意味がわかると怖い話。コミュの幸福な王子 -ツバメ編-【童話アレンジ】

夏が終わり、肌寒い木枯らしが吹き始めた日のことでした。
仲間からはぐれた一羽のツバメが、一夜(ひとよ)の宿を求め、街の人々から『幸福な王子』と呼ばれている像の足元へと舞い降りました。

『幸福な王子』は、若くして酷い謀略にはめられた王子がモデルになっており、王子を溺愛していた女王の慰めにと、大臣達が作らせたものでした。
街の何処からでも見える小高い丘の上に建てられた像は金色に輝き、数々の宝石に彩られ、街のシンボルになっていました。
しかし、余所者のツバメがそんな事、知るわけありません。
ツバメにとっては、ただの寝床。羽根を休めさえすれば、何処でも良かったのです。
久しぶりに身体を地につけ、眠りにつこうとした時です。ツバメの背中に冷たい雫が落ちてきました。
雨でも降りだしたのかと思い、空を見上げましたが、雲一つありません。
気のせいかと思い、再び眠りにつこうとすると、またしても冷たい雫がツバメの背を伝いました。
今度こそ、勘違いなどではないと思ったツバメが注意深く上を見やると、なんと、金色の像の目から涙が流れているではありませんか。
とんでもない怪奇現象にツバメはすぐに別の寝床へ移動しようとしましたが、身体が動きません。
恐ろしさのあまり身を縮めているツバメに、金色の像はとどめを差すかのように語りかけてきました。

「ツバメさん、ツバメさん、少し私の話を聞いてくれないか？」
それは、藁にもすがるような哀愁ある口調でしたが、ツバメにとっては質の悪い悪戯小僧に捕まった時よりも、危険な予感をさせるものでした。
そんなツバメの心情などおかまいなしに、話は続きます。
「私はね、この国の王子なんだ。臣下に裏切られてからは、ずっとこの場所にいるけれど、それまでずっと宮殿から出た事が無かった。だから庶民の暮らしを私は全く知らなかったんだ。
宮殿での生活は、とても楽しくて…この国に暮らす国民も皆、同じように楽しく暮らし、幸福だと私は思っていたんだ。
でも実際はどうだろう？
こうやって街を見下ろしてみて初めて知ったんだ。
なんと苦しい日々を送る人々の多いことか。
努力して働いても僅かな賃金しか貰えず、飢えや寒さで死んでゆく人が後を絶たない。
彼等の暮らしを知ってから、私は毎日こうして涙を流しているけれど、私にはどうしてやる事も出来ない。」
そう言ってまた涙を流すのでした。

そんな話をされても…と困っているツバメに、王子は話を続けました。
「それで、考えていたんだ。もし、私に翼があったなら、貧しい人々の元に飛んでいき、私が身に付けている珍しい宝石を配ってあげられるのに…と。そしたら君が来た。私は運命を感じたよ。」

ツバメは心秘かに『ただの偶然です』と思いましたが、とてもそんな事が言える雰囲気ではありません。
王子の言葉をただ黙って聞いているツバメの様子に、賛同を得られたものと勘違いした王子は、ツバメに話を持ちかけました。

「あぁ、ツバメさん、ツバメさん。君も苦しんでる人々の役に立ちたいんだね。それなら、君が私の代わりになって、貧しい人々に宝石を届けてみないか？」

おかしな方向に話が流れてる事にツバメは戸惑いを覚えましたが、否定などしようものなら、どうなるか分かったものではありません。
仕方なく、ツバメは言われるがままに、王子が身に纏っていた宝石の数々を貧しさで苦しむ人々に配ってまわりました。
サファイアの目、剣のルビー、像に貼り付けられた金箔。
ツバメは何度も逃げようとしましたが、何故か身体が王子の元へと戻ってしまうのです。
ツバメは王子の事が恐ろしくてたまらず、ただ黙って言う事に従い続けました。

そして最後の金箔を剥がし、餓死しそうな兄弟に金箔を届けた時には、ツバメの身体はもうボロボロでした。
元々、体力を消耗していた身体に鞭打って飛び回ったのですから、当然の結果です。
ツバメは、自分が今夜、天に召されることをおぼろ気に感じました。
薄れゆく意識の中、ツバメが最後に見たのは、王子のキラキラと輝く本物の目でした。

コメント(7)

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[5] mixiユーザー 11月24日 11:16

話している王子は像の王子とは別物で生きていて磔にされていた。
謀略というのも
単に王子が悪かっただけで
臣下たちは処刑に至った。
それでも、王子を溺愛していた女王は息子が宝石にまとわれ、『幸福』な姿で立つ姿を職人に作らせた。
臣下たちはその像が許せず、王子の磔の横にその像を設置した。

像と磔は隣同士に置かれていたから、
ツバメが最後に見たのは王子様の本物の目かなー？と解釈しました(;-_-)

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