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こみや'S創作長編物語集コミュの神様のくれた二度目の奇跡

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「え〜慎二くん三才瑠菜ちゃん二歳、しつけといってベランダに放置されそのまま凍死したと思われます。体には無数の虐待の後があり容疑者である両親はしつけの一環だったと殺意を否認…」


「ひどい話ね」

「ああ、まったくだよ」

テレビのそんなこどもが犠牲になるニュースを見る度に私達夫婦はため息をつく。

30歳で結婚。それから10年。

私達に子供は授からなかった。

不妊治療をして原因がどちらにあるかが分かるのが怖く、経済的にも厳しい。お互い子供は欲しかったがこれが私達の生きる道だと2人で和やかに暮らしていた…。

そんな矢先だった。

いちいちチェックしていないがそう言えば生理がない。

少しものを食べるとものすごい吐き気が襲ってきた。

もしやこれは…

いや、もう40だ、ありえない…

と思いつつ妊娠検査薬を購入、トイレで全身に鳥肌が立った。

「陽性反応」

真っ青になり主人に電話をした。

その晩飛ぶようにして帰ってきた主人と夜な夜な話し合った。

この年でこの子を幸せに出来るのか。経済的にやっていけるのか。この子に不憫な想いをさせるのでは…

しかしこどもは授かり物。あれだけ欲しかったんだ。

私達はこの子を産むことに決めた。

6月。

男の子だった。

誰にも負けない強さをと勝と名付けた。

勝は名前のとおりヤンチャでもう若くない私の負担は半端なかった。

しかし勝は笑う。

「お母さん優しいから大好き!お母さんのこどもで良かった!」

ああ本当にこの子に出会えてよかった…そう思えた。

勝が幼稚園に行っていた時である。保護者数名と園児で下校していた。皆二十代か三十代前半。44になっていた私は完全に浮いていた…。

そんな時だった。

「勝くんのお母さんってなんかおばあちゃんみたい〜!」

1人の女の子がそう叫んだのだ。

グサリときたがこどもは正直なものだ。仕方ない。

「そうね…おばあちゃ…」

いいかけた矢先、勝はその女の子を突き飛ばした。

「謝れ!僕のお母さんはおばあちゃんなんかじゃない!優しいし、料理だってうまいんだぞ!ふざけた事いうんじゃねぇよ!」

尻餅をついた女の子は唖然としている。

瞬間泣き出したのは勝の方だったからだ。

「ごめんなさい…」

女の子が小さく謝る。

「いいのよ菜緒ちゃん、おばさんはもう44だからね。気にしないわ。」

そう言って勝を抱き寄せた。

「勝、ありがとう。おかあさんのために怒ってくれて嬉しかったわ。けれど暴力を女の子にあげるのはいけません。謝りなさい。」

「嫌だ!僕は悪くない!」

「謝りなさい!」

私は怒鳴った。

場が静まりかえる。

菜緒ちゃんのお母さんが沈黙を破った。

「いいんですよ海平さん。菜緒が悪かったんです。勝くんが謝ることじゃないですよ。申し訳ありませんでした」

二人になった帰り道。

勝はいつまでも泣いていた。

「もう泣き止みなさい、強い子にと勝とつけたのよ?ね。お母さん年とっていてこれからもこんな思いをさせるかもしれないけれどごめんなさ…」

「なんでお母さんが謝るんだよぉ!なんで年をとってたら駄目なんだよぉ!おかしいよ!」

空いた口がふさがらなかった…

正論だったからだ。

勝小学二年生の時だった。

授業参観日。

私はまた勝に恥をかかせてしまうのではと行くのをためらったのだが勝は屈託ない笑顔でこう言った。

「絶対来てね!」

なんて可愛い子に育ってくれたんだろう。有り難かった。

当日私は思い切りの若作りをして参観日に出向いた。

こどもたちはみな後ろをチラチラ見る。

「あのお母さん美人〜」

案の定想定していた事が起きた。

「あの派手なおばさん誰の?スゲー若作り!」

瞬間勝はその男の子に飛びかかった。

殴ろうとした瞬間。

「勝!止めなさい!」

私は怒鳴った…。

なんとかその場はしのぎ授業はそつなく終わった。

正直不思議だった。勝はどうしてここまで過敏に私を守ろうとするのだろう…。


ある晩のニュースだった。

「え〜九年前おきた児童虐待で当時三歳の慎二君、二歳の瑠菜ちゃんが亡くなった事件で容疑者である両親の裁判が…」

私達は3人でニュースを見ていた。

「あぁあったなぁこんな事件」

「本当。可哀想に…欲しくても出来ない夫婦だっているのに…」

カシャアン…

瞬間勝がナイフとフォークを落としガタガタと震え始めた。

「ま!勝!?どうしたの!」

ウワァと私の膝に泣きついてきた勝は恐ろしい事を語り始めた。

「怖かった…痛かった…寒かった…辛かったよ…だから…だから僕はお父さんとお母さんを選んだんだ…欲しくても出来ないなら出来たなら絶対に愛してくれる…そう信じたんだよ…」

私と主人は慌ててテレビを消し勝を抱きしめた。

なんて事だ…

だから優しい私をこんなにも愛してくれていたんだ…


それから私達は寺という寺を勝を実家に預けて回った。

勝の過去の忌まわしい記憶をなくしてやって欲しいと…

勝は中学生になった。

あれ以来こどもの虐待のニュースは見せないようにしていたのだがふと見ると勝はその悲しいニュースを見ている。

「酷いなぁ…」

全く他人事のように。

「勝…なんともないの?」

「え?何が?」

やった!

主人と寺を回った甲斐があった!

これで勝は幸せになれる!


今日はそんな勝の結婚式。

大切な息子だ。寂しいが嬉しい。

優しそうな女性を連れて来たのだ。

結婚式クライマックスの手紙では彼女は私達にまで気を回してくれた。

「このような素晴らしい男性を育てて頂きありがとうございます。彼は私が一生支えます。」



ハネムーンの夜。

勝は遂に語り始めた。

「お前…瑠菜だろ?」

しばしの沈黙を彼女は破った。

「気付いてたのね慎兄ちゃん」

「ああ。親には忘れたことにしてあるよ」

「家は全く気付いていないわ」

「お互いいい両親に巡りあえて良かったな。大切にしような…辛かったな…死ぬほど寒かったよな…て死んじゃったんだけど」

クスリと2人で笑い泣きながら眠りについた。


「勝さん」

誰かが俺を起こす。

「もう昼だよ。」

泣き疲れて昼まで寝ていたらしい。

神様は

「泣き明かしたね」

私達に

「でも…」

最高の

「なんで泣いてたんだっけ?」

奇跡をくれた。

「思い出せない」

コメント(22)

早速読ませて頂きました。
素敵な作品をありがとうございます。
よちのりさんへ
初めましてわーい(嬉しい顔)早速読んで頂きありがとうございますわーい(嬉しい顔)mixi禁止令を無視して描いてた話を書いちゃいましたウッシッシあせあせ(飛び散る汗)あせあせ(飛び散る汗)
深い...胸が締め付けられた涙
生まれ変わって幸せになれて良かったねほっとした顔クローバー

虐待した人は子供にした事と同じ事されればいいんだよむかっ(怒り)
さゅさんへ
ありがとうございますほっとした顔最近多いですよねこんなニュース…悲しいです涙欲しくても出来ないかも知れない私には許せないですね。
よかった涙しあわせになれて…

虐待は絶対ダメだよパンチ


そんなことするなら
私が育ててあげるよって
いつも思う…

芦田まなちゃんのドラマ
【マザー】を思い出した涙
このハッピーエンド
すごく好きハート
あっちゃんさんへ
そうですよね涙こどもは愛されるために生まれてくるのに涙私も思いますよ、私が育ててやりたいって。まなちゃんのドラマは知らないけれどハッピーエンドにできて良かったですわーい(嬉しい顔)
すごい展開ですね冷や汗 鳥肌たちましたあせあせ(飛び散る汗)あせあせ(飛び散る汗) こういう輪廻ってあるみたいですからねぴかぴか(新しい) 忘れてよかったぴかぴか(新しい)
Prelude to Legendさんへ
ありがとうございますわーい(嬉しい顔)突き飛ばした女の子を瑠菜にしようか迷ったんですがね(^_^;)うまく展開出来たみたいで良かったですウインク

やっぱり、ここに来るんじゃなかった…涙がとまらねーよ泣き顔
虐待のニュースを見るたんびに誰もが思ってるよなあせあせ(飛び散る汗)
ここには子供が授かって絶対に大事にしてくれそうな
所には子供が授からなかったりするバッド(下向き矢印)
何かの本で読んだけど、女性の後ろには魂が順番待ちをしてるんだってさ…
次は自分の番と思って、この世に生を受けたのに酷い目に遭う
ホントに神様は居るのかって思うね泣き顔
読みやすくて期待を裏切らない涙が止まらない話をありがとうわーい(嬉しい顔)

半分程、読んだぐらいから涙が出だしちゃったあせあせ
読むの止めれば良かった泣き顔日曜日のこんな時間に目を腫らしてる俺って…(ワラ)
とんこつすーぷさんへ
熱いコメントをありがとうございます。魂が順番待ちをしてるんですねげっそり知らなかった。そうしてやっと産まれたのに殺されるしかも親に。悲しいです。今日も二歳の女の子殺害容疑で母親逮捕されてました。信じられないですよね…
プッチ神父さんへ
お久しぶりですほっとした顔普通の人には理解できないですよね。煩わしくなったりするのかなあ…親はなぜ殺すのに産むんだろうと謎でしかたありません。
プッチ神父さんへ
なるほど…そうですよね、お腹に赤ちゃんがいるときは恐らく幸せな気持ちだったはず…。私はこどもがいないので子育ての大変さを身を持って体感していません。色々ストレスかかるんでしょうね。悩んでないで相談してねってモモコのCMにありましたよね。思い詰めないで公共機関を上手に利用してもらいたいです。
虐待は連鎖するっていうよね…虐待されて育った子は辛くてもそれが当たり前になって、自分の子にも……

虐待のニュースが絶えないけど、ニュースにならないだけで、どれたけの子が虐待をうけてるんだろね…

子供は親を選べないっていうけど、この作品みて、莉乃が選んで来てくれてたりしたら…とか考えてしまいました♪
ayakaちゃんへ
うん涙悲しいニュースが後をたたないよね。ニュースにならないだけでたくさんのこどもたちが泣いているんだろうね涙うんわーい(嬉しい顔)りのちゃんはきっと空からayakaちゃんを選んできたんだよほっとした顔責任重大やねウインク
あたしにも娘が4人いますexclamation
確かに理想と現実ゎ違い過ぎて、イライラして子供たちに感情のまま怒ってしまうこともあります涙
それでも無償の愛をくれるのが子供なんですexclamation ×2
何だか偉そうにすみません涙
泣きました。

息子と娘がひとりずつ。
育てていながら、しんどいこともあるけど、大切なわが子たち。
大人になったとき、この親でよかったと思ってもらえる親でありたい。
イライラしたりつらいこともあるけど、私はいまでもなお自分の親を愛せないし、愛された実感もないから、子供にはそんな思いをさせたくない。
親にされたようにガミガミ怒っちゃうこともあるけど。
色々考えさせられました。
マコ☆マコ☆さんへ
いやいや熱く語って下さいむふっここは皆様の語り場所なのでわーい(嬉しい顔)娘さん4人ですか目がハートうらやましいですねわーい(嬉しい顔)私はこどもがいないので現実を知らない訳で偉そうな物語になってしまったかもしれませんねほっとした顔
ますちゃんさんへ
素晴らしいですねほっとした顔自分の受けた傷をこどもにも与える親が多いなかでそうはなるものかと頑張ってるますちゃんさんは素敵ですほっとした顔しんどい時もあるでしょうが子育て、頑張って下さいね。
本当、お久しぶりに読ませてもらいました!
感動するお話というのはその時の自分の立場、状況、心情などで、思うところが変化するんだなと思った。また、久々に一度読んだものも色々読ませてもらうね!
>>[21]
あやかちゃん、久しぶり〜〜(o^^o)コメントありがとう。私も懐かしく読みました。また読んでやってね(o^^o)

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