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紅い竜と四天王女コミュの目覚める赤き竜6

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アルスはヴィエンヌ軍を連れて馬を疾駆させていた。
昼夜構わず走らせた馬は体力の限界を感じていたのか、いつも以上に息が荒々しい。
同じく、騎馬兵ではない兵士たちも疲労が見え始めた。
(ここまで飛ばし過ぎたな。このままではシャラントに着いても戦えないな)
 愛馬の足を止めると、ヴィエンヌ兵も一斉に止まった。
「しばらく、ここで休憩を取る。ここまで急がせてすまない。しばらく、ゆっくり休んでくれ」
 本当はゆっくり休んではいられない状況だが、ここで彼らを酷使すれば脱走兵が出かねない。
 戦でも疲労と士気の低下でザルム軍に敗ける。
 ギーゼラの懇意を台無しになり、シャラントも滅亡と最悪の結果になる。
 山を越えればシャラントに着く。
 山の手前で休憩を取ったアルスは一人、山を見上げている。
「あいつらはそろそろ動き出したころかな」
 アルスは夜明け前の空に呟いた。
「アルス様」
 後ろから声を掛けられ振り向くとクレアが立っていた。
 手に持っているのは二つの陶杯。
「これをどうぞ」
「ありがとう」
 陶杯を受け取りアルスは一口飲んだ。
「蜂蜜湯か。甘いな」
 陶杯の中は蜂蜜湯だった。
 作り方は蜂蜜を入れ、そこにお湯を注ぐだけの簡単な物だ。
「急がなくても宜しいのですか?」
「俺だって急ぎたい。だが、ここまで強行軍で来た。兵馬も兵たちも疲労が見えている。ここは休ませることが肝心だ。このまま、シャラントに向っても体力と士気がないままザルム軍に挑むことになり兼ねない。そうなれば、俺たちは敗ける。シャラントは滅び、最悪、ヴィエンヌまで滅ぶかもしれない。ギーゼラ様に兵を借りてまで、そんな事態になったら、腹を斬るしか弁明出来ない。いや、そうしても、許されないかもしれないな」
「浅はかでした。申し訳ございません」
 クレアはアルスが考えて休憩を取っていると知り、自身の非礼を恥じ謝る。
「いや、俺も本当はクレアと同じ気持ちさ。しかし、それが出来ない。もどかしいしさ」
 ふと、アルスは後ろに眼を遣ると。
兵士たちが仮眠を取ったり、雑談をしたりと各々で休んでいた。
「さて、俺も仮眠を取るかな。あんま寝てないんだ」
「では、私が見張りをします」
「クレアは寝ないのか?」
「私はアルス様の護衛を」
「敵なんていないって」
「ヴィエンヌ兵にいるかもしれません」
クレアはヴィエンヌ兵士達を警戒している。
「おいおい。味方を信用しろよ」
「分っていますが……」
 眼を逸らすクレアにアルスはそれ以上、何も言わなかった。
「わかった。頼むよ」
 アルスはしゃがみ込み木に寄りかかり仮眠を取った。
「可愛い寝顔です」
 クレアはアルスの寝顔を見てそう呟いた。
 空は明るく朝日が顔を出す前の空模様。


 時は進み、朝になった頃、ザルム軍は出陣の準備を済ませていた。
 フェリス・ザルムは兵たちの士気を高めるため言葉を発した。
「これから、シャラントを攻める。シャラントの兵数は四百、こちらは千二百。数で勝っている。何も恐れることはない。お前たちの武勇を軟弱なシャラント兵に見せつけろ!」
「うおぉぉぉぉー」
 鬨の声が青空に響き渡った。
 ザルム軍の士気が高まり、ザルム軍兵たちは闘争心を剥き出した。
「出陣だ」
 先頭の部隊が進軍し始め、次々と軍兵たちは歩き出した。
 フェリスは真ん中あたりを愛馬に跨り進軍する。
 森に入ると街道が見えなくなった。
 草が生い茂る道を進軍するしかない。
 ここからは先頭に配置した森の地理に詳しい兵士たちが頼り。
 フェリスも何度もこの森を通ったが、完全に熟知している訳ではない。
 先導する自信はない訳でもないがあるわけでもない。
 ここは兵たちに任せると決めた。
「しかし、この森は何度来ても嫌なもんだ」
「はい。私もそう思います。シャラントはこの森のお蔭で守られていると思います。裏を返せば、この森さえ無ければシャラントなど一握りです」
「アルヌルフがいた頃はそうではない。あいつは俺を何度も打ち負かしている」
「いた頃? 今も生きているかもしれませんよ?」
 ルイスはフェリスの言葉を訂正した。

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