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意味がわかると怖い話。コミュの夢見る男とキャリアウーマン【自作】

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私の住む世界では、男にだけ与えられた特権がある。
それは、ある条件を満たせば、魔法使いになれるというものだ。
魔法使いになる条件は厳しく、大抵の男達は、その条件を満たせずに普通の人間として余生を送るけど、私の弟は違った。
身体は大人でも、中身はまだ思春期の少年のように夢みがちな性格の弟は、魔法使いへの手引き書を何冊も読んでいて、毎月定期購読しているものもあった。
勉強熱心な弟は、女である私にもその愛読書を読ませては、意見を求めてくるので、魔法使いになんて興味がない私でも手引き書の内容を事細かに記憶していた。
手引き書を開きながら、キラキラと目を輝かせ、夢物語を私に聞かせる天真爛漫な弟が、私はいつも羨ましかった。
会社と家族の奴隷のような生活を送る私には、夢見ることすら出来なかったから。

ある日、いつもの営業から戻ると、耳障りな部長の笑い声が私を出迎えた。
笑い声は私に向けられたものではない。
うっすらと頭皮が透けて見える後頭部の先には、新卒の女の子達の姿がある。
笑い声は、彼女達に向けられたものだ。

…まったく、こっちは毎日靴を磨り減らしてるってのに、いい気なもんだわ。

握り締めた拳の固さとは裏腹に、私は無理に作った控えめな声で戻ったことを伝え、席に着く。
そして、社を出る時には無かった書類の束に目をやる。
部長が、また自分の仕事を私のところに放り込んできたらしい。
書類を手に取った時、ディスクの隅に追いやられたネームプレートが目に映った。
私の名前の上には、"営業部長代理"という文字が刻まれている。
常に営業成績が良い私を辞めさせまいと与えられた地位。
聞こえは良いけど、なんてこたない。多少の権限を持っているだけで、お給料も待遇も平社員と同等の扱いだ。むしろ、この肩書きのせいで成績を維持し続けなければいけないのだから、削りとってやりたいくらいだった。
重圧を感じる度に、産休の間に世代交代があった事が酷く悔やまれる。
そのせいで、同期の男達が私ほどの結果を残さなくても、楽に昇級できたのだから。
やるせない気持ちを圧し殺し、私は書類に目を通していった。

そんな私に突然、女神が微笑んだ。
休日に気分転換でドライブした時に寄ったコンビニで、立ち読みしている部長を偶然、見掛けたのだ。
驚いたことに、部長が熱心に読んでいたのは、弟がいつも買っている魔法使いへの手引き書だった。
弟のおかげで、部長が読んでるであろう部分は簡単に想像できた。

それから私は、部長が手引き書に添った行動を起こす事を予想し、とある計画を練った。
まずはストレートだった髪に緩いウェーブをかけ、仕事でちょっとした失敗をしてみせた。一か八かの賭けだったけど、私の変化に部長は期待どおりの反応を示した。
私の髪に触れて褒めそやしたり、指導という名目で私の背後にまわり身体を密着させながらマウスにかけた私の手の上に自身の手を置き一緒に操作をしてみせたり、時には肩に手を置き慰めてくれたり、廊下でよろめいた私の腰に手をまわして引き寄せたり、まさに部長は手引き書どおりに行動してくれた。
今まで、そういったコミュニケーションをしてこなかった部長の振る舞いは、笑ってしまうほど不自然だったが、その理由を知っている私は一人ほくそ笑み、部長の一挙一動に周囲に気づかれないよう、息を止めて顔を赤くして恥じらったふりをしてみせたり、とびきりの笑顔で応えたりしてみせた。その度に、部長が何か手応えをつかんだ様子を感じながら。

―――数ヵ月後、部長は左遷され、私は晴れて営業部長に昇格した。
部長が左遷された事に私は全く関与していないし、私が営業部長になれた経緯すら知らされなかった。
でも理由は分かっている。
何故って?
それは私が女だから。

コメント(8)

30歳まで○○だと、魔法使いになれるんすよ!
わあ、セクハラww
でも女性側も別に
誘ってるわけではないから器用ですよねww

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