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Yua's factoryコミュのFinal Destiny 4-7

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「魔王様!」

ミラは地に降り立つと、シェリルを抱える。

「魔王様!ううっ!」

ボロボロと涙を零すと、蓮花がくるくると舞いながらミラの隣へ来た。

「ふうん?魔族も泣くのねぇ?」

蓮花はミラの顔を不思議そうに覗きこむ。

「黙れ!貴様に妾の哀しみが分かるか!」
「分かんないよぉ?」
「ふん、……最初から貴様は信用ならん。仙人なんぞ…フラフラと暇をもて余すだけの存在が」
「そこそこ楽しんでるよぅ?」
「…ならばそこで永遠に舞ってろ」
「みらちゃんはどうするのぅ?」
「魔界へ連れていき、魔王様復活の儀を…」
「無理だよぅ?」
「何?」
「無理。“それ”にはもう霊(たましい)が無い」
「魔王様をソレ扱いするか!」
「だって霊が無ければそれは肉の器(うつわ)でしかないよぉ?」
「だ、だから復活の儀を」
「だから、霊が無いと復活は無理よぅ」
「その霊を降臨させる儀があるのだ!」
「無理」
「無理ではない!歴代魔王様も復活されて――――」
「無いよぅ?」
「されてるのだ!」
「されてないってばぁ。どこの魔界のどこの魔王の話をしてるのよう」
「私の居る、魔界の、魔王様の話だ!」
「歴代魔王って、貴女の居る魔界は“全て違う血の魔王”じゃない。じゃあ聞くけど、しぇりるちゃんは前魔王だったの?」
「……っ!」
「違うでしょう?魔王の命が消えて、初めて魔王の資格を持つ者に魔王の刻印が刻まれて、新生魔王となるんでしょう?“復活の儀”なんて無いよぅ」
「しかし、魔界の文献には“復活の儀”という…」
「それは魔界とか魔王の話じゃないよぅ」
「ど、どういうことだ!?」
「まずねえ、人間レベルでも肉がある程度残されてれば復活の儀式があったりはする」
「い、生き返るのか!?」
「うん。神と精霊の御名においてねぇ」
「よし、ではそれで」
「でもしぇりるは無理よぅ」
「何でだ!」
「だってしぇりるは魔王だったでしょ?天界の神様が復活の術を弾くよぅ」
「く、神めっ!忌々しい!」
「どちらかというと忌々しいと言われるのは魔族側なんだけどねぇ?」
「黙れ!じゃあ他に手立ては」
「何で魔界に復活の儀の書があったのか分からないけど、そもそも“復活”は天界が関与するのよぉ。人だって生き返らせるには天界の許可が無いと生き返ることもできない」
「じゃあ、魔王様は……」
「ここに霊(たましい)があっても……前歴が魔王じゃ可能性は低いわねぇ」
「そんな……」
「貴女が魔王になればぁ?」
「ばっ!畏れ多いわ!」
「ううん……あ。“転生”があった」
「てんせい!?それは何だ!?復活するのか!?」
「う〜ん……あれは復活というよりも…いや、復活なのかなぁ?でもあれは“邪法”で」
「邪法でも何でも復活すればいい!」
「いや、やっぱり違うよぅ。転生は“一時的な復活”。術が過ぎれば泥と化すし、術そのものが失敗したら生きる屍になる」
「生きる屍?」
「魔界にいるでしょう?ゾンビとかグールとか」
「ああ……低級魔族か」
「夢魔も低級じゃないのぉ?」
「黙れ!……しかし――――」

腕の中のシェリルの顔はどんどん色を無くしていき、もはや生気が無い。

「どうすれば…」
「今頃は屍界か天界に居るよぅ」
「天界…か」
「そろそろ、死ぬ準備はできた?」
「なに!?」
「だって、アレには勝てないよぅ」

蓮花はドニスを指差す。

「いや、押してないか?」
「ううん、負ける。まだ、あの男は全然本気出してない」
「そんなっ……」
「ほら、崩れる…」

蓮花が言うと同時に、ソニアとニコルに殴られながらも立ち上がるドニス。

「最期に、会いたかったわぁ……るぅあ」

蓮花はぽそりと呟く。

「あ、諦めるな!まだ終っていない! 」
「うちは勇者じゃないもの」
「妾も勇者ではない!だが、貴様の言うルーアも、怪しい忍者も、幻獣らも、…ミストも……まだ来てはないじゃないか!」
「……ぁ」

ミラが喚いたその時、空を仰いだ蓮花の目に何かが映る。
空の彼方から雲に乗った青年が一人。

「るぅあ!!」
「アクアプリズナー!」

ルーアは上空より呪文を唱えると、地面から噴き出した水がドニスの手足を拘束する。

『ぬ?蝿が増えおったか!』
「そこの二人!離れて!」

ソニア、ニコルはそれを受けて離れる。

「メテオ!」

ルーアが両手を天に翳す(かざす)。
空の遥か外、宇宙から大気圏を抜けていくつもの大小の隕石がドニスに向かい降り注ぐ。

「おいおいっ!上級呪文じゃねぇか!俺達も巻き添えにする気かよ!」
「土隆壁!」

ニコルが慌てる横でソニアが地面を殴る。
ドニスを中心に囲うように直径100メートルほどの距離に円上で土が盛り上がり、高さも同程度の長さに伸びる。

「大地のバリアよ」
「流石勇者」
「あなたもでしょ」

ニコルがソニアを讃えているとドォンと、一つめの隕石がドニスへ落ちた。続いて二発三発と隕石が降り注ぐ。
立っていることも難しいほどに大地が揺れる。

「こんなん喰らったらシャレになんねぇ…。あいつを嘗めてたわ」
「知り合いなの?」
「シェリルを異界へ送った奴だよ」
「ふぅん……勇者、じゃないよね?」
「違う。が、勇者クラスだなありゃ」
「頼もしいじゃない」
「初めて会った時はピヨピヨのひよこみたいな奴だったんだけどなぁ」
「“男子三日会わざれば刮目せよ”…か」
「なんだそりゃ?」
「男の子は見ぬ間に成長するって意味らしいわよ?」
「なるほど、俺も成長してるってわけか!」
「あなたは馬鹿が成長してるんじゃない?」
「シェリルといい、女勇者ってどうしてこう辛辣なのか」

ソニアとニコルのやり取りにも余裕が出てきた。
ルーアは觔斗雲から飛び、地面へと着地すると同時に蓮花に抱き付かれ、その場に倒れた。

「ぐはっ!ちょ、蓮花さん!」
「るぅあ!るぅあ!」
「ああもう!離してくださいってば!」
「よおルーア。あそこにドニスのクソ野郎が居るんだな?」

蓮花とルーアの横をすり抜ける影が一つ。
その影は大きくジャンプすると隕石を避けながら高く高く舞い上がり、やがて止まる。

「ミスト!」

ミラが歓喜の声を上げた。

「雷(いかずち)よ!」

ミストが剣を掲げて吼える(ほえる)と、天空より雷が剣へと落ちる。

「ぎゃあああああっ!しびびびびびびっ!」

電流は剣を伝い、ミストは痙攣する。

「ギャグやってる場合か!」

ルーアがツッコむ。
ミストは剣を逆手に持ち変える。

「烈風風雷連陣!」

横薙ぎに一閃、二閃、三閃と、連続で空を斬る。
ニコルがシェリルと共同で放った技を、ミストは一人連撃する。

「だぁあららららららららららっ!!!」

ミストは下降しながら、隕石と共に雷を帯びた風をドニスへと注ぐ。

「……たまげたな」

ニコルは感嘆の声を洩らした。

「あの子も?」
「ああ。あいつはミストつってな。あれもピヨピヨとしたヒヨコだったんだが……まさかあの技を一人で…しかも連撃かよ」
「彼も、勇者クラスね」
「…認めたくねぇなぁ」
「何でよ」
「あいつもシェリルが好きなんだ」
「それを言うなら私にとってあなたも一緒なんだけど」
「レズは報われない」
「レズじゃなくてシェリル様が好きなの」
「意味わかんねぇよ」

と、無駄口をたたく二人をよそに、ミストは尚も連撃を繰り出す。

「おいおい…MP底無しか?」
「本当に凄いわね。あなた負けてるんじゃない?」
「……MPの総量だけでいったら負けてるかもな」
「意地っ張り。素直に認めてあげればいいのに」
「勇者として譲れないものもある」

漸く技を止めると、ミストは地面へと着地する。
着地点の前で、ミラがシェリルを抱き抱えて待っていた。

「ミスト……魔王様が…」
「シェリル殿!」

ミストは抱き抱えられたシェリルを覗きこむ。

「ミラ!どういうことだ!」
「…魔王様は…邪王との激戦の末に……」
「う、嘘だ!シェリル殿が負けるなんて!これから、これからだっていうのに!シェリル殿!起きて下さい!」
「……ミスト、駄目なんだ」

ルーアがミストの肩にそっと手を置き、言葉を掛ける。

「命を失ってる者を生き返らせることは出来る。だが、魔王の刻印が刻まれた者は天界の審判で弾かれてしまうんだ」
「そんな……だって!」
「ミスト、今僕らがしなければいけないことはシェリルさんの遺志を継ぐことだ」
「遺志…」
「この世界を救うことだよ。そして、時代を変えることだ」
「時代を?」

ルーアは隣に佇む蓮花を見る。

「人界以外の者達との共生」
「人界以外の……」

ミストは哀しい瞳で見つめるミラへ目を向ける。

「まだ終ってねぇぞぉ!」

ニコルの怒声で一気に空気が緊張する。
土の壁が一気に吹き飛び、土煙の中から緑の血にまみれたドニスが現れた。

『ぐふ……やるではないか』

多くの隕石と剣撃の衝突に耐えた肉体。
しかし半死半生の体(てい)である。

「あのメテオでも死なないのか」
「俺も……結構マジで剣技打ったんだけど」

ルーアもミストも愕然とする。

「お前らが自信無くすことはない。初めて会った時は馬鹿にしてたけどな、今は見直してるよ。お前らは本当に強くなった。強くなったが……」

ニコルが槍を構える。左足の先は無い。

「あいつが強すぎるんだよ」

ソニア、ニコル以外の皆が絶望の色を顔に浮かべた。






Final Destiny 4-8 http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=76677238&comm_id=5718354

コメント(2)

ルーアにもしものことが起こった時、飄々とした蓮花殿がどのように豹変するのか想像するだけで怖い(OДO|||)

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