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半蔵門かきもの倶楽部コミュの初投稿:超短編です

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はじめまして、廣瀬と申します。
文章の書き方、ルールなどは分かりませんが毎日日記のように短編を書いています。
その中のいくつかを時々投稿させて頂けたらと思い、コミュニティーに参加しました。
どうか、よろしくお願い致しますm(_ _)m

2013.7.12の日記より

「巨眼」

 中学生になって初めての夏の授業中、私は教室の中央に位置する席から外を眺めていた。
 私と窓の間には四列分の隔たりがあったが、私には眼前に窓ガラスがあるように感じられ、夏の強い日差しに瞳を焼かれぬよう、目を細めた。
 しばらくそうしていると、誰かが声をあげた。
「こいつ目を開けて寝てるぞ」
 退屈な授業中のささやかなイベントに教室は沸き立ち、数人が教師の静止を無視して私の前へ来て、顔を覗き込んできた。
 もちろん私は寝ていなかったし、すぐに否定することもできた。一言「起きてる」と言えば良かったのだから。しかし、私はどうしても寝ていることにしたいと思った。
 閉じかけた細い視界の先に見えているお調子者達に、負けたくないような気がした。
 薄く閉じたとはいえ瞳は乾き、自然と涙が出てきて、目の前がぼやけた。
「なんか、こいつ泣いてる!夢で泣いてる!」
 私の顔を覗き込んでいた連中が、更に近づいてきた。顔に息がかかるほど接近してきた時、私の視界は相手の目だけでいっぱいになった。
 私は「負けるものか」と、心の中で必死に繰り返し、寝たふりを続けた。
 一人、また一人と私に興味を失い自分の席に戻って行った。しかし、目の前の瞳だけは私を見続けていた。私の、狭い世界を埋め尽くす目が、私に問いかけた。
「いつになれば目を閉じるのだ」
 私は声に出さずに答えた。
「あなたがいなくなるまで閉じないわ」
 蝉さえ鳴くのを諦めた、酷暑の日の出来事だった。

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