ひとつだけ字幕で気になったところが。三幕冒頭、スザンナが浮気者の伯爵を懲らしめるため、嘘の逢引に誘う二重唱で、スザンナに誘われ喜び勇む伯爵に、スザンナが“scusatemi se mento"と独白するところ。まず大抵は「嘘をついてお許し下さい。」と訳されるが、今回「やっかいな事にならなければいいのだけど。(と言うような意味の言葉)」となっていました。ここは伯爵の権力の乱用に異を唱えつつも、人としての共感や思いやりを見失うまいとするスザンナの心の在り方を伝え、女性であり召使いであるという二重苦にある彼女を、気高さで伯爵より上にさえ置こうとする、とてもさりげなくひそやかな「新しい時代の息吹」と感じて来たので、この訳はそれが伝わらずちょっと残念だった。オペラ台本には時代により少しずつ解釈の変化がある場合があるらしいので、ひょっとしたらこれもそうなのかもしれないですが。