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ガット弦とリュートコミュのリュートのセミナーがありました。

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(※注 アンチ・ガットの方は読まない方がいいかも。)

熊本県荒尾市のS藤先生の自宅で開催された
2日間に渡るリュート・セミナーに参加してきました。

「Lute and Early Guitar Society Japan」という団体の主催です。
http://www.lgs-japan.org/

セミナーでは受講生の多くが、既にガット弦を張っていました。
(僕を含めた3組だけが化学繊維の弦。)
不思議なことに、かつてナイロン弦を張っていた方々は、
ガット弦に替えてから、異様に上手くなっているのです。
(S藤先生によれば「音が良くなるのだから楽しくて弾いてしまう」)

1日目の夜にはS田さん(S藤先生の高弟)による、
オール・ガット弦でのコンサート。
これは本当に素晴らしいもので、
特にゴーティエなどは、幾人かから語りかけられるような、
多彩で細やかなニュアンスに富んだ響きの音楽でした。

しかし、調弦の煩雑さや経済面などを考え、
なかなか張り替えまでは踏み込めないものです。

2日目のスケジュールも終わり、
皆いい気持ちでワインを飲んでいたとき、S藤先生がおもむろに、
Martin de Witte作の10コースを手渡してくださいました。
もちろん、ガット弦が張ってあります。
そして、それを弾いたら、もうガット弦に替えるしかなくなったのです。
なんという弱音のコントロール。
それから、ひたすら小さな音で引き続けました。楽しくて楽しくて。
僕がやっとその楽器を手放すと、
今度は恵庭のみっちいさんが、ダウランドのラクリメを弾きます。
ガット弦へのアプローチを模索しながら弾いているみっちいさんに、
S藤先生がとある「秘訣」を教えてゆかれました。
その後に、みっちいさんが弾いたラクリメの素晴らしさは、
ここでは決して筆舌に尽くせません。
しっかりと芯の通った音、しかし、無理なフォルテは一切ありません。
軽妙な装飾だと思っていた箇所が、本当は雄弁な語りでした。
ラクリメは本当に名曲だったのです。
結局ずっと、みっちさんの演奏に聴き惚れてしまい、
僕がおいとましたときには、日付は変わっていました。

僕は、その日のうちに電話をし、10日後の祝日にお邪魔して、
ガット弦を張り、レッスンを受けさせてもらえるようお願いしました。
3年間付き合ったナイルガットとも、あと10日でお別れです。

コメント(6)

先日はどうもでした!
私も、人生で一番美しく弾けたラクリメだったように思います。
ラテン系の私の情熱がいつものように空回りするのではなく、ガット弦が優しくうけとめてくれて、まるで音楽の語り部になったような心持ちでした・・・・。

ガット弦でなくては、あそこまで言葉を語ることは不可能でしょう。S藤先生の魔法にかかったようでしたよ。たった一言のアドヴァイスで別人になってしまうのですから。

なんか宗教がかってきましたが(笑)この2日間できいたガットの音色は本当にみな、すばらしかったです。
>ごんさん

何だか、いろいろあったみたいですね。お疲れ様です。
雑誌を読んでいたら、
ガット弦にまつわる、面白い対談が載っていましたので紹介しておきます。

ベテラン音楽評論家A氏と、若手の音楽評論家B氏の対談です。

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<中略>
A「…ところで、Bさんは『コレギウム・アウレウム合奏団』を知っていますか?」
B「名前だけなら聞いたことありますよ。オリジナル楽器オケの草分けですよね。」
A「ところがですね、コレギウム・アウレウムはオリジナル楽器を使ってなかったんです。」
B「え!?そうなんですか?」
A「彼らの使っていたヴァイオリンはモダンのものだった。弦だけをガットに替えていたわけです。」
B「それで”オリジナル楽器”ですか…。」
A「21世紀生まれのBさんには想像できないかもしれませんが、あの時代、バロックのヴァイオリンをきちんと復元できる製作家など、世界にほんの何人かしかいなかったんですよ。」
B「今では日本にすら優れた製作家はたくさんいます。」
A「その通りです。とにかくコレギウム・アウレウムは擬似時代楽器の集団だった。もちろんレコードにはそんな裏話は書いてありませんから、我々は『これがオリジナル楽器の音色か〜』と素直に感動していたわけです。」
B「そんな時代もあったんですね。」
A「それでもスチール弦との音の違いは決定的で、何といいいますか、無理をしない優しい音色でね。しかし、1960年代も後半に入ると、そういうのも、もう流行らなくなった。」
B「心ある聴衆が本物を求めるのは当然のことです。」
A「ま、聴衆というか、シギスヴァルト・クイケンがコレギウム・アウレウムを解体して、プティット・バンドを作っちゃったんですよ。」
B「今度は本物のオリジナル楽器でしょうね?(笑)」
A「ええ、本物です。顎当てもありません。(笑)」
B「シギスヴァルトといえば、1981年のバッハの無伴奏、あれは稀代の名演ですね。」
A「さすが、気鋭の評論家B氏です。無伴奏の名盤といえばあれでしょう。」
B「彼は2000年にも録音していますが、僕は81年盤の方を評価しています。」
A「でも、あのレコードが発売された時は、我々の同業者に、散々叩かれたものですよ。」
B「『崇高なバッハを…』という具合にですか。」
A「まさにそう!何せ、あのクニャクニャした音ですからね。(笑)」
B「全然カチッとしていない。(笑) でも、あれがいいんじゃないですか!ガット弦の多彩なニュアンスでもって、対位法のひだまで伝える。」
A「そう、あれこそが、バロック・ヴァイオリンとガット弦の素晴らしさを知らしめた名盤です。」
B「もう、その頃には偽のバロック・ヴァイオリンを使っている人はいなかったんでしょうか?」
A「まず、いなかったでしょうね。よほどの変わり者以外は。(笑) バロック・ヴァイオリンを弾いている、と言って、顎当てを付けている人とか。(笑)」
B「反った弓で弾いている人とか。(笑)」
A「まあ、ヴァイオリンに関しては、偽の時代楽器を弾く人は1970年代に、ほぼ絶滅したんですが、「ザ・ガット弦」とも言えるリュートに関しては、そうのような状況が21世紀初頭まで続いていたのはご存知ですか?」
B「え!?リュートがですか?」
A「ただし、コレギウム・アウレウムと全く逆で、オリジナルのものをきちんと研究し復元した楽器に、ギターのようなナイロン弦や金属の巻き弦を張ってたんですよ。」
B「本当にコレギウム・アウレウムと正反対ですね。」
A「おそらく、原因は、リュートを復興させたパイオニアが、例外なくギターからの転向者だったことでしょうか。」
B「なるほど、リュートにもギターのような大きな音量と均一な音質を求めたということでしょうか。」
A「さすが鋭い。僕はもっと単純に、ギターの音そのものへのノスタルジーじゃないかと思っているんですけど…。」
B「それは言い過ぎじゃないですか?その人たちもギターじゃ駄目だと思ったからリュートに転向したわけでしょう?でも、あと一歩、弦さえガットにすれば、立派な”オリジナル楽器”だったのに…。」
A「その一歩が遠かったわけです。」
B「実に惜しい!(笑)」
A「そう、惜敗です。(笑) まあ、ヴァイオリンの弦と違って、リュートの弦は細いですから、なかなか良い物がなかったという話もあります。調律もすぐ狂うとか。」
B「でも、そんなことを言ったら、ピアノよりも、絶対狂わないシンセサイザーでショパンを弾け、ということになる。」
A「まあまあ。極論を言っては身も蓋もありません。(笑) とにかく、21世紀初頭まではガット弦を張っている方がマイノリティだったわけです。ガット弦での録音では、CDに『総ガット弦使用』という但し書きが付いていた。」
B「それは面白いですね。(笑) ナイロン弦の方が『総化学繊維弦使用』と書くなら話は分かるのですが。(笑)」
A「そんなこと書いたら売れなくなります。(笑) まあ、僕なんかは、家に20世紀のバロック・ヴァイオリンの録音だけで何千点あるか分かりませんが、『総ガット弦使用』などと書いてあるものは1つもありません。」
B「バロック・ヴァイオリンを標榜していて、スチール弦だったら詐欺でしょ?」
A「しかし、リュートの世界では、それがまかり通っていたのだから不思議です。」
B「まあ、ギター派の最後の抵抗だったのかもしれませんね。」
A「おそらく、そうでしょう。今でも頑なにナイロン弦を張っている人がいるらしいですよ。」
B「前世紀の遺物ですね。」
A「その通り。どこの世界にも”旧弊氏”と仇名される人はいるものです。」
B「まさか、音楽評論家のお偉方を指してるわけじゃありませんよね?(笑)」
A「まさか(笑)」

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民明書房刊『古楽演奏の100年』より 2056年刊行 

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