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小説、短編をつくってみたコミュの橘古物店〜出会い

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僕がその人と出会ったのは桜散る陽気な昼下がりだった

いわゆる僕はフリーター
いや、今は何もしていないのでフリーター予備軍と呼んだ方がいいのかもしれない
いや、フリーターですらない要は無職だ

この春学生と言う肩書きが取れて晴れて社会人、と言うわけにはいかなかった
大学を卒業後地元に戻りハローワークと自宅を往復する生活をこの春より始めたのだ

初々しい学生達を尻目に僕はいつものようにハローワークに通う
プーさんの微笑ましい笑顔が僕を迎え入れる
無職に向かってプーさんとかバカにしてんのか!!

この就職難の時代、僕の街も例に漏れずその求人数は少ない
あっても経験者優遇だの形式だけの求人、又は短時間のバイト、パート等の類ばかりに思える

僕の希望とするところは事務経理等の職種でその辺は特に少ないように見えた


「今日も成果無しか・・」

深くため息をつき、一応申し訳程度に発行されている求人一覧のような紙を数枚を手に取り長椅子に腰掛ける
ペラペラと紙をめくっていると気になる記事が目に入った

一般事務、接客、軽作業(荷物の運搬等)
時給 1500〜2000円
勤務時間 相談に応じます
連絡先:橘古物店

ここでふと、気がつく連絡先が載っていない
普通、住所なり電話番号なりが記載されているはずなのだが・・・?

条件も良さそうなので受付で紹介状と連絡先を教えてもらおうとすると受付の年配の男性は
首をかしげて

「こんな求人有ったっけ・・?」

と、つぶやくと奥のデスクに座っている頭をハゲ散らかした男性とコソコソ何かを話始めた

しばらくするとハゲがこちらへどうぞ、と少し奥まった所にある仕切られた席に案内された

「いやぁ、すみません何かの手違いで連絡先が載ってないようですね住所だけは分かりましたので、
紹介状を用意しますんで、すみませんが直接行って話して来てもらえますか?」

少し何か引っかかるような気がするが僕は、はぁとだけ気のない返事をして紹介状と住所の書かれたメモを
受け取りありがとうございますと言い席を立った
出口でふと振り向くとハゲと受付のオッサンが首をかしげながらまた何か話している

受付のプーさんは二度とココに来るんじゃねえよと言ってる様な気がした
言われなくてもお前の世話にはならんよ!!

僕はそのメモを確認すると隣町にあるようだ
一度家に戻り電話帳で確認するが載っていないようだ
会社なのに電話も置いてないのか?
まだ正午になろうかというくらいだったので僕はその場所へ行ってみることにした

電車に乗り隣町に付くと近くのコンビニでメモにあった住所を聞いてみる
だいたいの場所は分かったが

「そんな場所にアンティークショップなんてありましたっけ?」

「さぁ?俺アンティークに興味ねぇからわかんねぇわ」

そんな店員の会話を聞きながら僕は先ほど感じた引っかかりの原因が分かった
条件が悪くないのになぜ誰も聞かなかった、初めてその求人の事を聞かれた様な対応をしたのか?

深く考えても回答は出ない
まぁいいやと良い条件の物が自分に回ってくるチャンスを貰ったのだと前向きに考えることにした

教えてもらった住所はさほど遠くないらしくココから少し坂を上がったところにあるらしいとの事だった


教えてもらった案内をモトに坂を上っていく
一体どこまで登れば良いんだ・・・
アツイ・・・せめて所要時間くらい聞けばよかった・・・
インナーが汗ばむ
まだ春先だと言うのに長袖である事を後悔した
ふと潮の香りがして振り向く

坂から見下ろす海沿いに面した街並みはとても心地よいもので
この坂はその海に向かってまっすぐ続いているようだった
遠くに桜の木が密集している場所が有る学校でもあるのだろうか
潮風に電線がゆらゆら揺れている

「いい街だな・・」

そんな事をつぶやくと背後から

「あら?お客さん?珍しいね〜」

と若い女性の声に少し驚き振り向く

赤いジャージに首にタオルを巻いた女性が道端に敷いたビニールシートの上に古そうな本を無造作にその上に並べていた

「本は日陰に干すものじゃ・・・その・・痛みますよ?」

と言うと

「マジで!?ちょっと少年片付けるの手伝って!!」

店と覚しき建物に目をやるとかなり古い建物に「橘古物店」とあった
面接の前に恩を売っておくのも悪くない
僕はそう思い本を取り込むのを手伝った

道端に並べられていた本を店の中に取り込み終わると女性は汗を拭いながら、まあこれでも飲みなよっと麦茶を出してくれた
ひんやりした液体が喉を通る、麦茶ってこんなにおいしかったっけ?

「さて、お客さん今日はどんな品をお探し?手伝ってくれた礼にサービスしとくよ」

女性は満面の笑みでそう言った

「あの・・・これを、ハローワークの求人で・・」

僕は紹介状を女性に渡した
女性はうーん・・と少し考えたあと

「あぁ今日は縁日か」

??縁日?近くで祭りのやってる様子は無かったけど・・・?
僕が不思議そうな顔をしていると

「こっちの事だから気にしなくていいよ」

と女性は笑って続けた

「君名前は?」

え?もう面接は始まっているのか
僕は簡単に自己紹介をした

「ちょっとこれ持ってみて」

黒だか深い紺色だかわからない様な色の石を渡された

と、思ったら僕が触れた途端石は粉々に砕けてしまった

「おおお!!すごいね少年!!よし採用!!」

はい?店の大事な売り物を壊してしまったと焦った僕は呆気にとられた

軽っ!普通志望動機とか聞くだろう、そんなんで採用とか大丈夫なんだろうか?って言うか石は良いのか?
少し冷静になった僕はそんなツッコミと不安が混同した気分だった、その間も彼女は
「いつから働ける?」「時間帯とかどうしよっか?」
とか言っていた様な気がするが石を壊してしまった僕はそれどころじゃなく

「あの・・この石は・・?」

給料から天引きされるのか?と言う言葉を思わず引っ込めた

「あ〜この石?一週間持ってたら死ぬって曰く付きの石」

!!?なんてものを持たせるんだ
危うく就職する前に殺されかけたのだ
文句を言おうとした僕を片手で制し女性はケラケラ笑いながら

「嘘、嘘。ただの変わった石だよ。あ、自己紹介がまだだったね、私はここの店主、橘美香。よろしくね少年」


それが僕と美香さんの出会いだった

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