Yua's factoryコミュのFinal Destiny　23

全ての人間が後方の爆発に気を取られる。
私は走りマリンを抱えて爆炎に飛び込む。

「逃がすな！」

ドニスの怒声を背後に受けて炎の中を突破する。
民家の壁に剣を投げると、簡単に剣は突き刺さる。マリンを抱えたまま剣の柄に飛び乗り素早く蹴って屋根に着地。そのまま屋根を駆け抜けていく。

「ナイスだミスト！」
「これだけじゃないっすから！」
「なんだ？他に仕掛けがあるのか？」
「ええ、とりあえず街の出口まで行きましょう！」
「出口はやばい！既に回り込まれているだろう！」
「大丈夫っす！」

屋根のを上を跳び、走り抜けるシェリルとミスト。

「それよりその娘どうすんすか！？」

ミストはシェリルに抱えられたマリンを指さす。

「…この娘ももう…ここには帰れないだろうから…」
「でしょうねぇ。じゃあ一緒に逃げちゃいますか！？」
「それしかないだろうな」
「捲き込んじゃいましたね」
「私のせいだ」
「自分を責めるのは後にしましょう！今は脱出が先決」
「そうだな」

街の出口付近で屋根から飛び降りると、兵士達が先回りしていた。
シェリル達を見つけると雄叫びをあげて襲ってくる。

「おい、何が大丈夫なんだミスト」
「あれ！？おかしいな？」
「おかしいのはお前の頭だ！くそ！私は今剣が無いぞ！」
「えー？どうしよ！俺の剣使います？」
「使うよもう！」

と、ミストから剣をひったくろうとしたその時。


――ファイラ――


兵士達の足元から突如炎が巻き上がり、兵士たちを焼いていく。
断末魔の悲鳴が響く。
シェリルは呪文が聞こえた方へ眼を向ける。
青いローブに身を包み、ロッドを携えた青年が立っていた。

「遅ぇよ！ルーア！」

ミストがその青年に声をかける。

「ごめん、ちょっと用意するものあったから…」

そう言ってルーアと呼ばれた青年はシェリルに向く。

「ルーアと申します。魔法使いです」
「ど、どういう」

シェリルは戸惑う。

「説明は後ですって！早く逃げましょう！！」

言うが早くミストは出口に駆けだす。
それに続いてルーアが後を追って走る。
何だか分からないままシェリルも後を追う。

出口を抜けると先ほどの機械兵が二体いた。
機関銃を乱射される。
ミストとルーアは右へ避け、シェリルは左へと避ける。


――サンダ――


ルーアが呪文を唱えると、機械兵一体に雷が落ちる。
電流が駆け巡り、機械兵は煙を出して大きな音を立てて膝をつく。
もう一体の機械兵がシェリルに機関銃を向けた。

「シェリル殿！！」

ミストが剣を投げる。
シェリルは片手でその剣を受け取る。
マリンは片手で支え――

どうする？
避けるべきか、攻撃に転じるか。
駄目だ！マリンが！

一瞬の迷いが敵に攻撃を許す。
機関銃の乱射。テンポが遅れて――

マリンの眉間に一発――被弾する。

「うわぁああああっ！！マリン！！」

シェリルはマリンを抱きしめる。マリンは項垂れたまま、動かない。
機械兵は再度シェリルへ機関銃を向ける。

――サンダ――

ルーアの呪文でまた雷を落とす。
機械兵は前のめりに倒れる。

「うわぁ！！マリン！死ぬな！マリーン！！」

シェリルの叫びがこだまする。
しかしいくら叫ぼうとも…眉間では即死だ。

刹那、シェリルにも弾丸が貫く。２発、３発。
肩と腕と脚。
最初の機械兵一体は倒し切れていなかったのだ。
シェリルは倒れ込む。
街の出口からはまたもぞろぞろと兵士達が集まってきた。

「シェリル殿！もう無理です！マリンはもう」

ミストが叫ぶがシェリルの耳には届かない。
肉体的なダメージのせいではない。
精神的なダメージが彼女の心を崩壊させていた。

「シェリル殿！」
「駄目だミスト。兵士達がわんさかきた。失敗だ。逃げるぞ」

ルーアがミストの手を引き駆けだす。ミストは抗う。

「駄目だ！ここで逃げるわけにはいかない！シェリル殿を助けないと」
「言ってる場合か。共倒れだぞ」
「お前の魔法でなんとかしてくれよ！」
「無理。数が多すぎる。多勢に無勢だ。早く逃げるぞ」
「ちくしょう！でも、でも！」
「シェリルさんは勇者だろ？信じろよ」
「うぅ…くそぉ！！」

ルーアとミストは駈け出した。

「嘘だ…こんな…マリン……マリン…」

シェリルはマリンの顔を撫でながら呟いている。
兵士達はシェリルを中心に囲む。

「惜しかったな、シェリル…」

ドニスの言葉が、全ての終わりを告げていた。





続
Final Destiny24 http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=66067330&comm_id=5718354