ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

意味がわかると怖い話。コミュの13 〜ラストシュート〜(自作)

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 「佐久間、走れっ!」

 森村先輩が相手のボールをスティールした。

 その声と同時に佐久間先輩が走り出す。

 すでに脚は疲労困憊なはずなのに、信じられないくらいスピードに乗った走りだった。

 僕は咄嗟にタイマーを見た。

残り四秒。

逆転のレイアップシュートを決めるにはギリギリの時間だった。

 「来いっ!!」

 佐久間先輩が振り向いてパスを要求した。

顔中に球の汗が吹き出しているなか、ひときわ瞳が光っていた。

まだ諦めてない。

この人は最後の最後まで戦うつもりだ。

 僕も佐久間先輩の背中を追って、走りだしていた。

もしシュートを外したら、自分がフォローする。

後悔だけは絶対にしたくない。

 「決めてこいっ!!」

 森村先輩の大声と同時に、勢いよくボールが飛んできた。

 相手チームは完全に虚を突かれ、誰ひとり自陣へ戻ってこられない。

いける。ノーマークだ。

 そう思った瞬間、最高のパスが佐久間先輩の手元におさまった。


       *

 「由美が妊娠した」

 その言葉を聞いたのは、練習後、体育館にジャージを忘れて取りに戻った時のことだった。

 コートには佐久間先輩と森村先輩しかいなかった。

二人ともまだ練習着で、ボールを脇に抱えていた。

 「意味わかんないんだけど」

森村先輩の声だった。

 僕は異様な雰囲気に思わず柱の影に隠れた。

 「だから。由美が妊娠したんだって」

 佐久間先輩は軽い口調で、シュートを放った。

 「昨日、病院行ったら、もう三ヶ月だって」

 ボールはリングに触れることなくネットを通り抜け、コートにバウンドした。

 「全然……言ってる意味がわからない」

 森村先輩は明らかに狼狽していた。

 それは僕とて同じだった。

 由美先輩は男子バスケ部のマネージャーで森村先輩と付き合っている筈だった。

 「悪いな。森村」

 森村先輩の脇からボールが力なく落ちた。

規則的なリズムが体育館に反響し、次第にその音は小さくなっていった。

 俯く森村先輩を横目に佐久間先輩は再びシュートを放った。

 綺麗な放物線を描いたボールはリングへぶつかり、体育館の隅へと転がっていった。


       *

 残り時間は二秒だった。

 佐久間先輩はジャンプして、レイアップシュートの体勢にはいった。

 試合も終盤だというのに綺麗なフォームだった。

 外す気など一切しない。

完璧な逆転シュートだ。

 僕は全身に鳥肌が立った。

このシュートが入った瞬間、おそらくここにいる観客は全員総立ちになるだろう。

アイツも、アイツも、アイツも。

 その時、ふとギャラリー席の奥にいる一人の男が目にとまった。

刈り上げた頭に、大きな体格。鋭い眼光に太い眉。

 男は何かを構えていた。

 「これがラストシュートだな」

 隣で声がした。

ハッとして見ると、いつの間にか森村先輩が横に立っていた。

 その横顔は今まで見たことないくらい、にこやかな笑顔だった。

 ブザーと共にボールはネットを揺らした。

コメント(8)

>>[001]
そうです。デューク更家です。
>>[003]


え〜本日のメインイベント
ALS〇K吉田vsゴルゴ13

10分一本勝負。
チン!

絵凄い!!
やりますな〜!

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

意味がわかると怖い話。 更新情報

意味がわかると怖い話。のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング