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【S.S.G特設会場】コミュの【Pretty Little Girl】

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その日、一人の青年はとあるお宅に向かっていた。
彼は地図をを片手に、豪華な家々が並ぶ閑静な住宅街をてくてくと歩いていた。

「まいったなァ、本当にこの辺で良かったのかな……はぁ〜あ」

溜め息交じりに、青年は事の経緯を思い出していた……
両親に、親戚の家でのベビーシッターをいきなり任されてしまい、本人の
意志に関わらず半ば強制的に行く羽目になったのだ。おまけに仕事を押し付けた
張本人達は、置手紙に簡素な地図を描いただけという適当ぶり。
やっつけ仕事でもやらされるような気がしたが、仕事を任された以上は
全力でやるしかない。そう自分に言い聞かせると、フンと意気込んで歩を進める…


着いた先は、周りの家にも負けないくらいに大きく、そして美しいデザインの家だ。
日本のリフォーム番組に出てきそうな、洗練された雰囲気に圧倒されるも
気を持ち直して、恐る恐るベルを鳴らす……少し間を置いて、一人の初老の男性が
穏やかな笑顔と共にドアを開けて迎えてくれた。

「ああ、よく来てくれたね! さぁどうぞ、上がってくれたまえ」

「あ、えと……本日は、よ、よろしくお願いします!」

「何も緊張しなくていいんだよ、ささ、早く入った入った」

「はい、お邪魔しまーす」

青年が家に上がると、家主の男性はアールグレイを淹れて歓迎する。
高級なインテリアがフロア中に溢れるなか、彼は訪れた青年に話し掛けた。

「本日は来てくれて嬉しいよ、私の孫娘もわんぱく盛りでねぇ…こんな広い家に
 一人で置いておくと可哀想なのだよ。それにこれからお得意さんと会合があってね。
 夜に帰ってくるまでは、君に面倒を見てもらいたいんだ。頼めるかな?」

温和な笑顔を携えて、男性はティーカップを静かに卓上に置いた。

「はいっ!上手く出来るかわかりませんが、頑張らせて頂きます!」

「はっは、頼もしいねぇ。それでは、私は出掛けてくるから、お願いするよ。」

「はい!!」

意気込む青年が男性を見送り、彼はベビーシッターの相手である孫娘の女の子を探して
2階への階段をすたすたと上っていく。普通の家以上、お屋敷未満の広さに戸惑うが
部屋毎にドアに書かれたネームプレートを頼りに、孫娘のものらしき部屋へと
到着する。途中、床や天井の所々に、つぎはぎの様な修繕の痕があったが
そんなことは気にも留めなかった。まずはお仕事をしないと意味が無い。

「……クレア・フランベルちゃんか、フランス系なのかな?可愛い名前だなァ」

呟くと、彼は軽くドアをノックした……反応が無い。
聞こえていないのかな、そう思った彼は少し強めに、再びノックする。

「ひゃうぅッ!?うゅ・・・クレアわるいことしてないもん、やぅ〜……」

何かに脅えるような、可愛らしい声が聞こえてきたではないか。

「恐がらないで、僕はベビーシッターだよ!君と遊びに来たんだ。」

「うゅ……ほんと?」

「本当だよ、だからこのドアを開けてくれるかい?」

「……うん、はいっていいのよ〜」

コメント(5)

……声に導かれるまま部屋に入ると、そこはまるでお伽話のような光景だった。
部屋一杯のぬいぐるみに数多のおもちゃ…その中央で彼女はあどけなく佇んでいた。
ルビーの様に赤い瞳は、ぱっちりと可愛らしい。そしてふわりと軽く靡く金髪。
まるで生きた人形の様な容姿を持つ少女が、無垢な視線を青年に送っている。

「ふみゅ、おにいちゃん…だぁれ?」

「僕はジェイ…ジェイ・M・ロックアイ。君のベビーシッターに来たんだよ。」

青年は――ジェイもた無垢な笑顔で少女に話し掛ける。
その柔和な雰囲気が功を奏したのか、幼い少女にも微笑みがこぼれる。

「うにゅ〜…おにいちゃん、クレアとあそんでくれるの?」

「うん、何でも遊んであげるよ。クレアちゃんはどんなことして遊びたいかな?」

ジェイの問いに、クレアは小さな人差し指を唇に当てて、考え事のジェスチャーをする。
その愛くるしい仕草に、思わず彼もクスクスと笑みをこぼした。
するとクレアが、頬をぷく〜っと膨らませて怒った。

「むぅ〜、クレアへんなことしてないもんっ!わらったら『めっ』なのよ〜」

「あはは、ごめんごめん。クレアちゃんの仕草が可愛かったから、つい…」

「やぅ〜、おにいちゃんのいじわるぅ〜」

少しいじけた素振りを見せるも、すぐに明るい笑顔に戻ってクレアは言う。

「うんとねっ、えっとねっ!クレア、おにごっこしてあそびたいの〜!!」

「へぇ、鬼ごっこかァ〜…うん、いいよ!鬼は僕がやればいいのかな?」

クレアとの会話は、ジェイの気分を心地良いものにさせていた。
彼も彼女をもっと喜ばせようと、すっかりその気になって遊び始めようとする。
クレアも、自分の我儘に付き合ってくれるジェイの存在が嬉しいのか、床の上で
ピョンピョンと跳ね回ったり、「ふぃ〜ふぃ〜♪」とはしゃいだりしている。
無邪気で子供らしい仕草を終えたところで、彼女は再び無垢な瞳でジェイを見る。

「えへへっ、クレアとってもうれしいの〜!!でもね…クレア、おにごっこで
 だれにもつかまったことないんだよ?おにいちゃん、クレアをつかまえられる?」

白いワンピースの裾を両手で弄り回しながら、クレアはその場でくるりと一回転。
しかし彼女の表情には、どこか小悪魔みたいな悪戯っぽい微笑みが張り付いている。
ジェイは「どうせ子供のはったりだろう」と軽く考えていたが、それもすぐ忘れて
彼は暢気に言葉を返した。

「へへっ、それじゃぁお兄ちゃんが一番乗りでクレアちゃんを捕まえちゃうぞ!?」

「うにゅにゅ、クレアはかんたんにつかまらないのよ〜!?」

「よ〜し、数えるから逃げてね?10〜…9〜…8〜…7〜…」

(『ブレイクスタッフ』、いっくよぉ〜…キュッとしてぇ〜)

目を両手で覆い隠すジェイの背後で、クレアはその傍に大きな幻影を呼び出した。
忍び足で壁に近寄ると、その幻影が壁に手を突っ込み、そこから黒い球体を
取り出した。ジェイのカウントダウンは、あと3秒……!!

「3〜…2〜…1〜…」

(ど〜ん!なのよ☆)

ジェイが「0」を言い掛けたその刹那、スタンドの手が球体を握り潰すと…

ガオォンッ!!!バキバキ、ズズンッ!!


とてつもない轟音と共に壁が崩壊し、クレアが無邪気に笑いながら逃げる姿が…
突然の事態に混乱するジェイだが、走り去るクレアの傍にいる『モノ』を彼は見た。

「あれは……マジかよ、あんな小さな娘が…僕と同じモノを持ってるなんて!!」

唖然となっていたが、首をブンブンと横に振り回してモードチェンジ。
壊れた壁の穴を潜り抜けて、ジェイは逃げたクレアを捕まえるために走り出した。
『鬼ごっこの鬼』としてでもあるが、それ以上に…クレアの不思議な力で
家が壊れないように、早急に手を打つためでもあった。
「きゃはははっ、おにいちゃぁ〜ん!こっちなのよ〜!!」

「(くそぉ〜、すばしっこいなァ…) こらぁ〜!待てぇー!!」

走りながらクレアを追い駆けるジェイ。幸い、まだクレアが物を壊した気配は無い。
だがそれは彼の思い込みであって、実を言うと…クレアは破壊の『用意』を
既に済ませていた。ジェイと距離があることを理解してなのか、彼女が
無垢な笑い声と共に振り返る。何かを隠すように、両手を後ろに引っ込めて…

「えへへっ、だいサービスなのっ!おにいちゃん、そこあぶないのよ〜?」

「大サービス??一体どういうこ……」

頭に『?』の文字が浮かび、クレアの真意をジェイは図りかねていた。
しかしクレアの背後に再び、ロボットのような大きな幻影が姿を現すと
ジェイの驚きは更に高まっていった。クレアの幻影のビジョンの右手には
黒紫の鈍い光を放つ球体が握られていた……

「きゅっとしてぇ〜…」

(考えるんだ、僕!さっきクレアちゃんが逃げたときの破壊は何だった…!?
 まるで粉々に破壊するような音が聞こえて…それにあの球体を『きゅっ』と…
 ………まさか、クレアちゃんの幻影がすることって!!)

「どーん、なのよっ☆」

クレアのウィンクと共に、幻影が球体を握り潰すとジェイの足元が崩壊を起こす!!
咄嗟に判断が遅れるが、その刹那……ジェイも遂に自らの『力』を呼び出した。

「しょうがないな……修理しないと、『ヴァーチャル・インサニティ』ッ!!」

落下するジェイの傍に現れた幻影は、全体的にゴツい鉄のゴーレムといった風貌だ。
所々にボルトやネジが埋め込まれており、見る者に機械的なイメージを持たせる。
そして幻影が両手を広げると、崩壊を起こした床を囲むように青白いテクスチャの
輪郭線が立法形状に展開された。そしてジェイが指を鳴らすと、下の階に落ちた
瓦礫や鉄骨が浮上してくっついていき、足元の床はすぐに元通りになっていた。

「ほぇ……クレアとおんなじ…おにいちゃんも『スタンド』をよびだせるの!?」

「スタンド……これ、スタンドっていうんだ…クレアちゃんのもかい?」

「うぃ!クレアの『ブレイク・スタッフ』はね、くろいボールをとりだせるの。
 それでね、それでね……えっと、うにゅ〜…それをぎゅってするとねっ、
 かべとかすっごくこわれちゃうの!クレアすごいでしょ〜?」

クレアが自慢げに自らの能力を語る中、ジェイは納得していた。
彼女部屋にいくまでに、家のあらゆる場所が継ぎ接ぎだらけだった原因が
こんな小さな女の子の仕業だったことに。だがそれ以前に、彼は嬉しかった…

自分と同じモノを持った人間と、出会えるなんて!!

「そっかァ、すごい能力を持ってるんだね……あ、そうだ!
 鬼ごっこはまだ終わってないからね、今度こそ捕まえてやるぞー!!」

「やぅ〜、クレアかんたんにつかまらないもんっ!!べぇ〜っ!!」

あかんべぇをして、クレアはスタンドを伴って逃げた。
そんな彼女を追うように、満ち足りた笑顔で鬼ごっこを再開する…
前方ではクレアが廊下の突き当たりのT字路を曲がるのを確認できたが、
あの破壊の能力を使ってトラップを仕掛けているに違いない・・・ジェイは勘繰った。
スパイみたいに壁を背にして、気付かれないようにスリ足を伴って様子を伺う。
曲がり角から顔を出して、クレアが逃げていった廊下を見渡してみる。

「・・・・・・・・・どうやら大丈夫なようだな、よし!!」
安全を確信したジェイがその一歩を踏み出す・・・・・・が、その踏み出した足が
一つの違和感を覚えた。踏み込んだのは『フローリングの床』なのに、まるで
絨毯のように『フカフカと柔らかく』なっているのだ・・・ジェイの勘が危機を告げる!

(これってもしかして・・・・・・クレアちゃんが球体を取り出すと、物体は脆くなるのか!?)

「えへへ〜、そこもあぶないのよー!!きゅっとしてぇ・・・・・・ドッカァ〜ン☆」

クレアのスタンドが球体を握り潰すと、またもやジェイの足元が轟音を立てて
崩壊する。しかし先のように咄嗟に対応することが出来ず、彼は下の階へ落下した。
破壊された床の穴からはドスンッ!!と鈍い音が響いたが、俄然クレアは楽しそうだ。

「きゃははははっ、クレアはだれにもつかまらないのよ〜!!」

床の穴から彼女の笑い声が聞こえてくると、ジェイの瞳に炎が燃え盛る!!
ここまで手痛い悪戯をされて、黙ってやられているわけでもないのだ。

「よォ〜し・・・・・・僕も本気出しちゃおうかな。」

とは言ったものの、自分が見ていない間にクレアは既に破壊の罠を仕掛けている筈・・・
わざわざ2階に上がって再び追い掛けたとしても、さっきのように落とされては
身が持たないのだ。それならどうするべきか・・・・・・ジェイに一つのアイデアが浮かんだ。

その策とは・・・・・・・・・『動かないこと』ッ!!!
おそらくクレアの破壊トラップは、2階の至る所に設置されていると踏んだのか
彼は1階に留まったまま、クレアが動くのを待つことにしたのだ。
相手は子供、我慢を知らないと想定するなら焦らされるのは相当応える
だろう。
その思惑が当たったのだろう、意外と早くクレアが癇癪を起こし始めた。

「うぅ〜うぅ〜!!はやくもどってくるのー!クレアとあーそーぶーのぉ〜!!」

少し泣きそうな喚き声が聞こえると、それを合図に天井が所々に破壊され、崩壊する。
瓦礫の雨が局地的に降り注ぐ中、ジェイは頃合と見て2階の階段を駆け上がった。

「Ready or not? Here I come…用意はできた、いくぞ〜クレアちゃん!!」
2階の床に出来上がった穴を、敢えて『ヴァーチャル・インサニティ』の力で
修理せずに、自力で飛び越えながら走り回ると・・・不貞腐れて座り込むクレアの姿が。
頬をぷくりと膨らませて、む〜む〜と唸りながらジェイを睨んでいた。

「やぅ〜、クレアつまんないのイヤなのよ〜・・・」

「はは、ごめんね・・・だけど、もう逃がさないぞ?」

意気揚々とジェイが一歩を踏み出すと、途端にクレアの顔に笑顔が張り付く。
それでもジェイはそれが何を意味するのか理解していたし、何が起こるのかも
しっかりと予測していた。

「ざんね〜ん!クレアはまだつかまらないもぉ〜んっ!!きゅっとしてドーン☆」

『ブレイク・スタッフ』の拳が床の「核」を握り潰すと、またもジェイの足元が崩壊して
下の階へと落下させられる。しかしそれもまた、ジェイの予想の範疇に入っている。
落下するその手前の瞬間、ジェイはクレアのいる場所の状況を脳にインプットした…

「クレアちゃんの真後ろには壊した床の穴…そして前には今、僕が落ちた穴…
 挟み撃ちの体制は整った、『ヴァーチャル・インサニティ』ッ!!」


そしてスタンドを発動させると、ジェイの足元から2階へとテクスチャが伸びていき
足元に散らばっていた瓦礫が浮上して元通りに修復される。その上でジェイは余裕綽々で
佇んでいた……クレアはすぐに逃げようと走り出すが、目の前には自分が壊した床の穴。
「うにゅ〜…」と悔しそうな声を出していたが、ふと振り向いた彼女は、笑顔と共に
ジェイの下へと駆け寄って、抱き付いてきた。

「ふみゅ、つかまっちゃったの〜♪」

「わっ……ハハッ、やっと捕まえた。それにしてもいっぱい壊しちゃったね、ダメだよ?
 お家をメチャクチャに壊したら、僕もクレアちゃんも叔父さんに怒られちゃうからね。」

「あぅ〜、クレアおこられるのイヤなのぉ……えぅ〜」

頭を両手で押さえながら、困った表情をするクレア。
だがジェイは彼女の頭を優しく撫でて、自分の能力で家を直す事を提案した。

「大丈夫だよ、僕の『ヴァーチャル・インサニティ』の能力は壊れた物を修理するんだ。
 鬼ごっこはいったん止めて、僕と一緒に直すのを手伝ってくれるかな?」

「うぃ!クレア、おてつだいするのがんばるのよ!」

そうして二人は家の中を散歩がてら、特に目立つ箇所を見つけてはジェイが直していく。
時折クレアが『ブレイク・スタッフ』で壁から「核」を取り出して遊んでいたが
ジェイに軽く怒られたり、それを誤魔化すようにクレアが舌をペロリと出したり…
そうしている内に、家の中の修繕箇所は全てなくなって……

………

白い月が、紺色のグラデーション彩る夜空に上がった夜8時。
家主の老人が帰ってくると、ロビーのソファではジェイとクレアが肩を寄せ合って
すやすやと眠っていた。安らかな寝顔を見て老人はうんうんと頷くと、二人に毛布を
そっと掛けてあげた……クレアが身を捩って、ジェイの胸元へ蹲る。

「むにゃむにゃ……おにいちゃん、Je' taim mon grand frére……なのよ…」

それが聞こえていたのかどうかわからない。
ジェイが微笑むような表情で……クレアの金髪をそっと、優しく撫でていた。

fin.
あとがき

大失敗したかもしれない……精進あるのみ。

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