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テニプリファンタジー小説コミュの(第3章)(後篇)テニプリファンタジー「観月の野望

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ところが奇妙な事に、観月の部屋のドアがないのだ。
「あれ?ドアがないC〜」
「確か、ここだったよな? あいつの部屋」
ブン太がコーチに確認すると、彼は地図を出してきた。
「えーと。うん。間違いなく、ここのはずだ。しかし妙だね〜。扉その物が消えてるなんて」

跡部は何か嫌な予感がした。
「コーチ。悪いがここからは、俺達にやらせてもらうぜ。どうやらあの野郎。ただ隠れてるだけじゃねえ」
「というと?」
「データで全ての物をコントロールする力を手に入れちまった
と言った方が正しいな」
「へえ〜。おもしろいね〜」
「だからコーチはすっこんでろ!そっちはそっちで、回復作業とかそういう仕事があるんだろ?」
「アハハ。まあ、そうなんだけど、じゃあ、こっちが片付いたら・・・」
「介入してくれなくて結構です!!」
と、跡部はコーチの背中を押した。
「良い機会だったんだけどね〜」
と、コーチはその場を引く事にした。
「さて、問題はどうやって入るかだが、と、跡部が壁の一部に触れると、
いきなり口が開き、皆をその中へ吸い込んでしまった。

それと同時に、クロスと指輪が反応して、彼等を守った。

守りのシールドに包まれた彼等は、ゆっくりと、英語や記号などがならんでいる不思議な空間を飛んでいた。
「跡部さん、ここは?」
「どうやら俺達は、データの中にいるらしいな」
「データの中?」
「ん?跡部」
「ん?」
侑士が指す方向を見てみると、選手たちのデータがあった。
「あ〜!!」
「どうした?」
「丸井君。皆、あれ!」
「慈郎が指す方向には、これまで吸い取られてきた選手たちが、浮かんでいた。
「橘、千歳、千石。あ〜幸村、柳生まで。やっぱりみんな、あいつのせいで
こんな事に」
「とにかく、奴はこの先だ。急ぐぞ」
「おう!!」
皆は力を解放し、それぞれのズボンとボレロ衣装にトンガリ帽子の姿に変わり、先を急ぐ。

だが、やみくもに飛んでいるだけでは、どこに観月がいるのかわからない。

いや、もしかしたら、今度の事件は、逆に観月が被害者ですらあるのだ。

彼がデータを欲しがったあまり、なにかが彼に手を貸し、
この様な状態にしてしまったのだとしたら、観月も危ないのだ。
「くそ、野郎一体どこに隠れやがった」
「やみくもにとんどるだけじゃ、探し様がないで」
「待って下さい」
鳳はクロスの力を使い、魔の示す方角を示してもらった。

すると、クロスが反応し、光が一直線に何所かを指した。
「こっちです!」
「よし! 行くぞ!」
クロスの示す光の方角に、皆は飛んだ。

すると、そこにはテニスコートがあった。
「テニスコート?」
「ハッ奴は俺達が来る事、知ってやがったようだな」
跡部を中心に皆がテニスコートに降り立つ。

だが、どこかおかしい。
観月の身体には、いくつものデータがくっ付き、
更に同化しようとしているのか、彼の膝までが、データで覆われ、
既にテニスコート自体に固定されている状態になっていた。
「観月さん」
鳳が声をかけると、観月はゆっくりと顔を上げた。

が、その目は既に真っ黒になっており、こちらが見えているのか、
いないかすら分からない状態だった。

だが、鳳は冷静に対応する。
「観月さん。あなたが強くなりたい気持ちはわかります。ですが、このやり方は間違っています。
人から魂を抜きとったら、どんな影響が出るか、分かっているんですか? 
このままだと、皆死んでしまいます。今からでも遅くありません。
皆の魂を解放してください!」
「・・・・・」
「観月さん!!」
「そう言えば、君も宍戸君の事を思っていましたよね? 菊丸君と同様に・・・麗しき友情と言う奴ですか? 

あまりに陳腐で泣けてきますね〜」
「そういうあなただって、大切に思ってる人はいるはずです! 
そんな人はいないんですか!?」
「残念ですが、僕はただ、僕のデータ通りのテニスをするだけです。
そもそもここに来た理由もその一つですから」
「そんな・・・」
「どいてろ鳳」
「跡部さん」
「どうやらこいつにゃ、体で教えねえと分からねえようだからな」
「おいおい。だったら、俺にやらせろい」
「丸井君?」
「俺ん所の部長をデータ化されちまったんだ。借りはきっちりかえさねえとな」
「あなたもですか? まったく、人間というのは、何かを大切にするとか、
何かを守る為に戦うとか、
余分な物が多すぎますね〜」
「お前にはないってのか?」
「僕の頭にあるのは、ただ強くなる為のデータと、このアリスを育ててあげる事です。その為に僕は、どんな犠牲も惜しみません。こんな僕でも、
彼女が十分に、育つだけのデータが手に入るならね」
と、彼が指さす先には、白い球体があるだけだった。
「あれが、アリスの本体」
「どうやらこのバケモンを、倒す必要が、ありそうだな」
「そうはさせません!僕が、魂さえも犠牲にして育てて来た、この情報収集体、アリスを完璧にする為には、
もっと、もっと情報が必要なんだ。
ん? ンフフ。僕とした事が、うっかりしていました。情報物は
ここにいるじゃありませんか。しかも、こんな姿をして、
これは実に興味深い。是非ともそのデータを、頂きます!!」

観月が繰り出してきたデータの鞭が襲いかかってくると、すぐに皆はそれを
俊敏な動きでかわす。
「おい、テニスで勝負するんじゃねえのかよ」
「僕にとって、今の興味は君たちだ。テニスでやっても、勝ち目はない」
「やってみなきゃ分からねえだろい! だいたい、お前データマンっていう割には、自分の必殺技、一つも持ってねえじゃねえか」
「だからこそのデータマンです。緻密に組み立て、相手の弱点を突く。それが、データテニスの僕の指名!」
「こいつ半分以上いかれちまってるぜ」」
「丸井。奴の注意を引きつけろ。俺達はその間に、アリスを叩く」
「OK 頼むぜ。ぜってえ幸村や他の皆の魂、返してもらうからな」
「またもうるわし・・・き!?」
麗しき友情を言う前に、ブン太はボールを観月に打った。
「な、何を!? よくも僕の顔に・・・」
「そう言うのを、ナルシストっつうんだよ!!」
さらにもう一撃加えると、観月はついにテニスラケットを握った。
「やっとその気になったか」
テニスコートに降り立った2人は、向かい合う。
「どっちが行く?」
「ンフ。君の方からどうぞ?」
「んじゃ、いくぜ!」
丸井がサーブを打つと、すぐさま観月の体が反応し、いきなり暴れ球を繰り出してきた。
「これは橘の」
「どうですか?暴れ球は?」
「こいつ、吸収した奴のパワーを使えるのか」
ブン太はそう言いながらも、なんとか攻めようと必死だ。

だが、観月は神隠しからレーザービーム。
果てはバイブルテニスまで、あるゆる要素が使えるので、かなりの苦戦
を強いられた。
「たく、色んな技をばっか使いやがって、なら、これは、どうだ!?」
彼は得意技の、綱渡りを見せた。
「なるほど。君にはこの技がありましたか」
「あったりめえだろい。俺の天才的の妙技、綱渡りだ」
「ほう、では、ネットが変わったとすればどうでしょう?」
「え?」
「例えば、そのネットがこんな風になったら、そうなるのでしょう」
と、彼が言うと、テニスネットがギザギザになった。
「え〜!?」
「どうします?これでは、あなたの必殺技は使えませんよ?」
「なるほど。妙技封じって奴か。でもな〜一応そういう対策は、ちゃんとしてるんだぜ」
「ほう。流石は王者立海というわけですか。では、見せてもらいましょうか?
その実力とやらを」
「ねえ、はじめ。私も混ぜてくれない?」
「アリス?」
「私、やっと生まれる事が出来そうなの」
「では、ついに、そこから出る時が来たのですね」
「そうよ。私の、本当の姿に」
アリスがそう言うと、今まで球状だった物体が変化し始めた。
徐々に小さくなり、散らばっていた情報が彼女に集まる。

そして、彼女は人の形へと変化していく。長い手足の女性らしい姿と、
長い緑の髪になり、その美しい姿に、白いふんわりとしたワンピース。
更にこの場に合わせてか、靴は運動靴へと変化した。
「これが、君の望んでいた姿」
「そうよはじめ。あなたが手を貸してくれたから、私はこうして、
実体になれたの。お礼を言うわ。
ありがとう」
「美しい。君は、僕にとって、最高の女性です。今、その誓いをあなたに」
と、観月はアリスの手を取って、キスをする。それを見た丸井は、いやな予感がして、すぐさま2人の間に、ボールを打ちこんだ。

が、時すでに遅く、観月の体は、もはやデータの一部という感じで、彼の体には、マトリックスのような現象が起こっていた。
「遅かったか。あいつ、完全にあの女に食われてやがる」
「食われているとは失礼ですよ。僕は彼女と融合したんです。これで僕は、
あらゆるデータを見る事ができる。データに触る事だって可能だ。
それの何がいけないのですか?」
「いけねえも何も、お前、人間じゃなくなっちまうかもしれねえんだぞ!!」
「もはや僕にとって、人間かそうでないかなんて、関係ありませんよ。
この体があれば、あらゆる事が可能となるのですから。そんな事より、
試合を続けましょうよ。アリスもできますね。テニスは」
「ええ。データは十分に集まったわ。一緒に戦いましょう」
「ダブルスでってことかよ」
「丸井君。だったら、僕、丸井君と一緒に戦うよ」
と、慈郎が自らコートにやって来た。
「芥川・・・」
「一緒に皆を助けよう。その為には、観月の目を覚まさせないと。
大丈夫。俺、ダブルスやった事あるから」
「分かった。頼む!」

こうして、観月、アリスVS ブン太、慈郎との試合が開始された。

だが、データだけで緻密に組み立てられた観月のペースを中々崩す事が出来ず、苦戦を強いられたが、それでも、強い者と戦う事で、ワクワクする、
慈郎のメンタルのおかげか、丸井の方も、2人に引けを取らない。
「ナイスだ芥川。お前のその気持ち、感謝するぜ」
「エヘヘ。俺、丸井君とダブルス初めてだけど、スッゲー楽しい。俺もうワックワクだ〜」

一方鳳、跡部、侑士の3人は、この世界を調べていた。

先ほど、偶然鳳が、ここに来る前の観月の姿の映像を見つけたのだ。

だとするならば、あのアリスの出所も分かるはずだ。

だが、やみくもには探さず、彼らは自分達の力を駆使して探していた。

そして、ついに見つけた。
「あったで!あれや」
「でもテニスラケットじゃ、攻撃できませんよ」
「だったら、ラケット以外の物にすればいい。そう言って、跡部は目を閉じた。すると、指輪が反応し、フェンシングの剣に変化した。
「な、なんや?形が変わったで」
「言っただろ?願えば良いと。だから俺様に相応しい武器をくれって
願ってみたんだが、どうやら当たりだったようだな」
「じゃあ、もしかして・・・」
鳳が、この場に相応しい武器をと願った。すると、その願いは届き、クロスが長い剣になった。
「いけます!」
「よし。忍足は、慈郎の方を見てこい」
「分かった。心配いらんと思うけど、気いつけてな」
「俺様に向っていうんじゃねえ」
「ありがとうございます」

そして、2人と1人に別れ、鳳と跡部はその映像に思い切り剣を突き立てた。

すると、その映像が粉々に砕け散り、小さな鍵が現れた。
「こいつが元凶か」
「でも、どうしてこんな物が、観月さんに?」
「多分、作為的にだろうな」
「それじゃあ、この前の事件とも」
「ああ。仕掛けた奴は同じッて事だ」
「でも、なんでそんな事を?」
「わからねえよ。ただ、こいつがあれば、少しは何かの手がかりになるかもな」
「だといいのですが・・・」
ビシ!
「痛て!」
「てめえがしょぼくれてどうすんだよ。一番の力の使い手になるんだろ?」
「あ・・・」
「それにはまず、その力をコントロールしねえとな」
「だいぶ、できるようにはなりましたが」
「この事件のせいでもあるがな。まあ、鍵は手に入れた。忍足の所に戻るぞ」
「はい!」

一方忍足は、とんでもない物を見ていた。

それは、楽しそうに試合をしている、ブン太と慈郎の姿だった。
もう片方の、観月は、逆にいらだちを隠せないという状態が、手に取るように
分かった。
「慈郎の奴。めっちゃ楽しそうやな。まあ、それがあいつのええとこっちゃええとこやけど、ましてや今回は、あこがれの丸井とのダブルスやし、
テンション上がりまくってるやろ。持久力がないから心配しとったけど、
大丈夫そうやな」
「どうだ?忍足?」
「2人は?」
「あの通りや、めっちゃ楽しそうに試合しとるわ」
「でも、観月さん、様子が変ですよ」
「それもそのはずや。おそらく、あのアリスって奴と、完全同化を
確立したやろな」
「同化!? じゃあ、観月さんはもう・・・」
「向こう側の人間や、ちゅう事や。これは、いくら望んでも、治らんやろ。
こっから連れて帰れるかも、
怪しいで」
「そんな・・・」

そして、勝敗が決まった。

決めたのは、桃城のダンクスマッシュ顔負けの、凄まじい高さからのスマッシュだった。
「よっしゃ〜!」
「勝った! 勝ったよ丸井君!」
「ああ。お前もよくやったな」
と、お互いをたたえ合う。すると、観月の体が、ボロボロと崩れ出した。
それを見た跡部は確信した。このままでは、この空間ごと、観月が消えると。
「丸井! 慈郎! お遊びはおしまいだ!急いでそいつを浄化して、ここから出るぞ!」
「え? あ、ああ」
ブン太は、観月の体に手を当て、浄化する。
まだ、人間のぬくもりが消えていないのならば、必ず戻せると信じたのだ」
「頼むぞ。戻ってくれ!」
彼は全身全霊を込めて祈る。
と、その想いが通じたのか、観月の体が、人間の体に戻りだしたのだ。
「よっしゃ! もう一息で・・・」
「させない!」
突然横手から、テニスボールをぶつけられ、ブン太は吹っ飛んだ。
「丸井君! 大丈夫?」
「あ、ああ。けど、パワーがほとんど残ってねえ。後、後ちょっとなんだけど」
「はじめは私の物よ。私だけの、大切な人。お前達なんかに渡さない!」

その時、突然侑士がアリスの背中にある鍵穴に気付いた。
「あれや。跡部、さっきの鍵を!」
「ああ!」
跡部が侑士に、鍵を投げてよこすと、彼はその鍵を、アリスの鍵穴に
差し込んで回した。

すると、彼女に蓄積されていた、あらゆるデータや魂達が抜けていく。

皆はそれを見て、安堵した。

これで、外の連中が救われると。

だが、ココからが大変だ。

アリスと一体化しようとしていた観月の体が、またアリスの体に入ろうとする。
「この人だけは絶対に渡さない。例え、データがなくても、この人の中にあるデータがあれば・・・」
「だが、それもこれで終わりだ。てめえのデータ世界は、
もう壊れ始めてやがるぜ」

アリスが周りを見ると、いままで形成されていたデータ達が、次々と崩れ出し、魂達も、空いた隙間から逃げていく。

「ウソ。なんで!? 私の作りだしたデータは・・・そうよ。そうだわ!ねえ、はじめ。あなたのデータを私に頂戴。そして、もう一度2人だけの世界を・・・キャ」
突然アリスは吹き飛ばされ、地面を転がった。

攻撃したのは慈郎だった。
「そんなの、友達じゃないよ。テニスっていうのは、データでやるものじゃない。だから、たとえ、どんなデータがあっても、意味はないんだよ」
「忍足、悪いんだけど、丸井君に力を半分上げて。
丸井君1人じゃむりみたいだ」
「わかった」
「俺も手伝います」
侑士、慈郎、鳳の3人の力が1つになり、観月を元の肉体へと戻していき、
ついに完全に元に戻った。

が、肝心の観月は目を覚まさない。
「観月!観月!しっかりしろ!!」
丸井は観月をゆするが、それでも目を覚まさない。

その時、なぜかアリスの方から観月に口付けをする。

すると、観月の体が光を放ち、彼は目を覚ました。
「アリス?」
アリスは、目に涙を浮かべていた。
「なぜ泣いているのですが?」
「あなたが、あなたが死んでしまったら、私はどうなるの?」
「え? 僕はあなたに誓った。共に完全なデータを作ろうって」
「それは、あなたの体なしには、できないの・・・それに、データは、あなたの世界と、ここの世界とは違うわ

・・・新鮮なデータは、外の世界から、あなたが持ってきてくれたわ。
私は嬉しかった。でも、あなたは、テニスが好きなんでしょ?」
「まあ、嫌いではありませんよ」
「だから、だから・・・あなたとは、もう一緒にいられないの。この空間も、
もうすぐ消滅するわ。でも、データはまた、作り直すことはできても、
人の命までは、作り出す事は出来ない。あなたを失うなら、私、この空間から、
消える。はじめ、あなたは、仲間の所に行きなさい」
「でも、でも、僕は・・・」
「私は、あなたの手元に残るわ。そうすれば、世界は違うけど、
分かりあう事は可能よ」
「分かり合う?」
「つまりは、友達になろうって事だよ。彼女は消えても、データとしては残る。でも、君までデータになっちゃったら、寂しいって思うんだよ」
「寂しい? どうして?」
「あなたが、人間だからよ。私は所詮、データとして、作られた存在。
だから、私はこの世界でしか、生きられない。でも、あなたは他の世界に、
生きる事ができる。さっき、あなたを抱いた時、この人達は、
必死で、あなたを助けようとしてくれたのよ。だから、
あなたは1人じゃないの」

アリスはそう言って、出口を示した。

「あそこが出口よ。さあ、行って! 私は、あなたと共に生きたいの。
離ればなれになるわけじゃない。いつも、心は、同じよ」

それが、観月が聞いた、彼女の最後の言葉だった。

跡部を先頭に、侑士、ブン太、慈郎、鳳と続いて、外に出ると、空間はまるで砂の様に消えてしまい、1枚のカ

ードが落ちていた。

そこには、マトリックスと書かれていた。
「このカード。丸井君にあげる」
「え?でも、お前も・・・」
「だって、あれだけの事をしたのは丸井君だよ。だから」
「・・・ありがとな。ところで観月は?」
「こっちだ」
2人が跡部の方を見ると、素っ裸だった彼に、侑士が布を巻いてやっていた。
「大丈夫なの?」
「単に寝てるだけだよ。まったく世話焼かせやがって」
「それはそうと、他の皆は?」
「そうだ。ちゃんと起きたのかな? ちょっと見てくる」
「俺も行きます。丸井さんは、ここにいて下さい。一番力を使ったのは、
丸井さんですから」
「ああ。そうするよ」

そして、医務室では嬉しい事に、みんなが何事もなく目覚めていた。
「良かった。全員無事みたいですね」
「めでたし、めでたC〜」
と、慈郎と鳳の顔から、笑顔がこぼれた。

一方、観月の方は、目を覚ましたと言っても、まだぼ〜っとしている。

一応部屋の扉が元に戻ったので、彼の部屋に運びこんだ。

時折アリスの名を口にする観月に切なさを感じる。

あんな別れかたしかできなかったのかと、疑問に思う。

だが、アリスは正しい選択をしたとも言える。

あのままあの空間にいたのでは、被害はさらに拡大していただろう。

そうなると、色んなところへ情報の手を伸ばし、大変な事になっていたかもしれないのだ。
「やっぱりまだ、アリスの事、おもとるみたいやな」
「らしいな。こういうのに、感傷的になるのはガラじゃねえんだけどな」
「ま、こいつもこれで、少しは違う方向にも、目を向けるじゃねえか?」
「違う方向?」
「データでテニスをするんじゃなくて、自分の技を創り出すとかだよ」
「ま、そう簡単にはいかんやろうけどな。後はこいつ次第や」

と、その時、観月の手に何か握られている事に気付いた。
「あれ? こいつ、なんかもってねえか?」
跡部が手を開けると、そこにはUSBがあった。
「USBやん。なんでこんな物もっとたんや」
「おそらく、欠片だろうぜ」
「欠片?」
多分、奴は消滅する前に、USBに移り、いつでも観月を見ておきたくて、
そこに意思を記憶したんだろう」
「ほならこれは」
「ああ。あいつの、こいつを思う、自分の本心かもしれねえって事だろう。
ま、暴れ出すぐらいの、パワーはないだろうがな」
「ま、こいつが起きたら、すぐに気付くだろうぜ。俺はPC疎いから、使い方分からねえし」
と、丸井が苦笑いしながら言うと、観月の体がピクリと動いた」
「あ」
皆で観月の顔を覗き込む。すると、彼の目が、ゆっくりと開かれた。
「・・・あ・・・こ、ここ、は」
「お前の部屋や。大丈夫か?」
「僕、は・・・そうだ、アリスは・・・」
「ここや。恐らく消滅する寸前に、こういう形でも残りたかったんやろう。使い方はお前にまかせるわ」
そう言って、侑士はUSBを渡した。
「ここに、アリスが・・・」
観月はPCを起動し、USBをセットする。

すると、PCにアリスが映し出された。
「アリス!」
「目覚めたみたいでなによりね。大丈夫よ。私はここにいるから。あなたは、
あなたの思いを通して。
私は、こんな形でしか、もう会う事はできないけど、応援ぐらいはできるから」
「アリス・・・分かりました。僕も、僕の本当のテニスを探してみます」
その言葉に、アリスは頷く。
「がんばって。あなたなら、必ずできるはずだから」
「はい!」

元気そうな彼を見て、跡部と侑士とブン太は黙ってその場を後にした。

そして、数日後、猛練習に練習を重ねた彼は、シンプルながらも強いショットを打てる様になり、9番コートか

ら8番コートに上がる事ができた。
「アリス。僕、やりました」

彼の目には、微笑んでいるアリスの姿が見えた様な気がした。

こうして、災いはまた一つ消し去られた。

コメント(4)

ドアがなくなってるってのが幻想的でいいですね。
>>[1] わ〜い(#^.^#)ありがとうござい〜す。
喜んでもらえてうれしいです。またほかのも診てくださいね。
>>[2] いやドアってのはファンタジーによく出てくるんですが、出現するパターンはあっても消えるのは聞いたことないんで。面白いと思ったんです。また見ます。
>>[3] 扉が消える様にしたのは、そう簡単に、来させない為にというのもあります。だから、あの方法にしました。喜んでいただけでうれしいです。

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