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〜日記から始まる日々のエール〜コミュの【読】化学反応

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<ある大学生の視点>


 バスを待つ合間を利用して、俺は携帯電話を開いた。
 友人がすぐに出る。

 もっしー。
 今、大丈夫?

「大丈夫だよ。何?」

 いやね?
 今度みんなで海に行こうって話になってさあ。
 それでお前も誘おうと思って。

「へえ、いつ行くの?」

 来週の土曜。

「来週? 泳ぐには寒いんじゃない?」

 釣りでもしようと思ってね。

「釣りかあ。でもさ、せっかく釣っても、誰も魚なんてサバけないんじゃないの?」

 キャッチ&リリース!
 佐々木と鈴木も来るって。

「へえ。あいつらも暇だなあ。あれ? お前今日、店に出るとか言ってなかったっけ?」

 俺?
 今日バイト休みー。

「あ、そうなんだ。それにしても、海かあ。嫌じゃないんだけど、どうもなあ。いつ行くんだっけ?」

 だから来週の土曜日に行く予定だってば。

「来週って、何気にけっこう先のことじゃね? モチベーション下がって行きたくなくなったとか言い出す奴、きっといるぞ。だからどうせ行くならさっさと行こうよ。明日とかさ」

 お前ホントせっかちだなあ。
 そんなんじゃ、彼女にも逃げられちゃうぜ?

「彼女、か。いたなあ。そんな奴も」

 え!?
 お前ら、何かあったの?

「メールが返ってこなくなったからさ、毎日家の前で待ち伏せしてたんだ」

 そりゃお前、ストーカーだろー。

「だってよう。疑われるような素振りだった彼女のほうが悪いよ。そもそも俺、せいぜいゴミ袋ぐらいしか漁ってないぜ?」

 それも駄目だって。
 犯罪に近いものがあるもの。

「そういうお前はどうなんだよ? そろそろ彼女に飽きられちゃうんじゃないの?」

 え、俺?
 俺はうまくやってるもん。

「まあ、そうだろうなあ。ごめんな、変なこと言って。ちょっとナーバスになっててさあ。彼女、まだ怒ってるかなあ? どん底だよ」

 とにかくさ、お前から謝ったほうがいいって。

「うん、まあ、タイミング見て、切り出してみるよ」

 あ、そうそう。

「ん?」

 これから山田にも声かけようと思うんだ。

「げ! 山田!? あいつ、俺が言うのもなんだけど、危ない奴だぜ?」

 え!?
 山田って、何かやったの?

「見た奴の話なんだけどさ、あいつのケータイ、隠し撮りした画像ばっかりなんだってよ」

 えええ!
 マジでー!

「俺も、それ聞いたときはびっくりしたよ。真面目そうな奴なのになあ」

 でもまあ、あいつも色々あるだろうからさ、しばらくほっといてやろうよ。

「だなあ。あ、話は戻るんだけどさ、海行くの、来月にしねえ? その頃だと俺、好都合なんだ」

 ん?
 来月?
 そりゃ遅いよー。

「俺は極端だけど、明日か来月かの、どっちかがいいんだけどなあ。なかなか忙しい身だもの」

 とにかく来週の土曜、空けとけよな。

「ちっ。解ったよ、空けとくよ。お前こそ、誘っておいて忘れるなよ?」

 おう、解ってるって。
 じゃ、また連絡するよ。

「うん、解った。一応、来週になったら俺からも連絡するよ」

 うん、はいよー。

「じゃあなー」

 はーい。
 ばいばーい。

 俺は電話を切った。


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<ある刑事の視点>



 捜査中のことだ。
 胸に忍ばせていた携帯電話が細かく振動する。
 着信は、部下からだ。
 俺はイヤホンマイクを手早く装着した。

「もしもし先輩! 今、大丈夫っすか!」

 今は尾行中だ。
 ターゲットが喫茶店に入ったから、多少なら大丈夫だけどな。
 どうした?

「連続強盗殺人事件の容疑にかかってる、あいつ、いるじゃないっすか。実はその、さっき取り調べ中にですね? 署から脱走されてしまいまして…」

 何!?
 取調べ中に容疑者が逃げ出したァ!?
 いつの話だ!?

「つい、20分ほど前っす…」

 何故すぐに知らせなかった!?

「すんません! なんか、テンパっちゃって…」

 なんで逃げられたんだよ!

「俺、みんなに飯休憩を許可したんす。そんでついでに、コンビニで猫のエサを買ってきてくれって頼んでて。ほら、うちの猫、めっちゃ大食いじゃないっすか」

 そんなことを聞いているんじゃない!
 だいたい、お前は一体、何をやっていたんだ!

「すんません! 徹夜続きだったもんで、仮眠を取ってしまいました!」

 ばっきゃろう!
 すぐに足取りを追うんだ!
 検問の手配もすぐにするんだ!

「え、あ、はい! で、でも、まだ署内にいるかも…。まだ逃げてないのかも…」

 とっくに逃げられてるだろうが!

「俺もう、わけ解んないですよ〜! 先輩、戻ってきてくださいよ〜!」

 俺は尾行中だ!

「尾行って、例の放火魔の容疑者ですか?」

 違う!
 下着泥棒だ!

「そんなのほっといて、こっち来てくださいよ〜。そっちの容疑者より、こっちの容疑者のほうがでかいっすよ〜」

 どっちも同じ犯罪者だろうが!
 そういう問題じゃないんだ!

「ふひい! す、すんませんでした!」

 ごめんで済んだら警察いらねえだろ!

「ごめんって言ってないっすよ〜。すんませんって言ったじゃないっすか」

 そんなことはどうでもいい!
 相手は全国指名手配犯なんだぞ!
 さっさと追え!

「え、いや、でも、先輩がいないと…! だいたい先輩、誰を追ってるんです?」

 だから下着泥棒だって言ってんだろ!
 とにかく今回、俺は動けない!
 お前らだけで何とかしろ!
 奴を野放しにするな。
 放っておいたら、また犠牲者が出るぞ!
 すぐに行け!

「うう、はい…。じゃあ、今から、署を出ますう」

 遅いんだよお前は!
 む!
 ターゲットが喫茶店から出てきた!
 切るぞ!

「ふえ!? もう?」

 必ず報告しろ!
 じゃあな!

 俺は電話を切った。


-------------------------------------------------------

<ある第三者の視点>



 街のベンチで一服していると、背後から話声が聞こえてきた。

「もっしー。今、大丈夫?」
「今は尾行中だ。ターゲットが喫茶店に入ったから、多少なら大丈夫だけどな。どうした?」
「いやね? 今度みんなで海に行こうって話になってさあ。それでお前も誘おうと思って」
「何!? 取調べ中に容疑者が逃げ出したァ!? いつの話だ!?」
「来週の土曜」
「何故すぐに知らせなかった!?」
「釣りでもしようと思ってね」
「なんで逃げられたんだよ!」
「キャッチ&リリース! 佐々木と鈴木も来るって」
「そんなことを聞いているんじゃない! だいたい、お前は一体、何をやっていたんだ!」
「俺? 今日バイト休みー」
「ばっきゃろう! すぐに足取りを追うんだ!」
「だから来週の土曜日に行く予定だってば」
「検問の手配もすぐにするんだ!」
「お前ホントせっかちだなあ。そんなんじゃ、彼女にも逃げられちゃうぜ?」
「とっくに逃げられてるだろうが!」
「え!? お前ら、何かあったの?」
「俺は尾行中だ!」
「そりゃお前、ストーカーだろー」
「違う! 下着泥棒だ!」
「それも駄目だって。犯罪に近いものがあるもの」
「どっちも同じ犯罪者だろうが!」
「え、俺? 俺はうまくやってるもん」
「そういう問題じゃないんだ!」
「とにかくさ、お前から謝ったほうがいいって」
「ごめんで済んだら警察いらねえだろ! そんなことはどうでもいい!」
「あ、そうそう。これから山田にも声かけようと思うんだ」
「相手は全国指名手配犯なんだぞ! さっさと追え!」
「え!? 山田って、何かやったの?」
「だから下着泥棒だって言ってんだろ!」
「えええ! マジでー!」
「とにかく今回、俺は動けない! お前らだけで何とかしろ! 奴を野放しにするな」
「でもまあ、あいつも色々あるだろうからさ、しばらくほっといてやろうよ」
「放っておいたら、また犠牲者が出るぞ! すぐに行け!」
「ん? 来月?」
「遅いんだよお前は!」
「そりゃ遅いよー。とにかく来週の土曜、空けとけよな」
「む! ターゲットが喫茶店から出てきた! 切るぞ!」
「おう、解ってるって。じゃ、また連絡するよ」
「必ず報告しろ!」
「うん、はいよー」
「じゃあな!」
「はーい。ばいばーい」

 俺は何も聞かなかったことにした。

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