Tanz bitte,Hermann!*コミュの眠れない夢

デジタル時計は２時を指す。

｢今日も寝れないんだね｣
横で転がっているジョアンがだらりと言う。

ベクトルはもう飽きた。
私はシャーペンを手放した。
生物は学校で済ませた。英語は、やらない。
古典は…、読めない。

だいたいなんだろう、古典って。
それなら『未来語』とかやれば？私がタイムマシンを使うなら、『未来語』、布教させるわ。
…だから、きっと、タイムマシンは一生過去には行かないんだと思う。

私が冷めきったダージリンをゆるゆるティースプーンでかき混ぜながらそんなこと言ったら、ジョアンがクフ、と、笑いを漏らした。
｢やっぱりきみは子供だなあ、｣

そんなことないもん、

私はジョアンの腕を取ってベッドに座る。

ジョアンが膝に乗る。

｢ねえ、今日のお話して。そしたらおやすみのちゅーしてよー｣
ジョアンがまっすぐ、私を見詰める。

いーやー、

私は笑って首を振った。横に。
だって恥ずかしいじゃん。もう高校生だもん。やだやだ。

｢ええー、昔はよくちゅーしてくれたじゃない｣
ジョアンは駄々を捏ねる。
くたっと力の抜けたジョアンを私は、きゅうっ、と抱き締めた。
ジョアンの茶色の髪の毛からは大好きな懐かしい匂いがする。

｢ねえ、また睡眠薬増やした？｣

だって、眠れないんだもん。
今ごろ私の10歳年上の彼氏は、私の次に愛してるとか言う本妻と寝ているんだもん。
…学校の先生と恋するのは、ちょっとしんどいや。

｢大丈夫？そろそろ幻覚とかヤバいんじゃない？ぼく、心配だなあ、きみが普通から遠退いてく気がする…｣

かちん。

うるさいっ、正論言うな、くまのくせにっ、

｢いて｣

私はくまの人形を片付いていない部屋の隅に投げた。

私はくだらなくなって、ベッドに潜り込んだ。

3:15になれば、アラームが鳴るから、そしたらP107の問２を解こう。