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なつみ館(仮)コミュのこれからはそういう『設定』で! (第一幕)

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「これからは、そういう『設定』で!」


【登場人物】
神崎:こうざき。この物語の主人公。ものすごい美少女で、めちゃくちゃモテる。
   女王様。最近気になる人がいる・・・? という設定。
藤村:神崎の親友。女。常識人でいいやつ。3年くらい付き合ってる彼氏がいる。
   神崎の恋愛相談(?)に振り回される毎日。という設定。
山田:熱意がなくて冴えない男。学園の女王である神崎にパシられる毎日。という設定。

島村:演劇部部長。女。会話をするときに妙なポーズを取りながら喋る。重度の中二病を患っていて、7つの人格を持っているという設定を演じている。という設定。

持杉:もてすぎ。モテる男。クラスの人気者で、成績優秀。運動万能。顔はそこそこイケメン。という設定。

本拓:もとたく。本名、本拓郎(もとたくろう)。なんかちょいちょい出てくる男。変態らしい。元演劇部部長で、今は学校の警備員をやっているとかいないとか。という設定。

モブ:何人かいるその他大勢。演劇部員とかもいる。という設定。

菊川:世界の改変者。天使とか悪魔とか、そういう感じの設定。なんだか怪しい雰囲気を出している。という設定。



  /

【第一幕/女神の降臨】

  暗闇の中、音だけの世界。
雑踏。
ざわざわとざわつく世界。


神崎の声「焼きそばパン」

  音が消える。

  照明がつく。

  舞台上には一人、山田が立っている。

  手には焼きそばパンが握られている。

山田「みなさんは、ぱしりという言葉をご存知だろうか。強い人や偉い人の命令で使い走りする人のこと、だそうだ。まあ、つまり今の俺のことだ。
   例えばここに、焼きそばパンがある。ぱしりをやらせている、命令している側の人間は、どうも焼きそばパンを買いに行かせる習性があるのだと最近の俺は確信している。これはある種の儀式のようなもので、ステレオタイプのようなもので、焼きそばパンを買いに行かせることによって、命令する側は、ぱしらせているというアイデンティティを保っているのではないか? と、俺はそう思うわけだ」

  人間がうじゃうじゃと出てくる。
  制服を着ていたり、ジャージを着ていたり、みんな高校生。
  みんなランダムに舞台上を歩いている。

山田「(それなりに早口で)そしてぱしられている人間も、自分が命令に従うことによって己のキャラクターを守っているのでは、と、そう思う今日この頃。これ以上言うとまるで俺がいじめを肯定して助長しているのではないかと思われるので、このへんでやめておこう。ちなみにうちの学校にいじめはありません! たぶん。とまあ、俺が何を言いたいのかと言うと、ぱしりとして焼きそばパンを買いに行かされている俺は、どうしようもなく作りものっぽいというか、設定じみているというか。世の中にはそういうものがたくさん転がっていると思う。運動が得意だ、甘いものが好き、あの二人は付き合っている。それは先天的な理由だったり、後天的な理由だったりはあるけれど、結果や現象や趣向や関係に、名前がつけられたってそれだけのことではあるけれど、それっていうのは『設定』って呼べるんじゃあないかって」

  周りの人間がぴたりと動きを止める。

山田「ちなみに俺の設定は、平凡で、無気力で、どこにでもいるような若者だ。物語の主人公になるような、そんな劇的なタイプの人間じゃあない。だから、今から始まる物語の主人公は、決して俺なんかではなく、一人の女子。女の子。俺はその子の物語のただの語り部だと思ってもらって構わない。ちなみに俺が誰のぱしりかっていうと、その主人公の女子なわけだが。そんなこんなで、物語は、俺が焼きそばパンを買いに行かされている、今この瞬間のシーンから始まる」

  はあ、とため息をつく山田。

山田「これからは、そういう設定で。」


  突然、音楽が鳴り始める。
  激しい感じのノリのいい曲。
  いわゆる、オープニングが始まる感じで。

  山田が焼きそばパンを握って走り去る。

  踊り始めるモブ人間たち。

  本拓が大量の女性物の下着を抱えて走ってくる。それを追いかける藤村。

  走り去る二人。

  島村が数人の演劇部員を連れて走り抜ける。気分は合戦?

  そんな中、菊川がゆっくりと歩いて通り過ぎる。

  手に持ったルービックキューブを中空に投げて弄ぶ。

  本拓が大量の焼きそばパンを抱えて走ってくる。

  それを追いかけて走る山田。

  山田がいなくなると神崎が現れる。

  神崎の登場によってモブたちの動きがスローモーションになる。

  神崎に引き寄せられるモブたち。

  神崎が手を広げると、ぶわっと広がって散っていくモブたち。

  途中、音楽の中、山田の解説が入る。

山田「彼女の名前は神崎(こうざき)美穂(みほ)。
   この学園のアイドルだ。
   容姿端麗、眉目秀麗、明眸皓歯、羞花閉月!
   ん? そうでもない? 美少女ではない? それは役者の力不足だ。
   舞台上の、芝居の嘘ってやつだ。すまないが、そこは目を瞑ってもらいたい。
   彼女は、めちゃくちゃ美少女である。そう思いこんで頂きたい。
   そうしないと話がすすまないからね」

  持杉の登場。神崎に交際を迫る持杉。

  つっぱねる神崎。

  神崎の元に藤村が駆け寄る。

  何人かの男に交際を迫られる神崎。

  神崎がオーラを全開にする。全ての者が吹き飛ばされ、舞台上には神崎が一人だけ。

  そこに焼きそばパンを握った山田が現れる。

  曲が止まる。

神崎「遅い!」
山田「ご、ごめん」

  
  「これからは、そういう『設定』で!」

 /

  場面は学校の中庭とか、そんなところ。


神崎が歩く。少し後ろを山田がついて歩く。

みんなが噂をしている。

女子たちはみんな「あの子かわいい」「お人形さんみたい」「綺麗な子。どこのクラスだろう」
男子たちもみんな「マジかわいくね?」「あんな子が彼女になってくれたらなあ」「めちゃくちゃかわいー」「彼氏とかいるのかな」

みんながちやほやする。
ランチに誘ったり、デートに誘ったり、

人だかりの中、神崎が歩き、オーラをまき散らす。

みんな倒れる。

神崎「ほんと、美しいって罪だわ」

  男数人が現れ、神崎に告白。「付き合ってください!」しかし、ことごとく断られる。

  そんな中、持杉が現れる。

持杉「やあ神崎さん。君は今日も美しいな」
神崎「あら、クラスの人気物で成績優秀、スポーツ万能、顔はそこそこイケメンの持杉実(もてすぎみのる)くん、おはよう」
持杉「おはよう神崎さん。しかし君は間違っているよ。僕は、クラスの人気者で成績優秀、スポーツ万能、顔もかなりイケメンの、持杉実だ」
神崎「あらごめんなさい。クラスの人気者で成績優秀、スポーツ万能、顔はまあまあイケメンの持杉実くん、おはよう」
持杉「だから違うよ。僕はクラスの人気者で成績優秀、スポーツ万能で」
神崎「もういいよ」
持杉「もういいか」
神崎「ところで何の用かしら、持杉くん」
持杉「何の用とは心外だな、神崎さん。僕は朝の挨拶を君にしただけだよ。それと、先日のデートのお誘いの返事を聞こうと思ってね」
神崎「あら、その件については丁重にお断りしたはずだけど?」
持杉「おいおい、そいつはつれないんじゃないかい、神崎さん。君はこんな虫みたいな男とはつるんでいるのに、僕とのデートは了承してくれないだなんて」
山田「・・・・・・」
神崎「こいつはあたしのシモベよ」
山田「・・・・・・」
持杉「ほほう、さすがは崇高なる神崎さん。奴隷制度なんて概念が存在しないこの世の中で、シモベをつき従えているだなんて。君は本当に素敵だなあ」
神崎「時間や労働において、人間はすべからく何かの奴隷であるとあたしは思っているけどね。ところで持杉くん、授業が始まるから、この話はもうお終いにしてもらえるかしら?」
持杉「それじゃあ、解答は保留ってことでいいのかな?」
神崎「保留も何もないわ。あたし、あなたと付き合うつもりも、デートするつもりもないから」

  神崎、踵を返す。

持杉「神崎さん、君はなんて素敵なんだ。きっと僕が、振り向かせてみせる。手に入れてみせる」

  持杉、去ろうとするが、山田の姿が目に留まる。

持杉「山田くん、君は何か勘違いしているようだが、君は神崎さんにとって特別なんかじゃあない。──君は、神崎さんには似合わない」
山田「・・・・・・」

  持杉、去る。

  取り残された山田。

 /

  音楽が流れる。

  山田は立ちつくしたまま。

  モブたちが現れて、殴り合いのケンカを始める。
  まるでヤンキーの抗争のような、戦国時代の合戦のような、そんな争い。

  山田は立ちつくしたまま。

  神崎が現れる。

神崎「まったく、愚民どもはタイヘンね。何をもめているのかしら」

  神崎、なんだかキラキラとしたオーラを全開にする。

神崎「『跪きなさい』」

  神崎の言葉に世界が圧縮され、彼らの行動が収束していく。
  これが彼女の影響力。

  全員が跪く。

神崎「『仲直りなさい』」

  全員が握手をして仲直り。

神崎「うん、いい子たちね。さあ、みなのもの、散りなさい!」

藤村「あんた何者なのよっ!?」

  おつかれさまですと、山田がタオルを差し出す。

神崎「ふむ、苦しゅうない。下がっていいわよ」
山田「・・・・・・」

  山田、はける。

  空気が変わり、普通の芝居が始まる。

  教室で、放課後で、机があって、椅子に座って会話しているような、そんな感じ。

藤村「あんたって、なんていうかすごいわよね」
神崎「なにが?」
藤村「なんていうか、ほんとに学園の女王って感じ」
神崎「なによそれ。あたし、顔かわいいから、みんなちやほやしてるだけだって」
藤村「自分で言っちゃうところがほんとに怖いよなあ」
神崎「全く、愚民共はしょうがないわよねー。あたしの顔しか見てないんだから。
   でも、ちやほやされるのって、か・い・か・んっ」
藤村「こわいわー。性格悪いわー」
神崎「美しければ全てが許されるわ。まあ、唯一の欠点があるとすれば、私につり合う男がいないってことね」
藤村「この自信はどこから来るのだろう・・・。つり合う条件って具体的には?」
神崎「ふんっ。男は顔よ顔。あたしのレベルについて来れる男子を募集中よっ」
藤村「男は顔なんて言ってるなんて、あんたもまだ子供よねえ」
神崎「だ、だったら男に必要なのはなんだっていうのよ!?」
藤村「え? ──将来性?」
神崎「こわっ! 女ってこわっ! 経済力とか包容力とか言う女は結構いるけど、『将来性』の一言に全てが凝縮されてる気がする」
藤村「まあ、これも一般論ってことでよろしく」
神崎「藤村って彼氏いるんだよね」
藤村「まーね」
神崎「イケメンではないけど、なんか、男前って感じだよね」
藤村「んー、誉め言葉として受け取っておこう。うん」
神崎「ま、藤村くらいにはちょうどいいレベルの男なんじゃないの?」
藤村「あたし、ときどきなんであんたの友達やってるのかわかんなくなるよ・・・
   神崎は彼氏作らないの?」
神崎「あたし、どうせ付き合うなら完璧な男がいいのっ。だってあたしのこの美貌につり合う男じゃないと、なんか悪いじゃない?」
藤村「何に悪いんだよ、何に。高校1年の頃は男とっかえひっかえだったじゃない。最近おとなしいね」
神崎「あの頃は若かったのよ」
藤村「今でも十分若いだろうが」
神崎「もうあたしは女を安売りしないの。昔の男どもも、このあたしと付き合えたことを光栄に思うべきだわ」
藤村「うん、なんであんたみたいなのがモテるのか、不思議でならんわ」
神崎「男なんてシモベよシモベ! おーっほっほ!!」
藤村「世界って不公平だなー」
神崎「なんなのよ! 何その彼氏持ちの余裕は」
藤村「は?」
神崎「なに、あたしの方が女としてランクが高いはずなのに、彼氏の有無でこの敗北感」
藤村「あんたねー・・・」
神崎「これが『彼氏ステータス』! 恋人がいたら勝ち組的な若者の発想!」
藤村「はいはい。神崎もさ、本当の恋をしたらきっと変わるよ。というか、気になる人いるんじゃないの?」
神崎「は? なんで?」
藤村「だってあの神崎が最近なんかおとなしいじゃん。これで大人しいってのが恐ろしいんだけど」
神崎「なに言ってんのよ」
藤村「最近さ、山田と仲いいよね」
神崎「はあっ!?」
藤村「いや、なんか最近よく一緒にいるし」
神崎「ば、ばっかじゃないの? あんな普通の男のどこがいいんだか!
   あいつはただのシモベよ! アッシーくんよ! ベンリーくんよ!
   なんでも言う事きくから、だから傍に置いてるだけだもん」
藤村「ふーん。それにしてはなんか焦って、気にしすぎのように見えるけど?」
神崎「ば、ばっかじゃないの!?
   それに、あいつを傍に置いているのは、見張ってるだけであって──」
藤村「なに?」
神崎「なんでもない! この話はおしまいよ」


  /

  場面は演劇部の部室。

  島村は変なポーズで立っている。

  雑誌を読みながらくつろいでいる山田。

山田「(小声で)そんなことは言われなくてもわかってるっつーの」

  ポーズを変えながら口を開く島村。

島村「そうだわ、会話劇をしましょう」
山田「は?」
島村「島村桃子(しまむらとうこ)はそう言って、優雅に立ちあがった」
山田「いや、もう立ってるし。部長、確かにここは演劇部で、あなたと俺は演劇部員だけど、どうしてそれが急に会話劇を始めるって話になるんですか」
島村「わかっていないわね、山田くん。こういう日常の中で稽古を行ってこそ、鍛えられるのだと私は思うの。島村桃子はそう言って山田洋(やまだひろし)を見降ろした」
山田「喋り方うぜー。とがきをいちいち口にするような面倒くさいキャラにいつからなったんだよ、うちの部長は」
島村「いま、さっきよ。そう言って島村桃子は──」
山田「で、会話劇とはいったい何をするんですか、部長様」
島村「そうね。今日の議題はずばり、「男女間の友情は成立するか」、よ」
山田「へえ」
島村「リアクションが薄いわね。まるで女の友情のようだわ」
山田「うん、ごめん、意味がわからない」
島村「今のは、「女の友情はハムより薄い」という言葉の引用をリアクションの薄さとかけたのだわ」
山田「そんな言葉は知らないし、わかりにくいわ! というかそもそも、女の友情はハムより薄いんですかっ!?」
島村「うすいわ」
山田「認めたっ!?」
島村「まあ、往々にしてそういうものよ。まあ、男の友情もあまり変わらないのだけれど」
山田「そ、そんなことはねえよ。男の友情っていえば、例えば──」
島村「それはさておき」
山田「さておくなよ」
島村「もうすでに会話劇は始まっているのだけれど」
山田「はあ。俺にはただの雑談のようにしか思えないけどな」
島村「そこよ。その雑談をいかにおもしろおかしく表現できるか、それは演劇部の我々の手にかかっているのだわ」
山田「それでですか。さっきから部長が妙なポーズを取りながら話していらっしゃったのは」
島村「そうよ。そう言って島村桃子は不敵な笑みを浮かべた」
山田「うぜええ」
島村「ところで、元々の議題に立ち戻るのだけれど、山田くん、君はどう思う?
   男女間に友情は成立すると思う?」
山田「まあ、一般的には成立すると思いますよ」
島村「へえ。一般的には、ね。詳しく聞こうかしら。そう言って島村桃子は──」
山田「(手で制しながら)まあ、詳しく語るほどの内容ではないんですけどね、まあ、男と女って違う生き物なわけじゃないですか」
島村「ええ、まあ。そういう見方もあるわね」
山田「それでいて、恋愛関係に発展する場合とそうでない場合がある。俺は恋愛とか別に経験がないからよくわからないんだけど、恋愛に発展しない段階があるってことは、それは通常の他の人間関係が成り立ってるってことでしょ? それはつまり、友情という人間関係が立っていれば、それはもう、友情と言うほかに呼びようがないのでは?」
島村「なるほどね」
山田「部長、ポーズがうざいです。真面目に聞く気がないのなら、この話題はもう終わりにしませんか?」
島村「そうね。確かに私のポーズはうざいわ」
山田「そっちに食いつくんですか」
島村「でもそれは、私一人が奇妙なポーズを取りながら、動きをキメながら喋っているからであって、山田くん、君も同じようにポーズを取っていればそれはそれとして成立するから、君も早くポーズを取りながら言葉を発しなさい」
山田「部長、うざいです」
島村「ぶっちゃけ、私一人だけこんなポーズを取らされて、恥ずかしいのだわ」
山田「ぶっちゃけた!?」
島村「山田くん、君は、私に──女に恥をかかせるつもり?」
山田「違います! それなんか意味が違いますから!」
島村「これは部長命令よ、山田くん、ポーズを取りながら言葉を発しなさい」

  ・・・ぽく、ぽく、ぽく、ちーん。

  山田、突然ポーズをキメながら、

山田「部長、僕には無理です」
島村「いい動きね、山田くん。惚れ直してしまいそうだわ」
山田「もともと惚れてないだろうが!」
島村「それもなかなかにいいポーズだわ。私のキメポーズコレクションに入れてあげてもいいわ」
山田「そんなコレクションあったんすか!?」
島村「次回公演は、変なポーズコレクション集よ!」
山田「なにーっ!?」
島村「それでは突然ですが、歌っていただきましょう、
   郷ひろみで、GOLDFINGER’99 」

  音楽がかかる。

  島村が合図すると、スタッフがスタンドマイクをセットする。

  スタッフが何人か出てきて山田をマイクの前にセットする。

山田「って、俺が歌うのーっ!?」

  歌が始まる。歌う山田。ノリノリである。

  島村はうしろで、全然関係ない動き。
  あんまり目立たないけど、リズムには合ってる。

  サビになるとスタッフが何人も出てくる。
  スタッフのくせになんかちょっと派手な格好。

  あちちあち、と全員で踊る。
  動きにキレがありすぎてうける。

  島村は相変わらずなんか違う動き。
  でもとりあえずリズムには合ってる。

  アップサイド、インサイド、アウト、動きにキレがありすぎ。

  みんな動きが綺麗にあってる。山田が一番目立っている。


  歌の一番が終わると曲がぴたっと止む。

山田「なんだこの茶番は!?」
島村「君だってノリノリだったじゃない! そう言って島村は踊り疲れた汗を拭った」
山田「このバックダンサーさんたちはなんですか!?」
島村「よく見なさい、演劇部のみんなじゃない!」
山田「お前らなにやってんのこれーっ!?」
島村「よし、諸君、ありがとう。もう帰っていいから。はい、解散!」

  だらだらと雑談しながらはけるスタッフたち。

島村「ほら、だらだらしない、てきぱきはける!」
山田「はけるとか言うなっ!」
島村「ふむ、やはり私は君のそういうところが好きなのだわ」
山田「そういうところって?」
島村「聞きわけのいいところ」
山田「・・・それってどういう」
島村「君は私が言った通りにポーズを取って、私が言った通りに歌い始めた。
   こんなに聞きわけのいい子は他にはいないわ」
山田「・・・・・・」
島村「君には自己がない。私にはそう感じられる。歌ではアチチアチなどと言っていたけれど、それは歌詞にそうあるから言っているのであって、誰かに言わされているのであって、君にはそんな、熱い熱情があるようには私には思えない。きっと君は、今のように、ずっと他人の決定に従って生きて来たのだろうね」
山田「・・・・・・」
島村「厳しいことを言うようだけれど、私は君の聞きわけのいいところは好きだけれど、周りに流されるだけで自分自身を持たない君は嫌いなのだわ」
山田「・・・叱咤激励の言葉、ありがとうございます。あなたのように、そういうことを言ってくれる人がいるっていうのはとても幸せなことだと思います。
   でもね、俺にだって自分の意思くらいはありますよ。さっきの話、男女間に友情は成立するかって話。一般的には成立すると思います。でも、俺には当てはまらない。俺、惚れっぽいんですよ。女子ってだけで、気になるし、優しくされたら、すぐに好きになる。部長とも、きっとずっと二人っきりでいたら、女性として好きになっちゃいますよ」

  ホラ貝のぶおおんという大きな音がする。

山田「げ、神崎が呼んでる。じゃあ部長、俺、行かなきゃいけないんで」
島村「最近は、お姫様に振り回されているようね」
山田「ええ、まあ」
島村「部活にはいつでも戻ってきていいし、困ったことがあったら言ってくれていいわよ」
山田「その言葉、ありがたくちょうだいしておきます。ただ、俺は最初から演劇部員じゃないっ!! 仮入部2年目の幽霊部員だ! そしてあなたに振り回され続けてるだけのただの普通の男子だ!」
島村「はっはっは! そういえばそうだったわね。ときに山田くん、神崎さんを演劇部に誘ってみてはくれないかしら。彼女の美貌は我々にこそ必要なのよ」
山田「いちおう言ってはみますけど、絶対に入らないと思いますよ」

  ホラ貝の音がこだまする。

山田「やべっ。それじゃあ、島村先輩」
島村「ん」

  山田、走って部室を飛び出す。

  ホラ貝のぶおおんって音。

山田の声「しつけえよ! 聞こえてるよ!」

  島村、優雅にポーズをキメながら、

島村「よし、それでは演劇部員諸君、次回公演、アチチアチの稽古の再開なのだわ!
   ん? なに? そんな曲古くて、部員の誰も知りません? 部長って、いま何歳なんですか? ──はははは、そんなの推して知るべしとしかいう他ないじゃあない。
   島村桃子はそう言って高らかに笑いながら踵を返したのであった。
   おーっほっほ!! おーっほっほ!!」


  /

  場面は教室。

  山田が駆けて来る。

  神崎の手にはでっかいホラ貝。

山田「ごめん、神崎!」
神崎「──遅いっ!!」


  暗転

  第一幕、完。



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