝れなくなったり、トイレに行けなくなったら、すべてたかーきさんの責任です。

冗談はここまでにして(本当は冗談ではないですが)意外とロシア語というのも文脈からわかるものですね。こけしが大阪弁でなければ、もっとホラー感が出たと思いますが、私としてはそうしないでいただき大変ありがたいです。
>>[4]
チャッキーを知らなくてググってみましたが、あーこんな感じだ、と思いました。(^^)
しかし、このこけしはトイレに行けなくなるほど怖いですかね?(笑)申し訳ありませんが私は責任を負えません〜。
この作品も作品で素晴らしいのですが、たかーきさんの、前回前々回の作品と見比べるとなんだかびっくりしてしまいます。不思議です。たかーきさんの頭の中はどうなってるんだろう……
なんと言ったらいいのかわからないんですが、たかーきさんは登場人物の目になるのがずば抜けてるんじゃないか、と感じました。しかも、そんな登場人物にもなりきれるような……。登場人物の価値観や物の見方など、あまり意識しなくても切り替えて書いてるんじゃないかなと感じました。
入り込みながらも客観的な作者としての視点も失わないから、「面白い!」と感じるものが書けるんじゃないかと思います。
前回の作品は、その登場人物としての視点と、作者としての視点が、なんだかとても近い感じがして、物語と言うよりも、誰かの日記を盗み見ている感じがして、照れくさく思いました(でもこれは、悪い意味ではないのです)
ふわふわした感想ですみません。率直にそんなことを感じました。
僕も関西弁の感じが好きですね。ホラーと滑稽の間のバランスを絶妙に保っている気がします。やじろべえみたいに。さらに、不条理な展開をするので、そこでも関西弁が現実味と非現実さの間を取り持ってくれていると思いました。
鼻が木に変わるのも、アリスっぽくて好きです。
キリル文字が読めませんが、独自の世界を堪能しました^_^

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

半蔵門かきもの倶楽部 更新情報

半蔵門かきもの倶楽部のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。