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こみや'S創作長編物語集コミュの百合の抱える心の傷

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へへっ!

思いっきり殴られた頬を押さえ俺はにやけて走っていた。大学一回生。たった今彼女と別れてきたのだ。理由はひとつ!好きな子が出来たから。俺はこれで結構モテる。今までの女は全員向こうから言い寄ってきた。だから初めてなのだ。彼女に会い初めて俺はこんな子がタイプだったんだと気付いたのだ。

彼女はファーストフード店で毎日夕方5時から10時まで働いていた。日曜日は9時から6時まで。全て調べた!何度かお客さんで彼女のレジに並んだこともある。

「なんになさいますか?」

名札には真壁百合とあった。

「ありがとうございます!」

ニコリと笑うその顔に俺の心は奪われた…

よし!彼女とも別れた!俺は決意を固めた。今日こそは彼女に告白すると。

夜10時。俺は高鳴る心臓を押さえて彼女が出てくるのを待った。

「お疲れ様でした!」

出てきた!行くぞ!!!

俺は一目散に彼女の横まで走り話しかけた。

「真壁さんだよね?俺、崎田祐也ってんだ。ちょっと話聞いてくんねーかな?」

彼女…百合はびっくりして俺を見た。

「あ…あのさ…ナンパな気持ちじゃなくって…あんたの事す…好きになっちまった!!!良かったら俺と付き合っ…」

「ゴメンナサイ!」

早っ!俺の生まれて初めての告白…そして失恋だった…しかし俺は食い下がった。

「何でだ?彼氏いんのか?好きなやつがいんのか?ちゃんと理由聞かせてくれ…。」

彼女は意外な理由を述べた。

「男の人は…苦手なんです…」

は…?な…

なんて可愛いんだぁ!!!

「お前そんなこと言ってたら一生結婚もできねぇぜ?いいのかよそれで?なあ?よし!分かった!お前が嫌だっつーなら俺はなーんにもしない!約束するよ!お友だちからスタートだ!これでどうだ?な!な!」

俺は必死だった。

「ほ…本当ですか…?」

「本当だ!」

「キ…キスとか…それ以上の事とか…何も出来なくてもいいんですか…??」

「お前がいいっつーまでアダルトビデオで我慢する!」

クスリと百合は笑った。

「わ…笑う所じゃねーぞ!」

「本当は…私もよくお客さんで来てくれるあなたを素敵だなって見ていたんです。」

ま…まじかよ!!

俺はあまりに嬉しくて思わず百合を思いっきり抱き締めた。

その時だった…

百合の体は音をたてそうなくらいに震えだしたのだ…

「ご…ごめん!!!」

俺は慌てて百合から離れた。

「ゴメンナサイ…ゴメンナサイ…」

百合は目に涙をためて震えていた…

「お…俺が悪かったんだよ、お前が謝ることじゃあない。な?落ち着け。お前そんなじゃ帰りの夜道も怖いんじゃねぇか?俺毎日家まで送ってやろうか?」

「ほ…本当ですか!」

百合の表情が変わった。

「あぁ!生まれて初めて自分から惚れた女だ!なんだってやってやる!」

「ありがとうございます…本当は怖かったんです…駅を降りて家まで五分なんですけど街灯が少なくて…本当は怖かったんです…本当にありがとうございます…」


それから俺達は毎晩10時、一緒に駅に行き3駅先の百合の最寄り駅で降りて五分を一緒に歩いた。

「手は繋げるか…?」

恐る恐る差し出した俺の手に百合はそっとそっと自分の手を重ねた。その手はやはり震えていた…。

「で…出来ました…」

無理矢理笑う百合のおでこを俺はピンと弾いて言った。

「無理することねーよ!」

百合は泣きながら

「ありがとう…ありがとう祐ちゃん…ごめんね…ごめんね…」

を繰り返した…


正直不思議だった。百合のこの反応ははっきり言って異常だ。どうして百合はこんなに男を怖がるのだろう…


そんな矢先だった。

いつもの様に百合を迎えにいった俺。しかしいつまで待っても百合は出てこない。携帯にも出なかった。俺は心配になりファーストフード店の裏口をダンダンと叩いた。

出てきた店長はこう告げた。

「真壁さんは倒れたよ。しばらくアルバイトは休ませて欲しいと彼女のお父様から連絡があった」


倒れた……?


俺は速攻て百合の自宅へと向かった。チャイムを連弾すると何事かと言った顔で高校生くらいの男が出てきた。

「お前…!百合の弟だな!?百合は居るのか!?入院したのか!?俺は怪しいもんじゃねぇ、百合の彼氏だ!」

俺は走った。百合の入院する病院へと…!百合の弟から全て聞いた。百合の家は父子家庭。借金を残し蒸発した母親の尻拭いで父親は精一杯。百合は大学の学費を全て自分で稼いでいた…。だから毎日毎日アルバイトに励んでいたんだ!質素な服ばかり着ていたんだ…!

「百合!!!」

思いっきり開けた百合の病棟には…百合の父親がいた。

「あ…あの…」

こんな形で百合の父親と会うことになるなんて…

「あぁ…君が祐也君だね」

百合の父親は俺を知っていた。

「百合が嬉しそうに話してくれたよ。毎日夜道を送ってくれる優しい彼が出来たとね…ありがとう。私からもお礼を言うよ…」

「そんな…お礼だなんて…それより百合さんは…」

「過労だよ…無理もない。毎朝5時に起きて自分と弟の弁当を作り朝御飯の支度に晩御飯の支度までして大学でみっちり授業を受けたあと毎日アルバイト…この子には苦労をかけさせてばかりだよ…父親として情けない!」

百合の父親は泣き崩れた。


言葉が出なかった…


「時に…百合は君に体を許したかね?」

は?何を聞き出すんだこの人は…しかし俺は答えた。

「いえ。まだ何もしていません。手すら握っていません!」

「そうか……やはりね…君には本当の事を話しておくよ。どうせ百合は話していないだろうからね…」

「え…?」

百合の父親の言葉に頭が真っ白になった。

「この子は高校生の時にね…レイプされたんだよ!」

え………

泣きながら百合の父親は続けた


「百合は高校の図書館で毎晩遅くまで受験勉強をしていたんだ…ある夜…おかしいな…私が八時に帰っても百合はいなかった…。当時百合は携帯を持っていなかったよ…。私達は百合を待ち続けた…今思えばすぐにでも探しに行くべきだったんだ!10時を回りさすがに心配になり私と弟は外に出た…百合!百合!公園の中だったよ…お父さん…か細い声が聞こえた…百合だった…一目見て何が起きたかすぐに分かったよ!目も当てられなかった…唇は血だらけ…制服はビリビリに切り刻まれスカートからは激しく出血していた……すぐに警察に行こうと言う私に百合は泣きついてこう言ったよ…こんな事が表沙汰になったら私は学校にも恥ずかしくて行けない…お願い…お願い…私なら大丈夫だから何もなかった事にしてと!!!」

ウワァァと百合の父親は泣き崩れた。

「私達は…!泣き寝入りしたんだ…百合がそれを望むならと!!!」

「お父さん…」

俺は続けた

「お父さんはお仕事に行って下さい…。百合さんは…百合は俺がずっと見ていますから…」

「そんな…君にそんな負担はかけられな…」

「百合と二人きりにさせてください!!!」


俺は叫んだ。

百合の父親は俺の気持ちを汲んでくれた…

百合…


お前……お前一人でどんだけのもんしょいこんでたんだよ…血だらけの唇…きっと無理矢理キスされて必死に抵抗したんだ…そして無理矢理…もうそれ以上は悔しくて悲しくて辛くて想像もしたくなかった……。


幸せそうに眠る百合の顔にポツリ…ポツリと俺の涙が落ちた…

辛かったな…怖かったな…

だからあんなに震えていたんだな、百合…

俺は百合の病棟でいつまでもいつまでも声を殺して泣いた……

何日経っただろう。

俺は腹の減るのも忘れて百合の側に居続けた…

「…ん…??」

「ゆ…百合!?気が付いたか!良かった!」

「祐ちゃん…私…」

「安心しろ!ただの過労だってよ!」

「ずっと付いててくれたの?」

百合が泣きそうな顔をする

「お父さんから全て聞いた」

「え」

百合の顔色が変わった。

「お前…」

瞬間ウワァァと百合は泣き出した。

「祐ちゃんだけには…知られたくなかった!知られたくなかった!こんなこと知れたら…私もう二度とそういう事出来ないってばれたら…私…捨てられちゃうって…!振られちゃうって…!だから…だから…」

パァン!!!

気付けば俺は思いっきり百合を叩いていた

「ふざけんな!!!俺はなぁ、本気でもない女の送り迎えを毎日してやるほどお人好しじゃねぇ!本気でもない女の目覚めるのを飲まず食わずで待ち続けてられるほどお人好しじゃねぇんだよ!!!お前はなんにも分かってねぇんだ!俺がどれだけお前を好きかなんてなんにも…なんにも…お前がな!そんな辛い目にあった事を知って去っていく程度の想いしか俺が持ってないと思うな!お前の…お前の心の傷は…心の傷は…俺が一生をかけて癒す…だからもっと俺を信じてくれよ…頼むよ…本気なんだよ……」

俺はベッドに泣き崩れた。

「祐ちゃん…ごめん…ごめんね…ありがとう…泣かないで…泣かないで…」

百合は泣きながら俺の頭にそっと触れた…。

泣き続ける俺の頭をいつまでもいつまでもなで続けてくれた…





「そうして出来たのがお前なんだよ。」

俺は高校生になり最近百合に反抗的になってきた希に全て話してやった。

「結婚してからもやはりお母さんは俺をなかなか受け入れられなかった。百合は言ったよ。祐ちゃんのこどもが欲しいとね。俺達は根気強く体を近付けていった。百合の心の傷は少しずつ癒えた…。お前が出来たのは奇跡だった。お前は俺達の希望そのものだったんだよ。だからお前を希と名付けたんだ。」

希ばボロボロと泣いた

「お母さん…可哀想…」

「お母さんに同情などしてやるな。お母さんは幸せなんだよ。俺と出逢い、お前を授かったのだから。だからお母さんに同情するなら感謝をしてやれ。お前を産むのにお母さんがどれだけのトラウマを乗り越えたかを決して忘れるな」

「ただいまぁ」

百合が買い物から帰ってきた

希は慌てて涙を拭い

「おかえりなさい!」

と百合のもとへ走った


「お米持ってあげるよ!」

「なぁに?気持ち悪い」

首を傾げる百合に希と俺は二人で顔を見合わせ微笑んだ

「なぁによぉ?二人で隠し事?お母さんにも教えてよぉ」



ニヤニヤするばかりの俺と希に百合はいつまでも首を傾げていた。



百合、幸せか?俺は最高に幸せだよ!ありがとう…。

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