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洋画吹替主義コミュの気になるセリフがありました!

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吹替えの映画やドラマで印象に残ったセリフをさかなに交流を深めようというトピです。数年前にYahoo!掲示板の映画カテに同様のものを立てて、なかなか有意義だったので、こちらにも作ってみました。

コミュの趣旨に沿えば、良いセリフに焦点をあてるべきなんでしょうけど、この際、何でもOKです。ヘンな言葉や面白い表現、はたまた違和感のある言い回しなど、いろんなセリフについて語り合いましょう。

コメント(5)

 昨日、「フレイルティー / 妄執」という映画を見ていたら面白いセリフがありました。場面は前半、寝る前に幼い兄弟が映画に行く話をしているところです。




弟:ねえ「ミートボール」見たい

兄:じゃあ見りゃあいいじゃん
  僕は「ウォリアーズ」を見るから

弟:でも独りで映画見るのやだもん

兄:ガキ

弟:お願い

兄:分かったよ
  分かったからもう寝ろ



 この兄の言う「ガキ」というセリフ、原音は "Too bad."。同情心を表わす決まり文句で、「気の毒に」や「残念だ」、「ご愁傷さま」などと訳されることの多い言葉ですね。(ここでは皮肉的なニュアンスで使われてますけど。)実際に字幕では「お気の毒」となってました。

 でもですよ、話者は10歳くらいの子供です。普通、「お気の毒」なんて言葉は使いません。おしゃまな女の子がいじわる半分に言う分にはかわいいし、アリかもしれないけど、男の子ですからねえ。そこで「ガキ」です。ぴったりじゃありませんか!原音より話の流れ重視のセリフってところでしょうか。

 これを聞いたとき、自分は "Such a baby." とか "You so sissy." といった言葉を思い浮かべたので、意表を突かれました(笑)原音の残る字幕では難しいでしょうが、吹替えなら無問題。訳者のセンスを感じさせるいいセリフでした。
 今回、見たのは「16歳の合衆国」。ある青年が、交際相手の弟で知的障害を持つ少年を殺害してしまうという作品です。主に加害者の心情に焦点をあてた映画で、話自体は地味なものなんですが、技アリのセリフがひょっこり出てきて、おおっ!となりました(笑)場面はバーで飲んでいる青年の父親のもとに、拘置所で学習指導をしている講師がやって来て話すところです。



講師:動機は分かりません
   本人も分かってないようだ

But I don't know why.
I don't think he knows why either.


   息子さんはすごく達観してて
   自分の運命にも無関心でなおざりに対処しようとしてる

You know your son. He's very detached.
Most of the time he seems completely disinterested in his own fate.


父親:正しくはおざなりに対処

Uninterested in his own fate.



 この "uninterested" という単語は「関心、興味のある 〜」という形容詞を接頭語の「un-」で打ち消した形です。一方、 "disinterested" は「利益、利害関係のある 〜」という意味の反対語。見て分かるように、どちらも「interested」から派生したもので、意味によって打ち消しの接頭語が異なります。でも実際には "disinterested" が誤って "uninterested" の意味で使われることが結構あるようです。

 まあ、原音の話はいいとして、ここで注目すべきはなんと言っても「なおざり」と「おざなり」でしょう。両方とも似たような意味ではあるんですが、話の流れを考えると、やはり「おざなり」に訂正されてしかるべきですね。(ちなみに「おざなりは」は「真剣でないさま」、「おざなり」は「いい加減なさま」を意味します。)講師と父親の役柄がそれぞれ作家の卵と売れっ子作家なので、ここはアマチュアにプロからの指導が入ったようです(笑)

 ところで原音には「対処する」に当たる語がありません。おそらく訳者は、まず「おざなり」と「なおざり」の言葉ありきで考え、セリフの意味が破綻しないように「対処する」という訳語を足して仕上げたんでしょう。素晴しいです。もし自分だったら「非関心」と「無関心」あたりで適当に誤魔化してしまいそう。でも、これはちょっとマズイですね。物書きになろうって人が「非関心」なんて言葉を使うはずありませんから。それを考えると「おざなり」と「なおざり」は、いかにも誰でも誤用してしまいそうな言葉で、ここのセリフの訳語として出色だと思います。訳者の語彙力と発想力、そして文の構成力に感心しました。
 レンタル屋で懐かしいドラマを発見。「ザ・ホワイトハウス」です。昔、NHKで放送されていて好きだったんですよね。迷わず、お気に入りだったセカンドシーズン最終話を借りました。印象的なセリフが幾つもあります。とても1つに絞れないので、特に心に残ったものを何回かに分けて書き込んでいきたいと思います。…とその前にあらすじを少々。

 大統領選挙を間近に控え、ホワイトハウスでは再選に向けて準備が進められていましたが、バートレット大統領が難病にかかっているのを隠していたことで、国民から支持が得られないとの観測が流れます。当然、大統領は党内での立場が悪化し、次第に出馬が困難な状況に。そうした中、事故死した秘書、ランディハムの葬儀に参列。悲しさのあまり自暴自棄になり、ついに出馬断念を決意しますが…。

 今日紹介するセリフが出てくるのは中盤。秘書の死を受け入れられないバートレットは葬儀後、聖堂に独り残り、理不尽な試練を課す神に怒りを爆発させて罵倒するシーンです。ひととおり文句をぶつけて最後に二度「もうたくさんだ」と言って立ち去るのですが、一度目のときの原音が "You get Hoynes." です。ちなみにホインズとは副大統領の名前。直訳すると「あなたはホインズを手に入れる」ですね。言外の意味をくみ取って解釈するなら「神は私がお嫌いのようだから、お望みどおりホインズを献上します」といったところでしょうか。要するに大統領のいすをホインズに譲るということ。それが「もうたくさんだ」ですから、なかなか大胆な訳ですね。いや、大胆すぎるか(笑)でも、散々悪態をついた後の言葉なので、流れ的にはぴったりですし、訳の方向性も間違っていません。いいセリフです。個人的には「もう辞めてやる」とはっきり言わせるのも1つの手かなと思いますが、さて、どうでしょう。

 そして二度目の「もうたくさんだ」。これにも工夫がありました。実はこのセリフ、原音がありません。つまり本来なら存在しないものです。訳者のアイデアなのか、ディレクターの演出なのか、はたまた声優のアドリブなのかは分かりませんが、いずれにしても話者が後ろを向いていて、口元が見えない状態だったので、可能になったセリフですね。一度目が神に向かって言い放つような感じだったのに対し、この二度目は自分に言い聞かせるような口調です。とても情緒的で、バートレットの苦悩が伝わってくるセリフでした。

 ところで、この聖堂の場面では、吹替えと直接関係ないものの、もう一つ興味深いセリフがありました。神を激しく非難する際、原音ではところどころ英語でない言葉を使っているのです。仏、独、西、伊の言語ではありません。個人的にはラテン語を疑っていますが、自信ナシです。参考までに字幕を見てみたら、ちゃんとハコを切って訳が出ていましたし、吹替えも同じような訳だったので、恐らくスクリプトにはセリフとその英訳が書かれていたんでしょうね。ここで少し残念だったのはセリフの上で英語と不明言語との違いがなかったこと。字幕ではイタリック表記で違いを出していたけど、吹替えは口調も語調も同じままでした。そうは言っても難しいですかね。その不明言語がラテン語だとして、急に古めかしい言葉や言い回し使うと、見てる側に違和感を与えることになりますから。やはり無理に違いを訳出しなくてよかったのかもしれません。まあ、何はともあれ、聖堂のシーンは間違いなく中盤のハイライト。いろんな意味で引きつけられました。
続いて紹介するセリフは劇中、2回にわたって登場します。1回目の場面は回想シーン。自分の父親が校長を務める高校に通っていたバートレットが、父親の秘書だったランディハムから学校職員の男女間に存在する給与の格差を指摘され、父親に是正を求めるように促されるところです。



ジェド
遠慮は要らないのよ
ホプキンス先生はチャドウィック先生よりもらって当然だと思うならそれでいいの

でも不平等と知りつつ
面倒だから何もしないつもりならあなたを心の底から軽蔑する



 「あなたを心の底から軽蔑する」。かなりキョーレツです。ところが、原音は "I don't even want to know you." そんなにキツイ言葉ではありません。素直に訳せば「もうあなたのことなんて知りませんからね!」くらいの軽いものです。少し突き放した言い方ですけど、決して非難めいた感じではないんですよね。なので最初は原音と訳の落差に違和感を覚えて、なぜこんなふうに訳したのか不思議に思ったものです。でも後にもう一度このセリフが登場したとき、納得がいきました。

 再登場の場面は終盤のいよいよ山場というところ。持病と自分の進退について国民に説明することになったバートレットが記者会見を前に部屋で独りでいると、ランディハムの幻覚が現れて激励するシーンです。



大統領
出馬したくないならそれもいいでしょう

でも苦戦を強いられるからとか負けるからという理由で出ないなら
ジェドあなたを心の底から軽蔑するわ



 この話の流れで「もうあなたのことなんて知りませんからね」はあり得ませんね。軽すぎです(笑)バートレットに大きな決断を迫る重要なセリフなので「心の底から軽蔑する」くらい迫力がないとサマになりません。原音とはかなり離れてしまっていますが、状況や話者のキャラによく合ったいい訳だと思います。訳者には本当に感心しました。
 最後は小さなひと工夫が効いたセリフです。なかなかいい感じだったので取り上げてみました。場面は最後のクライマックス。大統領が記者会見に臨み、メディアから再選出馬の有無を聞かれるシーンです。大統領は、すぐには答えず、沈黙したままぐっと前を見据えます。その様子をほかの官邸スタッフたちとモニターで見ていた首席補佐官がこう言いました。「見ろやるぞ」。

 この御仁、バートレットとは40年来の友人だそうで、だからこそ大統領の心の動きが読み取れたんでしょうね。そんな2人の間柄を象徴するようなセリフですが、原音は "Watch this." しか言っていません。 どこか素っ気ない感じです。とは言うものの、話者の表情や口調からは、大統領の決心を察し、期待に満ちた様子がありありと見て取れますし、吹替えのセリフではそれが見事に反映されています。お陰で見ているこちらも何か高揚した気分になりました。

 あくまで個人的な印象ですが、このエピソードを訳したかたは原音よりも話の流れを重視する人みたいですね。登場人物の心情を日本的な情緒あふれるセリフでうまく表していたように思います。こういうところはまさに吹替え作品の面目躍如。ドラマにすんなり感情移入できて、とても楽しめました。

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