ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

実務家からみた司法試験コミュの差し押さえるべき債権の特定に関するちょっと別の観点からの考察

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
民事執行法はいちおう司法試験の範囲ですが出題自体はあまりないようです。
最高裁平成23年9月20日第三小法廷判決に関するものですが、受験生はこういう条文に関してこういう判決がある、といったくらいの知識で十分でしょう。

 最高裁平成23年9月30日第三小法廷判決は預金債権差押えに際して支店の特定を要求した事案として知られている。判決の事案を単純化して示すと次のようになる。
 X(債権者・抗告人)はY(債務者・執行の相手方)に対する金銭債権を表示した債務名義にもとづきZ銀行(第三債務者)に対して、執行裁判所に預金債権の差押命令を申し立てた。このときXは全店一括順位付け方式による差押債権目録を提出していた。取扱店舗を一切限定せずに複数の店舗に預金があるときは支店番号の若い順位による、としていた。
 地裁・高裁・最高裁とも民事執行規則133条2項の特定に欠けるとした。

 債権者側についた弁護士としては、全店一括順位付け方式にこだわって却下されたうえで、この判決の妥当性について争うより、依頼者のためにな預金額最大支店特定方式による表をつけていくことになる。このへんの知識がなくて、受け付け段階のロスタイムでほかの債権者に出し抜かれたり債務者に資産隠匿されたら弁護過誤といえるかもしれない。預金額最大支店特定方式については東京高裁決定平成23年10月26日判例時報2130号4頁がこの方式で特定がたりるとしている。
 学説上は支店の特定は不要という考え方も有力なようである。
 この最高裁判決には田原最高裁判事の補足意見があるのだが、長いので判例百選や重要判例集では省略されてしまっている。

2 学説及び民事法以外の別の考え方
 2−1 学説
 おおきくわけて支店特定の必要説と不要説がある。財産開示や弁護士法23条の2照会に銀行がこたえないことを前提に支店特定を要求されては債権者はたいへんだ、ということが支店特定不要説の基本である。債権者の便宜重視である。必要説は支店ごとの顧客管理をしているのだから支店を特定しなけらばならない、というのが基本である。第三債務者の便宜重視となる。ところが第三債務者たる金融機関もいろいろであって、コンピュータ管理があたりまえで名寄せが容易なところとそうでないとこもらる。支店特定説はオンラインが完成していないわりと古い説がおおいのはこのへんの事情が関連しているのかもしれない。

 2−2 行政法・刑事法では
 行政法や刑事法での相手方の銀行の口座凍結を申し立てることがある。暴力団追放条例や振込詐欺防止法による例がおおい。
 振込詐欺防止法にもとづくあやしい口座をさしてめる書式(日弁連のホームページ参照)では支店の口座を届けるかたちになっているうえに、口座名義も支店の特定も欄がある。ただ、被害者が口座をおぼえていない場合もあり、実際はカタカナの口座名義人の記載だけでも受け付けてくれている。マネーロンダリングや不正行為防止のため名寄せ(顧客単位での管理)はかなりすすんでいるのである。消費者被害の局面で、行政法と民事法の差異はないほうがのぞましい。
 とすると同一のコンピュータ回線で管理されている範囲、たとえば都銀の同一銀行の国内支店に関しては概括的な国内支店ということで特定はたりるとしていいのではないだろうか。
 田原補足意見でも指摘されていたが、複数銀行間の場合は金額をどの程度までおさえるか二重払いの可能性とか否定できないのでちょっと無理であろう。
 過剰支払いや二重支払いの可能性を考えて支店間の順位付けは必要ということになる。
 まとめると同一金融機関のどうしに対しては、支店間で過剰執行のおそれがないように指定したうてで支店記載はなくしてもよいことになる。


参考文献 ジュリスト1440号 平成23年度重要判例解説 民事訴訟法8 全店一括順位付け方式による預金債権差押命令も申し立てと差押債権の特定 小原将照

民事執行・保全判例百選第2版 47 差し押さえるべき債権の特定 高田昌宏

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

実務家からみた司法試験 更新情報

実務家からみた司法試験のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング