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テニプリファンタジー小説コミュの(第2章)(後篇)テニプリファンタジー「狙われた菊丸」

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まずは、ブン太が医務室に入り、そこでルシアも一緒に入る。それと同時に
ルシアが姿を現し、2人がルシアに気を取られている隙に
ブン太が、治癒能力で浄化するという物だった。

医務室をノックし、まずはブン太が医務室に入った。
「よ。そいつの調子どうだ?」
不二と手塚に声をかけるが、2人とも反応がない。

代わりに医師が説明する。
「どういうわけか、生体反応はあるんだが、それがかなり小さく、
目も光を失ったままになっている。まるで、魂が抜けたような状態だ」
「そうですか」
「英二。お風呂でも様子がおかしかったし、それと同時に、
こんな事になるなんて・・・」
「不二。菊丸と話した時の事を、説明してくれ」
「うん。なんか英二、いつになく元気がなくて、
練習の時にはちゃんとしていたのに」
「確かに、風呂の湯が突然浮かびあがるというのも妙だ。
完全に閉じ込められた状態だったからな。その時はどうだった?」
「その時も、動こうとさえしなかったんだ。まるで、人形のようになって」
「人形?」
「それで、流石におかしいから連れて来たんだけど、
一体どうしてこんな事になったのか」

ブン太に付けた盗聴器から、話の内容を聞いていた跡部は、ある仮設を立てた。

だが、この仮説を成立させるには、情報が必要だ。
「ルシア。そいつの状態を、透明化したまま見られるか?」
「あ? そら簡単やけど、どないしたんや」
「どうも俺様の直感ではそいつ、かなりやばい事になってる
かも知れねえって事だ」
「やばい事?」 
「さっき言ってただろ?まるで人形のようだと」
「! ちょいまち跡部はん。まさか!?」
「そのまさか、かもしれねえって事だ」
「ほな見てみるわ」
ルシアは透明化したまま、菊丸の様子を見る。

そして、その直感は当たってしまった。
「アカン。これは魂だけが抜かれてる状態とちゃう」
「どういうことだ?」
「要するにこの兄ちゃんの魂は、別の所につながれたまんまや。
たとえこのまま目ぇ覚ましたとしても、それはもうこの兄ちゃんやない!」
「要するに、化けるって事か」
「ただ化けるだけとちゃう。このままやとこの兄ちゃん。
全ての記憶をなくして、完全なバケモンになってしまうんや」
「どうすればいい?」
「まずは魂抜いた本人見つけんと」
「だが、俺達だけじゃ、手が足りねえぞ」
「う〜ん。いつごろこないな状態になったかが分かれば、話は早いやけど」

それを聞いた跡部は考えた。メンタルコーチは、以前自分達に助けられ、
今後はこの事を公表しないかわりに、協力させてくれと言って来たのだ。

この施設には、あらゆる所に監視カメラがある。もしもその中に
菊丸が映っていれば、そこから場所を割り出す事が可能だ。

跡部はそう判断し、慈郎にその事を確認した。
「おい慈郎。たしかお前、メンタルコーチとは、災いの件で、
協力すると言ってたな」
「う、うん。黙る代わりに出来るだけ協力するって言ってた。
選手に迷惑だからって」
「なら、昨日の夜、消灯時間を過ぎた辺りの映像を確認させろ」
「え? なんでその時間って分かるの?」
「ドラキュラが一番動くのは夜で、奴がおかしくなったのも夜だ。
なら、夜に集中しているはずだ」
「分かった」

だが、向こうもこちらの動きを察していたらしく、向こうからデータを
持ってきてくれた。
「やっぱりここにいたのかい?」
「あれ? どうしてここが」
「あのお風呂の騒ぎでね。それに、菊丸君が意識不明というじゃないか。
となれば、君たちが動き出すと思ってね」
「それって・・・」
「アハハ。ま、直感と言っても良いかな。で、どれなんだい? 一応、これが
昨日の彼の状態だが」
と、ノートPCを起動させ、昨日、菊丸が通った道が映しだされていた。

そして、ある所で跡部が気付いた。
「ん? あ、ここだ!」
「ん〜。何か光ってるね。なんだろうね〜これ」
「丸井、ルシア、そこはもういい。引きあげろ」
「え? もういいのか?」
「向こうさんから情報を持ってきた。それで、可能性のある部分が
見つかった」
「わかった。邪魔したな。じゃ、こいつが起きたら知らせてくれ」
と、ブン太は、菊丸の目を閉じた。
そして、耳打ちするように言う。
「待ってろ。必ず、助けてやるからな」
「丸井君?」
「え?あ、いや、なんでもねえよ。邪魔したな」
と、出て行った。

その時、雑用係にされていた堀尾が入ってこようとして、
あやうくぶつかりそうになった。
「わ〜! って丸井さん」
「あれ? 君たしか青学の。なんでこんな所に」
「一応ここの雑用係させられてるんスけど、菊丸先輩の事が気になって
ちょっと見に来たんですよ」
「菊丸の事って・・・お前、菊丸の事、知ってるのか?」
「え?だって同じ中学で・・・」
「そうじゃなくて、昨日あいつに何があったのかだよ!」
「あ、はい。荷物運んでたら、ホールの方で音がして、
そっち行ってみたら、菊丸先輩が倒れてて」
「昨日も? 時間分かるか?」
「え〜と、たしか、9時ちょっとすぎだったと思います。
俺、荷物しまいに行く途中、時計見ましたから」
「分かった。安心しろい。あいつは俺達でなんとかしてやるから。
何か分かったら、俺達の所に来い」
「へ?」
「じゃな」
「???」
堀尾の頭の中は、?マークで一杯になった。

その情報を跡部に伝え、ようやく仮説が確信に近づいて行った。
「やっぱり、こりゃまずい事になったな。
今回の災いは自然発生的な物じゃねえ。
明らかに、誰かが仕組んだ事だ」
「堀尾の話しだと、倒れて居たのを見たのが9時って事は、
その時間に、ホールで何が起きたかだ」
「何か、確かめる術はないのかい?」
「まあ、あるっちゃあるんだけど・・・」

流石にここまで話してしまうと、この男は絶対に首を突っ込んでくる。

が、これにはリース本人の力が必要になってくる為、
介入は極めてマズイ。
「わるいがなコーチ。流石にこっからはレッドゾーンだ。こっからは、
俺達の仕事だ」
跡部はそう言うと、ホールの方へ向かい、残りのメンバーも後に続く。

1人残されたコーチは、仕方なく、持ち出してきたデータをまとめていた。

問題のホールに付くが、何も痕跡は残されていない。
「リース。お願いします」
鳳はクロスに願い、リースを呼び出した。

リースは一目で、なにがあったかを調べだした。
「やはり、なにか魔術的な事があったのは、間違いありません」
「ア〜ン?。て事は、何か魔女がいたって事か」
「いいえ。このタイプの術式は、バンパイアがよく使う物です」
「ば、バンパイア〜!ってなんだっけ?」
「あら〜」
と慈郎の言葉に全員がコケル。
「要するに、血を吸う化け物。吸血鬼の事だよ。お前、
本かなんかで読んだ事ねえのかよ」
「俺〜あんまり本とか読まないから知らないC〜」
「たく、知らねえのにびびってんじゃねえよ」
「バンパイアちゅうたら、人間の生き血を吸って生きる
バケモンのこっちゃ。
そんで、ニンニクと十字架を嫌い、夜に活動するもんや」
「へえ〜。忍足詳しいね」
「まあ、常識的範囲やけどな」
「でも、そのバンパイアが、どうして菊丸さんを? 普通なら、
女性を狙うはずなのに」
「恐らく今回出ていたバンパイアは、♀のバンパイアなのでしょう」
「え?♂とか♀とか性別あんの?」
「あるに決まってるだろい。でなきゃどうやって子孫残すんだよ」
「たしか、♀のバンパイアは、めったに人を襲わんはずやけど、
今回に限ってなんで菊丸を襲ったんや?」
「ウチも同じ事考えとるんやけど・・・ん?まてよ。リース。
もしかしてあの小僧」
「ええ。恐らくは」
「どうしたんですか?」
「急いだ方がいいでしょう。あのままの状態では、次の夜には、
血を求めて歩き回ります。どこかに隔離しないと」
「え?それじゃあ菊丸さんは・・・まさか」

鳳もその事に気付いた。

もしこのままの症状で菊丸を放置すれば、菊丸自体が、バンパイア
となってしまうのだ。
「それじゃあ、俺の浄化も」
「恐らく、今のままでは効果はないでしょう」
「そ、そんな〜このままじゃ、ほんとにやばいC〜」
「菊丸さんを、バンパイアにするわけにはいかない。なんとか、
なんとかしないと」
「フン。おあつらえむきだな」
「え?」
「リース。確かそのバンパイア。♀だっていったよな?」
「はい」
「なら、恐らくバンパイアにした奴が迎えに来る。そこを狙えば、
同時に叩く事は可能じゃねえか」
「ええ〜!?」
「それじゃ菊丸が・・・」
「タイミングが勝負だ。奴が迎えに来た時。その時にこいつでな」

跡部の手には、フォレストのカードがあった。
「そうか、それで」
「そういう事だ。詳しい算段を決める。
まずは、いつ来るかだ。それによっては、狂いが生じる。まずは、
その計画からだな」

こうして、菊丸奪還と、バンパイア捕獲作戦を立てる事になった。

それからまもなく、菊丸の様子にも変化が見られ、
夜、宿舎内を徘徊し始め、その様子は、メンタルコーチが全て記録する。

本来なら、ここまで付き合わせるつもりではなかったのだが、変化を見続け、
それによって、進行度の具合をチェックするには、
うってつけだった。

それらを跡部達に報告し、日数や今後の天気などを確認する。

そして、その夜、菊丸は外に出た。

普通なら、オートセキリュティが働くはずなのだが、なぜかそれが勝手に
はずれ、菊丸を外へ導く。

彼は既に、目が緑と赤の猫の様な目になり、小さいながらも牙が生え、
更には手と足の爪が、鋭くなっていた。
「なんだろう? この感じ。力が溢れてくる。飛んでいきたい。月の光へ・・・」

満月が、彼に、パワーを与える。
そして、ついにその時が来た。

彼の背中が破け、羽が生え出したのだ。

すると、月の向こうから、誰かがやってくるのが見えた。

そして、その者は地面に降り立つ。
「アルテ・・・」
「迎えに来たの。立派になったじゃない。さあ行きましょう。
私たちの世界を作りに」
と、アルテが手を出すと、菊丸もそれに従うように、手を出した。
「今だ!!」
跡部の合図で、彼はフォレストを召喚し、菊丸を拘束すると、
今度はブン太が飛び出し、背中に思いっきり手を当てた。
「うわあああああ!!!」
浄化魔法で苦しむも、すでに拘束された彼には逃げる術がない。

徐々に煙の様な物が出て、彼を浄化する。そして、翼は消え、
爪も元の状態に戻る。
効果があったのか、菊丸は完全に気を失っていた。

だが、ブン太もただではすまず、こちらも地面に倒れこむ。

この様子を見たアルテは、すぐに逃げようとするが、フォレストは
彼女の翼に絡みつく。
「な!? おのれ! 私をだます為に、わざと進行を!」
と彼女がまくしたてると、跡部や侑士達が姿を現した。
「出やがったな」
「どうやら、こいつが本体やったようやな」
「丸井君。大丈夫?」
「あ、ああ。ちょっと、パワー使いすぎちまったけどな」

彼らの姿を見たアルテの怒りは頂点に達した。
「よくも私の大事な主人を。さあ、英二。一緒に行きましょう」
「う、うわ・・・ああああ・・・・」
「そうはさせません!」
苦しむ菊丸前に、鳳が立ちはだかり、クロスを光らせる。

すると、アルテは嫌がった。
「クっ! 私の嫌いな物を・・・いいわ。だったら、あなた達のお得意な、
これで勝負しましょう」
彼女はそう言うと、ラケットを持った。
「テニスでやろうってのか。フッ。上等じゃねえか」
「待ちや跡部、お前はこの前やったやろ。今度は俺の番や。せやな〜
どうせやるんなら、特設ステージで頼むわ」
「・・・フン。そうね。じゃあ、どうせ賭けるなら、こうしましょう」
と、彼女が目を光らせた次の瞬間。

侑士以外の皆が上空に持ち上げられ、下から大量の血液が流れ込み、
それが縄のようになって、皆を拘束する。

更にその外側にも水が檻の様になり、皆を水の中に閉じ込めた。

だが、どういうわけか、菊丸だけは、別の檻に拘束しただけだった。
「なんや、結構気にいっとるみたいやないか」
「当然でしょ。だって、私の夫となる人に、そんな酷い事、
させるわけないじゃない。それにほら、あなたの周りも
気を付けた方が良くてよ」

なんと侑士の周りには、、無数の棘が生えていた。
「刺された時点で俺の負けっちゅうわけか?」
「それじゃ面白くないじゃない。イヤね〜。その棘には、
特別な細工をしてあるの。それがなにかは、ひ・み・つ。いいわね?」
「フン。ホンマ。男を見る目だけは、うるさい女やな」
「それはどうも。あなたにサーブをあげるわ」
「ほな。いくで〜!」
侑士がサーブを放つと、すぐさま彼女も応戦する。

かなりのスピードの持ち主という事は分かった。
「スピード勝負っちゅう事か。謙也と似とるな」
「しゃべってていいの? ハッ」
「彼女のスピードに、侑士も応戦するが、これはかなり苦戦しそうな
戦いになっていた。

そして、彼女が1ゲーム取ると、棘が忍足の足に刺さった。
「グッ!!」
「言ったっでしょ?その棘は怖いって」
「こういう事かいな」

その棘は、刺さると、侑士の血を抜き取り、それが彼女の手に渡る。

すると、彼女はその血を飲んだ。
「う〜ん。まあまあね。でも、あなた、もっとも〜っと
熱くなれるんじゃない? 熟成するまで遊んであげるわ」
「そら、こっちの台詞や」
侑士は得意の(心を閉ざす)を使った。
「ん? 気配が消えた。でも、私からしたら、そんなの何でもないわ。
私には、人の血液が心臓に流れるまで見えちゃうんだもの」

その様子を見ていた跡部は、思った。

「この試合、かなり忍足には不利だ。奴に心を閉ざすが使えない以上、
こちらに勝ち目はない。
後は忍足のスタミナと、パワーで押し切るしかねえ」

そして、試合開始から、かれこれ16分程が経過したが、
どちらも五分五分といった試合になり、彼の方は、
すでに棘を2〜3回突き刺され、
何度も彼女に取られていた。
「ハア、ハア、ハア。なんちゅうしぶといやっちゃ」
「どうしたの?もう終わり?」
「んなわけないやろ?」
侑士はふら付く足をなんとか立たせ、体制を立て直す。

ふと、皆の方を見ると、跡部は平気そうな顔をしているが、
丸井と慈郎は、息苦しそうにしている。

鳳の方は、クロスの光でガードされて無事だ。

だが、鳳の本心は分かっている。本当は全員を守りたいのだが、
この力を他に使ってしまうと、
菊丸を完全に解放する事が出来なくなってしまう。

そして、今度は菊丸の方を見る。

彼はまだ完全には浄化されていない。

完全に助けるにはこの女に勝ち、鳳のパワーが必要不可欠になってくる。

今自分は、大事な役目を担わされている事を、理解した侑士は、
自然と焦りの色が見え隠れしている。

すると、途端に、腕が震えだした。
「なんやこの感覚。恐怖? いや違う。この感覚はあの時の」

彼は思い出した。全国大会準々決勝で、青学の桃城と当たった時、初めて
体験した感覚。身体のセーブが効かなくなり、熱く燃えあがらせた、
あの時の感覚に似ていた。
「こんな状況でも、まだあの時の感覚が、なんでやなんでなんや!」
「それがお前の答えだからだ。忍足!」
「! 跡部」
「解き放て、自分の持てる全ての力を、お前の力は、
そんなもんじゃねえだろ!」
「俺の力・・・」
その隙を付いてか、彼女はなおも攻撃を続け、忍足から血液を奪う。
「迷ってる暇なんて、ないんじゃない。今あなたには、やるべき事、
あったんじゃないの? そもそも、あなたはなんでここにいるのかしら?」
「!」
その言葉で、彼は我に返る」
そうだ。どうして自分は今、この女と戦う事になったのかを思い出した。
「そうや。そうやったんや! 俺は、お前を!!」
彼の力が解放されたのか、指輪が光り輝きだし、
侑士を水色のボレロ衣装に変えた。
「ん? この力は・・・ウフなるほど。あなたも、
あの子達の仲間ってわけね。いいわいいわ〜あなたの血が
熟成していくのが見える。
この極上の血、存分に味あわせてちょうだ〜い」
彼女が放ったサーブは、ライジングショットとなって彼に迫る。
だが、忍足はそれを、パワーにしてヒグマ落としで返した。
「何!? 返した!?」
「悪いけどな〜。極上の血を飲ますわけにはいかへんのや!」
侑士が放った強烈なサーブはコートを駆け抜け、一瞬にして、ポイントを
奪った。
「なんなの?こいつ。さっきまでとまったくプレイスタイルが違う。
冷静さを失ってまで、まだ私に攻撃できるなんて」
そして、もう、2人とも、立っているのが、
やっとの状態にまで達していた。

後の勝敗は、どちらかが倒れるまでだ。
「桃城、あんときの勝負では礼を後で言わんといかんわ。お前のおかげで、
俺は、リミッターを外して、戦う事を覚えた。そして、皆にも」
「何なの?この子、何の為に、ここまで戦えるの? 私のテニスじゃ、相手に
ならないって言うの? でも、お礼は言わないとね。あんたみたいに私を
本気でゾクゾクさせる相手なんて、めったにいないんだから!だから、
私は全力で、あんたを潰すわ!」
「それは、こっちの、台詞や!!」
渾身の一撃を、彼女に思いっきり叩きこんだ彼のボールは、
凄まじい回転をしながら、彼女に迫る。
「なめるな〜!」
と、彼女がそのボールを打とうとした時、ボールは想像以上の威力を発揮し、
彼女のラケットを弾き飛ばした。

こうして、勝敗は決した。

勝ったのは侑士だった。

彼女はその場に倒れこみ、煙のようになると、姿が変わり、
1枚のカードになった。
そこには、ファンタジーと書かれていた。
そして、皆を拘束していた呪縛も解けた。
その後、空間は消え、彼等は元の場所に戻っていた。

だが、これで終わったわけではない。
最後の大仕事。
菊丸を元の人間に戻すという仕事が残っていた。

だが、精魂尽くした彼はその場に倒れこんだ。
「忍足先輩! 大丈夫ですか?」
心配して鳳が駆け寄ると、彼はすぐに菊丸を指さした。
「俺は、平気や・・・急いで、あいつに・・・クロスで・・・元に、
戻さんと・・・まだ、あいつは・・・ハア、ハア・・・
完全には戻りきっとらん。また、いつ暴れるか分からん・・・今、
あいつを救えるんは、お前、だけ、や・・・」
「忍足先輩!」
「鳳、忍足はいい。それより、早くあいつにクロスを・・・」
「ぐ!ああああ」
「やっぱ抜けきってねえ・・・あの羽が完全に生えたらアウトだ!急げ!」
「はい!」
「俺も手伝う」
と慈郎も鳳の後を追う。

菊丸は胸を押さえ、何かに耐えているようだが、そんな彼を無視して、
羽は、背中から突きだそうとしていた。

鳳はクロスを菊丸に向けて願った。

そして、次郎は呪文を唱える。

「汝を侵し力よ。我、汝にその力の永遠の眠りを命ずる。バンパイア、封印!」
すると、次郎と鳳の姿が、変わる。
鳳は黄緑に、次郎はオレンジ色のパンツとボレロにショートブーツ。
そして、頭にのっかるトンガリ帽子。

そして、菊丸を苦しめていた力が、まるで、月から引っ張られるように
抜けていく。

牙は消え、翼も背中に戻り、目も元の色に戻っていき、
全ての呪いが彼から消えた。

すると、彼はぱたりと倒れ、動かなくなった。
「菊丸さん!」
鳳は心配して、自分も歩くだけでもやっとなのに、彼に近づく。
彼の顔を見ると、目の下が紫色に変っており、顔もやつれていた。
「大変だ! このままじゃ菊丸さんが」
「とにかく医務室へ」
「はい。あ、っと」
あやうくよろけそうになった彼を、跡部が支える。
「まったく。それだけのパワーを使ったんだ、ふらつくのも当然だろう。
それと、もう元に戻っていいぜ」
「あ、すいません」
鳳は、元の姿に戻り、跡部は侑士を抱えて行き、
ブン太と慈郎も、よろ付きながら、後に続いた。

そして、診察の結果。

菊丸と侑士は大量の血を抜かれていて、しばらく休む事になり、鳳、慈郎、
ブン太の3人は、部屋で休むように言われた。

次の日、ようやく面会を許された不二と手塚が見舞いにやって来た。
「やあ、英二。元気になってよかったよ」
「心配させてごめんね。2人とも」
「医師の話によると、明日からは、練習に加わっても良いとの事だった」
「うん。休んでた分。取り戻さないとね。大石の分も」

そして、隣のベッドに寝かされてた侑士も意識を取り戻し、
慈郎とブン太が見舞いに来た。
「具合どう?」
「問題ないわ。すまんかったな。こないな事になってしもうて」
「それは別にいいよ。2人とも元気になったんだからさ」
「そういうたら、鳳は?」 
「あいつはもう早朝訓練に加わってるよ。ちょっと見ねえうちにホント、
たくましくなってたぜ」
「ならええんやけど、あの事で一番苦労したのはあいつやからな〜。
あ、お前もやったな。すまんな丸井。えらい気ー使わせてもうて」
「俺なら全然。ケーキ食べたら、すっかり回復したぜ。あっちも元気に
なったしよ」
「せやけど、一番の問題が、残ってしもたな」
「ああ、襲ってきたあいつ、そのカードってたしか」
「ああ、俺が今もっとるわ」

侑士は持っているファンタジーのカードを見せた。
「あれ、ファンタジーっていうか?どっちかっつうとホラーだろい」
「まあ、事件解決したから、もう良いけど」
「ふ、せやな」
「じゃあ、俺達、そろそろ練習に戻るね。行こう、丸井君」
「ああ」
「それじゃあ英二、お大事に」
「油断せず行こう」
と皆が出て行った後、侑士は菊丸を見た。

「一体、何が起こっとるんや・・・まあ、先の事考えても、しゃ〜ないか。
寝よ寝よ」」

こうして、事件は無事に解決された。

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