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なつみ館(仮)コミュのこれからはそういう『設定』で! (第二幕) -2

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  山田、舞台上を一周してその場に寝転ぶ。

  場面は部室。

  島村が立っている。
  なんだか格好も雰囲気も違う。
  左目には眼帯を、右腕には包帯を巻いている。
  服装は黒ずくめ。

島村「俺の名は『漆黒の闇・アンリミテッド・ルール・ブレイカー』。この世界のバランスを保つために戦う、調停者だ。この世界では島村桃子と名乗っている。七つの人格を持つ我らには、1つの人格につき1つの能力が与えられている。が、この俺に与えられた能力は二つ。この左目、『現実剥離』と、この右腕だ。左目に宿った『現実剥離』はこの世界のものではない物を見ることができる。この右腕の包帯はわけあって外すことができない。この腕に封じられし『鬼』が暴れ出してしまうからな。俺はこの鬼を『昴』(スバル)と呼んでいる。こいつの能力は『ルール・ブレイカー』。この世の理を否定することができる力だ」

  右腕が疼きだす。

島村「く・・・こんなときに。昴、そんなに血に飢えているのか。仕方がないな。おい、貴様たち! この俺の左目、見たいか? ふふふ・・・やめておけ。命は保証できないからな。はっはっは。はーっはっは!」
山田「先輩、ひとりごとがうるさいです」
島村「これはひとりごとではない。俺は一人にして七人。これは自己との会話。俺には七つの人格がある」
山田「あー、そういえばそういう設定でしたね、わかりにくですけど」
島村「設定ではない。俺は多重人格なのだから」
山田「俺、島村先輩のそういう思い込みの激しいところ、嫌いじゃあないけど、そろそろいい加減、普通の大人になった方がいいと思うよ?」
島村「(キャラを変えて魔王みたいな感じで)全く、貴様は何もわかっておらんな」
山田「おっ!? なんか人格変わった!?」
島村「ふ、なんだ貴様、わかるのか?」
山田「(棒読みで)いいえ、それは、ただの声色と口調を変えただけのただの人です」
島村「ワタシの名前は──」
山田「島村桃子でしょ?」
島村「(女子っぽいキャラに変わって)なんなのよー、もう少し乗ってくれてもいいんじゃないのー?」
山田「ほんとに愉快な人ですね、先輩は。7つの人格を持ってるんでしたっけ? そんなおもしろ設定を作っているだなんて、先輩は演劇部の鑑だなあ」
島村「(女子っぽいキャラのままかわいく)設定じゃないのにー」
山田「あなたみたいな人がいるから演劇部って誤解されるんじゃないですか? 変人集団だって」
島村「ひどいっ!!」
山田「そうだ、設定といえば、今日変な人がいましたよ」
島村「(第一幕のキャラに戻って、ポーズを取りながら)──呼んだかしら?」
山田「否定はしませんけどね」
島村「それとも山田くんのドッペルゲンガーが何かかしら?」
山田「俺じゃねえよ」
島村「それともあの人かしら?」

  島村が指差すと、本拓が顔をのぞかせている。

山田「いや、あの人も十分怪しかったですけど、今は間に合ってます」

  本拓、顔をひっこませる。

山田「なんか、この世の者とは思えないというか、なんか、不思議な人が」
島村「へえ、珍しいわね」
山田「なにがです?」
島村「君が他人に興味を持つことが、よ」
山田「そうですか?」
島村「そうよ。でもそれはあれかも知れないわね」
山田「?」
島村「君の認識に入るくらいだもの。それは悪魔的な何かかもしれないわ。と、島村桃子は意味深な言葉を呟いた」
山田「そんな、日常で意味もなく、伏線を張るような喋り方するのはやめて下さい!」
島村「失礼。患っているもので」
山田「何を?」
島村「──(ポーズを取りながら)中二病」
山田「言っちゃった!」

  /

  場面は教室

  はあ、とため息をつく神崎。

藤村「どうした、悩める若者よ。恋の悩みかい?」
神崎「そんなんじゃないわよ」
藤村「なんだか、退屈そうね」
神崎「退屈・・・そうかな、退屈、なのかな」
藤村「さみしい、とか?」
神崎「わかんない。ただ、ときどき憂鬱になるの。なんだか、自分がここにいるはずなのに、それが確かに感じられないような、ふわふわとした感覚。自分という輪郭がぼやけて、いつでも消えてしまいそうな不安」
藤村「詩人だねえ」
神崎「ちゃかさないで。これでも真剣に悩んでるんだけど」
藤村「ごめんごめん。でも私も、そういう感覚、わかるよ」
神崎「え?」
藤村「なんだか、漠然とした不安があるんだよね。何って具体的なものがなくても、落ち着かない気持ち。あたしも感じたことあるよ。もちろん、なんでもできてしまう神崎とは感じてるものも思っていることも違うのかも知れないけどさ」
神崎「そっかあ。こういうこと話すの、藤村だけなんだからね」
藤村「ありがと。うれしいよ」
神崎「藤村と一緒にいると楽しいよ。でも、それだけじゃ不安っていうか、満たされないっていうか。だって、藤村だっていつまでもあたしの傍にいてくれるかわからないし」
藤村「何言ってるの」
神崎「だったら、一生結婚しないで、あたしの傍にいてくれるの?」
藤村「いや、それは無理だけど」
神崎「無理なんじゃん。結局はそういうことだよ。藤村にも、あたし以外に大切な人がいて、きっと誰かと結婚して子供が生まれたりしたら、子供のことを大好きになって」
藤村「そんなの、誰でも当たり前なんじゃないのかな?」
神崎「あたしにはイメージできないの。あたしが誰かを好きになって、あたしが誰かのために何かをするような、そんな姿」
藤村「どんだけ女王様なのよ!」
神崎「あたし、大切なものって、なんにもないんだ。藤村のこと好きだけど、きっとそれも本物じゃないんだ。あたしの全ては、嘘で塗り固められている。そんな不安に支配されるの」
藤村「よしよし。思春期だね」
神崎「思春期なのこれ?」
藤村「たぶんね。私だって神崎のこと好きだし、どこにも行ったりしないよ。それに、神崎だってきっと本当に好きな人ができるって」
神崎「そうかな?」
藤村「山田くんのこととか、どう思ってるの?」
神崎「なんであいつの名前が出てくるのよ」
藤村「もう認めちゃいなよ。あんたは山田のことが好きなんだって」
神崎「な、なんでよ。なんであたしがあんなしょっぼい男のことなんか好きにならなきゃいけないのよ!」
藤村「だって彼、神崎の中身をちゃんと見てくれてると思うから。周りの人たちは、あんたの顔とかオーラとか、そういうのに魅かれて、舞い上がっちゃってる感じだけど、山田くんだけは、あんたと一対一で一緒にいてくれてると思うな」

  突然怒り出す神崎。

神崎「ほんと、勘弁してよ。あたしたちはそんなんじゃないんだって。あたし、あいつなんか大っ嫌いなんだから! あいつは嫌な奴よ! あたしの嫌なところを見つけて、それをじっと見つめているような、そういう男なのよ! あたしは弱みを握られているから、あいつを傍に置いて見張ってるだけなのよ! なんであたしがあいつのことなんて好きにならなくちゃいけないのよ! あたしはあいつのことが大っ嫌いなんだから!」
藤村「・・・神崎」
神崎「・・・ごめん、藤村」

  神崎、教室から出ていく。

  藤村もゆっくりと教室を去る。

  /

  場面は街中。

  とぼとぼと歩いて来る神崎。

  大学生くらいの男2人が神崎に近づいてくる。

  神崎に声をかけ、ナンパする二人組。

  山田が来る。

神崎「なによ」
山田「いや、別に、なんか取り込み中みたいだし」
神崎「は?」
山田「知り合い、か?」
神崎「なんでそんなことあんたに言わなくちゃいけないのよ」
男1「なにこいつ、君の知り合い?」
神崎「別に、ただの学校の知り合い」
男2「なんだ、こんな冴えない男が君の友達なのかと思ったよ」
山田「ははは・・・友達じゃ、ないっすよ」

  神崎の表情が変わる。

男1「え、なに、もしかして彼氏とか言うの? うけるんだけど」
神崎「・・・・・・」
山田「・・・ははは」
神崎「何がおかしいのよ」
山田「え?」
神崎「勘違いしないでよね。あんたなんかがあたしと吊り合うわけないんだから。あんたをあたしの傍に置いてるのは──」
山田「・・・わかってるよ。わかってるって」
神崎「ばーか」

  神崎、帰る。

  男二人、神崎を追いかける。

  山田、反対方向へ去る。


  菊川が現れる。

菊川「この世界は淀んでいる。
この世界はお前を中心に回り過ぎている。
この淀みを正さなければならない。
さあ、世界の【改変】だ。さあ、この【設定】を、」

  菊川、手にしたルービックキューブを回す。

  暗闇に包まれると同時に、ガシャン、と、世界が切り替わる音。

山田の声「その日を境に、神崎は全てが上手くいかなくなってしまった」

  第二幕──完。

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