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徹真斎の妄想徒然草子コミュの仮面ライダーD.V.L vol.26

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「あ… ぁありがとうございました!」
言うなり坂田大輔は後ろに倒れ込んだ。
大の字になった大輔はその胸を上下させてぜぇぜぇと荒い呼吸を繰り返す。
その姿を微笑みながら見ていた本郷猛であったが どっしりと構えていた正座から滑らかな動作で立ち上がると大輔に背を向けて道場の入口に向かう。
そして一度振り返り道場内に向かって一礼し、再び背を向けて歩き出した。
「本郷さん」
その背中に大輔が声を掛けた。
「この後アミーゴっスか?」
顔だけ振り返る形で足を止めた本郷が答えた。
「そのつもりだが、どうした?」
「い、いえ 俺も後で行 きます」
完全に落ち着いてはいない呼吸のせいで途切れながら ようやく吐き出した大輔は 無理矢理身体を起こし、 もう一度正座して深く一礼した。

アミーゴのカウンター、その一番奥の席で本郷は湯気を立てるコーヒーを一口啜った。
うまい
本郷の唇はそう呟くように動く。
そしてもう一口啜った後、隣に座る大輔に向かって口を開いた。
「で、どうなんだ?」
うちの道場に来てなにか掴むところはあったのか?
本郷はそう聞いているのだった。
そう、大輔はこの二ヶ月ほど ほぼ毎日本郷の道場に通い、本郷から直接手解きを受けていたのだ。
「そうっスね 色々気付きがありましたね ありがとうございます もう少しでなんか掴めそうなんスよ なんでもうしばらくお世話になります」
照れたように笑いながら頭を掻く大輔にカウンターの向こうで洗い物をしていたさおりが問う。
「でも なんでまた急に本郷さんとこに?」
持ち上げたカップを置いて大輔が答えた。
「あぁ こないだ話したろ?竜崎っておっさんの話」
竜崎龍蔵… 過日大輔と一戦交えたあのゴールの幹部である。
大輔はあの日、彼我の実力差と己の敗北を自覚した。
そして 自身のレベルアップを図るため、来るべき竜崎との闘いに備え これに打ち勝つために本郷に教えを乞うたのであった。
「あんなバケモノが他にも居ないとは限らねぇし、なによりあのおっさんはブッ飛ばしとかねぇとな」
自嘲気味に大輔は言う。
「話を聞く限り 手強い相手なのは確かだが、あんなに猛烈な稽古の仕方で体がもつのか?」
本郷らと同じくカウンターに座っていた風見が心配そうに言う。
対して大輔はニヤリと笑いながら答えた。
「何言ってんスか モンケンの鉄球を体で受け止めるよりゃよっぽどマシってもんスよ」
「モンケン?」
耳慣れない言葉に明日香がグラスを拭きながら聞き返す。
すると風見が笑いながら答えた。
「あぁ 最近はあまり見なくなったが、大きな鉄球をぶら下げたクレーン車だよ 昔 おやっさんが俺の特訓にってどこからか借りて来てくれたもんだ」
あらぬ方向に遠い目を向ける風見であったが、明日香の
「なにかと顔の広い人だったからねぇ」
の言葉に頷く。
そこへ思い出した様な本郷の声。
「そうだ風見、手が空いてたら大輔にお前の空手を仕 込んでやってくれないか?なんならうちの道場を使 ってくれて構わん」
「先輩に師事してるんでしょ?それならわざわざ俺が 教え…」
「あ よろしくお願いしまス」
驚いたように答える風見の言葉を遮って大輔は小さく頭を下げた。
「風見、大輔に"お前の空手"を教えてやってくれ」
もう一度、本郷はゆっくりと言った。
風見が学んだ空手の流派はごくごく普通の伝統派競技空手、い わゆる"寸止め流派の空手"である。
しかしながら伝統派の中には"古流"と呼ばれる、スポ ーツ化した現代空手の一方で武道としての空手 人体を破壊するために突き詰められた技術を今に伝える流派が存在する。
風見が師事した空手師範はそういった古流を伝える男だったのだ。
その古流空手を学んだ風見は大学在学中に瀕死の重傷を負い、改造人間となってしまったわけだが デストロンをはじめ、悪の組織との闘いの中で風見なりに" 改造人間の身体を駆使した空手"を錬成していく。
その全てを叩き込んでやれ そう本郷は言っているのだ。

「なるほど、そういうことですか わかりました 大輔 、先輩も厳しいが俺もかなり厳しいぞ 覚悟しておけよ?」
優しく微笑む風見だが 目が笑ってない。
その事に気付いた大輔は少し後悔した。

和やかなひとときが流れて行く店内だったが、突如本 郷の顔が曇る。
「!」
それに気付いた大輔ではあったがその理由はわからずにいた。
「どうしたんスか?本郷さん」
「ほぅ…」
大輔の言葉を待っていたかの様に本郷が不敵な笑みを浮かべた。
数瞬をおいて風見も"それ"に気付いた。
「へぇ…」
やはり風見も不敵な笑みを浮かべ 入口に目をやる。
「わかるか?風見」
入口を睨んだままの本郷に応える風見。
「えぇ、しかしこれほどの殺気を放つ者とは…」
「なんなんスか?二人とも なんかあ… !」
奇妙な疎外感の中 理由を聞き出そうとした大輔の表情が凍る。
キリンコロンカラーン
「いらっしゃいませー」
高らかなチャイムと明日香の明朗な声が響いて一人の男が入って来た。
「て、てめぇ…」
大輔の絞り出すような声。
そこに現れたのは件の男 竜崎龍蔵であった。

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