ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

紅い竜と四天王女コミュの策士の手腕10

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ギーゼラもまたアルヌルフの戦友で互いに呼び捨てにするまでの仲であった。
 アルヌルフが戦死した時には、いち早く葬儀に駆けつけ涙を流した。
 アルスが領主になってからは、すっかりシャラントとの交信はなかった。
 信用していなかったわけではないが、ギーゼラも他の貴族との関係もあった。
シャラントには気には掛けてはいたが、眼が行かなかっただけ。
「ありがとうございます」
「さあ、座ってくれ」
 ギーゼラとアルスは椅子に腰を落とし向かい合った。
 四十五歳のギーゼラはまだまだ現役。
 一見、痩せ型で壮年だが、酸いも甘いも噛み分けたような貫禄のある風貌。
「もう、ギーゼラ様の所にもボナパルト家からの書状が来ているかと思います」
「ああ。来ている。返事はまだ出していない」
「私も出していません。ギーゼラ様はどうお思いですか? ボナパルト家の声明を」
「嘘か真か分からぬが、一つだけ言えるのは、ナポレオンが何か企んでいるのは確かだ」
 顎に手をやり考えるギーゼラ。
 アルスはその顔を一瞬たりとも眼を放さず見ている。
「私も同じ思いです。あと、あの声明には王女の身元が全く分からない所が可笑しいと思うのです」
「詳しく聞かせてくれ」
「はい。今になってもそうですが、もう一か月以上も経っているのに、何も王女の身元は明かされていません。もし、王女たちも始末しているのなら、王と一緒に殺害されたと言っても良いと思います。それが、何も無いとはどうもナポレオンは何かを隠しているとしか思えないのです」
「一理あるな」
 ここは、さらに押して行こうとアルスは自身の心境を語る。
「もう一つはボナパルト家からだけの書状は怪しいと思いませんか?」
「それはあるが、ボナパルト家が最初に駆けつけたから、当然の事ではないか? たとえ、四刃家の中でボナパルト家と同じ時に王の死を知ったとしても、早く書状を出した方が勝ちだ」
「それが変なのです。聞いた話だと、他の三家も朝には王都に駆けつけたと聞いています。それなのに書状が来ない。我こそは王の為に戦うと宣言し書状を嗜めることは出来たと思います。元から四刃家は敵愾心が無くとも協力関係でもありません。それなら、我先にと旗を上げる事は出来たかと」
 アルスはギーゼラの表情の変化を見ながら、この続きを話すタイミングを計っている。
 微かに沈黙が部屋を支配した。
ギーゼラの表情を見逃さず口を開いた。
「遅かれ早かれ書状出しても届く日数など分りません。天候にはばれるかもしれませんでしたし、街道の状況が悪く回り道したかもしれません。このような状況を加味すれば、他の四刃家も書状を出すことは出来たはずです。大義とは強き者が叫べば大義無くとも大義と成り得ることがあります。これは、眼に見えぬ凶器です。最も凶悪な」
(アルス……お主は一体……。アルヌルフよ。お前の息子アルスは大器ある人物かもしれんぞ)
 ギーゼラは心の中で亡きアルヌルフに語りかけ、アルスには大器の片鱗があると伝えた。
 言葉は返って来なくとも、ギーゼラは伝えるべきだと思ったから。
 それが、友のためだと。
「アルスの言う事は理にかなっているし、そう考えれば変に思えて来るな。さすが、アルヌルフの息子だ。ここまで聡明になるとは思わなかった」
 ギーゼラはアルスを評価し快くなってきている。
「いえ、自分はまだ父の足元にも及びません」
 謙遜しアルスは控えめになる。
「もっと自分の力を認めるのだ。アルス、アルヌルフが懇意にしていた貴族たちがお前を悪く言うが気にすることではない。儂はそなたがうつけでも愚領とも思ってはおらぬ。そなたは立派なシャラントの領主だ。今こうしてそれを体現しているではないか」

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

紅い竜と四天王女 更新情報

紅い竜と四天王女のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング