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意味がわかると怖い話。コミュの生活安全課の仕事【自作】

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「…寒い。」
警察署近くの広い公園に設置された、学校の体育祭を思わせるような白いテントの下で私は凍えていた。
いま私は『地域の皆様に警察への信頼を強めて頂く』という目的で開催されたイベントに駆り出され、相談にやってくる市民を待っているところだ。

前はこんな事は決してやらなかったのに…

白い溜め息がこぼれる。
一月前まで、私は警視庁の第一課の巡査部長だった。エリート街道まっしぐらだった私は、ある殺人事件でミスを犯し、地方の生活安全部に左遷されたのだ。

まさか、あの容疑者が大物議員の隠し子だったなんて…

鉛筆で×印がつけられた送検用の書類が警部補から返されてきた翌月、私は突然の人事で地方の警察署へ飛ばされた。
そう、私はつついてはいけない藪をついてしまったのだ。

そして今に至るわけだが、冬の寒さにぶるぶると震える私のところに、中学生ぐらいの女の子がやってきた。
A4サイズの分厚い封筒を持つ手には、小さな火傷跡があった。
落とし物かな?と思って封筒を眺めていると、席に着くなり少女は手にしていた封筒から中身を取り出してみせた。
中身は…なんてことはない。少女が書いた小説の原稿だった。
相談を聞いてみると、相談内容は次のとおりだった。

自分の書いた小説を出版社に送ろうと思っているのだが、自分の考えた殺害方法があまりにも完璧なので、もしこの作品が雑誌に掲載されたら、真似する人間が出てくるかもしれない。
しかし、自分の考えた殺害方法に矛盾があれば、安心して出版社に投稿できるので、殺害方法についての矛盾点を指摘してほしい、と。
話を聞き終えた私は絶句した。

何だ?この相談は…
何だ?この少女の恐るべき自信は…
というか、警察が聞くべき内容なのか?

よく分からなかったが、何しろ警察が開いたイベントに、寒い中、わざわざ出向いて来てくれたのだ。無下に断るわけにはいかなかった。
仕方なく私は彼女から分厚い封筒を受け取り、必ず目を通しますと言い、さっさとお帰り頂くことにした。

その後、寒さも手伝ったのか相談に訪れる人は居らず、私は退屈しのぎに先程、少女から渡された原稿を読んでみた。
すると、思いのほか作品のレベルは高く、引き込まれるようにして完読していた。
内容は両親から虐待を受けている少女が、両親を事故死に見せかけて殺すといったシンプルな内容だったが、両親の虐待シーンはどれもリアルで、身体に日々刻まれていく傷跡の描写や、暴力から逃れて病院へ駆け込んだ際の医者とのやりとり、その医者の元に両親がやってきて連れ戻されていく様等は、とてもフィクションとは思えないほどだった。
更に、主人公の少女の内に秘めた両親への愛憎とわずかに残る期待との葛藤が、涙が溢れてしまうほど切実に描かれていた。
しかし残念な事に、彼女があれほど自信に満ち溢れていた両親を事故死に見せかけて殺すシーンは、今までのリアルな描写に比べ、あまりにも稚拙だった。
考え方としては面白く斬新な殺害方法だったが、警察の捜査を全く理解していない内容で、素人目にしたって、これでは主人公はすぐに捕まってしまうだろうと思われた。
思いつきだけの、あまりにずさんな殺害方法に、素晴らしい作品の出来が損なわれている事を残念に思った私は、主人公の少女でも出来そうな殺害方法や事故死の判定等について細かく記載をし、少女に原稿を送り返した。

後日、少女からお礼の手紙がきた。
手紙には『貴方のおかげで、私の人生の出発点となる作品が仕上がりました。本当にありがとうございます。』とだけ書かれていた。
その手紙に私は今までにないやりがいを見つけ、そっと微笑んだ。

コメント(19)

少女は本当に両親を殺してしまうの?
少女は実際に虐待されていて、完全犯罪する気なんだ(O_O)
後から兄弟作を読んだので、新たな怖さが出てきまいた。
この警察官はようやく弱者を助けれたと安堵したのか。

この少女が小説を実行したのに気がついていたようですね。

でも本来の救済は、虐待を止めることなのに、それができなかった事を悔やんでいない。この警察官は人格異常者か(∋_∈)

幾重もの意味怖が隠れている。

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