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西岡の雑誌図書館コミュの西岡昌紀「歴史発掘/スターリンのドイツ侵攻電撃作戦」(その3)

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 私の手元に1冊の本がある(写真1)。1990年にイギリスで出版された英語の本で、『Icebreaker』(「砕氷船」)と題された、索引を含めて364ページの本である。
 著者は、ヴィクトル・スヴォロフ(Viktor Suvorov)という名のロシア人であるが、これは、ペンネームである。本名は、ウラジミール・ボグダノヴィチ・レズンという、1947年生まれの歴史家である。
 特筆すべきは、氏の経歴である。スヴォロフ氏は、1947年にウラジオストックの海軍軍人の一家にロシア人とウクライナ人の混血として生まれた。そして、軍人としての教育を受けたあと、旧ソ連の情報機関GRU(参謀本部情報総局)の将校に採用されたという人物なのである。
 スヴォロフ氏は、1968年、ソ連軍が、「プラハの春」と呼ばれたチェコスロヴァキア(当時)の自由化を弾圧する目的でチェコスロヴァキアに侵入した際、ソ連軍の兵士としてチェコスロヴァキアに送られ、初めて外国を見た。スヴォロフ氏が21歳の時のことである。
 ソ連軍の兵士として同国に真鍮した若き日のスヴォロフ氏が、ソ連軍の戦車の前でソ連に抗議するチェコスロヴァキアの市民たちを見て、何を思ったかは分からない。だが、この体験は、氏のその後の人生に大きな影響を与えたのではないかと想像される。

(西岡昌紀「歴史発掘/スターリンのドイツ侵攻電撃作戦」(月刊WiLL/2013年6月号94〜112ページ)96ページ)
https://www.amazon.co.jp/WiLL-%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%AB-2013%E5%B9%B4-06%E6%9C%88%E5%8F%B7-%E9%9B%91%E8%AA%8C/dp/B00CBKHNMK/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&dchild=1&keywords=WiLL+2013+6&qid=1592825042&sr=8-1

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 日本の保守系の雑誌などを読んでいて、あるいはネットの「保守」系の人々の言説を読んでいて不思議に思うことがある。
 それは、いわゆる「保守」とされる人々が、第二次世界大戦を中心とする近現代史について語ることは多いのだが、第二次世界大戦のヨーロッパに関係した事柄について書いているのを見ることが、非常に稀だということである。
 同じ敗戦国であっても、「ナチスドイツ」とは一緒にされたくないという気持ちが強いからだろうか。
 この小文が取り上げたような、独ソ戦に関する分析や議論も、保守系の雑誌や新聞には、ほとんど現れない。しかし、第二次世界大戦について分析、検討するのに、ヨーロッパで起きた事柄だけを避けて、日本に起きた事柄だけを論じることは無理である。
 それどころか、ヨーロッパで起きた事柄を議論することで、日本が辿った運命の背景と意味も正しく理解できることは明らかであるが、保守系メディアは、たとえばこの問題がそうであるが、第二次世界大戦中、あるいはその前後にヨーロッパで起きたことの意味を検証しようとしない(もちろん、「左翼」系メディアも、違った意味でそうなのだが)。
 私は、これでは日本人が第二次世界大戦の意味を正しく理解することはできないと考えている。

(西岡昌紀「歴史発掘/スターリンのドイツ侵攻電撃作戦」(月刊WiLL/2013年6月号94〜112ページ)111〜112ページ)
https://www.amazon.co.jp/WiLL-%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%AB-2013%E5%B9%B4-06%E6%9C%88%E5%8F%B7-%E9%9B%91%E8%AA%8C/dp/B00CBKHNMK/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&dchild=1&keywords=WiLL+2013+6&qid=1592825042&sr=8-1

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 日本の保守系の雑誌などを読んでいて、あるいはネットの「保守」系の人々の言説を読んでいて不思議に思うことがある。
 それは、いわゆる「保守」とされる人々が、第二次世界大戦を中心とする近現代史について語ることは多いのだが、第二次世界大戦のヨーロッパに関係した事柄について書いているのを見ることが、非常に稀だということである。
 同じ敗戦国であっても、「ナチスドイツ」とは一緒にされたくないという気持ちが強いからだろうか。
 この小文が取り上げたような、独ソ戦に関する分析や議論も、保守系の雑誌や新聞には、ほとんど現れない。しかし、第二次世界大戦について分析、検討するのに、ヨーロッパで起きた事柄だけを避けて、日本に起きた事柄だけを論じることは無理である。
 それどころか、ヨーロッパで起きた事柄を議論することで、日本が辿った運命の背景と意味も正しく理解できることは明らかであるが、保守系メディアは、たとえばこの問題がそうであるが、第二次世界大戦中、あるいはその前後にヨーロッパで起きたことの意味を検証しようとしない(もちろん、「左翼」系メディアも、違った意味でそうなのだが)。
 私は、これでは日本人が第二次世界大戦の意味を正しく理解することはできないと考えている。
 スヴォロフ氏が提起したこの問題に即して考えてみよう。ヒトラーがソ連に侵攻する以前に、実はスターリンの側が、ドイツと西ヨーロッパを電撃作戦によって征服しようとしていたとするスヴォロフ氏の主張を一つの補助線として引いてみると、第二次世界大戦に関する多くの問題が、これまでとは全く違ったものとして見えてくる。
 まず、2正面作戦が軍事常識から見て全く無謀なのに、ヒトラーがソ連に侵攻した理由は何だったのか?という永年の謎に、スヴォロフ氏の主張が答えを与えることはもう説明を要さないだろう。
 それに加えて、スヴォロフ氏が論じるように、資本主義国同士を戦争に導き、戦争の混乱を利用して資本主義諸国を共産主義革命に導くという戦略が、ロシア革命以来、ソ連と「国際共産主義運動」の一貫した目標であったとするなら、コミンテルンとそれを継承した国際共産主義の正体が何であったかを考えるうえで、重要な意味を持つ補助線であることも明らかだろう。
 
 そして、日本人に考えてほしいことがある。それは、スターリンにとって日本もまた「砕氷船」だったのではないか?という問題である。日本は蒋介石との軍事衝突を経て、ついにアメリカ、イギリスとの全面戦争に突入した挙げ句、その戦争の最後の段階でスターリンに背後から攻撃された。
 そして、領土とともに、満州や北朝鮮や樺太で多くの罪のない民間人が、スターリンの軍隊によって尊い生命と尊厳を奪われた。日本が歩んだこの歴史が、スヴォロフ氏がこの本に与えた題名(「砕氷船」)そのものだったのではないかと気が付き、戦慄を覚えるのは私だけだろうか?
 スターリン死後60年目のいま、日本人は、スヴォロフ氏の問題提起を日本に無関係な事柄としてではなく、自分たちの現代史を解明する重大な視点として、真剣に受け止めるべきである。

(西岡昌紀「歴史発掘/スターリンのドイツ侵攻電撃作戦」(月刊WiLL/2013年6月号94〜112ページ))
https://www.amazon.co.jp/WiLL-%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%AB-2013%E5%B9%B4-06%E6%9C%88%E5%8F%B7-%E9%9B%91%E8%AA%8C/dp/B00CBKHNMK/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&dchild=1&keywords=WiLL+2013+6&qid=1592825042&sr=8-1

にしおかまさのり:1956年東京生まれ。北里大学医学部卒。神経内科医。近著は「ムラヴィンスキー/楽屋の素顔」(リベルタ出版・2003年)。カラオケの愛唱歌は「ガッチャマン」とする未確認情報が有る。

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