武力紛争を法治する国際法は、歴史上二つの考え方で成り立っている。一つは、戦端を切る口実を限定した開戦法規(jus ad bellum)。現代のそれは、現状変更のために武力の行使と威嚇を厳禁しながら、個別的・集団的自衛権の行使と国連としての集団措置を例外的に認める国連憲章である。
もう一つは、そうやって戦端が切られた交戦の中で発生する違反行為を定める交戦法規(jus in bello)。ハーグ条約やジュネーブ条約など戦前から戦後の今まで積み重ねられてきたものの総称で、国際人道法と呼ばれる。 その違反行為が、いわゆる戦争犯罪で、分かりやすいものとしては、市民への無差別攻撃や捕虜の虐待・殺害である。
今回のウクライナとロシアの場合は、ロシア側は明らかに開戦法規の重大な違反を犯した。 ここで注意しなければならないのは、そうやって戦端が切られウクライナ側が応戦する戦闘の中で、ウクライナにもロシアと同じように交戦法規を厳守する責任があるということだ。侵略の被害国であるからといって免責される戦争犯罪はない。 「紛争当事国」とは、その交戦法規の中で言われる「Party to an armed conflict(武力紛争の当事者)」である。であるから、ウクライナとロシアの双方が、紛争当事国となる。