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グスタフ マーラー/交響曲第五番第四楽章 アダージョ

http://www.youtube.com/watch?v=yjz2TvC2TT4&feature=youtube_gdata_player





過ぎた出来事を筆に記すわたしを、あなたは女々しいと笑うだろうか。
追憶からしかはじめられない手紙のようにわたしは、日と時のあいだに隠れたあなたに雨を降らすよう、白紙を追憶で埋めて、沈黙で濡らし、滲ませ、色のなかにあなたを見つけることで、語りかけ、ここに綴りたい。



〈共犯の無意識のなかで過ぎ去っていく
すべてが魔法のようで 軽やかな奇跡だった〉



あれは夏至の由比ヶ浜だったか、それとも初秋の月欠の祭日だったか、きみはいつも地球の重力からほんの少しだけ自由で、風を嗅ぐひとりの動物で、手足を動かして目と耳と口からなる世界を踊るように泳いでいった。



〈たくさんの音楽がわたしたちを通り過ぎては
波が押し寄せて 消えていった〉



その時のわたしたちを形容する言葉をいまでもわたしは見つけられない、過失そのものが喜ばしいとき、いかなる神も、善悪の彼岸ですらも、あなたは泳ぎこえることで自由よりも制約に満ちて、裸になるための着衣からは命の火が躍り出ていた。



〈言葉の不在がすべてを物語る夕方〉



小食のあなたはすこしづつかなしみを咀嚼して、ラジオからはbeatlesのオー ダーリンが流れていて、雨がふっていて、気のせいかもしれなくて、わたしたちは何か水のようなものに包まれて、それはやがてアフリカの草原を走り、熱帯雨林に落ちていくものと同じだと気づいて、もしも明日、世界中の海が蒸発してしまっても、水分子の数は永遠に変わらない。


ラジオはマーラーのsymphony No.5になり、わたしは9月のなかにいた。


あなたは銀色の指環をあとにのこして、8月の雪だるまのように分子へと還元された。アイスクリームがベタついた夜半中、わたしの喉は甘いかわきをおぼえていて、指環に9月、銀色に雨の祈りを。



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