ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

Yua's factoryコミュのFinal Destiny 3-13

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
「この度は誠にありがとう御座いました」

東の国テス。
ティグリス王の前で膝を付くソニア。

「丁寧な挨拶痛み入る。しかしまさかソニア殿自らがが来られるとは思わなかったな」
「シリウスの命により馳せ参じました。こちらもまさかトゥレラ女王様がいらっしゃるとは夢にも思いませんでしたが…」
「あはは、ソニアちゃん元気ー?」

トゥレラの気の抜けた対応にティグリスは眉をしかめる。

「君はね、もう少し一国を統べる者としての自覚がないと駄目だよ?」
「なぁに言ってんのよ。あんたなんか毎日毎日王の仕事もしないで鉄ぶっ叩いてるだけじゃない」
「製鉄はゆくゆくは国の繁栄に繋がるからいいんだよ。それを言ったら君なんかしょっちゅう家出してプラプラしてる放蕩娘ならぬ放蕩女王じゃないか。女王が放蕩ってどういうことだよ」
「あーもううるさいうるさい。これだから職人気質の頑固親父って嫌なのよねぇ」
「その嫌な頑固親父の元にいつまで居座ってんだこら」
「ボルノ(自国)より楽なんだもん」
「ならラーマに行けよ。そうだ、ソニア殿。こいつを連れてってくれまいか。うるさくて面倒で自分勝手な女だが、こう見えて粗暴でもある」
「ちょっと、何一つ良いとこ無いじゃない」
「無いんだよ」

国のトップに君臨する人間のやり取りとは到底思えない。そんな二人の会話についソニアはくすりと笑ってしまう。

「あら、ソニアちゃんも笑うのね」
「は、失礼致しました」
「ううん、女の子は笑ってた方がカワイイよ」
「お前はもう少し締まった顔をした方がいいな」

チャチャを入れるティグリスにトゥレラはベーっと舌を出す。
ソニアは再び笑い、改めて謝辞を述べると周囲を見回す。

「ところでサスケ殿は」
「む?サスケか。あやつにはまた別の用を申し付けた」
「別の用?」
「シェリル殿とニコル殿の探索と救出だ」
「っ!それは、真ですか!?」
「うむ。それでサスケは出身国である《日ノ本の國》とかいう国に戻ったそうだ」
「そこにシェリル様…いえ、シェリル殿が!?」
「違う。どうやらシェリル殿とニコル殿は異次元にいるらしい。その異次元に行く為の手段が日ノ本の國…確か“ジパング”といったか。そこから異次元に向かうということらしいな」
「日ノ本の國…ジパング…」
「ソニア殿も同じ勇者だけに、シェリル殿やニコル殿が気になるのかな?」
「…はい。私も是非、サスケ殿と御同行願いたいのですが」
「駄目よ」

ソニアの要求はトゥレラによって却下された。

「トゥレラ様…何故」
「当ったり前でしょ。撃退したとはいえレキアスの王はまだ侵略を諦めてない。またいつ侵攻してくるか分からないのに勇者がどの国も不在なんてことになったら大変よ」
「しかし…」
「しかしも御菓子もないの。サスケ君の斥候から聞いたけど、ドニスはワケわかんないモンスターを開発してたらしいじゃない?ソニアちゃんが一蹴したみたいだけど、一般兵じゃ被害甚大だったと思うよ?」
「それは…」
「サスケ君を信じなさい。大丈夫。真面目で勤勉でストイックな彼のことだからきっとシェリルたんやニコルの馬鹿を連れ戻してきてくれるわ」
「…は」

ソニアはあからさまに落胆の色を見せる。
しかし、トゥレラの言うように今ソニアがこの世界から居なくなると危険であることは明白だった。ドニスはまだ何かを隠している気配もある。
――――信じよう。
真面目で勤勉でストイックなサスケを…。
ソニアは天井を見上げ、サスケの武運を祈った。



※※※※※※※※※※※



「こ、コマネチ!」

がに股で軽く膝を折り曲げ、両手を股間から上下にスライドさせる。
間抜けなギャグを披露しているのは他ならぬサスケである。

「駄目駄目。不合格。やり直し〜」
「…」

サスケに駄目出ししているのはジパングにして天下の大泥棒と吟われた五右衛門(ゴエモン)という男である。
この男の素性は極めて謎で、忍術はもちろんのこと、妖かしの術も使うという。
サスケへ忍術を叩き込んだ兄弟子である。

「あのね、恥を捨てないと笑いは取れないの。分かる?佐助っちはそういうところが昔から駄目」
「せ、拙者は――――」
「言い訳は無用よ。どっちみちアチキを笑わせられなかったら異世界には行かせない」
「…御意」

サスケはやはり頭を悩ませていた。
五右衛門は何かにつけて「笑わせろ」と言ってくるのだ。サスケにとってこれほど苦手な分野は無い。
しかし、王の命もある。これをクリアせねばシェリル、ニコルの救出は困難になるのだ。

「さ、やってごらんなさい」
「こ、コマネチ!」
「…はぁ。あんたやる気あんの?」

溜め息までつかれた。これでも必死なサスケは泣きそうになる。

「見てなさい!…コマネチ!」
「……」

……これの一体何が面白いのか。サスケには一向に分からない。
大体何故笑わせなければいけないのか。金銭的解決でどうにかならないものかと言っても、五右衛門は金には全く興味を示さない。金を盗むことを生業(なりわい)としている癖に何故金に執着しないのか。とは言ってもその盗んだ金は貧民に夜な夜なばら蒔くという訳の分からぬ行動をするだけに、金に執着してないのは分からなくもないのだが……。
ではと言って他に何か出来ないものかと尋ねてもやはり答えは「笑わせろ」というだけだ。
サスケはやはり大いに頭を悩ませるしかなかった。

「ほら、早くやんなさいよ!」
「こま、コマネチ!」
「…いい加減にしなさい!ふざけてんの!?」

巫山戯ているかどうかと聞かれたら巫山戯ているとしか答えられない。
誰が真面目にこんなことをやるというのか。理不尽としか言いようがない。

「はあ、こんなんじゃあんたの依頼も聞けないわね」
「し、然し(しかし)」
「じゃあ真面目にやんなさいよ!」

真面目に…?
サスケは目を閉じ息を整える。
心頭滅却。
風の音、木々のざわめき、川のせせらぎ…。それらは耳を抜け、無音となり。静寂は己の心音さえも掻き消す。
細い糸、一本一本を紡ぎ、紐となり、紐はやがて綱となる。

カッと瞳を開く。

――――我、心眼を開く――――

拳一つ分の間隔に足を置き
弛く曲げた膝を固定する
背筋はピンと伸ばし
手の指先もピンと張る
股間から上下に鋭く引き

「秘技!!コ・マ・ネ・チ!」

ガガーンッ!

大きな落雷がサスケの背後の大木に落ちた。
神々しい光がサスケの間抜けな姿を後ろから照らす。

「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!」

笑った。
それはそれは大きく笑った。
五右衛門は腹を抱えて大いに笑ったのだ。

サスケは五右衛門の要求に見事に答えてみせた。
代わりに何かを失った気がしたが、忘れることにした。







Final Destiny 3-14 http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=5718354&id=76526217

コメント(7)

巫山戯ている

これ、なんて読むの?(^^;;
>>[1]

『ふざけている』と読みます(^_^;)
>>[2]

ありがとう、お礼に今度デートするよ(笑)
真面目で勤勉でストイック…?何か呼ばれた気がした(キリッ

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

Yua's factory 更新情報

Yua's factoryのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。