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こみや'S創作長編物語集コミュの5,哲弥君との最初で最後の愛

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「絵里はお父さんの宝物」

お父さんの口癖だった。

「お父さん頑張るよ?お母さんの分まで絵里を愛してる!」

こども心にお母さんの居ない訳は聞けずにいたが

そんなものどうでも良かった。

お父さんが居るから…

小学生になった。

洗濯は毎日出来るほどお父さんも暇じゃない。

私は毎日9時までお父さんを一人で待っていた。

汚れていない服は毎日着ていた。

ある日。

苛めの対象になった…

理由は毎日の同じ服。

しかし…

「止めろよ!」

助けてくれた男の子が居た。

彼は…苛めを繰り返すその男の子をどうやら倒したらしい。

私は…

奥手だったのでどう彼に

飯田君に

お礼を言えばいいか分からなかった。

帰り道。

あ。

飯田君…!

一人だ!こ…これは

チャンス!!

「あのっ!!」

私は勇気を出して飯田君を呼び止めた。

「わ!私の…!私の為に!あ…ありがとう!!」

彼は一瞬ポカンとした顔をしたが

すぐに笑顔を見せた。

「どういたしまして!苛めがなくなって良かったね!」

嘘…

優しい…

男の子に優しくされたのなんて

初めてだった。

彼は続けた。

「平野さんを見過ごせなかったのはね…」

え…

「家もなんだよ。」

え?

「家も父子家庭なんだ。」

彼の家には高校生のお姉さんがいて、家事はほとんどしてくれるらしい。

「お姉ちゃんが居るからね、寂しくなんてないし。お父さんも居るしね。」

この人…

前向きだぁ。

「私も…」

「え?」

「お父さんが居るから幸せ!」

アハハ!と彼は笑った…


翌日。

「平野さん」

え?

飯田君だった。

「今日家来ない?」

え!?!?何で!?

「お姉ちゃんに平野さんの事話したんだよ、したら連れて来いってさ!ちょっと変わったお姉ちゃんだけど良かったら!」

ヘヘッと飯田君は笑った。

嘘みたい…

男の子の家に遊びに行くなんて嘘みたい…!!

ドキドキして飯田君の家の前に立つ。

「そんな緊張する事ないよ」

ガチャリとドアを開けたら

そこには眼鏡をかけた女の人が仁王立ちし私達を見下していた。

「ヒィ!」

あまりの迫力に思わず声を漏らした…

「おぉお前が家と同じく父子家庭の平野か?下の名前は?」

頭を掴み顔を凝視してくる。

怖い!!く!来るんじゃなかっ…

「…です」

「は!?声を張れ!!!」

「ヒィ!え!絵里ですぅ!」

「おぉ奇遇じゃねぇかよ私は万里だ。万里さんと呼べ。お前…父さんと二人暮らしなんだって?」

「は!はい!」

「なんかやってんのか?」

「は…?」

「なんか手伝いをしてんのかって聞いてんだよっ!!」

こっ!この人何でいちいち怒鳴るの…!

「何も…」

「そりゃあいけねぇ。」

「え…」

「今日はお前に洗濯機の使い方を教える。」

「え…でもお父さんが…」

ハァと万里さんはため息をついた。

「父さんはなぁ、朝御飯を作り仕事に出て夜帰り晩御飯を作ってるんだぜ?お前なんかそんな父さんの力になりたいとか思わねぇのかよ〜情けねぇなぁおい。」

「まだ小学一年生だもん!」

思わず言い返した。

「まだと取るか、もうと取るか。努力の出来る女はカッコいいぜ?なぁ哲弥?」

飯田君…助け…

「うん!まずは習ってみなよ!」

そんなぁ…

渋々私は飯田家の洗濯機の前に立った。

「朝は忙しい。帰ってから回せ。二人暮らしだ。毎日じゃなくてもいい。溜まったらこのボタンを押して洗剤を…」

私は事細かにメモを取った。

そんな私を見て万里さんは


笑った。

え……

「人の好意を真剣に受け止める事の出来る奴は、私は好きだ。」

なんだか…

くすぐったい。


家に帰って早速洗濯機をのぞくと…

うわ…いっぱい…

メモを見ながら一生懸命に操作をした。

少し勝手は違うが洗濯機は動いた。

「…やったぁ!」


「ただいまぁ」

「お父さんおかえりなさい!」

私は洗濯かごに山盛りの洗濯物を抱えお父さんを迎えた。

「洗濯機を回せるようになったの!絵里これから洗濯係するよ!干し竿が高くて…絵里の届く高さにして!」

お父さんは…

言葉を失い

涙を流した。

「な…なんで泣くの?」

お父さんは答えない。

ただずっとずっと顔を覆って泣いていた…

「泣かないで…お父さん泣かないで…」

二人でいつまでも泣いた…


翌日。

飯田君に話した。

「今日の朝はご機嫌でね、竿下げたよって!頼むなって!」

「良かったね!」

「うん…万里さんにもお礼を…言っておいてね…」



金曜日だった。

「平野さん!」

「え?」

「日曜日遊園地行かない!?」

え!!

「日曜日もお父さん仕事なんでしょ?家も!」

「小学生二人じゃ無理だよ…」

飯田君は笑った。

「大丈夫!」


日曜日。

家にある一番の可愛い服を着て私は待ち合わせの駅に走った。

デート…!デート!!!

大丈夫の意味が分からないけれど。

「平野さんこっちー!」

笑顔で手を振る飯田君を見つけた。

「あ!飯田く…」

後ろに

万里さんと見たこともない男の人。

「あ……」

「あぁこの人はね…」

「私のダチだよ!」

「彼氏って言えよ!」

パァン!と頭を叩かれた万里さんは恥ずかしそうに言い返した。

「ガキに言う事じゃねぇだろうよ!!」

万里さん…

こんな素敵な恋人がいるんだぁ

いいなぁ。

チラリと飯田君を見る。

「ん?」

笑って返された言葉に自分の顔が赤くなったのが分かった。

万里さんの彼氏は強引に万里さんの手を取る。

「止めろよ!ガキが見てるんだよ!」

「いいじゃん〜」

恐る恐る…

隣の飯田君の手を見た。

あれ…私…

変だ。

さっきから

飯田君の顔ばかり見ている。


帰り道。

「いや〜日曜だけに混んでたけど楽しかったな!」

「うん!ありがとうお兄ちゃん付き合ってくれ…」

ハッと飯田君は口を閉じた。

ん?

それよりも前から…

聞きたい事があった。

「飯田君…」

「ななな何!?!?」

何故か飯田君は狼狽していた。

ブッと万里さんの彼氏が吹き出す。

「聞いていいのか分からないけれど…」

「え?」

「飯田君の家には…どうして…お母さんが居ないの?」

「あ……」

しばしの沈黙が流れた…

し!しまった!聞いちゃいけなかっ…

「て!哲弥を産んですぐに事故にあったんだ…」

万里さんの言葉を飯田君は遮った。

「僕を産んで死んだんだよ。」

「え。」

万里さんの顔色が変わる。

「ご!ごめんなさい私酷いこと聞いちゃっ…」

「いいんだよ。気にしな…」

瞬間。

万里さんが飯田君の胸ぐらを掴んだ。

「お前何で…何で…知っ…」

「俺が話した。」

答えたのは万里さんの彼氏。

「俺が話したんだよ。」

バキィ!!と物凄い音が夕方の空に響いた。

明かにグーで思いきり万里さんは彼氏を殴っていた…

「ふざけんじゃねぇよテメエ!!!私が頼んだか!?こいつに話せと頼んだかよ!?こいつはまだ小学一年生だぞ…もう少し…中学生…高校生…大人になってからと…それをお前…お前…ッ…」

万里さんは

ボタボタと涙を落としていた…

「人ん家の家庭メチャクチャにしやがってバカにすんのも大概にしろよ!!もうテメエには愛想が尽きた顔も見たくな…」

「お姉ちゃ…!違っ…」

パァン!と彼氏は軽く万里さんを叩いた。

「バカにしてんのはお前だろ?」

「…は?どういう意味だよ!!」

万里さんは泣きながら彼氏の胸ぐらを掴む。

「何もムチャクチャになんてなってねぇじゃねぇか。こいつなら受け止められると思ったから話した。こいつはな!もうお前が思ってるほどガキじゃねぇ!お前が思ってるほど弱かねぇんだよ!!哲弥をバカにしてんのはお前なんじゃねぇの?こいつはな…もうガキじゃねぇ…男なんだよ!」

「…分かった口聞くんじゃねぇよ…ガキだよ…赤ん坊からミルクやって…夜泣きに泣かされて…いつも付いて回ってくる私なしじゃどうしようもねぇガキだよ…そんなっ!分かった様な口聞くなよっ…!!聞かないでくれよ……」

ワァァンと万里さんは彼氏に泣き付いた。

こどもの様に泣きじゃくる万里さんの頭を

彼はいつまでも撫でていた…

「私達…お邪魔だね」

飯田君に囁く。

「先…帰ってようか!」

二人で道を歩きだした。

どちらからだったのだろう。

手を繋いでいた。

「羨ましいな」

「え?」

「あんなお姉さん」

「うん。自慢のお姉ちゃん」

「自分の為に怒ってくれて、自分の為に泣いてくれて、自分の為に一生懸命になってくれる。私もあんなお姉さん…欲しかった…」

「あのさ…」

「ん?」

「まだ小学生だから分かんないけどさ」

「うん」

「絵里ちゃんの本当のお姉さんになればいいね!」

え。

「…うん!」


ふいに沈黙が流れる。

私達はドラマの真似をして…

そっと…

唇を近付けた…

ら。

あれ?

当たったのは…手…?

思わず上を見ると

万里さんが泣き腫らした目をぎらつかせて飯田君の口を塞ぎにらんでいた…

「ガキが大人の真似事すんな!!10年早いんだよ!行くぞ哲弥!」

「ち!ちょっとお姉ちゃ…」

飯田君は万里さんに引きずられていった…

「絵里。」

「は、はい!」

「そいつに送ってもらえ。」

横には…

万里さんの彼氏が微笑んでいた。

「哲弥はなぁ…万里が赤ん坊から育てたこどもみたいな弟なんだよ…。だから…寂しいんだよ本当は。哲弥が少しずつ大人になっていく事。少しずつ自分から離れていく事。絵里ちゃんみたいな可愛い彼女が出来た事!」

「か!彼女だなんて!」

「あれぇ〜さっき何しようとしたぁ?」

思わず赤くなる。

「今日のデートもあいつに頼まれたんだぜ?好きな子が出来た小学生二人じゃ遊べないから付き合ってくれってな!あいつ、いい奴だぜ?」

飯田君……

涙が溢れた。

「はい!分かってます!」







「絵里お姉ちゃん…転んだらゴメンね…」

「大丈夫隆治君。指輪を持ってゆっくり歩いてきてくれたらいいの。」

ベルボーイは万里さんとあの時の彼との間に出来た男の子。

「隆治!転んだらただじゃおかねぇぞ!」

万里さんが野次を飛ばす。



哲弥君には何度も聞いた。

私しか知らなくていいの?

哲弥君は毎回答えた。

お互い様じゃない!




哲弥君…幸せにしてね

一生あなたに恋してる!

一生あなたを愛してる!

コメント(12)


この作品知らなかったぁげっそりげっそりげっそり
あたしとした事がぁー(長音記号2)爆弾
さゅさんへ
そうそうこの話はさゅさんからコメントがつかなくて大変ショックを…ナンチャッテうれしい顔かなりハイペースで飛ばしてたんですよあせあせたらーっ(汗)暴走すると止まらないんですあせあせ
プッチ神父さんへ
はい!スポットを恋に当ててしまいお父さんと絵里をあまり密に描けませんで…あせあせ力不足ですあせあせプッチ神父さんのその前向きな愛は必ず娘さんに届きますよほっとした顔
> こみやさん
このシリーズ大好きなんだぁ目がハート揺れるハートこみやチャン続けてくれてありがとうー(長音記号2)ハート
さゅさんへ
こちらこそ万里と哲哉を好きになってもらってありがとうございますほっとした顔万里は描きやすいんですよあせあせ男みたいだから笑。散々引っ張りましたがこれで本当に最後ですねほっとした顔
うちの8歳の三男が突然夕飯の洗い物を自分から進んでやり出した時にはホント涙が出る程嬉しかったうれしい顔
夕飯時には毎回お手伝いすると言って傍に来るしわーい(嬉しい顔)
mvx好き♯48さんへ
無茶苦茶可愛いですね〜目がハート優しいお子さんで素敵ですねほっとした顔シャープさんがお優しいのでしょう。早く退院出来るといいですねわーい(嬉しい顔)こどもがいるっていいなぁほっとした顔ハート達(複数ハート)
スズカさんへ
ありがとうございますほっとした顔ぴかぴか(新しい)まだまだ続きますので(笑)最後までお付き合いいただければ幸いですわーい(嬉しい顔)あせあせ(飛び散る汗)基本的に嫌な人は描きたくないものでわーい(嬉しい顔)あせあせ(飛び散る汗)
TERAさんへ
ありがとうございますわーい(嬉しい顔)ぴかぴか(新しい)かたりべやに万里シリーズの順番書いてあるんで良かったらそれに添って読んでやって下さいねわーい(嬉しい顔)右斜め上

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