サクラ大戦 de PBWコミュのサクラ大戦PBW　第三話　オープニング

　花見から数日後。
　シグナルは着ぐるみショーの舞台に立っていた。
　父と母はシグナルのアパート近くのホテルに滞在し、紐育滞在を満喫しているようだった。
　今日は、着ぐるみショーを見に来ると言っていた。
　父も母も大喜びで、見ているこっちが照れるほどだ。
　絶対に行く、と言っていたが、舞台上からは父と母の姿は見えない。
　少しの胸騒ぎを感じたが、見落としただけかも知れない。
　シグナルは出番を終えると、楽屋へと戻った。
　楽屋にもいない。誰か尋ねて来たかとスタッフに聞いたが、誰も来ていないという。
　椅子に座り、苛立たしげに机を指で叩くシグナルの耳に、争うような声が聞こえて来た。
「おい！　ここは関係者以外立ち入り禁止だ！」
「どけ！　今は一刻を争うんだ！」
　怒鳴るような声は、花粉のものだ。あの男が声を荒げるとは珍しい。
　ドアを開けて外を見る。廊下では警備員と檜希が、押し問答を繰り広げていた。
「おい花粉。こんな所で何を……」
「シグナル！　良かった！　今すぐシアターに来てくれ！」
「は？　僕はこれから、父や母と食事に……」
　シグナルが言い終わる前に、檜希はシグナルの腕を掴んだ。
「予知を見た。正さんと華子さんが攫われた。このままだと、人間として生きて帰ってこれない」
　真剣な声に、シグナルは息を呑んだ。



　リトルリップ・シアターの会議室には、重い空気が流れていた。
　事件の一報から一時間後。皆を集めた後「情報が足りない」と言って席を外した檜希は、まだ帰ってこない。　　
　シグナルは見るからに苛立たしげな空気を出し、宙を睨んだまま何も言わない。
　重い空気に耐えかねたようにシルエラが口を開いた時、ドアが開いた。
　憔悴した顔で席についた檜希に、シグナルは食ってかかった。
「おい花粉！　父と母は無事なんだろうな！」
「無事だよ。今はね」
「今は！？　……！　すぐ助けに行くぞ！　父と母はどこにいる！」
　胸倉を掴む勢いで檜希に食ってかかるシグナルを、結芽が落ち着かせるように割って入った。
「落ち着いてシグナル！　まずは話を聞きましょう」
「慌てる乞食は貰いが少ない、とも言うしの」
　涼しい顔で言い放つセルヴァを、シグナルはキッと睨みつける。
　シグナルは一つ大きなため息をつくと、いつもの席にドカッと座った。
「……で？　父と母はどうなっている？」
　怒りと苛立ちのオーラを発散させるシグナルに、檜希は立ち上がった。
「僕が見た情報をまとめると、こう」

・正と華子はシグナルの舞台を見に行く途中、何者かに車に乗せられて連れ去られる。
・気が付くと、窓が無い部屋にいた。正と華子のほかに、人はいない。
・ドアには鍵がかかっていて、ドアにあいた細長い小窓から見える場所には見張りがいる。
・話しかけても返事がない。どうも人間じゃないみたいに静かで気味が悪い。
・両手を手錠と鎖でつながれている。鎖は長く、動くのにとりあえず不自由はない。
・部屋は殺風景なコンクリート打ちっぱなしの部屋。床には硬い絨毯が敷かれていて、一応ベッドと布団、片隅にトイレがある。
・天井の換気扇が嫌な音を立てて回っている。
・食事は与えられる。毒はないようだ。
・持っていた荷物は奪われている。服はそのまま。
・不安なまま時が過ぎ、部屋から正が連れ出される。
・部屋を出て、冷たい廊下を歩かされて、突き当りの部屋が何かの実験室のようだ。
・広々とした室内には、得体の知れない巨大な実験施設になっている。
・人体実験のような、命をもてあそんでいるような水槽がある。
・ドクと呼ばれる小柄で小汚い老人が、チーフのようだ。
・ドクの机にある時計は午後八時を指し、書類の日付は誘拐された翌々日の日付が書かれている。
・ドクのセリフ
「ふむ。確かに、殺界領域の干渉は受けにくいようだな」
「助けなど来ぬよ。紐育の地下にこのような空間があろうとも、誰も気づかぬのだからな！」
「警備など、そこのゾンビ兵で十分！　不眠不休で二十四時間働き、餌も少なくて済む。理想の労働者だと思わないかね？」
「クロノスコーポレーションのため、『異世界の扉』のため、何より我々の発展のために、その命が使われるのを光栄に思うがいい！」
　と言って不快な声で嗤う。
・意識はそこで暗転する。

　重い沈黙の中、檜希は口を開いた。
「……このままだと、お二人はドクの言う「理想の労働者」として改造されてしまう。そうなったら、二度と取り戻せない。チャンスは一度きり。敵が油断している、今しかない。だからなおのこと、慎重に策を練るべきだと思う。ドクにとって、お二人の命はどうでもいいものだから」
　檜希は紐育の地図を広げると、森組を見渡した。
「さあ、情報を集めよう。そして策を練って、必ず二人を救出しよう」
　檜希は祈るように両手をパン！　と合わせると、右手をさっと差し出した。
「君たちに、木々の守護がありますように」



　メタ発言コーナー
　という訳で、第三話はかなかなさんのリクエスト（？）で攫われたシグナルの両親を救出するシナリオとなります。
　時期的に少々不謹慎かもですが、キニシナイ方向で。だって同人だし。
　もし不快な方がいらっしゃったら、言ってください。
　このネタは後日に回します。もしくは別ネタに変わります。
　ちなみに、森組シナリオでは星組は戦闘参加しません。というかできません。
　それにはもちろん、ちゃんとした理由があります。
　長くなるので、以下の説明はどっかのタイミングでされていたということで。
　面倒ならば、「星組は言われなければ出てこない」で十分です。

　檜希が予知する事件の加害者が起こした事件は、他者に伝播しません。
　たとえば目の前で化け物が出て、それを誰かに伝えても、全く相手にされません。
　新聞記事にしても、誰の目にも止まらず消えていきます。
　自分が体験したことは理解できますし、記憶がなくなったりしません。
　ですが、他人と共有できません。自分が体験しない限り、事件を知ることはできません。
　以前檜希は、リトルリップ・シアターを巻き込んだ事件を予知し、現実となって、この脅威がサニーやラチェットの知ることとなりました。
　ですが、サニー達は檜希が予知する他の事件については、干渉できません。
　檜希が詳細を語っても、認知されずに忘れられてしまうのです。
　最初から「スターファイブやサニー達が関わる」と予知された場合のみ、当事者として事件を認識できます。
　なので、申請があった品を粛々と用意したり、言われた通り月組を動かしたり……といった支援しかできません。
　これを、殺界領域と呼びます。
　皆さんは、殺界領域の干渉を受けず、事件を普通に認知して行動することができます。
　この特殊な霊力ゆえに、森組として選ばれました。
　何か質問があったら、コメントにお願いします。

　次回は、これらの情報を踏まえて、更に情報収集お願いします。
　時間の制約があるので、得られる情報は、一人につき二つまで。
　結芽はスキルがあるので、四つ得られます。
　指定以上の個数情報を集めたと判断されたら、最初の二つまたは四つを採用します。
　どんな情報をどうやって手に入れたのかを書いてください。
　良いプレイングには、情報の精度にボーナスが付きます。
　檜希は指定された情報を一つ高精度で無条件で得ます。
　指定がなければ、情報は得られません。複数指定された場合、精度が下がります。
　情報収集の手番を消費して、侵入に必要そうな品を用意することもできます。
　第三話後半では、一般的に持っているもの（ハンカチとか）は持っていると判定しますが、普通持っていないと判断されるものは持っていません。
　ここで宣言してください。宣言がないと、「〇〇があればいいのに！」というような描写になります。
　常識の範囲は、マスターの独断とさせていただきます。

　締め切りは二月十五日。今度はこんなに間があかないようにしたいです。
　それでは、皆様の素敵プレイングをお待ちしております。