サクラ大戦 de PBWコミュのサクラ大戦ＰＢＷ第三話前半リプレイ＆後半オープニング

　檜希の柏手が響き、セルヴァは立ち上がると、ゾンビの一般的な対処方法を伝えた。
「いわゆるゾンビの対処法としては、頭を潰すなり燃やすなり、肉体を物理的に使えなくするのが一番じゃ。魔法生物などではなく、単に呪術で動かされているだけの死体じゃからの」
「燃やすのが一番手っ取り早いけど危ないかなぁ……」
　少し難しい顔で、シルエラは首を傾げた。
「あ、癒しの炎なんかどうかな？　銀の物が効くかわからないけど……燭台くらいなら職場から持って来れるかな？　ナイフとフォークも銀製ありそうだし☆
」
　指折り案を出すシルエラに、セルヴァは肩をすくめた。
「そういったものが有効なゾンビも多いが、ゾンビにも色々種類があるでの。有効な対処法も様々じゃ。ドクとやらのゾンビ製造法が分かれば、対処の方法ははっきりするであろうの」
「ゾンビの製造法……」
　はらわたが煮えくり返っていたシグナルが、セルヴァの言葉で少しだけ冷静さを取り戻す。
「ドク？　ゾンビ研究？　……どこかの学会発表で見た気がするぞ」
　シグナルは記憶を掘り起こそうと、いらいらした様子で机を指で叩いた。
　やがて記憶に行きついたのか、腕を組んで呟いた。
「……そうだ。元同僚と見に行った発表で、｢ゾンビにしてでも生き返らせることができたら、現代医学では治せない患者の家族や本人は喜ぶだろうか？｣というバカ話をした覚えが……。その時元上司は「そんな、気違いで有名な研究者の発表みたいな話をするくらいなら、もっと有意義な発表を見ろ」と怒られたな」
　シグナルは勢いよく立ち上がると、ドアへ向かって駆けだした。
「まずは、僕の元同僚や上司に聞き込みだ！」
　振り返らずに駆け出したシグナルと入れ違いに、窓から一羽の烏が飛び込んできた。
「カヤ！　お二人の居場所は分かった？」
　カヤは一声鳴くと、カヤが身に着けている勾玉・青柳が輝いた。
　ひと筋の光が、マンハッタン島の一部を照らす。そこは、紐育の中心部から少しだけ離れた、雑居ビルが立ち並ぶ一角だった。
　ごちゃごちゃとたくさんの住宅や店舗が立ち並び、とても大規模な研究施設があるようには見えない。
　このビルの一つに連れ込まれた後は、カヤでは分からないという。
　結芽は少し眉をひそめると、立ち上がった。
「この周辺の動物の力を借りて、内部を偵察します。後、クロノスコーポレーションの調査をするから、月組を借りるわ」
　結芽の言葉に、檜希は何か言いたそうに立ち上がったが、少し首を振ると頷いた。
「……はい」
「檜希は、ご両親の居場所の特定をお願いするわ」
「ご両親の居場所ですね。分かりました」
　頷く檜希に、セルヴァも立ち上がる。
「どれ、ではワシは異世界の扉とやらでも調べるとするかの。ワシも月組を借りるぞ」
「よろしくお願いします」
　立ち上がる二人に、シルエラも立ち上がった。
「じゃあ私は、噂話ネットワークで行方不明者の情報を集めて、その消えたポイントを見てみるね！　後、探索に必要なものを考えてみる」
「頼りにしていますよ」
　微笑む檜希に、シルエラは手のひらに拳を打ち付けた。
「ゾンビなんて不潔なものが蔓延してる場所なんて、ぶっちゃけあり得ないし！！　綺麗にお掃除してやるわ！　労働者、なめんじゃないわよ！」
　振り上げた拳に、森組は頷いた。


　翌日。
　それぞれ情報収集を終えた森組は、会議室へ集まった。
「月組は無能か！」
　セルヴァは腹立たしげに、机を両手で叩いた。
「「異世界の扉」について、調べるように言うたのに！　あ奴ら、依頼された事さえ忘れおったわ！」
　いらつきながら腕を組むセルヴァの隣で、結芽も頷いた。
「クロノスコーポレーションの調査も、忘れられたわ。何か話をしたことは覚えているのに……。月組の調査能力なら、クロノスコーポレーションの裏の裏まで調べられるのに」
　悔しそうな結芽の隣で、シルエラが首を傾げた。
「……ひょっとして、これが檜希が言ってた「殺界領域」？」
「そうです。話をする相手が最初から関わっていない事件に関して、話をしても忘れられます。文章にしても見向きもされません。事件現場に連れて行って証拠を並べても、興味すら持ってはもらえません」
　淡々と語る檜希の胸倉を、シグナルは掴んだ。
「花粉！　お前、それを知っててばーさんと忍者を止めなかったのか！　父と母の命がかかっているのに！」
「僕の言葉だけが伝わらないのかも知れないじゃないですか！　森組の皆さんの言葉なら、あるいは普通に通じるかもと思ったんです！」
「そんなあいまいな賭け、別の機会にしろ！」
「わわわ！　シグナル落ち着いて！　暴力はいけないわ！」
　慌てて立ち上がったシルエラが、二人の間に割って入る。
　一触即発の空気の中、ドアが開いた。
「しーあわせだなあ。情報収集が間に合って」
　ウクレレの音と共に現れたのは、白いスーツを着た細身の男だった。
　甘いマスクにぴったりと撫でつけた髪、赤いワイシャツに手にはウクレレ。
　紐育華撃団の諜報機関である月組の隊長は、手にしたファイルを会議室の机に置いた。
「辰木隊長、頼まれていた情報です。赤い方が紐育に登録されている、頭文字がCronもしくはChromで始まる会社の情報です。で、こっちの緑の方が賢人機関のデータベースに登録されている、「異世界」と「門」が関わる情報です」
「ありがとうございます、加山隊長」
　軽く頭を下げる檜希に、加山は肩をすくめた。
「サニーサイド司令から、何も言わずに言われた通りに手伝うよう言われているのでいいのですが。相変わらず、掴みどころがないですね」
「ははは。胸倉は掴まれてるけどね」
　胸倉を掴まれながら苦笑いをする檜希に、シグナルは無言で手を離した。
　檜希は何事もなかったかのように服を整えると、森組を見渡した。
「さあ、情報交換しましょう。皆で話し合って、明日の作戦を練ろう」
　檜希は森組を見渡すと、ファイルに手を伸ばした。


　情報交換と作戦会議が終わり、いったん解散となった。
　作戦決行を三時間後に控え、シグナルはがらんとした自室へ戻った。
　ドアを開けると、寒々しい空気が流れてくる。
　何やかやと理由をつけては、部屋を訪ねてくれる二人がいない。ただそれだけなのに、こんなにも部屋は寒いのか。
　壁には、シグナルが発見された時にくるまれていたおくるみが無造作に画ビョウで留められている。
　インテリアらしいものはそれくらいだ。
　あとは生活必需品と、クローゼットには数着のホストスーツ、数冊の医学書を含む本、普段着の微妙にホストっぽいけど目立たないスーツがしまわれているのみ。
　見慣れたはずの、必要最低限しか物がない部屋。
『相変わらず、質素ね』
　そう言って苦笑いをした母は、囚われの身だ。
『可愛い息子の様子を、見に来ちゃいかんのか？』
　貴重な休みを使って、わざわざ来てくれた父は、ゾンビに改造されようとしている。
　見た目で明らかに日本人ではないシグナルを、実子のように……いや、実子以上に可愛がってくれた父、母。
　シグナルを引き取ったことで親戚に眉をひそめられても、｢私達は光がうちの子になってくれて本当に幸せ｣といつも笑顔だった。
　こんな性格のシグナルを本気で叱ったり、本気で愛してくれた。
　そんな父や母が、仕事でクレーマーに頭を下げる姿を見た時には、はらわたが煮え繰り返った。
　二人とも何もミスなどしていないのに！　
　だからシグナルは世界を征服しようと決めた。
　誰も父や母をバカにしたりしない世界を、シグナルの父と母を皆が大事にする世界を、シグナルが作るのだ！
「まずは、父母の敵は全て殲滅してやる！」
　冷静に怒りを燃え上がらせたシグナルは、壁に拳を打ち付けた。



　という訳で、メタ発言コーナー。
　情報収集の結果は、以下に箇条書きします。
「クロノスコーポレーション」について
・頭文字がCronもしくはChromで始まる会社で、発音が「クロノス」となりそうな会社は、大小合わせて八社。
・それぞれ、表面上は特に問題はない。
・代表者が「ドク」という名前の会社はない。
・本社や支店が指示されたエリアにある会社は一社。

「異世界の扉」について
・異世界へ渡るための研究は、多岐にわたる分野で長年研究されているが、大きな成果は上がっていない。
・霊力による空間のゆがみが確認されているため、人為的に起こすことは可能。
・二年前、大規模な空間のゆがみが観測されたが、詳細は不明。
・「異世界の扉が開いた」「世界の境界があいまいになる」と複数の夢組が預言するが、これ以降発言はない。
・このころから、神隠しや行方不明、迷宮入りの殺人事件が頻発するようになる。
・警察が動いた形跡がほとんどない。

「ドク」「ゾンビ」について
・ドクの本名は「ドギー・ハミルトン・jr」
・不老不死の研究をしていたが、その倫理に外れた研究手法で学会を追われた。
・魔導士ではなく科学者で医者。あくまでも科学的に不老不死を実現させようとしている。
・脳死状態の人間の脳に働きかけ、生き返らせる研究を発表していた。
・研究のために、健康な人間を薬物や施術で仮死状態にしたことが発覚。学会を除名され、終身刑を言い渡される。
・その後、脱獄。脱獄の手段等は不明。その後の足取りも不明。

「行方不明者の消えたポイント」について
・事件性の有無にかかわらず、紐育では行方不明者は多い。
・人数が多く、絞り込めない。

「両親の居場所」について
・結芽のスキルと忍者ネットワーク、月組の情報により、侵入経路が確定。
　檜希の神器により、研究所内部の詳細な地図を入手。
・侵入経路は二つ。

・一つは、違法賭博が行われている地下室の奥にある扉からの侵入。
・カジノへの侵入は、月組の手配で何とかなる。
・最奥部の金庫室手前のドアから地下へ潜れる。
・ここに近づくには、何らかの工夫が必要。
・一般人による警備は厳重。
・カジノのオーナーは、レディ・ルナと呼ばれる女性。
・社交界や経済界に顔が利く。
・レディ・ルナと交渉する場合、目の肥えた彼女を満足させる何らかの芸をしなければならない。
・普通に行って会える相手でもない。

・もう一つは、物資搬入経路からの侵入。
・クロノス社という小さな製薬会社の倉庫として登記されている。
・地下で使う物資を搬入するための経路で、途中までは業者に化ける等すれば比較的スムーズに行ける。
・その奥は、厳重な警備が敷かれている。
・動物たちが近づきたがらないため、強敵が潜んでいる可能性がある。
・ドクや関係者は、ここから地下へ行っている模様。
・隠密行動に成功すれば、内部への侵入が成功する。失敗すれば戦闘が起きる。

・どちらのルートも、厳重な警備をかいくぐった先の地図ははっきりしている。
・内部に侵入すれば、比較的警備はゆるい。
・研究室と牢屋、食堂と事務所と書斎と休憩室と寝室がある。
・探索も可能。ただし、時間はかかる。
・行動が遅れた場合、正が連れ出されている可能性もある。

　持ち物は、今回宣言をお願いします。
・シグナル　持ち物一つ
・結芽　持ち物二つ
・セルヴァ　持ち物一つ
・シルエラ　持ち物一つ

　締め切りは、今月末。
　揃い次第執筆します。
　引っ越しとか終わったから、もうだいじょうぶだもんね！