Yua's factoryコミュのゆあの考察 〜部屋とエロゲーと私〜

「ふむ…これが《触手》か」

手慣れた手付きでマウスを動かし、一旦休んでモニターを睨む。
モニターには太いもの、細いもの、イボイボのあるもの、サイケデリックな色のもの、様々な形の紐状のものが女の子の体に絡まり、乳房を縛り、陰部に挿入(はい)っている。
これは私が割と真面目に楽しんでるエロゲだ。
ジャンルは【触手もの】である。

モニターではやらしい声で喘ぐ女の子の声が流れる。
声優さんも大変だ。これをマイクの前で素で「アンアン」やらなきゃならないと思うと…私には到底出来ないものだと思う。「おち○ぽ奥までくりゅー」とか、「子宮にキスしてりゅのぉ」とか、リアルで絶対言わない。ってか、なんだその台詞は。構成作家は、いや、ゲームユーザーも含めて一体どういう性癖を持ち合わせて居るのか。
それともこの一見どう考えてもイカれた台詞の奥には何か哲学的なものが含まれているのか。
私は再度マウスを握ると左クリックを押す。


「ぃいっひっ！太い！太いぃっ！えぐれちゃう！おま○こめくれちゃうぅぅっ！」


…おま○こめくれちゃう――――だと？
中に入ったものが引き抜かれる際に小陰唇がめくれるということか。ふむ、なるほど。
しかし、あれだな。
性交渉の際に色々と描写を口頭で表現することが必要なのだということは分かったが…果たしてそれをどれだけの女性が遂行しているのか。
曰く「すごいのぉ！おち○ぽズボズボって…○○のおま○こに挿入ってくりゅのぉおお！」
曰く「おっほぉおおおっ！しゅごいよぉ！グリグリって、膣内(なか)掻き回されてりゅよぉおお！」
とか、言うか？

…否。それは、無い。
絶対無いとは言わないが絶対無い。
私が男であれば引く。間違いなく引く。
いや、引かないのか？男ならば…引かないのか？

これは非現実だから許されるのだと、私は推察する。
こんな喘ぎに関してこれだけ否定的な考えを持つ私でも、官能を書く時は【決して言わない台詞】を書く。
つまり、これは肉体的快感を視覚であったり聴覚であったり、触覚や味覚や嗅覚とは別の感覚機能で興奮する為の一つの興奮剤的な役割を担っているのではないか。その為、過度な表現を顕(あらわ)したものを台詞に乗せることになったと考えればスマートだ。
実際の性交渉においては直接的な快感を肉体に留まらず五感で感じることが可能で、アドレナリンの分泌もただ異性の裸体や体温、感触や声で著しく多くなる。
しかしゲームや本等といった媒体では触感や匂いや味といったものは無く、視覚や聴覚に頼るしかない。そこでそれを補うように補填されるものが、上記のような過剰な表現の喘ぎ声なのではないだろうか。
しかし。
いやそうは言っても…。


「ぁあぁあっ！孕んじゃう！魔物ち○ぽにビュービューされて孕んじゃうよぉおおおっ！」


オートモードにしてたらとんでもない展開になってた。
人が真剣に考えてるのにキャラクターの女の子はアヘ顔でよだれをたらしながら淫靡な声を上げている。全くふざけた話だ。
触手は彼女の体に巻き付いたまま、今度は訳の分からん怪物が女の子の腰をがっちり掴んで中に放出している。
ってか、その結合部はあり得ないことになってる。精液が噴射している。言わば入ってる状態は栓がされてるよなものなのにも関わらず、その隙間(無いはずだが？)から納まり切らなかった精液が噴射しているのだ。

「ば、ばかなっ…」

うっかり私も声を洩らしてモニターを注視する。
百歩譲って化物だから精液の量が通常男子のそれと異なるとしよう。しかし、いやそれでも…怪物の性器は巨大過ぎる。ぎっちぎちとか、そういうレベルじゃない。裂ける。間違いなく、裂けると思う。それを《飲み込む》女の子も驚嘆に値するが、まあそれはいいとしてもそれだけみっちり埋った状態で精液が結合部から噴射するのはおかしい。いくら過度な表現と言えど限度があるだろう。
しかも、驚くなかれ。
怪物の性器は女の子の中を貫き、その長さ故に女の子の下腹部が怪物の性器の先端により盛り上がっている。
一体、どうなってるんだ。
私は体の震えを抑えるのに必死だ。
ここまできたらもうギャグでしかない筈なのに。なのに何故これで興奮できるのか。こんなサイズなんて規格外で、よしんば挿入っても死に至るサイズだ。
快楽なんてものは無い。痛みや苦痛しかない筈だ。
それなのに、彼女は――――


「あはぁ〜！いいよぉ！魔物ち○ぽ気持ちいいよぉー！ビュービューって…気持ちいいよぉおお！」


…そうか。ならば何も言うまい。
良いなら良かった。私は安心する。

バッドエンドの一つを迎えて私は満足した。
エロゲとはバッドエンドこそ意味がある。様々なエンディングがあり、それがまたやりこみ要素として作品をより引き立たせるのだ。
しかも一度見た《濡れ場》、つまり《エロシーン》だが、これはもう一度見直すことが出来るというのも特色だ。飽きさせない。

過去に見たシーンを私は再度見てみる。


「ひいっ！あっあっ！らめぇ！そこ入っちゃら――――



ガチャ

「ゆあ、うるさい。音下げろ」

パタン








こんな妹でゴメン、兄ちゃん('A`)