「それ、は23日に必ず起こる」
「しかし、それ、を避けるための策があるからこそ、ここで話し合っているのだろう」
「むろん、我々が人知れず行ってきた策の数々により、今こうして平和が保たれている」
「平和、というのはどうだろうか。軽犯罪から他殺自殺……そういった類のものをこの国から消すことはできていない」
「私もその意見には賛成だ。しかし、今の我々の役目は違う。わかるな？」
「人の役目はそれぞれ異なる。今の我々の役目は、それ、を避けるための策を講じて成功させるだけだ。異論はない。どうだ？」
「君達の言う通りだ。ただ、この会合の正確な内容は記録しておいてほしい。もちろん、秘密裏に」
河野に視線が送られる。
大丈夫だ。議事録係に任命されて一年弱、会議での発言自体はテープレコーダーに自動録音されているし、発言者の名前とその表情のチェックなどにも慣れてきた。
そして、それらの業務が全く日の目を見ないことに対する違和感もなくなった。
「それで、今回はどういう方法を採るんだ？」
「我々の、river areaの新たな一員となる者にその任を果たしてもらう」
河野は耳を疑った。
新たな一員、ということはriver areaの、いや、river area が含まれるばかんとう州自体の本当の価値を知らないのではないか。
「それ、と彼の関係性でもあるのか？」
「ああ。対象者は、首都のへそ、の近くに住んでいる。両親は首都とは無関係の出自であるのと同時に、対象者自体は生まれも育ちもそのareaだ。そして、ばかんとう州の一員としての招待状を受け取ったあと、招待式会場の最寄の駅の終電や居酒屋を調べている」
「居酒屋……？」
女性議員たちからクスクスと笑い声が漏れる。
「ゴホン。つまり、ばかんとうの一員として他の人財とうまくやっていきたい、という意志の表れだということだ。以上」
河野は自分のことを振り返る。
ばかんとう州はriver areaで生まれ育った自分が、ちょうど一年前の招待式において、その地元の本当の意義を知ったとき、両親からどのような意図で自分を育てたのか告げられたとき、の身震いを思い出す。
首都のへそなんかでゆるく暮らしてきた後輩……彼が、それ、を避ける技術でも持っているのだろうか。
「河野くん」
「……は、はいっ！」
「君に対象の女性の履歴書などを渡すよ。我々の策通りにうまく動いてくれるといいんだが」
「何かあったときにカバーするのは君だ、河野くん。彼女を見失いでもしないように、写真を目に焼き付けておくんだな」
「去年river areaにトップの成績で入った君には、何の問題もないだろう」
「頼んだぞ」
「河野くん」
＊ ＊ ＊
庁舎を出てバス通りを歩き、商店街を抜けると、リバーステーションが見えてくる。
国鉄の線路を陸橋で越えた先のタワマンの一角が、河野の家だ。
母のおかえりがいつもと違って聞こえる、と感じるのは気のせいだろうか。
「俺、部屋でちょっと仕事して、８時くらいにご飯食べるから」
「えぇ、今日はお父さんも早く帰ってくるつもり、って言ってたわよ」
怪しい。
河野の胸中に、またもや疑念が沸き上がる。
どうも、この仕事を始めてから、人の言動の裏ばかり見ようとしてしまう。
高ぶった気持ちを収めようと、議員から手渡された書類に目を通し始める。
名前：田中直子
平々凡々な名前だ。
年齢：平成23年4月1日時点で23歳、つまり河野と同い年だ。
そこでいっきに学歴の欄に目を動かす。
高校卒業、大学入学が同年、大学卒業見込23年3月。
ということは大学に5年いたのか。
ここでようやく写真を見ようという気になる。
田中直子は、顔も平々凡々だった。いや、いわゆる「中の下」だろうか。
もしもその顔から美しさを見つけようとするならば、就活用にあえて出しているのかもしれない眉毛が、石原さとみのそれに見えなくもなかった。
建物の廊下から足音が聞こえた。
「ただいまー」
声がするのと同時に、玄関のドアが開いた。
早い、まだ６時半すぎだ。時計に目をやった途端、体が動き出していた。
「おかえり、父さん」
河野家の主は国鉄の本社に勤めている。
この時間に帰宅するとは、終業時刻ピッタリに会社を出てきたに違いない。
「鉄男、俺、今から夕飯にしてもらおうかと思うけど、一緒にどうだ？」
ほら来た。
お前の父ちゃん鉄道マニアなのかと小さい頃散々いじられたのに反抗して、それほど親しい父子を演じてはこなかった父親が、どういう想いで息子の名前をつけたのか、今ならわかる。
「ああ、いいよ」
ありふれた名前をした田中直子が、少しうらやましくなる。
でも、彼女もまた、両親の想いによって名づけられたに違いない。
上着だけを脱ぐだけしてテーブルについた父は
「田中……直子さんのことでなんだ」
と、マンションの壁とカーテンを透視してでもいたように言う。
もし自分がまだ履歴書を読んでいなかったら、どうしたのだろう。
河野……いや、鉄男は冷静さを装って返す。
「ああ、今日議会のラストに言われたよ。俺ならできるって。彼女が、それ、を避ける上でのカバーが」
学生時代のアルバイトでは個人情報を口外してはいけないし、家に丸々持って帰るなど論外だと言われてきた。
鉄男自身もそう思っていた。
しかし、river area で勤め始めると、「そんなこと何でもない」ということがわかってきた。
首都を管理し、守る。
そのために多少の犠牲はつきものだ。というのが一般的な議員の見解らしい。
「鉄男も、もうそろそろ社会人2年目になる。今回のことはこれからもriver area、ひいては、ばかんとうで働くのに役に立つだろう」
「俺は……具体的なことはまだ何も知らされていないんだ。23日に起こる、それ、を避けるとしか。そんな俺に一体何ができるんだ？」
同期の話をたまに聴く。
いやどの会社との交渉があっただの、州内の他のarea に出張しただの。
鉄男は1位の成績でriver area に入ったはずなのに、そういう具体的な仕事は何一つやってこなかった。
来る日も来る日も、ただ会議に出て議事録をつくるだけ。
会議の内容も暗示に満ちていて、その作業が重要だということ、その仕事を任されるのはおそらくエリートコースなのだろう、ということはわかっていた。
しかし、river area に生まれ育ったものとして何かしたい、自分も首都を守るのに加わりたい……その使命感のやりどころがなかった。
「鉄男、今回の件については俺が説明する。大丈夫、全てriver area の社会人がやってくれる。お前はそれを見て学べばいいだけだ」
「俺は見てるだけでいいなんて……田中直子はどうなるんだ？ 彼女に一体何をやらせるんだ？？」
議員から渡された書類には履歴書の他に入庁試験の成績表もあった。
彼女は、繰上げ合格だった。
写真を見るより前に成績表を見るなんて、自分はどうかしているのかもしれない。
同期と同じように自分も何かしたいという気持ちと、自分が本当にばかんとうでやっていける人財なのだろうかと疑う気持ちの、板挟みになっている。
「すべては大いなる善のために、個は全体のために」
＊ ＊ ＊
23日、田中直子はリバーステーションに少々衰弱した様子で降り立った。
あれが田中か……。
河野は頭の中にインプットした履歴書の写真を思い浮かべる。
写真とは異なり前髪を下ろしている。
そのため、履歴書で唯一高評価を下せた眉毛はよく見えなかった。
しかしこの時間だ。
入庁にあたっての説明会場へは、徒歩では間に合わないだろう。
初めて降りる駅だからか、田中は、改札から続くペデストリアンデッキから地上へ降りる方法を、なかなか見つけることができないようだった。
「これじゃ説明会が……」
思わず声を漏らした。
河野は父からこの日の予定を聞いていた。
田中にしかできない、いや、河野がやるべきこととは二つある。
まずは、田中直子を19:00まで彼女の自宅の最寄駅・へそステーション（仮名）まで戻さないこと、それに加え、彼女を18:00の時点でセントラルステーションにいさせること、
その二つができないと、それ、は避けられない。
今日の作戦は国鉄の一大プロジェクトとも聞いている。
一体どうすればそれらが可能になるのか、それはわからないが、このままでは想定のタイムスケジュールを大幅に変更せざるをえない、ということだけは理解できた。
改札外、走って行けばすぐに接触できるような位置取りをしていた河野が一歩踏み出したとき、
「私に任せて」
背後から一人の女性が颯爽と歩きだして、田中の方へ行く。
「すいません！」
イヤホンから聞こえてくるのは、さっきの女性とは違う声だ。
これが田中直子の声なのだろうか。
「はい？」
なるほど、リクルートスーツの女性なら、田中にとっては同じく説明会に出席すると思えて声をかけやすいだろう。
「river area 庁舎の説明会に行かれる方ですか？」
「えっと、私はリバー銀行……」
女性は去って行ったが、そうだ、その方向にエレベーターがあった。
遠くからも、田中がエレベーターを視界に捉えたのがわかった。
彼女がダッシュし始めたのと同時に、河野も走り始めた。
イヤホンに別の音が聞こえてくる。
「リバー会館までお願いします」
やばい、タクシーだ。
「はい。今日、何かあるの？」
「river area 職員として4月から働くんです。その説明会に来ました。なんか、river area っておもしろい街ですね。大きなクマの銅像とかあるし」
使い慣れた方法で地上に降りると、
「河野くん、こっち！」
と、手を振る運転手を発見した。
誰が味方なのだかわからない。味方？ そもそも敵なんているのだろうか。
運転手が乗り込んだタクシーに河野も飛び乗ると、またもや田中と田中のタクシーの運転手のやりとりが聞こえてきた。
「river area のタクシーっておもしろいですね、全部黒で。車に乗るのも久しぶり」
「へえ、いつ以来？」
「免許とって、きたかんとう州の親戚の車で練習して以来」
「免許は？ どこでとったの？」
「いわちです」
まずい、いわちなんてドンピシャじゃないか。
こんな疲弊してハイテンションなんかになってる女の子に、首都の危機を回避させることなんてできるのだろうか。
そう思っていると、河野のタクシーの運転手が
「大丈夫、全部調べてあるから」
と言ってきた。
「ここが庁舎だよ」
「うわーおもしろい建物！」
気がつくと、タクシーの中は、ラジオをかけているときのように、田中と彼女のタクシーの運転手との会話で満たされていた。
しかし、改めて自分の生まれ育った街を「おもしろいおもしろい」言われると不思議な気持ちになる。
いや、まあ、実際田中が生まれ育ったnormal area とは異なるからこそ、自分がこうして見知らぬ運転手に名前を呼ばれ、行き先も告げないのに田中直子と同じ場所へ向かっているのだが。
「着いたよ」
前の車が停車し、後部座席の扉が開く。
「ありがとうございます！ 私、これからこの街で頑張ります！！」
びょん、と田中がバッグをつかみ道路に出た。
あ、お金……。
と思っているうちに
「河野くんも、早く行きな」
と追い出される。
説明会の間はイヤホンで会話を聴くだけだ。
田中直子と同じ勤務先に配属予定の、すでにriver area で社会人経験のある男性のピンマイクで声を拾う手はずになっている。
「あのぅ……この時間って……」
ほんの10数分で、明らかに複数人数がいる場所でも田中の声が聞き分けられるようになった。
「あ、紙に書いてあるんですね」
なんだこの子は。
採用試験の一環、クレペリンの結果では、彼女の性格はむらっけが激しい、ということになっていた。
この子は……これからriver area で一緒に働いていく仲間じゃないのか？
こんなんで大丈夫なのか？？
そう思っていたとき、会場のリバー会館から一人の男性が歩いてきた。
「河野くん、彼女、書類をコピーし忘れてしまったみたいなんだ。再締切は月曜、まだ5日間あるけど……」
そのとき河野は悟った。
彼女は、首都のへその近くに住んでいるだけで対象者に選ばれたわけではないのだ。
あれ、によって開催されはしなかったが、招待式の後に飲み会を開こうとしていたこと、終電の時間を調べて同期たちと仲良くやっていこうとしていたこと、その他者志向の精神こそが、今回の任務に重要となるのだ。
「すべては大いなる善のために、個は全体のために」
気が付くと、父親が食事の際にお祈りのように唱える言葉を、河野も自然と口にしていた。
＊ ＊ ＊
そんなこんなで、その後も田中直子の気分の高低は激しかった。
「こんな素敵な方々と一緒に働けるなんて幸せです！」
と感極まって泣きかけたところ、お偉いさんからその興奮の理由を問われ、
「いわちに行っていて、水族館の魚が……」
と、逆に悲しみの感情を露わにした。
お偉いさんと別れ、配属先が同じ数名とだけ一緒になった途端、
「このメンツでよかった！ でも私仕事に耐えられるかわからない」
と言い出したところで、ピンマイクを付けている男性に
「じゃあ4月1日は何時で！ 地元のお菓子を手土産にしよう！！」
と持ち掛けられ、音声は途絶えた。
リバーステーション方面に向かったのは、田中と、もう一人の女性だった。
道を間違えつつも、なんとか、河野がいつも歩いている商店街に辿り着いた。
「あ、あのメアド交換してください。あれ、携帯が見つからないな……10秒で見つからなかったらまた今度で」
というセリフが耳にできるほど近くに寄る。
「見つからない……じゃあ、4月1日にまたお会いしましょう」
そう言って、田中は商店街の本屋に入った。
本屋に寄ることは想定済みだ。
エントリーシートには、気になるニュースのところに「電子書籍について」と書いてあった。
それを目にしたとき、河野は「ニュースの意味を履き違えてないか？」と思った。
案の定、田中は繰上げ合格だった。
しかし試験の成績は今回の任務に関係ない。先ほど河野はそう結論付けたのだった。
本屋のガラス越しに田中の様子を伺う。
ばかんとうとは違い、首都のnormal areaはひょっとすると……と河野が思っていると、
「ごめんなさい。今日は3時にうちの店閉めるの」
と、店のおばちゃんが田中に声をかけた。
「あ、はい……」
河野が、勢いよく店を出る田中に気づかれないようにしていると、商店街の住民たちが話始める。
「全く……計画停電はいつになったら終わるの？」
「雨雲が……雨が降りそう」
商店街を進む田中は更に動揺しているに違いない。
有名ファーストフード店の外装を写メで撮っていた。
帰りはうまく地上からペデストリアンデッキに上れた。
何を思ったか、そこで田中は河野の家のある西口の方に行きかけたが、途端、雨が降ってきた。
おそらく、田中は決して新しい土地を訪れることが嫌いではないのだろう。
最後尾の車両に田中と河野を乗せつつ、ブルーラインは首都へと歩み始めた。
＊ ＊ ＊
ばかんとう州と首都を分けるもの、それはこの川だ。
首都に万が一のことがあった場合、川を越えられるのは、ヘリコプターを持つ一部の要人たちだけ。
そして、無事に避難ができた要人が政を行うのはbakanto area にある副都心、その場合のriver areaの役目は、川の氾濫をせき止めること。
river area と、首都のnorth area は、川の左右の岸に位置し、それぞれ上空に大きな雨雲を造っていた。
ゆるやかなカーブでも、最後尾の車両にはそれなりに重力がかかる。
双子の片割れのようなriver area の雨雲に別れを告げ、ブルーラインは首都に入った。
数個のタワマンしか高層の建物がないriver area とは異なり、north area のレッドステーション付近は高層の建物に満ちている。
田中はこの駅までパワフルラインに乗ってきて、そこから乗り換えたブルーラインで一駅、リバーステーションに着いたと聞いている。
しかし、ブルーラインがレッドステーションに到着しても、一向に降りようとする気配を見せない。
どうしたのだろうか。
そして、田中と河野を乗せたまま、ブルーラインは再び走り出す。
首都の町を走るブルーライン。一見日常の風景だが、今日は、その乗客の一人、田中直子が首都の危機を救わなくてはならないのだ。
いくつかの駅を過ぎ、central area のオータムステーションに着いたとき、田中が動いた。
河野も慌てて車両を降りる。
そのとき、同じ車両の乗客全員が、「頑張れ」という励ましの目を向けてきたような気がした。
自分にできることは、ただ何が起きて他の人がどう対応するかを見届けるだけ。ここで田中を見失うわけにはいかない。
オータムステーションの立体交差するホームをうまくすり抜けると、駅の中心部でフリーマガジンを手提げに入れまくっている田中を発見した。
「オータムステーションを降りると、人は持ってきたカバンを重たくしたくなる」という都市伝説がある。
それがデタラメなのかどうか、今の河野にはわからない。
ただ、河野と同じく、田中もなんらかの使命感を帯びてその行動をしているように感じた。
2時間半ほど見続けてきて、河野にはもう田中が赤の他人とは思えなくなってきた。
むろん、対象者に一方的に好意を抱くことは禁止されている。
そういうのではなく、なんだかやっと同期に出会えたような、そんな感覚だった。
田中は、自分がばかんとうの一員としてすべきことを課されているなんて知らない。
河野も、自分のしていることが具体的に何なのかわからない。
ただ、各々人にはその人しかできない役割があって、二人はそれを着実に行っている。
再びホームに向かって走り出す田中を見つめながら、河野は自分が傍観者ではなく当事者になってきている気がした。
＊ ＊ ＊
ブルーラインはセントラルステーションに到着した。
今度はきっかり一駅で降りた田中を見やり、河野も降りる。
しかし、昼から疲労の色を見せていた田中は、ホームのベンチに寝転んでしまった。
ベンチの後ろに展覧会の広告が貼ってある。
光と闇とモンブラン、白洲正美のなんちゃら。
最初に乗ったブルーラインの乗客は、明らかにばかんとう州の者だった。
ばかんとう州は首都繁栄のためにつくられた行政機関であり、その住民は、たとえ一般企業に就職したとしても、首都の平和を維持する役割に就く。
州のなかの各area はそれぞれ異なる能力に長けている住民から成り、river area は首都圏のインフラを整備する役割に就くものが多い。
首都に本社を置くあらゆる企業にはばかんとう州の役員が一名はいて、それぞれが非常時の対策を練っている。
今ホームを歩く客はどうなのだろう。
一人、また一人、と田中を不安げに見下ろしながら、ホームを後にしていく。
誰がばかんとう州の住民でリクルートスーツの女性やタクシーの運転手のような協力者か、誰が普通の首都の住民か、考えても意味はない。
15時半からの2時間半、田中直子をセントラルステーションに留めなければならない。
それからの時間は、河野にとって生涯忘れられることのできないものになった。
説明会でピンマイクをつけていた男性――つまり協力者――の提案通り、田中は地元・首都のお土産を買おうとしているようだった。
とにかく、平日の帰宅ラッシュの中あっちこっちに行くので、視界から外さないようにするので精一杯だった。
セントラルステーションの書店にも田中は立ち寄った。
ある程度の距離を保ちつつ、河野も棚を確認する。
ベストセラーの文庫本『のびたの城』があり、旅行ガイドのコーナーは、国の西部のもののみになっている気がした。
あれ、が関係しているのかもしれない、と河野は思った。
人混みの中、電話に出る田中。
イヤホンはとっくのとうに音を拾わなくなっているため、河野は田中がもたれかかっている柱に接近する。
「今セントラルステーションにいるんだけど、なんだか結界が張られているみたい。だからまだ帰れなさそう」
田中はグリーンライン及びブルーラインのホームへの階段を上ろうとしては下り、同様に、へそステーション（仮名）を通っているオレンジラインのホームへ続くエスカレーターに近づいては離れる。
何が起きているのか全く理解できていないが、18時まで田中を留めることは可能のように思えた。
そして18時ジャスト。
河野はふいに、昨夜ツイッターで見た（おそらく）デマツイートを思い出した。
「3月23日（水）18時・首都圏に大地震・みんな避難だ」
気持ちを過去から現在に切り替えると、田中直子が左右の腕に就活用バッグと手提げをつるし、それを振り子のようにして、ぐるぐると体を回転させていた。
これが、それ、の回避策なのだろうか。
あまりにも呪術めいている。現代においても効果があるのだろうか。
そして田中の言うように、このセントラルステーションには、結界でもあるのかもしれない。
＊ ＊ ＊
18時半、田中はようやくオレンジラインのホームにいた。
帰宅を急ぐ人々のなか、田中はオレンジラインに乗り込んだ。
この人混みなら、と河野も同じドアから続いた。
今までで一番田中に近づいたかもしれない。
田中は明らかに常軌を逸しているようだったが、河野は彼女の書類不備を職員が伝えに来たときを思い返し、やはり田中にはばかんとうの一員としての荷は重いのかもしれないな、などと考えていた。
無事、へそステーション（仮名）で田中は下車し、履歴書に書いてあった住所とは逆の、北口の工事中の広場の信号前に陣取った。そして、傘で地面を叩きはじめた。
想いが強ければ強いほど効果は高い。
田中のnormal area への想いは、自分のriver area へのそれと同様のものなのだろうか。
セントラルステーションでの18時の件の他に、首都のへそをも工事しなければならないということなのだろうか。
田中は、へそステーション（仮名）の駅前の地盤を確かめるように、傘の先端を地面に落としていく。
二つある信号の一つの先には、1階が書店であるマンションが、大型中古書店と並んで立っている。
もう一つの信号の先には派出所があり、警官が田中の様子をうかがっている。
帰宅中のサラリーマンを乗せた赤いバスや青いバスが、バス停に到着しては出発する。
この国の憲法は、国民に住む場所や職業選択の自由といった自由を与えているが、実際はそうではない。
ある地域の住民のつける職業は限られている。
もちろん秘密裏に。
タクシーの運転手も、バスの運転手も、国鉄関係者も、たぶん警官も、いずれも今日はriver area の住民が固めているに違いない。
20時を過ぎたころ、田中直子は傘を手にし、信号前を後にした。
なぜか証明写真機で写真を撮り、彼女は自宅のある方の出口へと去って行った。
河野の任務はまっとうされた。
ばかんとう州のみなさん、一体どこまでがあなた方の計画で、どこからが偶然だったのですか？
僕たちは、一体どうやって首都の住民を管理し、平和を守っていったらよいのですか？
写真機に置き去りにされているスマイルにピースをした田中の写真を手にしていると、数時間ぶりにイヤホンから音がした。
「河野くん、よくやった」
「へそステーション（仮名）の南口では、対象者の母親が対象者の帰りを待っていたらしい」
「これで首都は、壊滅を免れた」
「君も早く、river area に帰ってきなさい」
ブツリと消える。
これでいいのだ、僕たちはうまくやったのだ。田中直子は首都を地震から救い、河野鉄男はそれを見守った。
幼い頃は、これが父だけのお祈りなのかと思っていた。
しかし、river area に就職すると、この言葉を毎日のように聞くことになった。
「すべては大いなる善のために、個は全体のために」
（完）
「しかし、それ、を避けるための策があるからこそ、ここで話し合っているのだろう」
「むろん、我々が人知れず行ってきた策の数々により、今こうして平和が保たれている」
「平和、というのはどうだろうか。軽犯罪から他殺自殺……そういった類のものをこの国から消すことはできていない」
「私もその意見には賛成だ。しかし、今の我々の役目は違う。わかるな？」
「人の役目はそれぞれ異なる。今の我々の役目は、それ、を避けるための策を講じて成功させるだけだ。異論はない。どうだ？」
「君達の言う通りだ。ただ、この会合の正確な内容は記録しておいてほしい。もちろん、秘密裏に」
河野に視線が送られる。
大丈夫だ。議事録係に任命されて一年弱、会議での発言自体はテープレコーダーに自動録音されているし、発言者の名前とその表情のチェックなどにも慣れてきた。
そして、それらの業務が全く日の目を見ないことに対する違和感もなくなった。
「それで、今回はどういう方法を採るんだ？」
「我々の、river areaの新たな一員となる者にその任を果たしてもらう」
河野は耳を疑った。
新たな一員、ということはriver areaの、いや、river area が含まれるばかんとう州自体の本当の価値を知らないのではないか。
「それ、と彼の関係性でもあるのか？」
「ああ。対象者は、首都のへそ、の近くに住んでいる。両親は首都とは無関係の出自であるのと同時に、対象者自体は生まれも育ちもそのareaだ。そして、ばかんとう州の一員としての招待状を受け取ったあと、招待式会場の最寄の駅の終電や居酒屋を調べている」
「居酒屋……？」
女性議員たちからクスクスと笑い声が漏れる。
「ゴホン。つまり、ばかんとうの一員として他の人財とうまくやっていきたい、という意志の表れだということだ。以上」
河野は自分のことを振り返る。
ばかんとう州はriver areaで生まれ育った自分が、ちょうど一年前の招待式において、その地元の本当の意義を知ったとき、両親からどのような意図で自分を育てたのか告げられたとき、の身震いを思い出す。
首都のへそなんかでゆるく暮らしてきた後輩……彼が、それ、を避ける技術でも持っているのだろうか。
「河野くん」
「……は、はいっ！」
「君に対象の女性の履歴書などを渡すよ。我々の策通りにうまく動いてくれるといいんだが」
「何かあったときにカバーするのは君だ、河野くん。彼女を見失いでもしないように、写真を目に焼き付けておくんだな」
「去年river areaにトップの成績で入った君には、何の問題もないだろう」
「頼んだぞ」
「河野くん」
＊ ＊ ＊
庁舎を出てバス通りを歩き、商店街を抜けると、リバーステーションが見えてくる。
国鉄の線路を陸橋で越えた先のタワマンの一角が、河野の家だ。
母のおかえりがいつもと違って聞こえる、と感じるのは気のせいだろうか。
「俺、部屋でちょっと仕事して、８時くらいにご飯食べるから」
「えぇ、今日はお父さんも早く帰ってくるつもり、って言ってたわよ」
怪しい。
河野の胸中に、またもや疑念が沸き上がる。
どうも、この仕事を始めてから、人の言動の裏ばかり見ようとしてしまう。
高ぶった気持ちを収めようと、議員から手渡された書類に目を通し始める。
名前：田中直子
平々凡々な名前だ。
年齢：平成23年4月1日時点で23歳、つまり河野と同い年だ。
そこでいっきに学歴の欄に目を動かす。
高校卒業、大学入学が同年、大学卒業見込23年3月。
ということは大学に5年いたのか。
ここでようやく写真を見ようという気になる。
田中直子は、顔も平々凡々だった。いや、いわゆる「中の下」だろうか。
もしもその顔から美しさを見つけようとするならば、就活用にあえて出しているのかもしれない眉毛が、石原さとみのそれに見えなくもなかった。
建物の廊下から足音が聞こえた。
「ただいまー」
声がするのと同時に、玄関のドアが開いた。
早い、まだ６時半すぎだ。時計に目をやった途端、体が動き出していた。
「おかえり、父さん」
河野家の主は国鉄の本社に勤めている。
この時間に帰宅するとは、終業時刻ピッタリに会社を出てきたに違いない。
「鉄男、俺、今から夕飯にしてもらおうかと思うけど、一緒にどうだ？」
ほら来た。
お前の父ちゃん鉄道マニアなのかと小さい頃散々いじられたのに反抗して、それほど親しい父子を演じてはこなかった父親が、どういう想いで息子の名前をつけたのか、今ならわかる。
「ああ、いいよ」
ありふれた名前をした田中直子が、少しうらやましくなる。
でも、彼女もまた、両親の想いによって名づけられたに違いない。
上着だけを脱ぐだけしてテーブルについた父は
「田中……直子さんのことでなんだ」
と、マンションの壁とカーテンを透視してでもいたように言う。
もし自分がまだ履歴書を読んでいなかったら、どうしたのだろう。
河野……いや、鉄男は冷静さを装って返す。
「ああ、今日議会のラストに言われたよ。俺ならできるって。彼女が、それ、を避ける上でのカバーが」
学生時代のアルバイトでは個人情報を口外してはいけないし、家に丸々持って帰るなど論外だと言われてきた。
鉄男自身もそう思っていた。
しかし、river area で勤め始めると、「そんなこと何でもない」ということがわかってきた。
首都を管理し、守る。
そのために多少の犠牲はつきものだ。というのが一般的な議員の見解らしい。
「鉄男も、もうそろそろ社会人2年目になる。今回のことはこれからもriver area、ひいては、ばかんとうで働くのに役に立つだろう」
「俺は……具体的なことはまだ何も知らされていないんだ。23日に起こる、それ、を避けるとしか。そんな俺に一体何ができるんだ？」
同期の話をたまに聴く。
いやどの会社との交渉があっただの、州内の他のarea に出張しただの。
鉄男は1位の成績でriver area に入ったはずなのに、そういう具体的な仕事は何一つやってこなかった。
来る日も来る日も、ただ会議に出て議事録をつくるだけ。
会議の内容も暗示に満ちていて、その作業が重要だということ、その仕事を任されるのはおそらくエリートコースなのだろう、ということはわかっていた。
しかし、river area に生まれ育ったものとして何かしたい、自分も首都を守るのに加わりたい……その使命感のやりどころがなかった。
「鉄男、今回の件については俺が説明する。大丈夫、全てriver area の社会人がやってくれる。お前はそれを見て学べばいいだけだ」
「俺は見てるだけでいいなんて……田中直子はどうなるんだ？ 彼女に一体何をやらせるんだ？？」
議員から渡された書類には履歴書の他に入庁試験の成績表もあった。
彼女は、繰上げ合格だった。
写真を見るより前に成績表を見るなんて、自分はどうかしているのかもしれない。
同期と同じように自分も何かしたいという気持ちと、自分が本当にばかんとうでやっていける人財なのだろうかと疑う気持ちの、板挟みになっている。
「すべては大いなる善のために、個は全体のために」
＊ ＊ ＊
23日、田中直子はリバーステーションに少々衰弱した様子で降り立った。
あれが田中か……。
河野は頭の中にインプットした履歴書の写真を思い浮かべる。
写真とは異なり前髪を下ろしている。
そのため、履歴書で唯一高評価を下せた眉毛はよく見えなかった。
しかしこの時間だ。
入庁にあたっての説明会場へは、徒歩では間に合わないだろう。
初めて降りる駅だからか、田中は、改札から続くペデストリアンデッキから地上へ降りる方法を、なかなか見つけることができないようだった。
「これじゃ説明会が……」
思わず声を漏らした。
河野は父からこの日の予定を聞いていた。
田中にしかできない、いや、河野がやるべきこととは二つある。
まずは、田中直子を19:00まで彼女の自宅の最寄駅・へそステーション（仮名）まで戻さないこと、それに加え、彼女を18:00の時点でセントラルステーションにいさせること、
その二つができないと、それ、は避けられない。
今日の作戦は国鉄の一大プロジェクトとも聞いている。
一体どうすればそれらが可能になるのか、それはわからないが、このままでは想定のタイムスケジュールを大幅に変更せざるをえない、ということだけは理解できた。
改札外、走って行けばすぐに接触できるような位置取りをしていた河野が一歩踏み出したとき、
「私に任せて」
背後から一人の女性が颯爽と歩きだして、田中の方へ行く。
「すいません！」
イヤホンから聞こえてくるのは、さっきの女性とは違う声だ。
これが田中直子の声なのだろうか。
「はい？」
なるほど、リクルートスーツの女性なら、田中にとっては同じく説明会に出席すると思えて声をかけやすいだろう。
「river area 庁舎の説明会に行かれる方ですか？」
「えっと、私はリバー銀行……」
女性は去って行ったが、そうだ、その方向にエレベーターがあった。
遠くからも、田中がエレベーターを視界に捉えたのがわかった。
彼女がダッシュし始めたのと同時に、河野も走り始めた。
イヤホンに別の音が聞こえてくる。
「リバー会館までお願いします」
やばい、タクシーだ。
「はい。今日、何かあるの？」
「river area 職員として4月から働くんです。その説明会に来ました。なんか、river area っておもしろい街ですね。大きなクマの銅像とかあるし」
使い慣れた方法で地上に降りると、
「河野くん、こっち！」
と、手を振る運転手を発見した。
誰が味方なのだかわからない。味方？ そもそも敵なんているのだろうか。
運転手が乗り込んだタクシーに河野も飛び乗ると、またもや田中と田中のタクシーの運転手のやりとりが聞こえてきた。
「river area のタクシーっておもしろいですね、全部黒で。車に乗るのも久しぶり」
「へえ、いつ以来？」
「免許とって、きたかんとう州の親戚の車で練習して以来」
「免許は？ どこでとったの？」
「いわちです」
まずい、いわちなんてドンピシャじゃないか。
こんな疲弊してハイテンションなんかになってる女の子に、首都の危機を回避させることなんてできるのだろうか。
そう思っていると、河野のタクシーの運転手が
「大丈夫、全部調べてあるから」
と言ってきた。
「ここが庁舎だよ」
「うわーおもしろい建物！」
気がつくと、タクシーの中は、ラジオをかけているときのように、田中と彼女のタクシーの運転手との会話で満たされていた。
しかし、改めて自分の生まれ育った街を「おもしろいおもしろい」言われると不思議な気持ちになる。
いや、まあ、実際田中が生まれ育ったnormal area とは異なるからこそ、自分がこうして見知らぬ運転手に名前を呼ばれ、行き先も告げないのに田中直子と同じ場所へ向かっているのだが。
「着いたよ」
前の車が停車し、後部座席の扉が開く。
「ありがとうございます！ 私、これからこの街で頑張ります！！」
びょん、と田中がバッグをつかみ道路に出た。
あ、お金……。
と思っているうちに
「河野くんも、早く行きな」
と追い出される。
説明会の間はイヤホンで会話を聴くだけだ。
田中直子と同じ勤務先に配属予定の、すでにriver area で社会人経験のある男性のピンマイクで声を拾う手はずになっている。
「あのぅ……この時間って……」
ほんの10数分で、明らかに複数人数がいる場所でも田中の声が聞き分けられるようになった。
「あ、紙に書いてあるんですね」
なんだこの子は。
採用試験の一環、クレペリンの結果では、彼女の性格はむらっけが激しい、ということになっていた。
この子は……これからriver area で一緒に働いていく仲間じゃないのか？
こんなんで大丈夫なのか？？
そう思っていたとき、会場のリバー会館から一人の男性が歩いてきた。
「河野くん、彼女、書類をコピーし忘れてしまったみたいなんだ。再締切は月曜、まだ5日間あるけど……」
そのとき河野は悟った。
彼女は、首都のへその近くに住んでいるだけで対象者に選ばれたわけではないのだ。
あれ、によって開催されはしなかったが、招待式の後に飲み会を開こうとしていたこと、終電の時間を調べて同期たちと仲良くやっていこうとしていたこと、その他者志向の精神こそが、今回の任務に重要となるのだ。
「すべては大いなる善のために、個は全体のために」
気が付くと、父親が食事の際にお祈りのように唱える言葉を、河野も自然と口にしていた。
＊ ＊ ＊
そんなこんなで、その後も田中直子の気分の高低は激しかった。
「こんな素敵な方々と一緒に働けるなんて幸せです！」
と感極まって泣きかけたところ、お偉いさんからその興奮の理由を問われ、
「いわちに行っていて、水族館の魚が……」
と、逆に悲しみの感情を露わにした。
お偉いさんと別れ、配属先が同じ数名とだけ一緒になった途端、
「このメンツでよかった！ でも私仕事に耐えられるかわからない」
と言い出したところで、ピンマイクを付けている男性に
「じゃあ4月1日は何時で！ 地元のお菓子を手土産にしよう！！」
と持ち掛けられ、音声は途絶えた。
リバーステーション方面に向かったのは、田中と、もう一人の女性だった。
道を間違えつつも、なんとか、河野がいつも歩いている商店街に辿り着いた。
「あ、あのメアド交換してください。あれ、携帯が見つからないな……10秒で見つからなかったらまた今度で」
というセリフが耳にできるほど近くに寄る。
「見つからない……じゃあ、4月1日にまたお会いしましょう」
そう言って、田中は商店街の本屋に入った。
本屋に寄ることは想定済みだ。
エントリーシートには、気になるニュースのところに「電子書籍について」と書いてあった。
それを目にしたとき、河野は「ニュースの意味を履き違えてないか？」と思った。
案の定、田中は繰上げ合格だった。
しかし試験の成績は今回の任務に関係ない。先ほど河野はそう結論付けたのだった。
本屋のガラス越しに田中の様子を伺う。
ばかんとうとは違い、首都のnormal areaはひょっとすると……と河野が思っていると、
「ごめんなさい。今日は3時にうちの店閉めるの」
と、店のおばちゃんが田中に声をかけた。
「あ、はい……」
河野が、勢いよく店を出る田中に気づかれないようにしていると、商店街の住民たちが話始める。
「全く……計画停電はいつになったら終わるの？」
「雨雲が……雨が降りそう」
商店街を進む田中は更に動揺しているに違いない。
有名ファーストフード店の外装を写メで撮っていた。
帰りはうまく地上からペデストリアンデッキに上れた。
何を思ったか、そこで田中は河野の家のある西口の方に行きかけたが、途端、雨が降ってきた。
おそらく、田中は決して新しい土地を訪れることが嫌いではないのだろう。
最後尾の車両に田中と河野を乗せつつ、ブルーラインは首都へと歩み始めた。
＊ ＊ ＊
ばかんとう州と首都を分けるもの、それはこの川だ。
首都に万が一のことがあった場合、川を越えられるのは、ヘリコプターを持つ一部の要人たちだけ。
そして、無事に避難ができた要人が政を行うのはbakanto area にある副都心、その場合のriver areaの役目は、川の氾濫をせき止めること。
river area と、首都のnorth area は、川の左右の岸に位置し、それぞれ上空に大きな雨雲を造っていた。
ゆるやかなカーブでも、最後尾の車両にはそれなりに重力がかかる。
双子の片割れのようなriver area の雨雲に別れを告げ、ブルーラインは首都に入った。
数個のタワマンしか高層の建物がないriver area とは異なり、north area のレッドステーション付近は高層の建物に満ちている。
田中はこの駅までパワフルラインに乗ってきて、そこから乗り換えたブルーラインで一駅、リバーステーションに着いたと聞いている。
しかし、ブルーラインがレッドステーションに到着しても、一向に降りようとする気配を見せない。
どうしたのだろうか。
そして、田中と河野を乗せたまま、ブルーラインは再び走り出す。
首都の町を走るブルーライン。一見日常の風景だが、今日は、その乗客の一人、田中直子が首都の危機を救わなくてはならないのだ。
いくつかの駅を過ぎ、central area のオータムステーションに着いたとき、田中が動いた。
河野も慌てて車両を降りる。
そのとき、同じ車両の乗客全員が、「頑張れ」という励ましの目を向けてきたような気がした。
自分にできることは、ただ何が起きて他の人がどう対応するかを見届けるだけ。ここで田中を見失うわけにはいかない。
オータムステーションの立体交差するホームをうまくすり抜けると、駅の中心部でフリーマガジンを手提げに入れまくっている田中を発見した。
「オータムステーションを降りると、人は持ってきたカバンを重たくしたくなる」という都市伝説がある。
それがデタラメなのかどうか、今の河野にはわからない。
ただ、河野と同じく、田中もなんらかの使命感を帯びてその行動をしているように感じた。
2時間半ほど見続けてきて、河野にはもう田中が赤の他人とは思えなくなってきた。
むろん、対象者に一方的に好意を抱くことは禁止されている。
そういうのではなく、なんだかやっと同期に出会えたような、そんな感覚だった。
田中は、自分がばかんとうの一員としてすべきことを課されているなんて知らない。
河野も、自分のしていることが具体的に何なのかわからない。
ただ、各々人にはその人しかできない役割があって、二人はそれを着実に行っている。
再びホームに向かって走り出す田中を見つめながら、河野は自分が傍観者ではなく当事者になってきている気がした。
＊ ＊ ＊
ブルーラインはセントラルステーションに到着した。
今度はきっかり一駅で降りた田中を見やり、河野も降りる。
しかし、昼から疲労の色を見せていた田中は、ホームのベンチに寝転んでしまった。
ベンチの後ろに展覧会の広告が貼ってある。
光と闇とモンブラン、白洲正美のなんちゃら。
最初に乗ったブルーラインの乗客は、明らかにばかんとう州の者だった。
ばかんとう州は首都繁栄のためにつくられた行政機関であり、その住民は、たとえ一般企業に就職したとしても、首都の平和を維持する役割に就く。
州のなかの各area はそれぞれ異なる能力に長けている住民から成り、river area は首都圏のインフラを整備する役割に就くものが多い。
首都に本社を置くあらゆる企業にはばかんとう州の役員が一名はいて、それぞれが非常時の対策を練っている。
今ホームを歩く客はどうなのだろう。
一人、また一人、と田中を不安げに見下ろしながら、ホームを後にしていく。
誰がばかんとう州の住民でリクルートスーツの女性やタクシーの運転手のような協力者か、誰が普通の首都の住民か、考えても意味はない。
15時半からの2時間半、田中直子をセントラルステーションに留めなければならない。
それからの時間は、河野にとって生涯忘れられることのできないものになった。
説明会でピンマイクをつけていた男性――つまり協力者――の提案通り、田中は地元・首都のお土産を買おうとしているようだった。
とにかく、平日の帰宅ラッシュの中あっちこっちに行くので、視界から外さないようにするので精一杯だった。
セントラルステーションの書店にも田中は立ち寄った。
ある程度の距離を保ちつつ、河野も棚を確認する。
ベストセラーの文庫本『のびたの城』があり、旅行ガイドのコーナーは、国の西部のもののみになっている気がした。
あれ、が関係しているのかもしれない、と河野は思った。
人混みの中、電話に出る田中。
イヤホンはとっくのとうに音を拾わなくなっているため、河野は田中がもたれかかっている柱に接近する。
「今セントラルステーションにいるんだけど、なんだか結界が張られているみたい。だからまだ帰れなさそう」
田中はグリーンライン及びブルーラインのホームへの階段を上ろうとしては下り、同様に、へそステーション（仮名）を通っているオレンジラインのホームへ続くエスカレーターに近づいては離れる。
何が起きているのか全く理解できていないが、18時まで田中を留めることは可能のように思えた。
そして18時ジャスト。
河野はふいに、昨夜ツイッターで見た（おそらく）デマツイートを思い出した。
「3月23日（水）18時・首都圏に大地震・みんな避難だ」
気持ちを過去から現在に切り替えると、田中直子が左右の腕に就活用バッグと手提げをつるし、それを振り子のようにして、ぐるぐると体を回転させていた。
これが、それ、の回避策なのだろうか。
あまりにも呪術めいている。現代においても効果があるのだろうか。
そして田中の言うように、このセントラルステーションには、結界でもあるのかもしれない。
＊ ＊ ＊
18時半、田中はようやくオレンジラインのホームにいた。
帰宅を急ぐ人々のなか、田中はオレンジラインに乗り込んだ。
この人混みなら、と河野も同じドアから続いた。
今までで一番田中に近づいたかもしれない。
田中は明らかに常軌を逸しているようだったが、河野は彼女の書類不備を職員が伝えに来たときを思い返し、やはり田中にはばかんとうの一員としての荷は重いのかもしれないな、などと考えていた。
無事、へそステーション（仮名）で田中は下車し、履歴書に書いてあった住所とは逆の、北口の工事中の広場の信号前に陣取った。そして、傘で地面を叩きはじめた。
想いが強ければ強いほど効果は高い。
田中のnormal area への想いは、自分のriver area へのそれと同様のものなのだろうか。
セントラルステーションでの18時の件の他に、首都のへそをも工事しなければならないということなのだろうか。
田中は、へそステーション（仮名）の駅前の地盤を確かめるように、傘の先端を地面に落としていく。
二つある信号の一つの先には、1階が書店であるマンションが、大型中古書店と並んで立っている。
もう一つの信号の先には派出所があり、警官が田中の様子をうかがっている。
帰宅中のサラリーマンを乗せた赤いバスや青いバスが、バス停に到着しては出発する。
この国の憲法は、国民に住む場所や職業選択の自由といった自由を与えているが、実際はそうではない。
ある地域の住民のつける職業は限られている。
もちろん秘密裏に。
タクシーの運転手も、バスの運転手も、国鉄関係者も、たぶん警官も、いずれも今日はriver area の住民が固めているに違いない。
20時を過ぎたころ、田中直子は傘を手にし、信号前を後にした。
なぜか証明写真機で写真を撮り、彼女は自宅のある方の出口へと去って行った。
河野の任務はまっとうされた。
ばかんとう州のみなさん、一体どこまでがあなた方の計画で、どこからが偶然だったのですか？
僕たちは、一体どうやって首都の住民を管理し、平和を守っていったらよいのですか？
写真機に置き去りにされているスマイルにピースをした田中の写真を手にしていると、数時間ぶりにイヤホンから音がした。
「河野くん、よくやった」
「へそステーション（仮名）の南口では、対象者の母親が対象者の帰りを待っていたらしい」
「これで首都は、壊滅を免れた」
「君も早く、river area に帰ってきなさい」
ブツリと消える。
これでいいのだ、僕たちはうまくやったのだ。田中直子は首都を地震から救い、河野鉄男はそれを見守った。
幼い頃は、これが父だけのお祈りなのかと思っていた。
しかし、river area に就職すると、この言葉を毎日のように聞くことになった。
「すべては大いなる善のために、個は全体のために」
（完）
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コメント(28)
今回は、三人称主人公視点のファンタジー私小説を文字数一万字ピッタリで書くのに挑戦し、テーマには自己犠牲という点で沿おうとしております。
でも、「これ小説か？」みたいな感じの仕上がりになってしまったという自己評価ですー（Ｔ−Ｔ）
ある程度までの批判は「私小説なので！」で乗り切ってしまうつもり……逆にもしも今回のテーマが私小説だったら、コメントしにくい作品だろうなぁとも思います（汗
Ｗｏｒｄ1万字まで打つのに10時間、そこからmixi日記の1万字に削るのに2時間と20分（あれ、日記の1万字とコミュニティトピックの1万字って違う？）。
ほぼ2回推敲ですが、最初らへんだけ3回……ペイントに1時間かかりました。
他の方はどれくらい時間かけてるんだろ……気になる（今回初めて測定しました。
私の作品なんか読むよりこっち読んだ方が絶対いい！という、影響を受けた作品群
→
・村上春樹「かえるくん、東京を救う」
・村上春樹『海辺のカフカ』
・山口雅也『ステーションの奥の奥』
・平成23年3月18日ミュージックステーションでの
ＮＹＣ「勇気100％」
知っている人は、やはり、と思う作品群でしょうが、一番上の作品は、こちらのコミュを知ったきっかけにもなってるし、特に元ネタの元ネタ感半端ない、春樹すごい。
・恩田陸「大きな引き出し」
（『きみが見つける物語 スクール編』に入ってるのを読みました。初出の『光の帝国 常野物語』は10年くらい前に読んだ。こちらは実作をする上で念頭に置いて読みましたが、書き終わって再再読して、まさに泣ける小説だと。じわり、ツーッ、嗚咽の三段階で泣きました）
お読みいただきありがとうございます、そしてコメントにペイントを貼る実験のために、勝手に不必要なトピックを立て消しし、すいませんでしたｍ（＿）ｍ
でも、「これ小説か？」みたいな感じの仕上がりになってしまったという自己評価ですー（Ｔ−Ｔ）
ある程度までの批判は「私小説なので！」で乗り切ってしまうつもり……逆にもしも今回のテーマが私小説だったら、コメントしにくい作品だろうなぁとも思います（汗
Ｗｏｒｄ1万字まで打つのに10時間、そこからmixi日記の1万字に削るのに2時間と20分（あれ、日記の1万字とコミュニティトピックの1万字って違う？）。
ほぼ2回推敲ですが、最初らへんだけ3回……ペイントに1時間かかりました。
他の方はどれくらい時間かけてるんだろ……気になる（今回初めて測定しました。
私の作品なんか読むよりこっち読んだ方が絶対いい！という、影響を受けた作品群
→
・村上春樹「かえるくん、東京を救う」
・村上春樹『海辺のカフカ』
・山口雅也『ステーションの奥の奥』
・平成23年3月18日ミュージックステーションでの
ＮＹＣ「勇気100％」
知っている人は、やはり、と思う作品群でしょうが、一番上の作品は、こちらのコミュを知ったきっかけにもなってるし、特に元ネタの元ネタ感半端ない、春樹すごい。
・恩田陸「大きな引き出し」
（『きみが見つける物語 スクール編』に入ってるのを読みました。初出の『光の帝国 常野物語』は10年くらい前に読んだ。こちらは実作をする上で念頭に置いて読みましたが、書き終わって再再読して、まさに泣ける小説だと。じわり、ツーッ、嗚咽の三段階で泣きました）
お読みいただきありがとうございます、そしてコメントにペイントを貼る実験のために、勝手に不必要なトピックを立て消しし、すいませんでしたｍ（＿）ｍ
>>[012]だよ？さん
あらまあ、夏の百冊の泣ける小説とかをチェック(どれが既読とか)したりしたんですけどね、残念！
たぶん、� 峙磴韻襦廚僚蝋佑�足りない��頭のなかにある「泣ける」をうまく表現できていない、の両方なのでしょう。
三人称は……今回、わかる人にはわかるくらい実体験を借りているので、全く「私≠河野」である以上、この形式にしないと書けませんでした。
あと、JONYさんに「ヴァンサンは一人称が向いてる」と言われたのに反抗したかったのかも(笑)
『となり町戦争』っぽかったですかー。
読んだことあるので、知らず知らずのうちに影響受けてるかもしれませんね。
かえるくんっぽくはなかったですか？、と調べてみたら『となり町戦争』春樹類似説がありました(笑)
再読してみます！
最後に、セカイ系！
どんな感想でもいただければ嬉しいのですが、作者の意図を読み取ってくださるのはやはり嬉しいですね。
影響を受けた作品のところに、エヴァンゲリオンを書こうか悩みました。
コメントありがとうございました。
作者自身があまりよく考えていないところもよく考えて下さっている事がわかる、作品のようなコメントで、お返事に時間かかってすいません。
あらまあ、夏の百冊の泣ける小説とかをチェック(どれが既読とか)したりしたんですけどね、残念！
たぶん、� 峙磴韻襦廚僚蝋佑�足りない��頭のなかにある「泣ける」をうまく表現できていない、の両方なのでしょう。
三人称は……今回、わかる人にはわかるくらい実体験を借りているので、全く「私≠河野」である以上、この形式にしないと書けませんでした。
あと、JONYさんに「ヴァンサンは一人称が向いてる」と言われたのに反抗したかったのかも(笑)
『となり町戦争』っぽかったですかー。
読んだことあるので、知らず知らずのうちに影響受けてるかもしれませんね。
かえるくんっぽくはなかったですか？、と調べてみたら『となり町戦争』春樹類似説がありました(笑)
再読してみます！
最後に、セカイ系！
どんな感想でもいただければ嬉しいのですが、作者の意図を読み取ってくださるのはやはり嬉しいですね。
影響を受けた作品のところに、エヴァンゲリオンを書こうか悩みました。
コメントありがとうございました。
作者自身があまりよく考えていないところもよく考えて下さっている事がわかる、作品のようなコメントで、お返事に時間かかってすいません。
＊部会終了後の感想＊
●作品のモチーフやその理解について
ご指摘があった通り、この作品は東日本大震災の後の世界を書いています。
「なぜ18時や19時といった時間がキーになるのか？」というご質問がありましたが、この作品は実体験を元にしておりまして、正直、私にもよくわからない（精神状況だった）のです。
ただ、river area の人々は、「それ＝震災後に首都で起きる地震」を止めようとしていて、その方法を主人公の河野くんが理解していない以上、書かなくてもいい（し、まずこの文字数では書けない）のかな〜と思ってやってみました。
●テーマについて
テーマ、みなさんのお話を聞いて、読者に向けて書くことの重要性やある程度のベタさの重要性を認識しました。
私はこの半年間は、「みんながやらないことをやろう」と書いてきて、今回も、求められているものとは真逆のことをしてしまった感があります。
元の実体験がそうそう他の人にはできない体験だという自負（とトラウマ）から、先にこれを書こうと思い立ち、後からテーマを織り込みました。
他人や国や会社のために自分を犠牲にするのは、日本人には泣ける話なのかな……と、宮沢賢治の「グスコーブドリの伝記」を読んだときの呆然を思い出しながら書きました（作品完成後に読み返した）。
ご質問があった「なぜ田中直子に計画のことを話さないのか？」というのは、首都で純粋培養されてきた人にしかできない……とかの理由があったのでしょうが、それはやはり河野くんが知らないので書いてません。
でも、この話の中で、田中直子は一種の人柱であり、計画を話すに値する人間ではなかったのです。
ばかんとう州の人々が恒常的に首都の人々に知られずに首都を管理し、守る、というのが一つの自己犠牲であるのと同時に、首都を守るという役目を果たした田中直子にriver area の人々は感謝している……田中直子の役目は一時的もので、ばかんとう州でのこれからは犠牲になった…というストーリーでした。
色々書きましたが、あまり実体験実体験と考え込まずに、ファンタジーとして気楽に読んでほしいです（というか、そういう前提じゃないと書けなかった）。
当分、震災物からは離れますが、1年とか1年半後とかにもっと長くして書いてもいいかな〜と思います。
長くなりました。お読みいただきありがとうございます。
●作品のモチーフやその理解について
ご指摘があった通り、この作品は東日本大震災の後の世界を書いています。
「なぜ18時や19時といった時間がキーになるのか？」というご質問がありましたが、この作品は実体験を元にしておりまして、正直、私にもよくわからない（精神状況だった）のです。
ただ、river area の人々は、「それ＝震災後に首都で起きる地震」を止めようとしていて、その方法を主人公の河野くんが理解していない以上、書かなくてもいい（し、まずこの文字数では書けない）のかな〜と思ってやってみました。
●テーマについて
テーマ、みなさんのお話を聞いて、読者に向けて書くことの重要性やある程度のベタさの重要性を認識しました。
私はこの半年間は、「みんながやらないことをやろう」と書いてきて、今回も、求められているものとは真逆のことをしてしまった感があります。
元の実体験がそうそう他の人にはできない体験だという自負（とトラウマ）から、先にこれを書こうと思い立ち、後からテーマを織り込みました。
他人や国や会社のために自分を犠牲にするのは、日本人には泣ける話なのかな……と、宮沢賢治の「グスコーブドリの伝記」を読んだときの呆然を思い出しながら書きました（作品完成後に読み返した）。
ご質問があった「なぜ田中直子に計画のことを話さないのか？」というのは、首都で純粋培養されてきた人にしかできない……とかの理由があったのでしょうが、それはやはり河野くんが知らないので書いてません。
でも、この話の中で、田中直子は一種の人柱であり、計画を話すに値する人間ではなかったのです。
ばかんとう州の人々が恒常的に首都の人々に知られずに首都を管理し、守る、というのが一つの自己犠牲であるのと同時に、首都を守るという役目を果たした田中直子にriver area の人々は感謝している……田中直子の役目は一時的もので、ばかんとう州でのこれからは犠牲になった…というストーリーでした。
色々書きましたが、あまり実体験実体験と考え込まずに、ファンタジーとして気楽に読んでほしいです（というか、そういう前提じゃないと書けなかった）。
当分、震災物からは離れますが、1年とか1年半後とかにもっと長くして書いてもいいかな〜と思います。
長くなりました。お読みいただきありがとうございます。
>>[21]
返信ありがとうございます。
葵さんのおっしゃっていること、頭では理解しているつもりです。
ただ、この回の私の小説は、決して自分がまだ客観視できていないことを書いた作品なのです。
とても個人的なことを書いていて、なので「小説かな？」と疑問に思いつつも出してみました。
私がこの文芸部に参加することになるきっかけが「かえるくん〜」の入っている『神の子どもたちはみな踊る』の小説で、文芸部での私の目標の一つが、最初から、震災を乗り越えることなのです。
とはいっても、私自身ずっと震災のことばかり考えてると辛いし、読者になってくださる方はもっと辛いだろうと思うので、半年（弱になってしまいました……）ぶりに震災を書きました。
作品レベルに達していないので、理解できないという感想が出ることは重々承知なのですが、私にとって書かざるをえないものなので今回も書いたのですが、やはり、書いたとしてもここには出さないでおいた方がいいのかもしれませんね……。
あと、ベタとかの言葉は、私の中ではいい意味で使っていて、次回上げる可能性のある作品は、今のところ、もう、ベッタベタです（笑。
なんだろう、「みんながやるような小説」というよりかは、「みんながわかる小説」としてその言葉を捉えています。
この回でいったん気が済んだ、というか文芸部での私の第一段階が終わった気がしたので、次回は、誰もが理解できるけど共感は……！？
共感できるかできないかはわからない、けれどそこを読者の方に訊いてみたい！ というような小説を書いています。
葵さんの感想もぜひお聞きしたい！
また、新しいヴァンサンを皆さんにお見せいたします。。。
コメント、本当にありがとうございます、私が解釈できていない部分があったらすいません。
返信ありがとうございます。
葵さんのおっしゃっていること、頭では理解しているつもりです。
ただ、この回の私の小説は、決して自分がまだ客観視できていないことを書いた作品なのです。
とても個人的なことを書いていて、なので「小説かな？」と疑問に思いつつも出してみました。
私がこの文芸部に参加することになるきっかけが「かえるくん〜」の入っている『神の子どもたちはみな踊る』の小説で、文芸部での私の目標の一つが、最初から、震災を乗り越えることなのです。
とはいっても、私自身ずっと震災のことばかり考えてると辛いし、読者になってくださる方はもっと辛いだろうと思うので、半年（弱になってしまいました……）ぶりに震災を書きました。
作品レベルに達していないので、理解できないという感想が出ることは重々承知なのですが、私にとって書かざるをえないものなので今回も書いたのですが、やはり、書いたとしてもここには出さないでおいた方がいいのかもしれませんね……。
あと、ベタとかの言葉は、私の中ではいい意味で使っていて、次回上げる可能性のある作品は、今のところ、もう、ベッタベタです（笑。
なんだろう、「みんながやるような小説」というよりかは、「みんながわかる小説」としてその言葉を捉えています。
この回でいったん気が済んだ、というか文芸部での私の第一段階が終わった気がしたので、次回は、誰もが理解できるけど共感は……！？
共感できるかできないかはわからない、けれどそこを読者の方に訊いてみたい！ というような小説を書いています。
葵さんの感想もぜひお聞きしたい！
また、新しいヴァンサンを皆さんにお見せいたします。。。
コメント、本当にありがとうございます、私が解釈できていない部分があったらすいません。
簡単な感想しかかけていなかったので、改めて、書かせてください。
まだ私の理解が間違っているところがあれば、すみません。
３回くらい読んでみて、ようやく、この小説が伝えたい「感覚」が伝わってきたような気がしました。
最終的に、河野鉄男と田中直子を軸にして、それを取り巻く周りの様子を含めて読んでいった時に、
最終的に河野が持った無力感のような感覚が、手に取るように入ってきた気がします。
この小説は、色々な登場人物が出てきたり、シーンがあちこちに変わっていったりするのはむしろ長所で、読んでいて「面白い！」と思える要素だと思いました。
そういう意味での「わけわからなさ、カオスな感じ」というのも、震災後の焦燥感や「何かしなければ、でも何を？」という悩みを象徴していると思いましたので、それは良さだと思います。
また、河野がそもそも何をやらされているのかわからない、という設定も普段の我々の生き方に置き換えてみれば、非常に深いテーマなんじゃないかなと思います。
ただこの小説を読んで、わかりにくいと言っているのは、
もっと単純明快に、表面的、技術的な事でわかりにくいっていう事なんじゃないかなあ、と思いました。
例えば、タクシーに最初に乗るシーンで台詞（会話）が続きますが、それぞれ誰が喋っているのか、３回読んでもよく解らなかったです。
これは、小説のテーマとかいう問題以前に、簡単に解決できる問題ではないでしょうか。
月並みですがカギ括弧ごとに、”と、○○は言った。”、等という言葉を、テイストを崩さない程度に入れれば、情報はすべて問題なく伝わると思います。その程度の工夫で十分です。
そういう配慮が、読者としては欲しかったです。
まず基本的な情報が読者に余すところなく伝わった後で、初めて、「それをどう感じたのか」の部分になって作風が個性的かどうかの評価が始まるのではないでしょうか。
最後に、
ヴァンサンさんの作品をまだ多く拝読したわけではありませんが、
よく「体験から書いた」という事を言っておられるし、本心は「この小説から、何かを伝えたい、感じ取ってほしい」という思いが人一倍強くあって、書いてらっしゃるのかなとも感じました。
まだ私の理解が間違っているところがあれば、すみません。
３回くらい読んでみて、ようやく、この小説が伝えたい「感覚」が伝わってきたような気がしました。
最終的に、河野鉄男と田中直子を軸にして、それを取り巻く周りの様子を含めて読んでいった時に、
最終的に河野が持った無力感のような感覚が、手に取るように入ってきた気がします。
この小説は、色々な登場人物が出てきたり、シーンがあちこちに変わっていったりするのはむしろ長所で、読んでいて「面白い！」と思える要素だと思いました。
そういう意味での「わけわからなさ、カオスな感じ」というのも、震災後の焦燥感や「何かしなければ、でも何を？」という悩みを象徴していると思いましたので、それは良さだと思います。
また、河野がそもそも何をやらされているのかわからない、という設定も普段の我々の生き方に置き換えてみれば、非常に深いテーマなんじゃないかなと思います。
ただこの小説を読んで、わかりにくいと言っているのは、
もっと単純明快に、表面的、技術的な事でわかりにくいっていう事なんじゃないかなあ、と思いました。
例えば、タクシーに最初に乗るシーンで台詞（会話）が続きますが、それぞれ誰が喋っているのか、３回読んでもよく解らなかったです。
これは、小説のテーマとかいう問題以前に、簡単に解決できる問題ではないでしょうか。
月並みですがカギ括弧ごとに、”と、○○は言った。”、等という言葉を、テイストを崩さない程度に入れれば、情報はすべて問題なく伝わると思います。その程度の工夫で十分です。
そういう配慮が、読者としては欲しかったです。
まず基本的な情報が読者に余すところなく伝わった後で、初めて、「それをどう感じたのか」の部分になって作風が個性的かどうかの評価が始まるのではないでしょうか。
最後に、
ヴァンサンさんの作品をまだ多く拝読したわけではありませんが、
よく「体験から書いた」という事を言っておられるし、本心は「この小説から、何かを伝えたい、感じ取ってほしい」という思いが人一倍強くあって、書いてらっしゃるのかなとも感じました。
>>[24]
返信大変遅くなりすいませんｍ（＿）ｍ
作者の私が意図している以上のことをお読み取り下さり、嬉しいです！
三回も読んで下さったなんて、ありがとうございます！！
人それぞれ、作者とは異なる読みがあると思うのですが、私はラストで河野くんが抱いたのは「達成感」だと思って書いていました。
なので、正反対の「無力感」が読み取れるというのが非常におもしろい……確かに、そうも取れますよね、と思いました。
「カオス」はおっしゃる通り、カーニヴァル感みたいなのが書きたかったのです。
あと、わかりにくいというのは、たとえば誰の会話かわからないということだったのですね！
具体的でためになるアドバイスありがとうございます！！
自分でも思うのですが、今まで一対一の会話しか書いてこなかったので、複数の登場人物が会話する場面を描く技術が、まだ不足していますね……。
タクシーの場面、次のコメントで誰のセリフ（と想定して書いているの）か書いてみます。
一応、この回で自分の力量以上のものを書く時期は終わりかなぁ……という感じです。
コメントいただいた最後の段落を拝読していると、今回、私は「わかられてたまるか！」みたいな勢いで書いている気がしました。
次の回からは、理解と共感（この回の、たかーきさんの作品についての部会での話し合いに、とても影響を受けています）の合間をいったりきたりする作品を書いていきたいです。
本当に、ありがとうございます！！
返信大変遅くなりすいませんｍ（＿）ｍ
作者の私が意図している以上のことをお読み取り下さり、嬉しいです！
三回も読んで下さったなんて、ありがとうございます！！
人それぞれ、作者とは異なる読みがあると思うのですが、私はラストで河野くんが抱いたのは「達成感」だと思って書いていました。
なので、正反対の「無力感」が読み取れるというのが非常におもしろい……確かに、そうも取れますよね、と思いました。
「カオス」はおっしゃる通り、カーニヴァル感みたいなのが書きたかったのです。
あと、わかりにくいというのは、たとえば誰の会話かわからないということだったのですね！
具体的でためになるアドバイスありがとうございます！！
自分でも思うのですが、今まで一対一の会話しか書いてこなかったので、複数の登場人物が会話する場面を描く技術が、まだ不足していますね……。
タクシーの場面、次のコメントで誰のセリフ（と想定して書いているの）か書いてみます。
一応、この回で自分の力量以上のものを書く時期は終わりかなぁ……という感じです。
コメントいただいた最後の段落を拝読していると、今回、私は「わかられてたまるか！」みたいな勢いで書いている気がしました。
次の回からは、理解と共感（この回の、たかーきさんの作品についての部会での話し合いに、とても影響を受けています）の合間をいったりきたりする作品を書いていきたいです。
本当に、ありがとうございます！！
＊＊＊＊＊
イヤホンに別の音が聞こえてくる。
【田中】「リバー会館までお願いします」
やばい、タクシーだ。
【田中の運転手】「はい。今日、何かあるの？」
【田中】「river area 職員として4月から働くんです。その説明会に来ました。なんか、river area っておもしろい街ですね。大きなクマの銅像とかあるし」
使い慣れた方法で地上に降りると、
【河野の運転手】「河野くん、こっち！」
と、手を振る運転手を発見した。
誰が味方なのだかわからない。味方？ そもそも敵なんているのだろうか。
運転手が乗り込んだタクシーに河野も飛び乗ると、またもや田中と田中のタクシーの運転手のやりとりが聞こえてきた。
【田中】「river area のタクシーっておもしろいですね、全部黒で。車に乗るのも久しぶり」
【田中の運転手】「へえ、いつ以来？」
【田中】「免許とって、きたかんとう州の親戚の車で練習して以来」
【田中の運転手】「免許は？ どこでとったの？」
【田中】「いわちです」
まずい、いわちなんてドンピシャじゃないか。
こんな疲弊してハイテンションなんかになってる女の子に、首都の危機を回避させることなんてできるのだろうか。
そう思っていると、河野のタクシーの運転手が
【河野の運転手】「大丈夫、全部調べてあるから」
と言ってきた。
【田中の運転手】「ここが庁舎だよ」
【田中】「うわーおもしろい建物！」
気がつくと、タクシーの中は、ラジオをかけているときのように、田中と彼女のタクシーの運転手との会話で満たされていた。
しかし、改めて自分の生まれ育った街を「おもしろいおもしろい」言われると不思議な気持ちになる。
いや、まあ、実際田中が生まれ育ったnormal area とは異なるからこそ、自分がこうして見知らぬ運転手に名前を呼ばれ、行き先も告げないのに田中直子と同じ場所へ向かっているのだが。
【田中の運転手】「着いたよ」
前の車が停車し、後部座席の扉が開く。
【田中】「ありがとうございます！ 私、これからこの街で頑張ります！！」
びょん、と田中がバッグをつかみ道路に出た。
あ、お金……。
と思っているうちに
【河野の運転手】「河野くんも、早く行きな」
と追い出される。
＊＊＊＊＊
こんな感じです。
自分で読んでいるだけでは、イマイチどう直せばいいのかわからず、もしよろしければ、お手すきの際にご添削いただけると幸いです！
もちろん全箇所じゃなくて構いません！！
私としては、この想定で書きました……というコメントです。
イヤホンに別の音が聞こえてくる。
【田中】「リバー会館までお願いします」
やばい、タクシーだ。
【田中の運転手】「はい。今日、何かあるの？」
【田中】「river area 職員として4月から働くんです。その説明会に来ました。なんか、river area っておもしろい街ですね。大きなクマの銅像とかあるし」
使い慣れた方法で地上に降りると、
【河野の運転手】「河野くん、こっち！」
と、手を振る運転手を発見した。
誰が味方なのだかわからない。味方？ そもそも敵なんているのだろうか。
運転手が乗り込んだタクシーに河野も飛び乗ると、またもや田中と田中のタクシーの運転手のやりとりが聞こえてきた。
【田中】「river area のタクシーっておもしろいですね、全部黒で。車に乗るのも久しぶり」
【田中の運転手】「へえ、いつ以来？」
【田中】「免許とって、きたかんとう州の親戚の車で練習して以来」
【田中の運転手】「免許は？ どこでとったの？」
【田中】「いわちです」
まずい、いわちなんてドンピシャじゃないか。
こんな疲弊してハイテンションなんかになってる女の子に、首都の危機を回避させることなんてできるのだろうか。
そう思っていると、河野のタクシーの運転手が
【河野の運転手】「大丈夫、全部調べてあるから」
と言ってきた。
【田中の運転手】「ここが庁舎だよ」
【田中】「うわーおもしろい建物！」
気がつくと、タクシーの中は、ラジオをかけているときのように、田中と彼女のタクシーの運転手との会話で満たされていた。
しかし、改めて自分の生まれ育った街を「おもしろいおもしろい」言われると不思議な気持ちになる。
いや、まあ、実際田中が生まれ育ったnormal area とは異なるからこそ、自分がこうして見知らぬ運転手に名前を呼ばれ、行き先も告げないのに田中直子と同じ場所へ向かっているのだが。
【田中の運転手】「着いたよ」
前の車が停車し、後部座席の扉が開く。
【田中】「ありがとうございます！ 私、これからこの街で頑張ります！！」
びょん、と田中がバッグをつかみ道路に出た。
あ、お金……。
と思っているうちに
【河野の運転手】「河野くんも、早く行きな」
と追い出される。
＊＊＊＊＊
こんな感じです。
自分で読んでいるだけでは、イマイチどう直せばいいのかわからず、もしよろしければ、お手すきの際にご添削いただけると幸いです！
もちろん全箇所じゃなくて構いません！！
私としては、この想定で書きました……というコメントです。
>>[26]
ほんとに書いてくださったんですね！読ませていただきました。
わかりやすいと思いますよ。
ある程度説明的な文章が入ったとしても、そんなに極端でなければ、文章の体裁を壊すとは思わないですし、むしろわかりやすく安心して読める方がいいのではないでしょうか。
あと、個人的にはあまりに登場人物が多い場合は、ちょっと漫画みたいですけど、
特定の人物は、無口でいつも単語１語でしか会話しないとか、
特定の人物は、語尾に絶対「ね」を付けて喋るだとか、
そういう特徴を思い切って入れることで、誰の台詞かわかりやすくする手もあると思うんですよね。
小説って、本来はエンターテインメントなので、読者を喜ばせて初めて良さが生まれるようなものだと思うんですけど、
自分の書きたいものを人に読んでほしい、自分を分かってもらいたいという事で書く方もいますよね。
それはそれで動機としてはいい事なんだと個人的には思いますけど、仕事でお客様が喜ぶことが大事っていうのと同じで、エンターテインメントも、提供する側が最終的には読者が楽しむ姿を大事に考えられると、おのずといい文章って生まれるんじゃないかなって私は思っています。
そういう方はプロになれるんでしょうね。
今回の部会のヴァンサンさんの作品は、とても面白かったと感じました。自分の書きたいものを書いてらっしゃるのは捨てずに、読み手の満足も考えて書いてらっしゃるんじゃないかなと思いました。
ほんとに書いてくださったんですね！読ませていただきました。
わかりやすいと思いますよ。
ある程度説明的な文章が入ったとしても、そんなに極端でなければ、文章の体裁を壊すとは思わないですし、むしろわかりやすく安心して読める方がいいのではないでしょうか。
あと、個人的にはあまりに登場人物が多い場合は、ちょっと漫画みたいですけど、
特定の人物は、無口でいつも単語１語でしか会話しないとか、
特定の人物は、語尾に絶対「ね」を付けて喋るだとか、
そういう特徴を思い切って入れることで、誰の台詞かわかりやすくする手もあると思うんですよね。
小説って、本来はエンターテインメントなので、読者を喜ばせて初めて良さが生まれるようなものだと思うんですけど、
自分の書きたいものを人に読んでほしい、自分を分かってもらいたいという事で書く方もいますよね。
それはそれで動機としてはいい事なんだと個人的には思いますけど、仕事でお客様が喜ぶことが大事っていうのと同じで、エンターテインメントも、提供する側が最終的には読者が楽しむ姿を大事に考えられると、おのずといい文章って生まれるんじゃないかなって私は思っています。
そういう方はプロになれるんでしょうね。
今回の部会のヴァンサンさんの作品は、とても面白かったと感じました。自分の書きたいものを書いてらっしゃるのは捨てずに、読み手の満足も考えて書いてらっしゃるんじゃないかなと思いました。
>>[27]
お読みいただきありがとうございます。
でも、【】でセリフの前に誰のセリフと想定しているか書いただけで、原文は変えてませんよ〜
この作品で私が重要視していたのは、視点人物・河野のしていることは、傍から見れば「監視・尾行・盗聴」なのですが、それらの単語を文中では一切使わないことを課していて、そうすると、「……と聞こえてきた」とか「会話が聞こえるくらい近くに寄る」みたいな表現でしかセリフに対する河野の認識を示せず、難しかったです……。
登場人物が多い場合は……まさに、今構想中の（すでに書いている作品ではない）作品では、たかーきさんのおっしゃるのと同じようなやり方で考えています！
ただ、本当に私は初心者なので、まだまだ自分が望むようには書けないので、投稿はいつになるかな……？ という感じです。
あと、私は小説がエンターテイメントだとは全く思ってなくて、一種の延命装置のように考えています。
小説が私を楽しませてくれたという経験よりも、小説（に限らず芸術）が私の寿命を延ばしてくれた経験の方が多いと思います。
作者がいかに真摯に人生を送っているか（作者がどれだけ自分の命を削って書いているか）読み取れる小説が、私の心を打つ小説なのだと言えるかもしれません。
なので、今回の部会の作品とおっしゃってくださってるのが、この第七回の作品だとすれば、私の魂の叫び（なんだこの表現……苦笑）なんて重いし、そう気軽に読んでくださいとは言えないわけですよね……それで、なんとかエンターテイメントとしても読めるように書こうと頑張りました。
もし、それが少しでも伝わっていれば幸いです。
あら、私もエンタメって単語を出してますね（笑
でも、本当に小説に何を求めるかとか、何を書きたいか、どうして書きたいか、というのは人それぞれ異なるし、どうやって読むかも異なって、正解というのはないと思うので、文芸部活動に参加すると、難しくておもしろいな〜と思います。
コメント本当にありがとうございます！
長文失礼しました……ｍ（＿）ｍ
お読みいただきありがとうございます。
でも、【】でセリフの前に誰のセリフと想定しているか書いただけで、原文は変えてませんよ〜
この作品で私が重要視していたのは、視点人物・河野のしていることは、傍から見れば「監視・尾行・盗聴」なのですが、それらの単語を文中では一切使わないことを課していて、そうすると、「……と聞こえてきた」とか「会話が聞こえるくらい近くに寄る」みたいな表現でしかセリフに対する河野の認識を示せず、難しかったです……。
登場人物が多い場合は……まさに、今構想中の（すでに書いている作品ではない）作品では、たかーきさんのおっしゃるのと同じようなやり方で考えています！
ただ、本当に私は初心者なので、まだまだ自分が望むようには書けないので、投稿はいつになるかな……？ という感じです。
あと、私は小説がエンターテイメントだとは全く思ってなくて、一種の延命装置のように考えています。
小説が私を楽しませてくれたという経験よりも、小説（に限らず芸術）が私の寿命を延ばしてくれた経験の方が多いと思います。
作者がいかに真摯に人生を送っているか（作者がどれだけ自分の命を削って書いているか）読み取れる小説が、私の心を打つ小説なのだと言えるかもしれません。
なので、今回の部会の作品とおっしゃってくださってるのが、この第七回の作品だとすれば、私の魂の叫び（なんだこの表現……苦笑）なんて重いし、そう気軽に読んでくださいとは言えないわけですよね……それで、なんとかエンターテイメントとしても読めるように書こうと頑張りました。
もし、それが少しでも伝わっていれば幸いです。
あら、私もエンタメって単語を出してますね（笑
でも、本当に小説に何を求めるかとか、何を書きたいか、どうして書きたいか、というのは人それぞれ異なるし、どうやって読むかも異なって、正解というのはないと思うので、文芸部活動に参加すると、難しくておもしろいな〜と思います。
コメント本当にありがとうございます！
長文失礼しました……ｍ（＿）ｍ
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