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実務家からみた司法試験コミュの民法 旧 平成17年度論文式 解答例

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平成17年度司法試験論文式試験 民法 第1問

              弁護士 岡本 哲
平成17年度の司法試験論文式試験問題はかなり複雑な事例問題であるが、実務的にもよく問題になる製作物供給契約・連帯保証・転用物訴権・債権者代位権がからまったよい問題であった。
とりあえず回答をつくってみた。
留置権などは受験生はあまりきづかなかったようである。
 転用物訴権については筆者が勉強していた昭和時代とは書きかたが異なってくる。これは次回説明する。

(問題文及び回答例 参照)
民法
第1問
工場用機械メーカーAは、Bから工場用機械の製作を請け負い、これを製作してBに引き渡した。その工場用機械(以下「本件機械」という。)は、Bが使用してみたところ、契約では1時間当たり5000個程度の商品生産能力があるとされていたのに、不具合があって1時間当たり2000個程度の商品生産能力しかないことが判明した。そこで、Bは、直ちに本件機械の不具合をAに告げて修理を求めた。この事案について、以下の問いに答えよ。
なお、各問いは独立した問いである。

1 Bはこうした不具合があったのでは本件機械を導入する意味がないと考えているが、本件機械を契約どおりの商品生産能力の機械とする修理は可能である。Aが修理をしようとしないので、Bは代金を支払っておらず、また、Bには商品の十分な生産ができないことによる営業上の損害が発生している。この場合に、Bの代金債務についての連帯保証人であるCは、Aからの保証債務の履行請求に対してどのような主張をすることができるか。

2 Aが修理をしようとしないため、Bはやむを得ずDに本件機械の修理を依頼し、Dは修理を完了した。その後、Bは、営業不振により高利貸からの融資を受ける状態になり、結局、多額の債務を残して行方不明となり、Dへの修理代金の支払もしていない。この場合に、Aは本件機械の引渡しの際にBから代金全額の支払を受けているものとして、Dは、Aに対してどのような請求をすることができるか。
一、小問1
 1、Cは、BのAに対する代金債務についての連帯保証人であり、Aからの保証債務の履行請求に対し、いかなる張が出来るかは、保証人としての従属性により、AB間の法律関係に左右される。
 AB間の契約についてみるに、これは製作物供給契約である。製作物供給契約は、請負及び売買の複合的契約という性質を有するため、供給段階では売買契約の規定が適用され、製作段階では請負の規定が適用されると解する。
 本問では、製作段階で本件機械に瑕疵が生じているため、請負の規定が適用されることになる。
 本問においてはBはAに対し、請負の注文者としての請負人に対する瑕疵担保責任(634条)を追及することができることになる。
 BはAに対して、代金債務と瑕疵修補請求(634条1項)との同時履行の抗弁(533条)、及び代金債務と損害賠償請求権(634条2項)との相殺の主張をすることが考えられる。
これらの主張は可能か、特定物売買の場合と比較してかなり違った効果をもたらすものであり、634条の法的性質と関連して問題となる。請負契約での報酬の対価は仕事の完成であり(632条)、目的物に瑕疵がある状態では未だに仕事完成     義務は、果たされていない。そうだとすれば、634条は債務不履行責任の特則であり、瑕疵修補請求権は仕事の完全履行請求権であって、代金債務と同時履行の関係にあるといえる。
 また、債務不履行の特則だとすれば、その損害賠償の範囲は履行利益も含まれると解される。
 本問では目的物の瑕疵相当額に加え、営業上の損害についても損害賠償請求が可能である。そして、かかる損害の賠償請求権と代金債権の相殺は、相殺の要件(505条1項)をみたし、可能である。
 2、連帯保証人であるCは、これらの主張を援用して、代金債務を拒めることが   出来るか。
 Cには連帯保証人であるので、通常の保証人のような催告・検索の抗弁(452          条、453条)認められないため、これらの主張の援用を認める実益がある。
 まず、BのAに対する同時履行の抗弁を援用することは、認められると解する。
 連帯保証人も保証人である以上、附従性(446条1項)が認められると考えるためである。
 また、Bの有する損害賠償請求権による相殺も主張できると解する(457条2項)。この時、本問では未だBがAに損害賠償請求権を行使していないし相殺の意思表示もしていないため、これによる相殺を認めることは出来ないとも思われるが、可能だと解する。
 なぜなら、連帯保証人であるCはBに求償権を有するのであり(459条1項)、相殺を認めたほうが、求償の循環をさけ、紛争の一体的解決に資するためである。
 以上より、CはAに対して瑕疵修補義務との同時履行の抗弁を主張できる。   また、営業上の損害を含んだ損害賠償請求権との相殺も主張することが出来る。
二、小問2
 1、 Dは本件機械の修理をなしているが、Bが行方不明になっており、代金債務の支払いを受けていない。そこで留置権を行使して同権利に基づく競売等をなして代金の支払いにあてることができる。
  次に、かかるDはAに対して、代金債権を被保全債権として債権者代位権(423条1項)を行使すること、及び不当利得返還請求(703条、704条)することが考えられる。
 2、 まず、Dは自己の修理代金債権を保全するため、債務者たるBが行方不明で無資力であることから、Bに属する損害賠償請求権を代位行使できると解する。
 この時、Bは未だAに損害賠償請求をなしていないため、代位債権は存在しないようにも思えるが、既に潜在的に存在しているといえるし、また当事者間の公平の観点からも、代位行使を認めるべきだと解する。
 3、 そして、不当利得請求だが、いわゆる転用物訴権として直接の因果関係が認められるか否かが、問題となる。
 この点、因果関係の直接性があるといえるかどうかは、実質的にAB間の契約において無償で利益を受けた関係があるとなれば、因果関係の直接性ありと言えると解する。本件では、AがBに対して修理が必要なものを供給しながら代金全額を受け取り、しかも修理を無関係な他人にしてもらっている以上実質的に無償で利益をえているといえる。転用物訴権は肯定されるべきである。
 4、 以上より、DはAに対して、債権者代位権に基づき瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権を代位行使できる。
  また、不当利得返還請求(703条、704条)をすることが可能である。
                                     以上

抵当権侵害について
弁護士 岡本 哲
平成17年民法第2問
Aは、Bから3000万円を借り受け、その担保としてAの所有する甲土地及び乙建物(後記の庭石を除いた時価合計2900万円)に抵当権を設定して、その旨の登記をした。甲土地の庭には、抵当権設定前から、庭石(時価200万円)が置かれていたが、抵当権設定登記後、A宅を訪問したCは、同庭石を見て、それが非常に珍しい物であったことから欲しくなり、Aに同庭石を譲ってくれるよう頼んだところ、Aは、これを了承し、Cとの間で同庭石の売買契約を締結し、同庭石は後日引き渡すことにした。このAC間の売買契約を知ったDは、日ごろよりCを快く思っていなかったことから、専らCに嫌がらせをする意図で、Aとの間で同庭石の売買契約を締結して、Cが引渡しを受ける前に、A立会いの下で同庭石をD自らトラックに積んで搬出し、これを直ちにEに転売して、Eに引き渡した。この事案について、次の問いに答えよ。

1 CE間の法律関係について論ぜよ。
2 Bは、Eに対して物権的請求権を行使したいが、その成立の根拠となるBの主張について考察せよ。第1、小問1について
1、CとEはともにAから庭石を承継取得してている。とすれば、両者は庭石につき対抗関係に立つといえる。そこで、動産取引における対抗関係について規定する178条の解釈について以下検討する。
2、178条の解釈について
(1)まず、178条の趣旨は、動産取引を引渡しという外形的事実により公示し、これによって動産取引の安全を図る点にある。
(2)かかる趣旨からすると、同条にいう「第三者」とは、取引において保護に値する第三者を指すものと解すべきである。
したがって、「第三者」(178条)とは、当事者及び包括承継人以外の者のうち、引渡しの欠缺を主張するについて正当の利益を有する者を指すと解する。
3、これを本問について検討する。
(1)まず、CとEには、取引に際し何ら背信的な意図は有していなかったのであるから、上記正当の利益を有するといえる。
(2)しかし、Dは専らCに嫌がらせをする意図で売買契約を締結しており、取引上保護に値するとはいえない。したがって、Dは登記の欠缺を主張する正当な利益を有しないといえる。
4、そこで、次にかかるDからの譲受人は有効に所有権を取得するか、また、取得するとして「第三者」にあたるかにつき検討する。
(1)まず、「第三者」にあたらない者は、所有権を対抗できないだけであり、無権利者ではない。よって、Eは有効に所有権を承継取得する。
(2)次に、「第三者」にあたるかの判断は、取引上保護に値する正当な利益を有するかという観点から相対的になされるものである。したがって、「第三者」でない者からの譲受人でも、その者が「第三者」にあたるなら所有権を対抗できる。
(3)以上より、CE間においては、Eが優先すると考える。
第2、小問2について
1、まず、本問における庭石が370条の物にあたり、抵当権の効力が及ぶかが問題となる。
(1)ここに、370条の趣旨は、抵当権が目的物の交換価値を把握する権利であることに鑑み、目的物と経済的に一体をなす物にも抵当権の効力を及ぼし、もって被担保債権の回収を確実するする点にある。
とすれば、「物」(370条)とは、抵当権の目的物と経済的一体性を有する物を指すと解する。
(2)そして、本問の庭石は、抵当目的物たる甲土地または乙建物の従物として、抵当権の設定前からかかる土地建物と経済的一体性を有していたといえる。したがって、Bの抵当権の効力は庭石に及ぶ。
2、そこで、Bとしては、物権的妨害排除請求権の主張として、庭石を甲土地に戻すよう主張することが考えられる。
また、Bとしては、交換価値を保全する手段として、庭石を自己に引き渡すよう主張することもできると考える。
3、かかるBの主張に対し、Eは庭石には抵当権の対抗力が及んでいないと主張することが考えられるが、かかる主張が妥当であるかについて以下検討する。
この点、370条の「物」については、抵当権の公示の衣の範囲の外に移転した場合には、抵当権の効力を対抗することができないと解する。
なぜならば、抵当権は登記により公示される物権であるが、上記「物」の取引をする者か抵当権登記を確認することはおよそ考えられない。とすれば、分離・搬出され、公示の衣の外に出た場合にも抵当権の効力を及ぼすならば、取引の安全を著しく害するからである。
4、以上より、Bは、抵当権により目的物の返還を主張することが考えられるが、これをEに対して主張することはできないと考える。

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