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テニプリファンタジー小説コミュの(第7章)(後編)(テニプリファンタジー)「風の洗礼」

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だが、これにはセルフィーが納得しなかった。
「どうしたのよ不二!? あんた程の腕なら、あれくらいの球、
軽く返せたはずじゃない!!」
「・・・・」
不二は既に生気が殆どなく、その場に倒れ込んだまま動かなかった。
「約束や。そいつを返してもらうで」
「不二さん、不二さん! しっかりしてください。不二さん!!」
鳳が必死に不二に呼びかけると、彼はようやく目を開いた。
「不二さん。大丈夫ですか? 今、下に下ろしますから」
「お、お・・・とり・・・くん・・・僕・・・どう・・・し・・・て」
「竜巻に吸い上げられたんですよ。下で皆が待っています。帰りましょう。
皆の所へ」
「き・・・み・・・それ・・・」
「詳しい説明は後でします。まずは眠って下さい。今、下に降ろしますから」
と、鳳が不二に手をかけた時、凄まじい風が巻き起こった。
「うわ! な、なんだ!?」
「あの姉ちゃん。どうやら俺等を帰さん気やで」
見る間に辺りは黒雲が更に増し、竜巻の威力も増大していった。

とうとう竜巻は合宿所のすぐ側まで近づいていた。
「おいおい。このままじゃ、まじで全部潰されちまうぜ」
「跡部。俺達も行こう」
「あ〜ん? そんな必要ねえだろ?」
「2人が危ない目にあってるのに、放っておけないよ」
「俺もそれには賛成だ。確かに、俺は、人の怪我を治したり、毒を消したりするしか脳はないけど。だからって、仲間を見捨てる事なんて、できねえよ! 
行くぞ、芥川!」
「うん!」
2人は、竜巻が迫りくる空へ、飛び上がって行った。

跡部は迷っていた。
実質的にリーダーと言っても、いまだ1人では、なんの力も持っていないのだ。

今自分の手元にある、フォレストのカードと氷結のカードだけで、それ以外の
技はこれと言ってない。

鳳の様に、強い願いや思いを込めて魔術を発動させたり、

侑士の様に、カードをさまざまな形で使えたり、

ブン太の様に、人の毒を消したり、怪我を治したり、

慈郎の様に、友を大切に思う事で技を発動させ、翼を手に入れた。

無論、自分達は、そんな物を必要としていないのだが、誰かを思う気持ちを、
持った事がなかった。

自分は常にキングであり続ける事を、幼少期から学んでいた跡部の周りには、取り巻きはいたが、これと言って、本音をぶつけ合える、仲間は居なかった。

今、自分に出来る事。それが分からない。

だが、行ってしまった仲間を信用していないわけではない。

と、そんな事を思っていると、体が勝手に動いていた。

彼らの行った空へ舞い上がっていたのだ。

そして、彼等はセルフィーの攻撃で、苦戦を強いられていた。

いくらリースの力がなくなったと言っても、元風を使える彼女にとって、
風は操る道具でしかなかった。
「ウフフ。どう、私の風は。さあ、どんどん行くわよ〜」
彼女は風を使い、不二をかばう鳳を攻撃しまくる。

侑士はシルフィーユで応戦するが、精霊の力を十分に引き出せない彼には不利だった。

しかも彼は、シルフィーユを呼び出しても、風と風のぶつかり合いでは意味がないのだ。

そこへ、いきなり誰かの体当たりを受け、セルフィーは吹っ飛んだ。

その隙に、ブン太が近づき、不二の様子を見る。
「丸井さん。どうして?」
「お前さんだけだと、心配だからな。それより、不二を回復させねえと」
ブン太は手に緑色の光を凝縮させ、それを不二に当ててやる。

すると、不二は見る間に、元気になっていった。
「あ、あれ?僕は・・・」
「生気抜かれてたんだよ。大丈夫か?」
「丸井君。君、どうしてそんな事が」
「あ〜・・・話せば長くなっちまうから、そこんとこは突っ込まないでくれい」
「俺達、君達を迎えに来たんだよ〜」
「芥川君。2人とも、同じ格好しているけど、その服は」
「あ〜これはね〜」
「おっと。こんな所で話すのもなんだし、下に降りてからにしねえか?」
「だが、どうやらやっこさん。俺等を帰さんみたいやで」
「よくも、私の長年の夢を・・・私の宿願を〜〜!!!」
と、彼女は叫びながら、カマイタチをぶつけてくる。
侑士はすぐさま前に立ち、バリアでそれを防いだ。
「リースを・・・リースを返せ〜!!!」
「鳳!走れ!」
「はい!」
セルフィーは風と一体になり、行く手を遮り、リースを奪おうとする。
「大丈夫。君は、僕が守ってあげるから」
「でも、私のせいで、あなたまでが」
「心配しないで。それより教えて欲しい。その正当後継者ってどういう事なんだい?」
「風使いの正当後継者。その者は風の祭壇で洗礼を受け、それによって、正当な風使いとなります。でも、彼女には邪な思いがありました」
「風を使って、世界を我がものにしようとしたんですね」
「ええ。それに気付いた私は、セルフィーから抜けだし、地上に下りた。
穏やかで、優しい心の持ち主を探しました」
「それで、俺のクロスに、ずっと宿っていたんんですね」
「はい。変わらぬ優しさと、人を気遣う心を持つあなたなら、正当後継者に相応しいと考えたんです。
そして、貴方は私が思う以上に、他人を思いやる心を持ち、優しさで皆を支えてくれました。だから私は、
あなたを、正当後継者にしたいのです」
「俺が、正当後継者? でも、俺なんかがなっていいんでしょうか?」
「あなたには、十分それだけの素質が備わっています」
鳳は悩んだ。

別に、正当後継者がいやなわけではない。
ただ、自分にそれだけの素質があるかどうか不安だったのだ。

そんな不安を感じとったのか、セルフィーが彼を襲い始めた。

風と一体化した彼女は強い。
「このままじゃ、下の竜巻も・・・どうすれば・・・」
「祭壇です」
「え?」
「この先に、風の祭壇があります。そこへ向かって下さい。そうすれば、貴方の願いが叶います」
「俺の、願い・・・」
「そう。あなたの願いです」
「・・・・・」

だが、セルフィーはそれを赦さなかった。
祭壇に続く道を、竜巻の風で塞ぎ、更にそこからカマイタチを繰り出す。
それが、鳳を襲おうとした時、侑士が間に入って、バリアを張った。
「忍足先輩!」
「このまま突っ込む。ついて来れるな。鳳」
「あ・・・はい!」
「行くでー!」
バリアの形を変え、侑士が突っ込み、それに鳳が続く。
とてつもない竜巻の中へ突き進もうとする侑士は、バリアに全ての魔力を注ぎ、竜巻を破ろうとする。
「無駄な事を。いい加減、諦めたらどう?」
と、またカマイタチを飛ばしてくる。
「いっけー」
侑士の思いが勝ち、ついに竜巻を貫いた。
「なに!? 竜巻を貫いた!」
セルフィーが驚いていると、突然何所からともなく打球が飛んできた。
それは、見事にセルフィーに当り、一瞬で弱ったのを見抜いた侑士と鳳は、2人の力を凝縮させ、
バリアへ突っ込んだ。
「忍足先輩。今の打球って」
「・・・なんやかんやゆうても、やっぱ放っておけんかったみたいやな」
「え?」
「ってこんな話しとる間ないわ。第2ラウンド。行くで!」
「はい!」
侑士と鳳は手を繋ぎ、再び竜巻の壁を破ろうとする。

すると、今度はあっさりと抜けた。
「あれ?」
「なんやあいつ。跡部にめっちゃ興味しんしんやないか」
「え?まさか、跡部さんも、ここに」
「来てるみたいやな」
「助けに行かないと」
「その必要はあらへん」
「え?」
「あいつは、俺等の為に、自ら囮になったや。ここで引き返したら、水の泡やで」
「・・・・・」
「そない気落ちしな。お前にはお前の。跡部には跡部にしか、出来ん事があるんや」
「俺にしか、出来ない事?」
「そうや。あの風の祭壇に行って願うんや。そうすれば、
下の竜巻も止まるかもしれん。
今のお前のやるべき事は、地上の災いを祓う事や」
「・・・はい!」
鳳は、急いで祭壇を登る。

そして、頂上にある。風の紋章の中心で、深呼吸して、気持ちを落ち着け、
願った。
全ての災いからの解放を。

すると、紋章の中央部から風が溢れだし、鳳を包み込む。

それでも、彼は願い続けた。

すると、祭壇の周りにあった鐘が、順番に鳴りだし。全ての風が、鳳の体に入って行く。

彼はそれに耐えながら、必死に願い続けた。

一方地上ではその願いが通じたのか、竜巻がうその様に消えていった。
「竜巻が消えた」
「どうなってるんだ」
「奇跡だー!」
と、歓声が沸き起こる。

そして、しばらくすると、風がやんだ。

だが、行ったはずの鳳がまだ下りてこない。

侑士を先頭に、慈郎、ブン太、跡部と続く。

頂上では、鳳が倒れており、彼の服が変わっていた

それは、白い薄手のローブに、長ズボンを履き、緑色のサークレットをしていた。
「鳳! しっかりせえ!」
侑士が鳳の体を持つとうその様に軽い。
「こいつ、かるなっとる」
「まさか、失敗しちゃったの?」
慈郎が不安そうに言うと、クロスからリースが出て来た。
「いえ。成功です! ただし、彼はしばらく、動かすのは、危険です。今、彼の魂は抜けて、風と一つになっています」
「どうすれば、戻るんだ?」
「今、彼の魂は、風の精霊と、契約を交わしました」
「シルフィーユとかいな」
「はい。風を操る、全ての力を持って、戻って来ます。それまで、
そっとしておいて下さい」
「せやけど、それじゃ鳳を連れて帰られへんやないか」
「大丈夫です。それほど時間はかかりません」
と、そうこう言っているうちに、光の粒が現れると、それが鳳の中へ消えた。

そして、鳳の目が開いた。
「鳳。大丈夫か?」
侑士が声をかけると、彼は周りを見回した。

彼は改めて、仲間のありがたさを知った。
「みなさん。来てくれたんですね」
「当たり前やろ」
「心配したC〜」
「無茶しすぎだっての」
「まったく、手のかかる後輩だぜ」
「すいません。ご迷惑おかけして。そう言えば、セルフィーは?」
「あいつなら、俺がのしてやったぜ」
と、一枚のカードを見せた。

そこには、風と書かれていた。

「そっかこれで、彼女も1人ぼっちじゃありませんね」
「え?」
「彼女、俺達の力で、仲間にしてあげましょう」
「どういう事や?」
「この風の彼女は、リースに認めてもらえなかったです。だから、俺達の力で、彼女の心を入れ替えてあげたいんです。
こうして、仲間になれたんですから」
「優しいやっちゃな」
「俺達になら、それくらいできるだろい」
「うんうん。俺も、セルフィーちゃんと友達になりたいC〜」
「仕方ねえな。俺様が直々に調教してやるよ」
「お願いします。跡部さん」
「ほな。帰るで。俺達の世界に」
「はい!」

こうして、新たにセルフィーをカードとして取り入れ、仲間にした鳳達は、自分たちの世界へと戻って行った。

地上に降り立つと、さっきの竜巻の影響で、正門が壊れている以外はなんとか無事だった。

そして、さっそく練習に加わり、またいつも通りの夜がやって来た。
「ハア〜。やっぱ、練習後の風呂は最高!」
「なんだか俺、いっぱいありすぎて疲れたC〜」
「おい、芥川、風呂の中で寝るなよ」
そして、その近くにいた鳳は、なんだか不思議な気分だった。
風の精霊の正当後継者となった今、なんだか体が軽いのだ。
「不思議だ。まだ体が軽い」
「ああ。それ、しばらくしたら治るってリースが言うてたで」
「そうですか」
「あいつのシンボルは風やからな。これで実体化もいつでも可能になったみたいやで」
「そうですか。後でリースに、お礼言わないと。あ、そうだ。跡部さん。
今日は、ホントにお世話になりました」
「かまわねえよ」
「おや?なにかあったのですか?」
観月は問うが、詳しい事はなにも教えず、そうそうに風呂場から立ち去ってしまった。

そして、それぞれが部屋に戻り、眠りにつくと、なんだか柔らかい感触が、鳳の体を包み込む。
「なんだろ?これ、柔らかくて、とても温かい・・・ねむ・・・い」
彼の意識はそこで途切れ、夢の中へと落ち込んでいった。

今日は、リースにお礼がしたくて、彼女のクロスを首からさげたまま眠ったので、リースがちょっとしたお礼をしたのだ。
「ありがとう。私の、ご主人さま」
と、リースはクロスから出て来て、彼にキスをした。
「私も、全力で貴方を守るわ。だから、貴方もがんばってね。貴方を慕っていた人もきっとそう思ってるはずよ。おやすみなさい」

こうして、災いは去り、鳳は新たなる風の精霊の後継者となったのだった。

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