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文学哲学読書会コミュの「アメリカはなぜ」マービン・ハリス

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 マービン・ハリス(1927-2001)はアメリカの文化人類学者である。マルクスの生産力とマルサスの人口統計学要因を基盤として、それらを社会構造や文化を決定づける鍵とみなした。主に食人の研究によって知られている。南アメリカの食人風習は純粋にタンパク質補給のためであると主張して物議を醸した。インドで牛を食べることがタブーになっているのは、牛を食べるよりも農耕の生産手段として使った方が、カロリー摂取量がトータルでより高いからだと主張した。
文化唯物論と自ら名付けた分析方法によって、現代(1980年代)のアメリカ社会を分析したのがこの本である。

アメリカの夢はなぜープロローグ
 この本は、アメリカのカルトや犯罪、欠陥商品、目減りしたドルについて書いた本である。ポルノショップ、街頭でキスし合っている男たちについても書いてある。
 また男と同棲している娘、暴力を振るう女性、延び延びになっている結婚、増える一方の離婚、子供を持たない大人たちについても書いている。強姦される老婦人、走ってくる電車の前に押し出される人、ガソリンスタンドで銃撃される人のことも書いている。
 そのほか、この本に書いてあるのは、何週間もかかって配達される郵便、テーブルに料理を投げ出すボーイ、失礼な店員、買った覚えのない品物の請求書を送ってくるコンピュータ。壊れたままのベンチ、水が止まったままの噴水、割れた窓ガラス、水たまりができた道路、落書きだらけのビル、刃物で切り裂かれたゑ、ひっくり返された銅像、盗まれた本、また一週間でダメになる靴紐、すぐ切れる電球、インクのでないペン、さびの出る車、のりのくっつかない切手、ほどける縫い目、動かないジッパー、すぐ取れるボタン、エンジンの落ちる飛行機、放射能が漏れる原子炉、決壊するダム、落ちてくる屋根…。それに星占い師、シャーマン、魔除け師、魔女、宇宙服姿の天使…。そのほか今日のアメリカ社会の新しい奇妙なことをいっぱい取り上げている。
 
 この本の目的は、最新の以上性行動、タイとパンツの流行、暴行テクニックにまでわたる全てを説明しようとするものでもない、ただ、アメリカてき生活様式のさまざまな麺の一見無関係な諸傾向が、重いもがけず変化の本質的プロセスを構成しているかどうかをみようとするものである。

 私はユートピア的な主張もできないし、単純な行動コースの提案できない。でも問題を理解しようとする闘争は、その解決の一部ではなかろうか。私にも意見と選択があり、あえてそれを発表したい。

コメント(8)

1.なぜ、何もかもうまくいかないか

 アメリカは、たるんだ電線、どこかへ行ったねじ、きっちりと合わないもの、長持ちしないもの、動かないものでいっぱいの国になった。なぜこんなに多くの欠陥品がでるのだろうか。問題はアメリカがもはやちゃんとしたトースターの作り方を文字通り知らないということではあり得ない。コンピュータ全体を親指のツメほどのウエファーに載せたり、宇宙飛行士を月に、ボイジャーを土星に送る能力のある国家が、信頼できるトースターを作るのに必要な技術的ノウハウを持っていないはずがない。
 ボーモ・インディアンの篭は熱湯を入れても一滴たりとももれることはない。エスキモーの革製の船は軽くて、強くて、航海に耐える。前史時代を通じ、つくられたものの最高度の信頼性を耐久性を保証したものは、作り手と使い手が同一人物ないし肉親だという事実である。物々交換や取引によって入手されたものも、作り手と使い手の結びつきは相変わらず親密で、恒久的で心が通っていた。
 これとは対照的に、見知らぬ人が使うも二の思いをやることはひどく難しい。現代の工業大量生産や、大量マーケティング時代には、かつて人々に互いに責任感を持たせ、製品に責任感を持たせた親密で個人的な結びつきはしぼみ、金銭関係にとって代えられるので、品質はいつも難題である。

 第二次大戦後、アメリカの製造会社がかつてなく大きく、複雑になり、それと共に疎外感を持つ無頓着な労働者と経営者が増えた結果、品質の問題は危機的状況に達した。1960年代、苦情が高まったのも関わらず、外国企業が市場に浸透するまで、大体において、アメリカのメーカーは品質問題を無視した。
 アメリカのメーカーは、商品の寿命の特徴を無視しただけでない。同時に『計画的廃品化』といわれるまー毛手イング技術を開発していた。その結果、欠陥は大目に見られるどころか、短期的利益を増進する手段として歓迎された。計画的廃品かとは、新製品であればあるほど性能はよいという消費者の信念につけ込んだものである。製品に新しく部品を付け食われることによって、モデルを変えていくやり方は、相当な手直し策でも施さない限り、自動的に故障率も高まる。

 市場の寡占化によってメーカーはその政策の長期的影響に対する自戒の念を忘れやすい。いったん寡占情勢が進展すれば、経営者は自由に消費者の苦情を無視できる。そのような会社は値段を上げるのとまったく同時に、品質を落とす傾向がある。

 
2.店員はなぜ無愛想になったか

 1947年以来、サービス・情報産業の仕事は製造産業のそれの約10倍の早さで拡大してきた。以前は、サービスする者とサービスされる者とが互いに知っており、互いに相手の幸福に関心を持っていたことがサービスの質を保証した。新しいサービス・情報要員のほとんどを雇っているビジネスと政府機関が、大体において大規模な官僚組織であり、そこでは作業員は完全に見知らぬ人間の客や依頼主にサービスし、両者が顔を合わせるのは一生に一回しかない。そのうえサービス・情報労働者は全労働者の中でも最低賃金のグループにおかれているので、彼らの訓練は最低限にとどめられ、多くが任務を果たすだけの能力しか持ってない。
 オートメ化はサービス・情報労働者の疎外感を拡大した。
3.ドルはなぜ目減りしたか
 
 アメリカの物価は1980年までに第二次世界大戦末期に比べて平均3倍も上がったのである。1929の恐慌に対してケインズ理論に景気回復を図ろうとした。ケインズ理論には大きな欠陥があった。ケインズは、政府の景気刺激策は発動すると時と同じように簡単に停止できると思った。ところがこれが不可能なことが分かったのである。オートメ化と工業化で労働者に変わって機械がおかれたが、完全雇用を維持するため経済刺激策を緩めることはできなかった。その結果1945年以後に起きた5ないしは6回の景気後退期の旅に、インフレと積極的に闘うことは、政治的、人道的な見地から難しくなった。
4.女性はなぜ家庭を離れたか

 1960年代終わり、女権運動が爆発したかのように広まった。公民権運動やベトナム反戦運動がその引き金になったと説明されているが、それではうまく説明できない。
 アメリカでは1957年を頂点としてベビーブームが起こった。それまで一貫して出生率は低下し続けていた。原因として工業化による養育費の負担増が考えられる。同時に保健衛生状態の改善によって幼児死亡率の低下が上げられる。戦争が終わり政府は復員将兵に優遇処置をとった。それによってベビーブームが起こったと考えられる。
 50年代から60年代にかけて消費生活が進むようになり、ベビーブーム期の親たちは中流の消費生活を営むのに困難を感じるようになった。そのため既婚の女性が働きに出るようになった。彼女らは下級とされる仕事に就くようになった。
 1960年代末以来の女権運動の爆発は、既婚、未婚を問わず、女性がインフレと本来の生計の担い手であった男性の減少で、引き続き働かなければならないことに反抗しなければ、引き続き最悪の生活ー職場は単調で、退屈で、将来性のない仕事をする一方、家では料理や掃除洗濯、育児にいそしみ、亭主に威張られてなければならないーをしなければならないことを、集団的に自覚した時期と一致する。
 1960年代末、女性解放運動が始まった。その現象に一方の端にはインフレがあり、彼女らを家庭から労働市場に吐き出しつつあった。そしてもう一方の端にはサービス・情報関係の拡大する労働市場があり、彼女らを、教育はあるが安価で、従順な労働者向けの適当な職場に囲い込みつつあった。同業の男性の60%の賃金である。男性を主たる稼ぎ手とする過程の市中は空洞化し、崩壊しかけていたのである。
 女性は同時に二つの場所で働くことを求められた。男性の半額に職場で働き、無休で家庭で働き、しかも、もはや彼女らを養ってはくれない男女差別主義者の夫に服従しなければならない。そのため、結婚と出産の寺院の空洞化をした支柱を蹴飛ばしてしまえば、得るところが一番多く、失うところが一番少ないのは、他でもない女性であるということになった。
5.ゲイはなぜ姿を現したか

 1969年ゲイの反乱が起きた。ハリスは同性愛について文化人類学者らしくニュートラルな視点で語る。もしも社会的前例があるとか、そこから個人的利益が得られるならば、人々は同性愛を受け入れることも容易に学ぶという。古代ギリシアやスーダンのアザンデ族などの例を引く。
 妊娠中絶を禁止するような子供を作りたがる『生殖推進型』社会では同性愛はタブー視され、館員に寄らない既婚婦人の妊娠中絶や幼児殺しを許している『生殖抑制型』社会では同性愛はむしろ奨励されることもあるという。産めよ、増やせよのユダヤ・キリスト教を伝統とする西欧社会ではこの方式に完全に合致する。
 同性愛を行いたいという誘惑は子供を養育するコストとそれから得るベネフィットのバランスが逆転するにつれ、ますます強くなっていく。

 では、なぜ女性解放、ゲイ解放、性解放が同時にアメリカで爆発したのだろうか。それは男女ともに家庭外で働かなければならないほど非能率的になった経済の制約と機会に合わせたアメリカの自己再生産様式の再形成である。
6.街頭はなぜ恐怖の巷とかしたか

 アメリカの殺人事件は日本の5倍、イギリスの7倍である。統計によれば黒人は白人より14倍盗みをはたらく可能性がある。黒人の失業率は25%になる。ハーレムのようなゲットーでは失業率は86%に上がる。その一方で貧しい黒人は盗みにあい、負傷する確率は白人の25倍になり、黒人が殺される率は白人の8倍にあたる。
 シカゴやワシントンのような都市では、黒人女性の出産の半分以上は結婚によるものではない。したがって、黒人の男児は一定の職業を持った父親なしで大きくなる。適当な『手本』がないため、黒人少年は学校を退学し、非行生活に入り、犯罪を職業とするようになる。
 アメリカの黒人女性の非婚率が高いのはAFDC(母子家庭援助)という政策によるものが大きい。

 低賃金で働く白人女性の労働市場への参入は、黒人男性を労働市場からはじき出した。白人女性は高校へ行き大学を出ている。黒人英語ではなく標準英語をしゃべり、白人男性のボスや上司にわだかまりを持たない。1974年から77年の間、民間分野で白人女性が獲得した新しい職数は72%増えたが、黒人男性が獲得した職は11%減っている。

 アメリカの問題はこまぎれでは理解できない。無休の主婦、簿級の秘書としての女性の不遇について意識を高めるだけでは十分ではない。女性が職場で平等なチャンスを見つけるようにしてやると共に、下積みの生活をしている男性に対する意識も高めるべきはないだろうか。
 黒人とヒスパニックの下層階級の問題を解決しない限り、女性の解放はあり得ない。襲撃と強姦を恐れるあまり、ドアと錠を下ろし、窓を閉めた生活を一種の解放だと見れば別だが。
7.カルトはなぜ盛んになったか

 私は、現代の精神的浮揚の多くは、犯罪、失業、サービスの悪さ、間違い情報、寡占、官僚主義のような問題に対する広範囲な当惑と不満を反映するだけではなく、世俗的進歩というアメリカの夢を、魔術的、超自然的な手段によって救おうとする見当違いの企てだ、ということを示したい。
 1960年から70年またがる4,5年の間、多くの新宗教が現れた。文化の急激な変化のもたらすストレスは、たいてい精神的な夏棒、探求、実験という形であらわれ、それが広義の宗教的活動の拡大、強化に繋がっていった。主要な世界宗教は全て、文化の急激な変化くじに誕生した。

 私は間違っていると思うが、新しい宗教意識は、基本的には西洋の物質主義に対する反作用であるという意識が広まっている。現代はアメリカ史上3回目の宗教精神の爆発的な昂揚をもたらした「第三次大覚醒期」と呼ばれている。ロバート・ベラーは西洋の「功利的個人主義」に対する解毒剤として「アジアの精神性」を受容するところにあるという。ベラーによればアジア宗教は「富と権力の絶え間ない拡大」に対して批判を加え、「生活の質は富と権力の単純な関数であるのか、また、富と権力の再現きわまりない蓄積は生活の質と意義を破壊しているのではないか」といった疑問に答えてくれるものであったというのである。
 
 しかし、アメリカの精神的、宗教的な探求を、全面的にせよ、部分的にせよ、物質的な成功のせいにすることができるだろうか。60年代のアメリカが豊かな社会であったと信じて、はじめてそういうことができよう。しかし、これまで示したように第二次世界大戦後の生活水準の向上の多くは幻想なのである。

 私には「第三次大覚醒期」のもっとも奥底にあるもっとも特徴的な原動力は、究極的意味の探求ではなく、アメリカの解決されてない経済的、社会的問題の解決策の追求であるという見方があたっているように思われる。
 サイエントロジーの教祖、ロン・ハバードは大洋航海船の艦隊で地球上を回れるほど金持ちである。統一教会のトレーニングマニュアルには、救世主は世界一豊かでならないとある。私が言いたいのは、人間の宗教的な衝動は、精神的な救いの追求のあらわれであるのと同じ程度に現世的な富と権力、そして物理的な幸福のための手段であることが多いということである。
 西欧の観察者はアジアの精神性の瞑想的性格をロマンチックに謳い上げるあまり、一握りの聖人や禁欲的聖者とは違う一般大衆が宗教に何を望んでいるかを見逃しやすい。私は、ヒンズー教徒のほとんどが瞑想によって天の至福を受けようとするよりも、雨が降るようにとか、子供の病気が治るようにとか、あるいは自分の牛に子供が生まれるように祈ることに、ずっと大きな関心を抱いていることに気づいた。
 つまり神を発見することと金持ちになることとは必ずしも正反対のことではない。どちらも、普通の手段では解決できそうもない大問題の「最終的な解決策」を提供してくれる。
 実際には「第三次覚醒期」とは、基本的にうまくいかない消費主義、インフレ、男女別役割の混乱、稼ぎ手を中心とした家庭の崩壊、労働からの疎外、圧倒的な政府と企業の官僚的組織、孤立感と孤独感、犯罪の恐怖、そしてあまりにも多くの変化がいっぺんに起こっていることの根本的な原因についての戸惑い、などの解決のついてない問題に対する窮余の反応なのである。これだけの未解決の問題を前にすれば、今まで検討すべきであった問題は、カルトがなぜ広まったのかでなく、なぜもっと広まらなかったのか、ということをなのかもしれない。

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