意味がわかると怖い話。コミュの謎の神主、陳 (自作・超長文)

(^▽^)
さて、俺です。


年の瀬は、陳＆アリスで。
まずは、陳からですw


興味無い方は、スルーして頂いてかまいません。
m(__)



★★★★★★★★★★★★★★★



心臓病を患っている俺も、なんとか今年を乗り切れそうだ。

しかし、油断は禁物。

ふとした瞬間、病魔は嘲り笑うかのように俺を襲う。


今日は12月31日。
時刻は22時30分。


俺の住む家から徒歩10分の所に、願いが叶うと噂されているお寺がある為、そのお寺目当てに外からは参拝客達の楽しげな声が聞こえて来ていた。

支度を整え、俺もそのお寺へと行くことにした。


お寺に着くと、既に大勢の参拝客達でお寺の敷地内は賑わいを見せている。

また、夜店も所狭しと並んでいる為、一種のお祭り騒ぎである。


願いが叶うと噂の絵馬を購入する為、行列へと並んだ。
冷たい空気の影響か、心臓が苦しくなってきていた。


500円をアルバイトと思われる巫女の格好をした女性に手渡し、絵馬を受け取った。

絵馬をぶら下げる場所には、様々な願い事が書かれた絵馬がぶら下がっていた。


〜高校、〜大学合格！
〜さん、〜くんと恋人になれますように！
宝くじで一億円が当たりますように！
家族が皆、健康でいられますように！！


皆の書いた絵馬を見ていた俺も、あらかじめ用意していた油性ペンで大きく絵馬に願い事を書き込んだ。



[来年の大晦日も、ここで願い事が書けますように]


願い事を書いた絵馬をぶら下げようとした頃には、既に参拝客達の姿は無く、俺だけがその場にいる状態だった。

まぁいいさ。


俺は、大量の絵馬を押し退け、自分の絵馬をぶら下げようとし

『ここに書いてある願い事が全て叶いませんように、ネ。』


絵馬をぶら下げようとした俺は、その手を止めた。


振り返ると、そこには

黒のスーツの上から白の法衣を着、黒のシルクハットの上から白の法衣帽を被った、黒のサングラスをかけた中年男性が両手を合わせて礼儀正しく頭を下げていた。

その風貌からは、まるで、………何て言い表したらいいのか分からな

男『さっさとその叶うことない絵馬ぶら下げるヨロシ。』

俺『失礼な人だなっ！！何ですか、あなたは？』


俺は絵馬を右手に持ちながら、妙な格好の男性に声を掛けた。


男『ワタシ、カ？ワタシ、[棺]に[桶]と書いて、かんぬしの陳ネ。』

俺『かんおけ、だよっ！新年目前に不謹慎だろっ！』

男『不謹慎が新年ネ。』

俺『謹賀新年だよっ！！』


何なんだ、コイツは…。

…うっ…、こんな時に心臓がっ…



俺はその場に膝から崩れ落ちた。


陳『アイヤーッ、どしたアルカ！？待つネ、今、霊柩車呼んで来るネっ！！』

俺『救急車だよっ！！……くっ…心臓が…』

陳『なに書いたネ？』


俺が苦しんでいるというのに、陳と名乗る不審者は地面に落ちていた俺が書いた絵馬に興味を示したのか、絵馬を手に取った。


陳『ふむふむ…、ふむふむ…、ふむふむ…、ふむふむ…、ふ』

俺『そんなに長文じゃねーよっ！！…くっ……』

陳『なるほど、ネ。心に染み込むポエムアル。そんなお兄さんに、願い事叶う特別な方法教えてやるネ。』

俺『ポエムじゃねぇよっ！！………何…だ？……』


どうやら陳は、願い事が叶う方法を教えてやると言っていたようだ。


陳『今回は特別、タダネ。ワタシがタダで教えてやるいうこと滅多に無いネ。唯一タダで教えてやた奴は、その日一日とてもハッピーネ。そもそもワタシ』

俺『早く教えろよっ！！……くっ……』

陳『やれやれネ。分かたネ。この先に階段ある見えるカ？』

俺『お前のケツで見えねーよっ！！』


目の前に尻を向けていた陳に、俺は怒鳴った。


陳『これは失敬ネ。えーと、あの山見えるカ？』

俺『顔が近いよっ！！』


陳の唇が俺の頬にくっつくのではないかと思う位のすぐ傍で、陳が指を向けた先は、頂上が見えない程の急な階段だった。


陳『あの階段、聞いて驚くないアル。実は…』


陳の声のトーンが小さくなった。
また、サングラスも怪しげに光っている。


俺『…な、何だよ…？』


神妙な面持ちの陳は、辺りをキョロキョロと見渡すと、俺の耳元に近付き


『チュッ』


俺『うわぁっ！！えっ、何で、おま、えっ！？』

陳『驚くない言たネ。なんで驚いてるネ？』

俺『おま、今、キス』

陳『この先にある階段、実は願いの叶う階段、またの名前[叶う階段]ゆうネ。普段はヒト立ち入ること許して無いネ。今回は特別ネ。』

俺『お前、俺にキス』

陳『階段登たら、頂上にある祠にお願い事唱えるヨロシ。唱え終わたらまたこの階段下りて来る、ネ。』

俺『俺にキス』

陳『これを2回繰り返すネ。そしたら、お兄さんのポエム叶うネっ！！とーてもハッピーネ！！』

俺『キス……ポエムじゃねぇよっ！！』


地面から立ち上がった俺は、陳の案内で陳と共に

[叶う階段]

の元へとやって来た。


お寺の敷地内には、既に参拝客は人っこ一人いなかった。


立て看板の前に陳が立ち、左手の平を階段の方へと無言で向けて来た。


行け、という意味らしい。


サングラスを掛けている為、表情が分からない。
ただただ、無言だった。


俺は頂上が真っ暗な急な階段を登ることにした。


心臓に爆弾を抱える俺にとって、この急な階段を登ることは自殺行為と言っても過言では無い。

階段の中程辺りで、既に息は上がっていた。


心臓が…く、苦しい…。
しかし、願い事を叶えて貰う為だ。
これくらいのデメリットは仕方が無い…。


俺は右手で胸を押さえながら、急な階段を登って行った。



ようやく頂上に着き、辺りを見回すと、真っ暗な闇の中にポツンと小さな祠がそこにあった。

……これ、か…。

俺は手を合わせ、


俺『長生きしたい。頼む、長生きさせてくれ！！』


俺はその場で30秒程、深く頭を下げた。


…これをあと1回しろというのか……。


俺は登ってきた急な階段を、今度は逆に、足を踏み外さない様に慎重に下りて行った。





っ！！


まさか、そんな……。


階段の下には、陳が立っていた。
あれから30分以上は経っている……。

俺を心配して、ずっと待っていてくれたのか…？


陳さん、あなたって人は………。


俺は涙を流しながら陳の前にとやってき

陳『…zzZ、zzZ、もう食べられないアル…zzZ』

俺『寝てたのかよっ！！』


俺の声で陳は目を覚ました。


陳『さ、こちらが噂の階段ネ。この階段を2回登る』

俺『1回目が終った所だが。』

陳『そうネ。では、あと1回ネ。頑張るヨロシ。』

俺『あんたは、どうするんだよ？帰るのか？』


陳からの返答は、俺の予想を裏切る物だった。


陳『ここでお兄さん戻て来るの待つアル。』

俺『陳さん…。分かった。行って来るよ。』

陳『いってらっしゃいネ。』


陳の言葉を胸に、俺は再び急な階段を登り出した。






陳『あ、紅白歌合戦忘れてたネッ！！こんなことしてる場合と違うネッ！！ちゃんと叶われるといいネ。』


陳は慌ててその場から立ち去った。

弾みで、寄り掛かっていた看板が倒れた。




その看板には……



―――翌朝―――



新年の初日

お寺の裏山の階段の中腹辺りで、死亡している男性の遺体が発見された。




また、そのお寺の法衣が一着だけ無くなっていたと、住職から通報があった。