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chopstick undergroundコミュのwarm water

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不思議な話がある、と女は言った。

水には記憶がある、いや、もっと正確に言うと、水に触れた人間の記憶が水に写るの、それが見えるのよ。

女は誰彼かまわず、その話をしてまわった。その話を聞いた誰もが、女は狂ってしまった、そう思った。

ある日突然、女は姿を消した。
火曜日の朝だった。
女の恋人の画家が彼女の家を訪れた時、その姿はもうなかった。
テーブルの上にはふたり分のパンと、鍋の中には作りかけのスープが残されていた。
それは生活のすべてをそこに置いたまま、裸で女は消えてしまったように思われた。恋人の画家はひどく悲しみ、長い間、女の家に閉じこもり待ち続けた。


不思議な話がある、と女は言った。


一週間が過ぎ、ひと月が過ぎ、また火曜日の朝になった頃だった。
夜も眠らず、食べ物も摂らずに女を想い続けていた画家は不思議な事に気がついた。
浴槽に張られたお湯がいつまでも温度を失わずに、女が消えた日からお湯のままで残っている事だった。
画家は服を脱ぎ、その人肌ほどの温度の湯に全身を浸した。


不思議な話がある、と女は言った。


一週間が過ぎ、ひと月が過ぎ、また火曜日の朝になる頃まで、画家は湯に浸っていた。
その人肌ほど温かい湯は冷めることを知らず、浴槽で画家はまどろみ、またまどろんだ。
たくさんの色彩と浅い眠りの中を画家は歩いた。
それは時に女の姿形をして、はっきりと画家の前に現れた。

画家は目を覚ますと裸のままキャンパスに線を描いた。


banks/warm water

http://www.youtube.com/watch?v=hYG3iIcZOkw&feature=youtube_gdata_player


これは名もない画家が描いた一枚の絵画。
愛を巡る喪失と再生の、決して冷めることない一枚の線と温度だ。




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